表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

枕の上に 希望の下に(12)

飲み干されるだけのコーヒー

布団を叩く音がする

日曜の午後二時

雲がちらほらと出てきたから

そろそろ取り込もうと

家々で鳴る

鳴る鳴る

傍ら

子らの声が響く

響く響く

さながら

街から出て行けと

言われているみたいな

生活に密着した鼓笛隊



冷たい風の指が

首の周りを一周なぞって

鼻の頭に触れたかと思えば

それは雨粒で

降って来る前に聞こえた音は

窓の施錠音に変わり

部屋の中で

ゲームをやりたいとせがむ

子らの地団駄が

容易に想像できた

出来たが

直ぐに止めた

下ろし立ての上着が

濡れているからか

帽子の上に

雲があるという

当たり前が面白いからか

何処かの家から

ピアノが聞こえたからか

分からないが

いつもの場所を曲がり

家路についた



カーテンの隙間なんていう

ピンポイントな時にしか

気にすることは無い

そんな場所から光が漏れて

冷蔵庫にラインができている

さっきの雨粒は

何だったかなんて

気にはしない

器用な生き物じゃないから

一つ気づいたら

一つは何処かに置いて行く

失敗して理解して

忘れて思い出して

二つ持てぬか試したり

三つ抱えて徒労に耽る

「全部で一つにしたら良い」

祖父の言葉を思い出して

その大きさに気づいた

小さな物しか持っていなかった

小さな物を持って

「一つ持っている」と呟いた

それをちっぽけと言うのだろう



ハンガーに上着を掛け

蛇口をひねれば水が出る

コーヒーメーカーに移して

スイッチを入れた

沸騰する

音が沸騰する

水が沸騰する

ゆっくりと落ちる

黒い液体は

完全な黒では無い

照りがありながら

存在を主張する

正しさなんて要らない

カーテンを開ければ

日の光が

部屋の中へと

我関せずに入ってくる

次から次へと入ってくる



その傲慢な温かさを

有り難いと思うことは

正しいことにしているだけで

正しさなんて無い

現象としてあるものを

受け取っているだけだ

受け取り方も自由で

そこから先も自由である

わざわざ言わずとも

全てのことは

これで終わる話

出来上がったコーヒーを飲みながら

黒い液体が作り出す

光の屈折を見る

飲み干されるだけのコーヒーは

煩い熱を放っているが

結局は

飲み干されるだけのコーヒーなのだ











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