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境界戦記  作者: k_i
第3章 二つの砦
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西の砦の戦い

 バッシガの残った西の砦の内部では、一つ妙なことが起こっていた。


 砦内からもあらかた死体が運び出された頃、兵がバッシガの元へ駆けつけてきた。

 もうてっきり生きている者はなく、敵は完全にここを退いたということのはずであったが、どうもそうでない一室があるらしい。

 バッシガはいぶかしく思いながらも、剣を手にすると砦内へ入った。


 そこは四階にある、がらんとした奥行のある一室だった。

 部屋のちょうど真ん中辺りに、坊さんが目を閉じて座っており、いちばん奥に三人の砦の守備兵と思われる兵が残っていて、三人は口を揃えて「助けてくれ!」と言っている。だが、どうもその三人は既に死んでいるように思われた。


 バッシガは部下らを下がらせておき、自らが前に出た。バッシガに付き添う二人の老兵二人が続いて左右に並んだ。


 すると、奥の三人が「助けてくれ!」と言いながら同時にこちらへ向かって歩み始めた。

 坊さんは座ったまま動かない。

 バッシガは身構えた。


 中央の坊さんを越した辺りだった。兵の胴体や腕がニュウーと伸びて、バッシガらの方に迫ってきた。

「助けてくれ!」

「躊躇うな!」

 バッシガは言うや伸びてくる腕を斬り落としたが、老兵の一人は武器を構える間にくびり殺されてしまった。

 バッシガは果敢に前に出て向かい合う一体を仕留め、駆け付けたミジーソが老兵のもう一人を締め上げようとする相手を胴体ごと屠った。残った一体もバッシガが討ち取った。


 バッシガはすぐ中央に座る坊さんに身構えたが、動かず、見れば既に亡骸だった。

 バッシガは剣を仕舞い、

「おそらく、先に斬った三人の兵の死体に乗り移っておったのだろう」

 と言った。


 バッシガが部下らと部屋を出たところへ別の兵が来て、全く同じように坊さんと「助けてくれ」と言う三人の死体がいる部屋が、まだ砦の上の階で幾つか見つかっていると言う。

 バッシガとミジーソは顔を見合わせたが、互いに「やれやれ」と言うと同じように全ての部屋を片付けてようやく、砦を取り戻したのであった。


 このことがあって、些か安堵を見せる兵もいたが、中には、こんな砦にはいたくないと泣き言を言ったり嘆く兵もあった。

 バッシガはそれこそ敵の思う壺じゃ。気を強く持て! と叱咤し、それをムチとすればミジーソがアメを以て兵らを励まして回るという図式が成り立ち、最終的に兵達の士気は引き留まった。


 また、砦内の敵を掃討したことで、奇妙に膨らんだり伸びたりしていた死体が元に戻っている、ということが起こっていた。

 それはミルメコレヨンが後に言うところの〝術者〟が倒れたことにより術が解けたからである。

 だがこの場には、なぜか元に戻らないままの死体もけっこうな数あった。

 それは術者の多くが、既にこの砦を去っているというのが事実であったが、バッシガらにはわかるすべもなかった。

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