01改 冒険者Aさんと受付嬢のぼやき
修正版
月日とかは後回し。
徐々に続きも手直ししていきます。
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視点:冒険者ギルド受付嬢 リマさん
『』:アルファさん
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◆タンゴの町 冒険者ギルド受付◆
(ザワザワ、ザワザワ)
「はい、クエスト達成の報告ですね?
ギルドカードをお預かりします。
…確認しました、成功報酬の大銅貨2枚です。
ギルドポイントも加算されてますので
必ず確認して下さいね?
では、お疲れ様でした」
…ふうっ、これで本日8件終了…っと。
今日は朝からクエスト報告が多いわね。
成功6の失敗2。
うーん…失敗の2件は期限が近いし
誰か達成できそうな人にお願いしないと…。
あら? 2件とも、あの子の担当じゃないの。
あの子、窓口でどういう案内してるのかしら?
…んんん? そもそもこのクエスト。
何かおかしい様な…本当に内容合ってるの?
後でギルド長に確認してみないといけないわね。
場合によっては、クエストの難易度と報酬上げて
明日の朝一番に緊急クエストで出さないと
もう間に合わないわね。
………それにしても
この【タンゴ支部】も賑やかになったものね。
ギルド職員になってもうすぐ10年になるけど
所属の冒険者だけじゃなく、ギルド職員にしても
こんなに増えるとは思わなかったわ。
昔はギルド長含めても職員はたったの4人。
窓口もたった1つしか無かったのよね…。
まあ、それでも、全員で30人程度なんだけどね。
ここ【ナフォード王国】は王国と言っても
大陸の端っこにある田舎の小国だもの。
北西の【レオ王国】…はどうなのか知らないけど
南の【ドラント王国】の王都なんかは
聞いた話だと職員が400人も居るんだとか。
…すごいわね、想像もつかないわ。
そもそも職員どころか、ここの【タンゴの町】なんて
住民の数だけでも1000人も居ないし…。
だけど、それでも王都の【キロの町】にある本部より
マシらしいのよね。
あそこの支部、未だに職員が20人も居ないらしいし?
………そういえば、昔、同郷の子達に誘われて
王都に出てきて、本部で冒険者登録したんだけど
町の雑用はともかく、周辺の村や集落への納品とか通達。
他にも防壁の補修とか、町の見回りとかばっかり。
それって、普通は城の兵士とかがやる仕事内容よね?
だけど、じゃあ{討伐クエスト}はどうかって言うと
小型の獣系とか虫系、【スライム】みたいな
いわゆる初心者向けのモンスターって
王都周辺にはあんまり居ないから、クエストも無くて。
群れ単位の【オーク】や【トロール】だったり
山賊や強盗団の討伐みたいな、高ランク冒険者向けの
危険度の高いものばかりなのよね…。
登録直後のFランクには、専用クエストがあるけど
群れ単位の討伐とかって、Eランク、Dランクじゃ
固定パーティ組んでても、相当厳しい内容だもの。
ソロで討伐? いや、無理無理、無理だから。
そうなると、どう考えても、ギルド本部って
冒険者を兵士候補として、兵士の仕事に
慣れさせてる様にしか思えないのよね…。
まあ、こっちでギルド職員になってから
その事をギルド長に聞いた事があるけど
やっぱり、ギルドに来る依頼のほとんどが
国から斡旋されたものらしくって
Dランク以上の優秀な冒険者の人には
国のお偉いさんや貴族が声をかけて
兵士や騎士として城に召し上げてるんだとか…。
それじゃ確かに、王都の冒険者ギルドは
冒険者も職員も増えない訳よね。
……ま、私は優秀じゃなかったので
声かけられませんでしたけどねー。
「すいませーん、このクエストなんですけどー」
あ、はいはい。
クエストの受注? 報告?
さ、気持ち切り替えて、お仕事お仕事。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
…う───ん、これで失敗が3件に。
困ったわ…私の窓口人気が無いから
頼めそうな人が少ないのよね。
みーんな、新人受付嬢の2人や
イケメン君の窓口に行っちゃうのよねー。
…ま、仕方ないか、そりゃそうよね。
それにしても、結局、冒険者になっても
パーティは1年持たずに解散しちゃったし。
一緒に来た同郷の子達のほとんども
故郷に帰っちゃったしね…。
残ったリーダーのチャーリーさんも、
お城の兵士になって、今では小隊長。
しかも、私達がお世話になってた
宿屋の娘さんと結婚したらしいわね。
そういえば、この間、再会した時に
お子さんが5才になったって教えてくれたっけ。
…………ああ、そっか。
チャーリーさんは声かけられてたって訳か。
ま、確かに故郷の村でもリーダー格だったし?
