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残念美少女と呼ばれる妹 〜ほんわか兄妹〜  作者: RF
残念美少女と呼ばれる妹・番外編
71/73

一周忌 ~帰るべき場所~

 目覚めたら、いつの間にか朝になっていた。

 時計を見ると午前六時ちょうどだ。自分の体内時計の律義さに、思わず感嘆する。


 そうして、左側を見ると。


「…………ん…………」


 俺の肩に寄り添ったまま、妹が眠っていた。


 身を寄せながら兄妹二人で眠っているさまを、他の誰かが見たら、どう思うだろう。

 仲睦まじい兄妹と思うか、それとも────


 起こさないようにそっと左肩をずらし、眠り姫に今更ながら毛布を掛けた。

 俺の身体も少し冷えているが、風邪をひいたりはしていないと思う。


 昨日のうちに準備した荷物はリビングにおいてある。そろりそろりと部屋を出て階段を降りると、すでにおふくろは起きていた。


「あら、おはよう。今起こしに行こうかと思っていたんだけど」


「おはよう。もう社会人なんだし、ひとりで起きれるよ」


 おふくろが起こしに来なくてよかった。そんなことに安堵し、俺はいそいそと着替えを始めた。

 一応顔だけは洗って、意識をはっきりとさせることにする。


「朝ごはんは、どうするの?」


「いや、いいよ。新幹線の中でサンドウィッチでも食べるわ」


「そう……すみれは? 起こす?」


「……いや、いいよ。寝てるだろ、幸せそうに」


「…………将吾がいいならそれでいいけど」


「………………」


 親子の会話が、朝からなんでこんなに歯切れが悪くなるのだろう。

 苦笑いとともに荷物をまとめ、俺は再度時刻を確認した。


 六時二十分。駅まで徒歩で十五分。新幹線の時刻は七時五分だ。

 今出れば、途中コンビニでサンドウィッチくらいは買う余裕はあるだろう。


「よし。動かなきゃな」


 だが、家を出ようとする足取りが重く感じられて、立ち上がるときに思わず出てしまう『よっこいしょ』みたいに、無意識に気合を入れてしまった。


 ────自分で言うのもなんだが、オヤジくさいわ。

 そんなどうでもいい思考をしているうちに、誰かが階段を下りてくる音が響く。


「……あら、すみれ、おはよう。早いわね」


「おはようございまふ……」


 ぼんやりしたままでおふくろにおはようと挨拶を返し、そのまま妹が俺のほうを見てきたので、俺も挨拶する。


「よう、おはよう。ちょうど今出ようと思っていたところだ」


「……っっ!!」


 そうして視線が合ったとたんに、なぜか妹は目を見開き、音を立てるくらい急激に顔を赤くさせた。


「……どうした? 身体冷やして、風邪でもひいたか?」


「ち、ち、ちっ、ちが、違います、はい」


「……? 変なやつだな」


「うぅ……してる時はいいけど、した後に顔を合わせるとものすごく照れくさい……」


「??」


 朝から相変わらずというか、通常営業で意味不明だが……ま、いっか。こいつらしいといえなくもない。

 俺は考えるのをやめた。


 一方、おふくろは慌ててない妹を見て、不思議そうに尋ねてきた。


「すみれは、見送りに行かないの?」


「うん。また、すぐに会えるし」


「……はいはい」


 何やら二人だけ納得している。少し謎な部分もあるが────そうだな、帰って来ようと思えばいつでも帰ってこれるんだ。家族がいる、この家に。


 また、すぐに会える。

 そう思うと、少し重かった足取りが、驚くほど軽くなった気がした。


「よし。そろそろ……行くか」


 再度声にして、俺は荷物を持って玄関に移動し、靴を履いた。


「気をつけてね、将吾」


「風邪ひかないでねー」


 玄関先でそうおふくろと妹に声をかけられたために。


「おう。じゃあ、いってきます」


 ────つい反射的に、俺の口から出てしまった。


 なんとなくだけど、それを聞いておふくろも妹も微笑んだ気がする。


「……うん。いってらっしゃーい!」


 初めてC県に行くときとは違う、妹の明るい声。

 後ろ髪を引かれることはない。俺が帰ってくる家は、ここだけだから。


 ────またな、オヤジ。たたられないように、頑張ることにするよ。

エピローグ前に、少し補足をしました。

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