表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

176/182

番外編 レオンハルト・ノイマン 2

 ペルレは金の髪を結い上げ、青いドレスを身に纏っており、その美しさは他の追随を許さぬほど。

 加えて生粋の王族の気品まであるのだから、人目を引くのも仕方がない。

 手を引いて舞踏会会場入りすると、レオンハルトに鋭い視線が突き刺さるのがわかった。


「ペルレ様は随分と人気の御様子ですね」

「王女で公爵ですので、仕方ありませんわ」


 つまらなそうに言うところを見ると、どうやら注目されるのには慣れているらしい。

 まあ、いちいち気にしていては身が持たないのだろう。


「レオンハルトさんこそ……その。見られていますわ」

「ああ、そうですね。麗しい女性をエスコートしているので、嫉妬でしょうか」


 ペルレは容姿も優れているが、その上血筋も申し分ない。

 お近づきになりたい貴族男性は多いだろうし、彼らからすればレオンハルトは邪魔者でしかないだろう。


 そういう男性達からペルレを守る約束で露払いを引き受けたのだから、きちんと役割をまっとうできているとも言える。



「ただ、身分を使われると私では太刀打ちできませんね」


 男性連れだからと怯んでくれればいいが、実際に声をかけられてしまえば田舎の子爵代理でしかないレオンハルトの力は弱い。


 まさか剣をちらつかせるわけにもいかないので、引かざるを得ないだろう。

 その時には申し訳ないと謝ろうとすると、ペルレの真珠(パール)の瞳と目が合った。


「身分でしたら、わたくしが持っています。わたくしがレオンハルトさんと離れたくないのだと言えば、それを無視はできませんわ」


 それはそうだ。

 ペルレよりも身分が上の人間など、国中でも数えるほどしかいない。


「ですが、それではあらぬ誤解を受けかねません。ペルレ様の出会いを邪魔することにもなりますし、さすがに言い過ぎだと思いますよ」


 レオンハルトが引き受けたのは、いい人が現れるまでの露払いだ。

 出会いのすべてを潰すのが目的ではない。

 心配になってそう伝えたのに、何故かペルレの表情は冴えない。


「……結構頑張ったと思うのですが、やはり駄目ですか。更なる直球で挑むほかありませんわね」

 何やらぶつぶつ呟いているが、その様子も麗しいのだから凄いものだ。



 暫しお酒を飲みながら話をしていると、ユリアとマルセルがやってきた。

 ペルレの挨拶は非の打ち所がない優雅なもので、さすがのユリアも満足そうにうなずく。


「話は聞いているわ。さすがはあの父親の娘、美人ねえ。それに、初対面で私と目を見て話せる御令嬢はそうそういないわ」

「母さん、ペルレ様に失礼だろう」


 ユリアが言う『あの父親』は国王のことだし、王女に対してあまりにも不躾な言葉だ。

 ペルレは即座に不敬だと処罰を求めるような人ではないだろうが、それでもどうかと思う。

 だが、レオンハルトの心配をよそに、ペルレは何故か嬉しそうに頬を染めていた。


「――わたくし、倒れませんでしたわ」

「そうね。なかなかのものよ。平気なの?」


「少し脳内を光が駆け巡り殴打されましたが、耐えました。――女は根性ですわ!」

 何故か楽しそうに根性論を語り出したペルレに、ユリアも笑みを浮かべている。



「いい子じゃない、気に入ったわ。レオンハルトはなかなかのアレだけれど、自力で打ち倒していらっしゃい」

「はい! 必ずや!」


「顔色が悪いわよ。とりあえず飲み物を飲んだ方がいいわ」

「はい! 行ってまいります!」


 もはや軍人と司令官のような状態だが、一体何の話をしているのだろう。

 元気に返事をしたペルレは近くのテーブルに飲み物を取りに行っている。

 若干ふらついている気もするが、少し酔っているのかもしれない。


「レオンハルト、私は聖なる魔力の……いえ、諸事情で早めに帰るわ」

「よくわからないが、それなら馬車まで送ろうか?」

「平気よ。それよりもあの子をひとりにすると、ああなるわよ」


 ユリアが指さした先では、ペルレが数人の男性に囲まれるようにして声をかけられている。

 王女に対して紳士の振る舞いとは思えないが、それだけ人気なのだろう。


「聖なる魔力の……いえ、結婚式の盛り上がりのせいで勢いづいた子もいるだろうし、そばで守ってあげなさい」

 ユリアはひらひらと手を振ると、マルセルと共に会場を後にした。



「ペルレ様、大丈夫ですか」

 男性に囲まれたペルレに声をかけると、一斉に彼らの視線がレオンハルトに向く。


「君はザクレス公爵をエスコートしていたね。確か、ノイマン子爵令息だったかな」

「この方は王都の華と呼ばれる尊い女性。田舎貴族が近付いていい方ではないぞ」


 ちらりと顔ぶれを確認すると、彼らは皆レオンハルトよりも身分が高い。

 あまり刺激して社交に影響するのも面倒だし、適当にあしらってペルレを開放したいところだ。

 無言のレオンハルトに気を良くしたのか、男性の一人が笑顔でペルレの手をすくい取る。


「麗しき王都の華、ペルレ様。どうぞ、私にあなたと踊る栄誉を――おおお!?」

 恭しくそう言って細い指に唇を落とす……寸前に、払い除ける。


 同時に手を引いてペルレを背に庇うと、男性が手を押さえながら呻いていた。

 一応加減はしたので骨折はしていないだろうから、まあ気にすることもない。


「お、おまえ、どういうつもりだ!」

「私はペルレ様の露払いを任されておりますので、害ある者を近付けるわけにはまいりません」





※本日、この後お知らせがあります!

活動報告をご覧くださいませ!



「未プレイ」リクエスト番外編、投稿中です!

内容に関しては、活動報告をどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おう、その田舎貴族尊い王太子様の妃の兄で近衛騎士より強いんだけど命惜しくないんか? (なお母親は国王にタメ口ききそうな上に夫婦揃って危険度が高いという) さて最後の行動は無意識に独占欲が出…
[一言] 人間兵器が無自覚に暴走した
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