村を出て王都で冒険者になるって言った時も
結構な人数が一緒に出てきちゃったしね。
…私も丁度良かったから便乗したけど。
『まいどー!』
…ギルド長に冒険者経験を買われて
この町へやってきてからもうすぐ10年。
新規発足した【冒険者ギルド タンゴ支部】の
初期メンバーとして色々頑張った結果
今では私の担当を指名して依頼してくれる
依頼主の人もかなり増えたし
私の担当を希望する冒険者の人達も
それなりには居る…はず…最近減ったけど。
でも、職員としては信頼されているのかな?
…と実感も無い事は無いんだけど。
はあ────…結婚か───……。
最近は、故郷のお母さんから手紙が来ても
そんな内容書かれなくなったのよね。
…あはは、もう、諦められたかな?
まあ、地味な瓶底メガネに地味なおさげ髪。
おまけに、色気も無いし、化粧も最低限。
自分でも自覚はしてるんだけど…。
基本的にお洒落するの苦手なのよね──。
…しても似合わないし。
何か最近、窓口に入った新人2人の片方の子は
陰で私の事を{アラサーの地味子先輩}とか呼んで
話のネタにしているらしいし?
ま、実際にその通りだから笑えないんだけどね。
でもね、陰口だけならまだしも。
普通に聞こえる声で話すんじゃないわよ!
おまけに、それを聞いた一部の冒険者達からも
陰で揶揄されてるっぽいし…。
昔は冗談半分だったとしても
結構、口説かれたりチヤホヤされたのになあ。
…うう、なんだか、悲しくなってくるわね。
さ、そんな事よりもお仕事よね、お仕事。
こんな根暗の行き遅れ女を口説く物好きなんて
ここには居る訳無いんだから。
『わはは! リッちゃん元気ー?』
…………はあ。
この独特の方言で話しかけてきた
冒険者の人は、アルファさん。
2年ぐらい前にこの王国へやってきて
王都の本部ではなく、直接【タンゴの町】に
移籍登録したベテラン冒険者らしい人。
あの時はちょっとトラブルがあったけど
結局は知り合いだったらしいギルド長が
応対して全部処理済ませたのよね。
この大陸と海を隔てて東にある
【フソウ】って所から来たそうなんだけど
名前は思いっきりこの国の名前なのよね。
この国ではよくある基本名。
それこそ【フソウ】で言う{イチロー}とか
{ハジメ}とかって名前と近いらしいわね。
う───ん……どういう事なのかしら?
………で、このアルファさん。
いつも私を指名してくれる冒険者さんで。
いつもいつも、残ってる面倒なクエストを
処理してくれる、ありがたい冒険者さんで。
いつもいつもいつも、気軽に話しかけてきては
私をからかってくる困った冒険者さんなのよね。
…気が付いたら、呼び方もいつの間にか
{リッちゃん}呼びになってるし?
「こんにちはアルファさん。
クエストの終了報告ですか?」
『せやでー! リッちゃん。
ハイこれ! とりあえず先に渡しとくわー。
【銀光の実】5個で間違いないやろ?
それにしても、リッちゃん!
今日もべっぴんさんやな~!
なーなー! 今度デートでもどう?』
「はいはい、いつもの冗談ですね?
いつもありがとうございます。
では、【銀光の実】はお預かりしますね。
その間にこちらにサインをお願いします」
『え? いや冗談やのーて。
ほら今晩なんか一杯どう?
オススメのお酒も手に入ったんやけど~』
「はいはい、納品分の確認できました。
こちらが、クエスト報酬になりますので
確認お願いしますね?(ニコッ)」
『え───っ?
せ…せめて一緒に晩御飯とかどう?
新メニュー追加されたらしいで?』
「はいはい、達成報酬の確認して頂けました?
あ、晩御飯なんですけど
また今度、そのうち、いつの日か
ご一緒できればいいですね?(ニコッ)」
『ダメ? …あ、はい。
…え? やってほしいクエストがある?
明日? まあ、ええけど…。
はあ…そんじゃ、おつかれさーん』
……ふう。
今日もたくさんからかわれたわねー。