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境界戦記  作者: k_i
第1章 ケトゥ卿の地
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ケトゥ卿の地

 雨が小雨になってくるにつれ、回廊の形も不鮮明になり薄れてくる。


 やがて、ミシンらはただ小雨の中を歩いていた。


 しばらくは景色として感じられるものもなかったが、少しずつ、木々や、岩かと思われるものの形が薄っすら、それから灯りと思しき光が一つ、二つと見え始めるのだった。


「どうやら、我々は無事、回廊を抜けたようですな。ミシン殿」

 ミジーソが呟くように口を開く。


「そうか……」

 ミシンは頷き、ミルメコレヨンもフム、といったふうに辺りを見回した。

 ここはもう外、か。だとすると、ぼんやりと明るく、夜ではないと思われた。


 小雨の中に、土地の植生が生い茂っているのが、影法師のように見えてくる。


 白く煙る遠くに、ごくかすかに町の影が見える。

 見えているのは、城塔か砦か高い建物だろう。その下に町明かりがある。距離具合からするに、どうやら今ミシンらがいるのは幾らかの山腹らしい。そう言えば、回廊の入り口もちょっとした山の頂きにあったのだ。回廊の出入り口は高いところに設置されているものなのだろう。


 緩いくだりを下りきったところに、小さな詰め所があった。小雨は、霧に変わりつつある。やはり景色は半ば、影絵のようだ。詰め所には数人の兵が駐屯していた。


「ようこそ。お待ちしておりました、騎士殿」

 兵らの代表者が歓迎の意を述べて、ミシンら一行を出迎えてくれた。


「――ケトゥ卿の地へ」


 間違いなくここが、卿の守る土地。さきほど山腹から見た城下の影が、ケトゥ卿の住まう城とその城下だろう。ミシンは、今、境界の土を踏んだのだ、との思いに駆られるのだった。


 城下までの道は整備が行き届いており、危険もなく、一刻半も歩けば町外れに行き着くという。兵の一人が、先導してくれることになった。

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