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70億の異世界来訪者  作者: Slime
ルスラン・アシモフ 1
9/18

9「狂戦士の集落」

諦めない。生き抜くんだ。『アイツ』を殺すために。


『やってやる』

そう決意するのは簡単、けどやはり気持ちだけでは状況は何も変わらないし起こせない。

すぐに行動することそれが大事だ。


日本の言葉にも思い立ったが吉日なんてのがあるぐらいだしな。


俺は少年の一撃を躱すため一歩後退しようとしたのだが、

少し弾力のある変な段差のせいでバランスを崩しずっこけてしまった。


「っだ!?」


...さっきまでかっこつけてたのにこれはダサすぎる。

でもまあそのおかげで剣を躱せたしよしとするか。死ぬよりはましだろう。


「グオオオオオオ!!」


すると後ろから獣のようなうめき声が木霊する。めっちゃうるさい。

見るとそこには二足で立っていた(・・)見たことのない大きな熊が真っ二つになっていた。



そうか少年はこの熊みたいなのを狙っていたのか。

で、その間に俺が転送されたと...いや運悪すぎだろ俺。


熊の返り血をもろに浴びて茫然とする。

躱すタイミングがもう少し遅れたら...と考えると鳥肌が収まらない。



3mは余裕で超えているだろうその巨体。一本一本が刃物の如く鋭い爪。

丸太と同じぐらいぶっとい腕。娘に見せたら確実に泣き出しそうな凶暴そうな見た目。


見ただけでここは異世界そう認めざるを得なくなった。

こんな動物地球のどこ探してもいるわけがない。



だがそんなよりも度肝抜かれたのはそれを一撃で殺した少年だ。



普通熊に接近戦で挑むのは馬鹿でもためらう悪手だ。

何故なら一撃で仕留められる可能性が低いから。



熊は攻撃的なイメージが強いかもしれないが、防御面も素晴らしい。

人間とは違う強靭な筋肉、太く硬い骨。ただでかいだけの刃物を使うだけでは

熊を倒すには至らないだろう。だいたいが返り討ちにあうだけだ。



一撃で仕留めなければいけない理由だが、これは中途半端に怪我をさせでも

したらどんどん凶暴になるからだ。そうなると勝率はガクンと落ちる。

なので熊、接近戦、ダメゼッタイ。そもそも戦うこと自体おすすめしない。



おっと話が逸れたな。

要するに熊を一撃で殺れるこの子スゲーということだ。

この動物は熊とカテゴリーしていいのかよくわからんがな。


それにしてもこの子寒くないのか?

ロシアよりも寒いと感じるこんな気温にそんな毛皮の腰みのと羽織ものだけでよく凍傷一つもないな。


「...すまない危うく斬りかけた」

「いや、今こうして生きてるし気にすんな」


それまあ戦闘の最中に間に割り込んできたやつに攻撃を当てない方が無茶だしな。

仕方なくはないがまあ仕方ないな。



それよりも言語が通じていることに感謝したいくらいだ。

俺が不安だった『異世界の人言葉通じない』が杞憂に終わって本当によかった。

もしかしたらこのまま助けてもらえるかもしれない。


「そうか...ところでお前は何者だ?どうしてここがわかった?」



瞬間、少年の目は手持ちの大剣よりも鋭くなった。

何だよこの子。この口調誰かに追われでもしてるのか?

...やっぱり運悪いのかな俺。


「いや俺もよくわからなくてよ...」

「...とりあえず族長に報告したい。ついてきてくれ」

「ああ」


あ、これ信用されてないな。まあ無理もないか...。


そう言うと少年は事切れた熊と大剣を軽々持ち上げ案内してくれた。


剣をすぐ抜ける位置に持っているあたりやはり警戒されているな。

まあそりゃそうだよな。


とはいえ人のいる場所へ案内してもらえるのはラッキーだよな。






それから5分ぐらい歩いているとたくさんのテントが見えてきた。

丘の上からだから少し小さく見えるが活気にあふれているのが伝わる。


「見えてきたぞ。あれが俺たちの集落だ」


ていうかお前あれマジか。

こんなに雪が降ってるのにテントとか...あんなんでどうやって寒さを防ぐんだ?

でもテントに雪が乗っかってすぐに溶け出すあたり中はかなりあったかいのかもしれないが...。


いやそんな程度の寒さ対策をするくらいなら最初から皆にもっと厚着させろよと言いたいが


よく見ると外で子どもたちが剣の訓練をしている。中々にレベルが高い。

多分俺が全力でかかってもあの子たちには勝てないな。動きを追うので精一杯だし。

しかも使っている得物が本物の剣だ。何考えてんだこの子たちの保護者は。


そして狩りの帰りなのかさっきの少年が倒した熊の倍ぐらいはある猪を担いでいる大人もいる。しかも二頭。しかも女性がだ。


本当にどうなってんだ。ここは人間の皮を被った化け物の集落なのか?

俺今日こいつらの晩飯になっちゃうんじゃないか?


「ん?どうかしたか?」

「何でもない。皆化け物みたいな強さをしてるなと思っただけだ」

「そうか?あれぐらい普通だろ?ほら、さっさといくぞ」


お前マジか。






そして更に5分程歩いてようやく集落に着いた。


着くなり集落の人たちの視線が俺に向く。

...あんま注目されるのは好きじゃないがまあ仕方ないよな。

いきなり知らないやつが来たらそりゃ目も向けたくなるか。


「あ~心配するな。この者は別に俺たちに危害を加える奴じゃないぞ」

「...なんでそう思っているのに報告するんだ?」

「念のためだ。俺一人であれこれ決める権限はないからな」


怪しいと思うのが普通なのだがなんで敵意がないと言い切れるんだ?

いや全くないけどもね。ないとも。


そして一際大きく豪華なテントに連れていかれた。恐らくここが『族長』のテントなんだろう。


「族長!山に急に不審な男が現れました!しかし敵意はない様子、賞金稼ぎの可能性もほぼ0です!いかがしましょう!」



クールな見た目の黒髪少年は急に大声を張り上げだした。


...この子のキャラが全く読めない。



「ふむ...見たところ持ち物も何もないし、悪意も感じないし...

 しばらく村に滞在してもらえませんかな?聞きたいこともあるしうちで泊まっていくといいですぞ!」

「は、はぁ...じゃあありがたくそうさせてもらうよ」


なんだ?めっちゃすんなりおわるじゃないか。



てっきり俺殺されると思って身構えていたんだがな。

まさか宿まで貸してもらえるとは俺は本当にラッキーだ。


「狂戦士の集落はあなたを歓迎しますぞ!」



狂戦士。小さい頃に聞いた事があるな。


確か...神話に出てきてたような気がする。

軍神の加護を受けていて鬼みたいに強くて、

敵味方関係なく動くもの手当たり次第に攻撃する乱暴者の戦士。



こんな優しそうな人たちが...とは思ったが

それだとあの怪力にも納得がいくのだ。

まあ、あっちの世界の話なんてここではほとんど意味をなさないか。



その日は熊鍋をご馳走になってそのまま寝た。

くせは多少あったがかなりうまかった。

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