木馬を探しに
翌日、ヒュリカはまたミシンを、今度は城内の一室へと呼んだ。
木馬を探してほしいと彼女は告げた。ミシンも当然そうすることになるだろうと、予想はしていたことだ。
「ごめんなさい。私自身は今、近臣達を説得して探索に向かうことはできない」
「それは……今のヒュリカの身では、仕方ないだろう。大事な身だからな」
「やっぱり、いずれにせよこの件についてはあなたが行くのがいちばんいいと思う。レチエ……と言ったか。彼女と関わっていることなのなら」
「そう……だな。まあ。わかった。もちろん、行くつもりでいたしな。けど、木馬を探しに行くことを、近臣達は許可するのかな?」
「難しいと思う。都が絡んでいることには、あの人達は今は過敏になりすぎる。そのことは申し訳ないとは思うが、境界の面倒なことと思い、流しておいてほしい。そこで、ちゃんと別のいい理由は考えておいた」
そう言って、ヒュリカは部屋の中にある人物を招き入れた。ミシンにとって、久しぶりの対面だった。
「イリュネー……も、行くのか?」
席に着いたイリュネーはなんのことだという表情をしている。腕に巻いている包帯は彼女の腕が失われたことを生々しく語っているが、表情は明るく、元気を取り戻しているように思えた。
「いいえ」
ヒュリカが答えた。
「彼女は探索に行くわけじゃないわ。彼女以下、戦で傷を負った者達は、治療のためここから西の山間へ湯治に行くことになる」
「ああ……」
ミシンは頷いた。
イリュネーもそのことは既に聞いている。
「ミシンはその一行の護衛を務めて共に西へ赴く。その際に、その方面で探索を行ってほしい。期間は十分にある。あっちの方へ何頭か飛んでいったのも、私は見たし……ミシン?」
「ああ……ああ」
ミシンはちらりとイリュネーに目を遣った。イリュネーはすぐに目を逸らして、「ヒュリカと行ければよかったのにな、温泉」
と小声で言った。
「温泉があるの?」
「湯治に行くって言ったではないか。まあヒュリカは今や総大将だから、仕方ないが……あなたも副将に推されてた、ってのも聞いたけどごく一部の話ですぐに消えたみたいだしな」
「……」
二人が何かを言い合うのをヒュリカは、(いつの間に仲良くなったんだろうと)小首を傾げて見ているばかりだった。




