転生なんてあるわけないだろ!
1.プロローグ
最初に言わせてもらおう。
「異世界転生」?「異世界召喚」?
何それ?美味しいの?
美味しいかどうかで言ったらきっとオイシイであろうよ。
異世界へ転送された主人公は必ずと言っていいほど不思議な異能、もしくはその世界で最強に近い力を手に入れて、必ずと言っていいほど可愛いヒロインと出会い、その可愛さにも気づかずチート級の能力でドンパチ爽快な生活を送っている。
でも現実を見てみろよ。
この世の中にはリア充どもが闊歩し、右を見ても左を見ても前を見ても後ろを見ても「愛」「恋」「友情」「希望」。。。。。。。。誰もが主人公に憧れ、「自分の人生、オレが主人公!」なんて心のどこかで思って毎日くだらない人生を送っている人が溢れている。
と言っても俺もその中のひとりであって毎日仕事に追われ、家に帰ってはネットでアニメやら漫画やらを貪る毎日。
これが現実である。。。
そして再び最初に言わせてもらおう。
俺はそこらのリア充とは違う。
10年ほど前まではちゃんとした人生を送っていた。ような気がする。。。。
高校は人並みに恋愛をしたし、24歳で結婚し2児の父親として朝も夜も家族のために働いていた。
結婚当初は幸せな新婚生活を送っていた俺ではあるが、幸せなんて慣れてしまえば幸せと感じることもできなくなるのであろう。
妊娠中に嫁はマタニティブルーを発症、子供が生まれ育児ノイローゼに。。。。
元々ストレスを抱えるタイプで病弱な嫁は片っ端からありとあらゆる病気を発症していった。
そして極めつけがうつ病である。
その為、仕事を休む量も多くなり会社からは嫌悪な目で見られるようになり家に帰れば嫁をなだめる毎日。
昼間の仕事は週休1日、夜の仕事は週3勤務。
寝れるのは2日に1回。1週間換算で睡眠は24時間ほど。
休みの日は育児で疲れている嫁に変わって掃除洗濯、昼から子供達の相手。
どこの売れっ子芸能人だよ!と思う毎日。
それでも生活は一向に楽にはならず。
そんな生活が6年ほど続いたある日、過労で倒れた。笑える。
嫁に深夜の仕事を止められたが昼の仕事だけじゃ食べていけるわけもなかったので早々に深夜バイト再開。
それでも、嫁や子供たちが笑っている家庭があれば俺は満足していた。
でも現実の世界というものは厳しいもので、32歳で嫁の浮気が発覚。
家ではジャージ姿で部屋から出て来ず育児放棄。もちろん会話などもなく、休みになればギャルのような格好で口笛を吹きながら出掛ける。
家族で夕食を囲むこともなくなり、俺の晩飯は子供たちのおやつの残りがテーブルに置かれていた。
心身共に疲労していた俺は離婚を決意。
嫁は真っ向から反対した。
理由なんて簡単だ。浮気の証拠がない。
嫁にとっては生活は俺の給料で安泰。休みの日は彼氏とデート。別れる理由がない。
今説明したの状態なのでもちろん浮気調査なんて出来る暇もなく、探偵なんて雇う金もない。
まだ小さい子供たちを連れて浮気調査なんて出来る訳もない。
子供たちは俺や嫁が大好きだった。
2年間、出来るだけの証拠を集めたが決定的な証拠は集まらず生活が困窮。
仕方なく嫁の要求を全て飲む形で離婚が成立した。
子供たちの親権を剥奪。養育費として毎月多額の金が嫁に流れた。
そのせいで仕事を変わることすら出来ず安月給、少休日で働く毎日は変わらない。
唯一の楽しみは週末に子供に会えると言う事だけ。
そんな俺にも離婚して1年で彼女と言える存在が出来た。
離婚してから毎晩、カップラーメン生活をしていたと言うか離婚する前からカップ麺生活をしていた俺にとって彼女は天使のような存在で、毎日美味しいそうなご飯を作って帰りを待っていてくれている。
幸せが戻ってきたかのように思った1年後、彼女は唐突に別れを切り出した。
「子供と私とどっちが大事なの?」
いかにもテンプレな発言に一瞬戸惑ったが俺は即答した
「子供」
もちろん彼女も大事だ。将来は再婚して子供たちとも仲良くしていってほしいと願っていた。
でもそれは男のロマンでしかないようだ。
その日彼女と別れた。
どうしても諦めきれず次の日に彼女の家を訪れると既に違う男がいた。笑える。
結局、浮気して別れる口実で子供を出してきただけだった。
回想終わり。。。。。
現在の俺。
年齢:36歳
職業:ブラック企業のサラリーマン。
特技:多少絵が上手い。
趣味:アニメ、漫画(小説は眠たくなるので読めない)
離婚歴有り。一人暮らし。生活困窮。 以上
アニメを見るたびに思うことがある。
「異世界転生かぁ。してみたいけど。。。。。現実ある訳がない。しかも36歳のおっさんが。。。」