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残念美少女と呼ばれる妹 〜ほんわか兄妹〜  作者: RF
揺れ動く兄妹

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22/73

妹と海1

「うーみーはひろいーな、おおきーいなー♪」


 青い空、広い海。なんて海水浴日和なんだろうか。


 俺は約束通り、妹と海に来た。電車とバスを乗り継いで1時間半。これだけ時間をかけても、海に着いたとたんに移動の疲れなど吹っ飛んでしまう。


「うーん、気持ちいいねー!」


「おう。久しぶりの海だ。せっかく来たんだし、目一杯楽しむか」


 妹も浮かれているようだ。まあ、この浮かれっぷりでもまったく目立たない海のにぎわいである。


「楽しもう楽しもう。でも、人が多いねー」


「そりゃ、夏真っ盛りの海水浴場なんか、こんなもんだろ」


「それもそうか。じゃ、目一杯楽しむために、早いとこ着替えて来よっか」


「わかった。じゃ、あそこの青い看板の前で待ち合わせしよう」


「うん! それじゃ、着替えてくるね」


 妹は荷物を抱えて、自由に利用できる更衣室の方まで駆けていった。さて、俺もとっとと着替えてこよう。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 男の着替えなど早い。とりあえずサクッと着替え終えて、看板の前で妹を待つ。

 久しぶりの潮のにおいだ。辺り一面に広がるこのにおいが、俺たちがいる場所を非日常に変える。


 お、大胆な水着のお姉さんがいる。妹と違って、ガン見しても問題ない。なかなかどうして素晴らしい。これだけでも海に来た甲斐がある。


「……何を見てるの、兄貴……」


 後ろから声をかけられて振り向いたら、ジト目の妹がそこにいた。何やら怒りのオーラをまとっているような気がするのは気のせいですか、妹さん。


「いや、まあ……」


「……まったく。ほら、何か言うことはないの?」


 腰に両手を当てながら、妹がそう言ってくる。


「……ん?」


 何やら、まわりの視線がこちらに集まっている……気がする。いや、気のせいじゃないな。特に男の視線が。


「……ああ」


 そうか、普段から見ているから麻痺してる感はあるけど、よく考えたら、客観的に見てこいつは超絶のつく美少女だったんだ。そりゃ水着姿になりゃ注目くらい集めるよな…………………おい。


「……なんだその黒い水着は」


 健全な水着にしたんじゃなかったのか。いや確かにシンプルなビキニだけど。黒のビキニって高校一年生が着ていいのか。しかもレースのスケスケパレオってやたらエロくないか。


