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70億の異世界来訪者  作者: Slime
ルスラン・アシモフ 1
13/18

13「宴」

すげえすげえすげえ!!異世界すげえよ!!



心の中で俺は今年30を迎えるおっさんとは思えない程興奮していた。



...てかこれ着地どうするんだ?

この高さなら普通の人じゃなくても骨折とかするんじゃないか?



「うおおおおおおあ!?」


...あ、普通にできたわ。

着地すると族長さんが満足げな表情でこちらを見ている。


「どうですかな?」

「すごいの一言しかでねえよ。本当ありがとうな」

「そうですか!喜んでもらえて幸いですな!」



「さて...いますよなスイアン!」

「おう、ここにいるぜ。おいルスラン!お待ちかねの武器だぞ!

 さあ喜べ中々の自信作だぜ!」



人ごみをかき分け、スイアンさんがなんかデカい包みを持って登場した。

まさかとは思うけど作ってくれた武器ってあれじゃないよな?

俺が頼んだの片手斧だもんな?

でもそれにしてはどう考えても俺の肩までの長さはあるんだが...。



「お、おうありがとう。けどスイアンさん俺が頼んだのって片手斧だぞ?」

「何言ってんだどう見ても片手斧だろうが。ほら」



スイアンさんはするすると包みをほどいていく。


なんだ包みが厚かったのかと思ったがそうではなかった。



やはり目に入るのは真ん中に俺の肩に新しく刻まれた剣の太陽のマークが

はいっている馬鹿みたいにでかい両刃の斧。


どう考えても片手で扱えるような代物じゃないだろう。



「いやいやこれ完全に両手用の斧じゃないか」

「まあまあとにかく持ってみろって。紋章が入ってるお前なら余裕で持てるからさ」



んなわけないだr...って、うわ本当だ。

これナイフより軽いんじゃないか?物凄く軽く感じるぞ。

確かにこれなら片手でも戦えるだろう。


...こんな馬鹿でかいものが片手斧なら

この人たちにとっての両手斧っていったいどれだけでかいんだろうか?


「...本当だとんでもなく軽い」

「実際には数十kgはあるが紋章の力ならこれでも軽々だろ?」

「すげえな...ありがとうスイアンさん」

「これぐらいどうってこたねえよ」


ちゃんと自分の体なのに自分の体じゃないみたいだな。

なんだかスーパーヒーローにでもなった気分だぜ。


「なあ族長さん。紋章付けるだけでこんなすごい力を得られるなら

 いちいち変身能力なんて使わなくてもいいじゃないか?

 そうすればあんたたちが嫌われる原因もなくなるんじゃないのか?」

「...それがピンチの状況になると否が応でも発動してしまうんですな」

「あんたみたいな実力があっても窮地に追い込まれるのか?」

「恥ずかしながら数えきれないぐらいにありますな...」


うつむきながら族長さんは答える。

マジかよ異世界ってやっぱとんでもないところなんだな。

さっきまで浮かれていた自分を心の中で叱る。


「おいおい、とりあえずこの場ではその辺にしとけ。な?」


スイアンさんが会話を終わらせにはいる。

確かにこの場での質問攻めは無粋だったかもしれない。


「そうだな。無理に聞こうとしてすまなかった」

「いえいえいいんですよ、気になるのも無理はありませんしな。

 終わったらゆっくり話しましょう」

「おう、わかった。ありがとう」


そして先程とは打って変って大声で族長は


「さて!新しく我々の仲間になったルスランくんを全力でお祝いしましょうぞ!」

「「「「「「待ってましたああああああ!!!」」」」」」


広場からは何度目かの大歓声が上がる。

ここの人たちは本当よく盛り上がるよな。

注目を浴びるのは苦手だがこういうテンション個人的には結構好きだ。




夜が訪れ、しばらくとせずに宴が始まった。

どんどん豪華な料理が持ち寄られ、さらに皆のテンションが上がる。

こんな騒がしいのに心が安らぐ。なんでだろうな。




...しかし異世界来訪2日目でこの状況って俺かなり恵まれているよな。

飯はあるし、宿はあるし、おまけにとんでもパワーと武器まで貰っちまって。


俺以外の人たちは今頃どうしてるんだろうか。

皆無事って可能性は...かなり低いだろうな。あんな生き物がいるんだもんな。

せめて知り合いだけでも無事でいてほしいな。


「おーい!ルスランさーん!」


考え込んでいたら俺を呼ぶ声が聞こえてきた。


ソルドシルド兄弟と...知らない子だなあいつらのお友達かな?

