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境界戦記  作者: k_i
第6章 決戦
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進軍

 木馬は、各隊の部隊長に一頭ずつ分配するという案も出たが、対黒い鳥用の兵器として前面に出した方がいいのではという意見が多く、これが採用された。前回の戦いであの鳥が出てくるまでは、負けてはいなかった。あれ以外の、脅威となる敵が出てくるまでは木馬は温存し、これまで通りの白兵戦で戦う。


 今回は隊を細かく分けず、大きく前軍・中軍・後軍と分け、あまり距離を離さずに基本的には一丸となって進軍する。前軍は鳥以外の敵を通常通りに排除していく。木馬は中軍に置き、敵からも守れるようにしておいて、鳥が出たら木馬を前に出す。後軍は、敵が後方に回り込んだりするのに注意し、後半戦では兵站任務も受け持つ。

 

 今回はミシンのもとからミジーソ、ミルメコレヨンも将として選ばれた。

 前軍の将をミジーソが、その副将をミルメコレヨンが務める。ミルメコレヨンは最初、前に出されることを渋ったのだが、副将の位を与えられると案外すんなりと承諾した。ミルメコレヨンを前に置くのは、部下と共に敵を察知するその能力を生かすためだ。

 中軍の将でありこの位置にあって全軍の総大将ともなるのは勿論、ヒュリカだ。副将にミシンが選ばれた。


「そばにいてくれるか?」

 ヒュリカが真っ直ぐにミシンを見て言う。

 温泉地に発つ前に、尖塔でも聞いた台詞。今はなんだかその時よりもっと自然に受け入れられそうな気がした。ミシンにはヒュリカが本当に自分を頼りにしてくれているのがわかった。


 後軍はイリュネーが大将を務め、イリュオンがその副将となった。

 今回は、全ての砦を奪還する予定でいくので、進むほど輸送も頻繁になる。

 砦を奪還していく度に、物資の輸送も必要になる。彼女らは後半戦は兵站任務が主になるだろう。



 *



 二日をかけて、三十メルーグ程を進んだ。

 前回の戦いで敗戦の憂き目を見たあの鳥の発生した付近に来た。

 両脇の森は鬱蒼として、ひっそりとしている。

 今は変わった様子もなく、ミルメコレヨンも反応を示さない。


 ミシンはミルメコレヨンの隣に馬を並べ、聞いてみた。

「全く、何かがいるって気配もないな」

 後軍から、イリュネーが来る。

「どう?」

 中軍との定期連絡に、自ら来たらしい。


 イリュネーにも、皆にも、嫌な思い出のあるところだ。やはり気にかけているのだろう。

 しかしイリュネーは今は平常な様子で、確かにミシンらにしても、士気の高さもあるのかもしれないが、嫌な気配はみじんもしない。全く普通の森といったふぜいであった。


 二つの砦の付近にまでやってきた。

 ここまで、敵が戻っていることはなかった。

 この先はまた数年来、未踏となっていた土地になる。

 次の砦までの距離は三十メルーグ。

 はっきりとはわからないが、ミルメコレヨンはこの先にはおそらく敵がまたいる、と面倒くさそうに言った。


 注意深く斥候を放ったが、数メルーグの内には敵部隊が布陣している様子はないという。森に潜んでいる可能性は、ある。となればまたあの鳥がいることも十分、考えられる。


 東側の砦は前回、おかしな状態になっていたが、今はそのようなこともなく、ただ周囲に死体が散らばっているだけという。

 

 二砦を拠点とすべく、兵達は作業を進めることにした。

 兵達は、黙々と死体を片付けた。が、以前にここを訪れた時のように泣きごとを言う者はなく、それは木馬の存在が皆の士気を支えているからに他ならなかった。

「こうしてこの二砦を無事に確保できたのだから、前回の戦の成果は十分にあったわけだ。あの、鳥さえ出てこなかったら……」

 二砦は整備され、補給地点および宿舎として利用することとした。

 

 ここからは、残る四つの砦を取り戻す戦いになる。


「以前は、我々境界の民が敵を退け、統治を行っていたのだ。それを元に戻すだけ。何を恐れる必要がある!」

 ヒュリカは兵らを鼓舞した。

 士気は十分に高かった。

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