「シンプルなものを選んだつもりだけど?」


「色のチョイスがおかしい」


「店員さんが、『あなたは色白だから、この水着はとても映えますね』って言ってたから、この色にしたのに」


 店員惜しい。妹相手じゃなきゃグッジョブだったんだが。


「……まあ、前のよりマシか」


「マシってどういう意味よ」


「男の劣情をそそりすぎない、という意味でだ」


 やべえ、よけいなこと言ったわ。自分で言ってて顔が赤くなりそうだ。


「…………あ、あれは、兄貴専用だし」


 おっと、俺より妹のほうが真っ赤になってる。よかった、それを見て冷静になれたわ。…………だが、兄貴専用とはどういう意味なのか。トラウマふたたび。


 ……ま、いっか。俺は考えるのをやめた。


「……とにかく行こうか」


「あ、うん」


 妹がトテトテと後ろからついてくる。妹が歩くと、それに合わせて視線がついてくることに気味悪さを感じる。その気味悪さのせいで、ついつい早足になってしまう俺。


「ちょっと、歩くの早い。待ってよ兄貴」


 妹に後ろから左手を掴まれ、まわりの視線が俺にも向いてくる。俺は兄だぞ、兄だからな。誤解なきよう頼むぞ。


「お、おう。悪い」


「まったく……こんなに可愛い妹ほっといて先に行くなんて。海は逃げないよ?」


 いや、海のことなんてこれっぽっちも考えてなかったけどな。あと、自分で可愛いとか言うなよ、否定できないけど。


「……手を離してくれないか」


「却下します」


「俺はどこにも行かないぞ」


「どっか行っちゃいそうで、なんとなく……怖い」


 俺はまわりの男どもが投げかけてくる視線の方が怖いんですが、どうしよう。


「視線が集まるから、やめろ」


 もうストレートに言うしかない。


「別に、見せつけちゃえばいいんじゃない?」


「俺はここで命を落としたくはないぞ」


 後ろから刺されたりしたらイヤだからな。前から来られるならともかく、死角から来られたら何もできん。


「……なんで命を落とすの? 強盗でもくるの?」


「言い得て妙だ。もう少し自覚しろ、おまえは」


「?」


 こいつも普段から見られすぎてて、感覚が麻痺してるのかもしれん。危なっかしいにもほどがある。


「……とにかく、ヘンな奴から声かけられても、ホイホイついていくなよ」


 そう言ったら、少し間をおいて妹に腕をつねられた。痛い。


「痛いだろ。なにしやがる」


「……このすかぽんたん」


 妹を思う兄心から忠告したのに、なぜこいつは怒っているのか。怒りのオーラがレインボーになってるぞ。


「なんで怒ってるんだ」


「…………あのさ。わたしは誰と海に来てると思う?」


「……俺」


「うん。…………で、それなのに、なんで他の人にホイホイついていく理由があるのかな?」


「……意味が分からん」


「だーかーらー! 兄貴と遊ぶ予定なのに、なぜ他の人のところに行かなきゃならないの、って言ってるの! 兄貴のそばを離れるわけないでしょー!」


「…………そうか。じゃあ、好都合だな。今日はずっと俺のそばにいろ」


 少し考えれば……確かに、それならナンパ男を追い払う手間も省けるな。……ヘイトが俺へ向いてくるのはこの際仕方ない。こいつが危険な目に遭うより百倍マシだ。


「…………………………うん」


「いや、別に腕を組めとは言ってないぞ」


「わたしがしたいからするの。文句ある?」


「…………別に」


「ならいいじゃん」


 いや、おまえはいいのか。何かが当たってるぞ、しかもダイレクトに。……不意打ちにドキドキするのはセーフなんだよな、セーフ。


「……なんかいつもと違う。海のせいかな」


「……そうだな」


 潮のにおいに包まれた非日常。よし、これからみんな海のせいにしよう。こいつの顔が赤いのも、俺がドキドキするのも海のせいだ。海は寛大だから、きっと許してくれるだろ。


「じゃ、とりあえず……えーいっ!」


 海に入ると同時に、妹が水かけをしてきやがった。まわりが注目してきて、視線が痛い。


「ほらほらーっ!」


 バシャ、バシャ。


 しかし妹は、はちきれんばかりの笑顔という感じである。楽しそうだ。……まあ、この笑顔だけ見ていればいいか。


「……やられっぱなしと思うなよ。覚悟しろ、ほらっ!」


 第三者からの視線を遮断するかのように、俺も水しぶきをあげた。



ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



「……疲れた」


「おまえ、はしゃぎすぎもいいとこだぞ」


「はしゃぎたいときにはしゃがないなんて、ただ損してるだけだよ?」


「……いや、海を満喫してるならいいけど」


 砂の上で体育座りをして休む兄妹。暑いのは暑いが、心地よい暑さだ。


「……ところで兄貴、砂に埋まりたくない?」


「ご遠慮願いたい。あれ、ほんと重くて身動きとれないんだぞ」


「え、そうなの? 是非一度体験してみたい。兄貴、埋めて」


 あーあー、目が好奇心で輝いておるよ。仕方ない、埋めてやろう。


 ………………………………


「ねえねえ、こんなときくらいは巨乳気分味わいたいから、おっぱい盛って!」


「……はいはい」


 もう充分だろおまえは、とは思いつつも、言われたとおりに砂を盛って形を整える。


「ほら、これでどうだ」


「兄貴に胸さわられちゃった、いやん」


「砂のな。顔まで埋められたいか」


 さっきまで当ててたくせに、今更何を言うんだこいつ。


「じょーだんじょーだん。夢のおっぱいだー」


 つかの間の巨乳になった妹が喜びの声を上げた。虚しい。だいいちここまでの巨乳、品がないぞ。


「わー、でも本当に動けない! 新発見!」


 そりゃ結構砂かけたし。水に濡れた砂ってすごく重いから、当然といえば当然である。


「埋められる恐怖がわかったか」


「えー、楽しいんだけど?」


「そうかそうか、じゃあ恐怖を味わえ」


 はしゃぐ妹が埋まってるのを尻目に、俺はスタスタと歩き出した。


「……え? ちょっと、兄貴? ねえ、どこ行くの? ねえ、ねえってば、ちょっと」


 妹が何か言ってるが気にしない。俺は、妹の視界から消えるふりをした。身動きとれない状態で知り合いに去られるのって、すごく怖いんだよな。


 しばらくさとられないところから見守り、その後、妹のところへ戻る。放置プレイ時間にして、およそ五分。


「……ねえ、本当にどこ行ったの……おにいちゃぁぁぁん……」


 妹が心細そうな声で何か言っているようである。あ、マジで涙目だ。やりすぎたか。


「悪い、冗談だ」


 姿を現してすぐに、妹の上にかかってる砂を払って、身動きがとれるようにすると。


 ボスッ。


 妹に砂をかけられた。


「……………………こんの、クソ兄貴!」


「……埋まってるの、楽しいんじゃなかったのか」


「楽しい理由が見えなくなって、楽しいわけないでしょー!」


「?」


「……本当に、心細くて、怖かったんだからね……三十分も放置するなんて……ひどい……」


 いや、五分だぞ。……あ、やべえガチ泣きしそう。

 慌てて俺は妹の頭を撫でた。


「冗談が過ぎた。すまん」


 思ったより恐怖を植え付けたらしい。大事にしなかった。兄として反省。


「…………ん。じゃ、焼きそば奢って」


「ブルーハワイのかき氷もつけてやろう」


「ほんと? やったー! なら許す」


 食べ物であやす、古典的だが効果的でもある。あっというまに妹が落ち着いた。今泣いたカラスが何とやら。


 ──ま、機嫌直ったなら、いっか。


「ごめんな。……よし、じゃあ、キリもいい時間だし、焼きそば食いに行くか」


「うん。……あ、待って。その前に」


「どうかしたのか?」


「水着の中まで砂だらけになったから洗ってくる。……もー、ツルツルなのにジョリジョリするよー」


 俺は見事なまでに吹いた。……不意打ちにドキドキするのはセーフなんだよな、セーフ。これもみんな海のせいだ。


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