他にも3人の子どもたちと一緒にこちらへやって来る。


「初めましてルスランさん!そこの兄弟の友達のルランタですよろしく!」

「おう、よろしくな」


シルドみたいに腕白そうな雰囲気の赤髪ショートの女の子だ。

頬にマークがついている。得物は...多分腰にあるナイフだろうな。

ずいぶんとまあ年季が入っているのが鞘から伝わってくる。

あのバカ(シルド)とは違って大切に使ってきたのだろう。


「同じくミーマです。よろしくお願いします」

「うん、よろしく」


おおなんだなんだ。真面目そうな女の子じゃないか。

雪のような銀のおさげ髪。手の甲にマークこそあるが、

この子は全然狂戦士という感じがしないな。


「さあさあ!紋章も付けてもらったし早速戦おうぜ!」

「こっちは腹減ってんだよ。というかもう夜だしまた明日な」

「ちぇー」

「シルドって本当戦闘馬鹿ね...ってなんでソルドも残念そうな顔してんのよ。

 ...あーシルドだけじゃなくて兄弟揃っての戦闘馬鹿だったわね」

「うるせえよ!」

「べ、別に俺は何も言ってないだろ!」

「「「「ははははは!」」」」」




こんな感じで雑談と上手い飯と集落の人たちの余興が数時間程続いて、

俺の歓迎会という名目の宴はお開きとなった。






片付けも終わり、族長の家に戻ることにした。

あの兄弟は騒ぎ疲れたのかもうとっくの昔に寝ている。


テントに入るなり族長さんが酒を飲んでいるのが目に入った。


「ああ、ラスカー君。ご一緒にどうですかな?」

「...俺は結構強いぞ?」

「ははは。飲み比べますかな?」

「望むところだ」




「...ところでソルドもシルドもここ最近あなたといて

 とても楽しそうで楽しそうで。本当にありがとう。二人のあんな笑顔見たことないですぞ」

「おいおい、ありがとうはこっちのセリフだぜ。

 あんたとあの兄弟のおかげでこうして集落にいれてるんだからよ。

 それに俺もあの二人はかなり世話になってるしな」

「よそ者でここまでのいい人はあなたが初めてですよ。本当に」



「いやいや、今までのやつらの中にいい奴なんてたくさんいるだろ?

 変なお世辞はやめてくれよ。何も出ないから」



「...今までのよそ者はどいつもこいつも紋章をつけろと集落を襲いに来たり

 賞金稼ぎのために我らの仲間を殺すような輩ばかりでしてな。

 もう何度拠点を移したことやら...。


 だからよそ者は大嫌いなんですぞ。ですがあなたは違ったのです。

 そんな邪な心なんて持ってなかった。だから宿も貸し紋章も快く与えたのですな」


...族長さんがよそ者嫌いだった理由はそういうことか。

まあそれならよそ者嫌いにも納得がいく。


というかそれ俺がいい人というよりか今までの奴らがヤバいやつだったってことだろ?



「でもなんで俺が今までのやつらと同じじゃないってわかったんだ?

 まさかそれも紋章の力か?」

「そこまで紋章は万能ではありませんよ」



いや、今までのだけでも充分万能だけどな。

それにしても異世界の住人は心まで読めるのか。

知れば知る程異世界はお話の中の世界みたいに感じるな。



「これは私の生まれつきの体質でしてねどんな嘘でも見抜けるのですよ。ソルドもこの力を持っておりますぞ」

「何だよそれ聞いたことねえよ」

「まあこの世界では私以外にもそういった特別な力を持って生まれてくるものもいるのですよ。かなり稀ではありますがね。」

「へーそうなのか」



「ところでルスラン君はこの集落にどのくらい滞在する予定なんですかな?」

「あ、やっぱここにいるの迷惑だったか?」


「いえいえそんな。そういうわけではなくですな。

 むしろずっとここで暮らしてくれてもいいのですが、優しいあなたの事だ

 近い内にばらばらになった家族を助けに行くのでしょう?」


「...まあな。倒したい奴もいるしな。この集落である程度力を付けたら出ていくよ」


「そうですか...。寂しいですが止めはしませんぞ」

「そう言ってくれると助かるぜ」

「頑張って下され。応援しておりますからな!」

「...ありがとうな」


その日は朝日が昇るまで族長さんと飲み続けた。

久しぶりに飲み過ぎたせいで起きるのが遅くなって

シルドに怒られてしまった。

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