間話「現状」
・今日俺は死んだ。
視界が開けてくると俺は雲と隣り合っていた。
ここ天国なのか?そう思ったのも束の間で、どんどん雲は上に登っていく。
いや違う。俺が落ちているのだ。それもすごい勢いで。
何が何だかよくわからない。
地獄みたいな絶望感が風と共に頬を伝う。
あの人魂ふざけるなよ...俺はまだ生き...
地面とぶつかり体が崩れ、途端に何もできなくなった。
今までの思い出とかそういうのを今日で全部失った。
・今日私は死んだ。
目を覚ますと私は山の頂上にいた。
ここはどこ?本当に異世界なの?家族は無事なの?
一度にたくさんの不安が襲いかかってきた。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。
ふと山頂からの景色が目に入る。うまく言い表せないけどとてもいい眺めだ。
自然とパニックになっていた心が落ち着く。
そうだ、とにかくまずは生き延びよう。まずはそこからだ。
突然何かが私の腹を貫いた。...動物の爪にしては大きすぎる。
振り返るとそこにはドラゴンがいた。
血と希望が体から抜けていく。何でここにドラゴンがいるの?
よくわからない内に意識を失い、私はピクリとも動けなくなった。
・今日僕は死にました。
本当なら今日僕は手術を受けるはずだったんだ。悪い病気を治すために。
早く治してまた友達と遊ぶはずだったんだ。
それが何だよ異世界?本当冗談じゃないよ。
病院も何もないところに飛ばされたおかげで病状が悪化して死んじゃったよ。
何で?僕が何したっていうのさ。
何であんな目に合わなければいけなかったの?
理不尽だよな.で..。
・今日あたしは死にました。
あの変な人魂が言うところの異世界に着くなり変な恰好した奴に
攫われて、本当なら奴隷として売り飛ばされるはずだったんだけど悪い人に
ボロボロになるまでこき使われるのが怖くなって舌を噛み切って自殺したの。
なんでこんなことになったんだろう。悪いことはしてないのになあ。
あたし以外の人たちはこんなことにはなっていてほしくないなあ。
...皆は頑張って元の世界に戻ってね。
今日私は死にました。 今日うち死んだ。 今日わい死んだ。
今日僕は死にました。 今日俺死んだわ。 今日おれっち死んだ。
今日儂は死んだ。 今日あたし死んじゃった。 今日ぼくちん死んじゃった。
今日自分死にました。 今日おら死んじまった。 今日わだす死んだ。
今日死んでしまいました。 今日拙者死す。 今日わー死んだわ。
今 日 私 た ち は 死 ん で し ま い ま し た 。
地球人異世界来訪から早二週間。
総死者合計数約20億人以上。既に7分の2の地球人が亡くなっている。
言うまでもなく異常な状況だということは容易に理解できるだろう。
残された7分の5は、亡くなってしまった7分の2のためにも
強く生き残らなければならない。
この状況を少しでも早く終わらせなければならない。
元の世界に帰らなければならない。
そうでもしないと理不尽に死んだ彼らは浮かばれないだろう。
人ってのは案外強い。
現段階でもう魔法を扱えるようになった者もいる。
あの狂戦士の力を譲り受けた者もいる。
これからも残された者たちは力強くこの世界生きることだろう。
...しかしワシは本当に申し訳ないことをしたもんだ。
「...あぁ、早く俺のところまで来ないかな~
どこまで強くなるだろうかな~楽しみだな~ガハハハ!」
まあそれはそれ、これはこれだな!ガハハ!