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70億の異世界来訪者  作者: Slime
ルスラン・アシモフ 1
10/18

10「嫌われ者の」

「んふあぁぁぁ...」



暖かいテントの中、布団に包まれて朝を迎える。

軍にいた頃よりもいくらか快眠だった。

けどついつい早起きになっちゃうな。



「起きたかルスランさん、おはよう」

「ああ、おはよう」



剣の訓練でもしてたのかソルドは汗だくだった。ちょっと臭う。

せっかくいい顔なのにあれじゃ台無しだな。



ちなみにこのソルドは昨日の熊殺しの少年だ。

族長さんの孫で14歳らしい。

双子の弟がいてその子はシルドという。昨日飯をご馳走になった時会った。

クールなシルドと違って無邪気なお子様といった感じだったのだが...今はいないな。



「いい寝心地だったぜ。ところでシルドは一緒じゃないのか?」

「あいつならさっきの鍛錬で武器を壊したから、鍛冶屋に修理してもらいに行ってるぞ」

「そうか」

「そういえばあんたって昨日軍人って言ってただろ?ちょっと手合わせしてくれ」



彼が俺を軍人と知っているのは

昨日の夜ご飯の時、俺がこの世界に来た経緯を全部説明したからだ。

普通信じてもらえるような内容ではなかったが、なぜか嘘はついてないと

だけ言われた。...なんでわかるんだろうな?いやありがたいんだけどもな?



「いやいや、集落の人たちに比べたら全然強くないぞ俺」

「でも昨日俺の剣を躱しただろ?頼むよ」

「ありゃ偶然だ。今やったらボコボコにされる未来しか見えない」

「なんだつまんないな」



この世界の平均戦闘力は冗談抜きで高そうだ。

できればまだ戦闘とかは練習でも避けたい。あくまで『まだ』だけどな。

いつかは『アイツ』と戦うことになるかもしれないし力は付けておきたい。    

だから...



「...だったら俺に戦い方を教えてくれないか?

 そうすればその内いい手合わせ相手になれると思うぞ」



そう訓練をするのだ。

いい大人が子どもから教わるってのはおかしな話だがこの際手段は選んでられない。



俺はこの世界を全く知らないいうなれば異世界一年生だ。

昨日の熊みたいな化け物ぐらいは速攻で自分で対処できるようにならないと

『アイツ』には到底勝てないだろう。もっと早く強くならないといけない。



「言ったな?よし、早速訓練開始だ!」



朝ごはんも食う暇もなく訓練が始まった。

後から聞いたがその日は昨日の熊『アムベラー』の肉の残りで

から揚げが出される予定だったそうだ。



朝からから揚げってのはどうかとは思ったが

正直結構食ってみたかった。



「じゃあ最初は俺に追いついてみろ。まずはそこからだな」

「オーケー。さっさと終わらせてやるよ」



そう言うとシルドは凄い勢いで森の方へ駆け出した。



悪いが体力には自信があるんだよ。走り込みなら軍で飽きる程やった。

とっとと追いついて終わらせてやる...と思ってた時期が俺にもあったさ。


なんだよあいつ速すぎだろ!全然追いつけねえよ!

スピードも落ちないどころか上がっていくし、

それでいて息は全然上がらねえし!



「おいおい、さっさと終わらせるんじゃなかったのか?」

「くそ...まだまだ、大人なめんなよ!!」



それから約50分経過。



「...お前いくらなんでも遅すぎだぞ?」



振り向くとソルドがいた。嘘だろさっきまでかなり向こうにいたのに...。

おいおい、この世界は化け物しかいないのか!?

いや能力は高そうとは思っていたがまさかここまでとは思わなかった。



「...遅すぎですぞ?」


ソルドの後ろから急に族長が現れた。うお、びっくりした。

よく見えなかったが族長が転ばせたのだろうかソルドの顔はもう既に雪に突っ込んでいた。



「んんあ!?冷た!?」

「...ったく。どうも孫が失礼しました」

「いや、俺が稽古をつけてもらうよう頼んだわけだし...」

「いえ、このままではいつまで経っても追いつけませんぞ!」

「...は?だったらあんたの孫はなんでそんな速いんだ?」

「孫というか集落の皆全員の体に刻まれている紋章の効果ですな。

 身体能力を著しく上げるほか、変身効果なんかもありますぞ」



ただの民族風ペイントだと思ってスルーしたが

これそんな効果があったのか。本当、異世界って不思議。



「逆に紋章なしでそれだけ動けるなんてそっちの方が驚きですぞ!」

「「え、そうだったのか?」」



ソルドとピッタリはもった。こいつも知らなかったのかよ。



「じゃあ俺にもその紋章付けてくれないか?」

「それはいいのですが...ルスラン殿はこの世界のことをあまり知らないのですよな?」

「まあ昨日来たばかりだしな、全くと言っていいほどわからん」

「では我ら狂戦士の説明をした方がいいでしょう。ソルド、あれを」

「はい」



族長に言われるとソルドは、ふっと目を閉じ、集中しだした。

...ソルドからは何も感じなくなった。

目には見えるが存在感が薄くなったというか何というか...。



そしてしばらくもせず、

刺さるような存在感が辺り一帯を支配する。

その主はもちろんソルドだ。


「ヴウァァァアアア!!!」


若干筋肉がゴツくなり、目が血のように真っ赤になった。

歯までも獣に負けず劣らずの鋭く強靭そうなものに。

目の前に現れたそれはまさしく狂戦士だった。



上手く説明できないがソルドなのにソルドじゃない。

そんな感じがする。



「グルゥ...」

「...これが我らが狂戦士たる所以。

 ルスランくんは決して動いてはなりませんぞ」



そう喋りだした途端、ソルドは実の祖父である族長に向かって

大剣を振りかぶって襲いかかりだした。



昨日熊みたいなのを殺した時よりもすごい殺気だ。

子どもが出す気迫じゃない。獣みたいだ。



というか言われなくても恐怖で全く動けんよ。



しかしそれを腰に差してあった小刀で軽々受け止める族長。

何事もないように話を続ける。化けm...もういいや。



「これが紋章の変身能力...狂戦士形態ベルセルクフォームはその者の現段階の限界以上の力を引き出し、それと引き替えにしばらく自我を失い、動く生き物全てに敵意を抱くといったとんでも能力なのですよ」

「......」

「この能力が災いして我ら狂戦士は世界中から忌み嫌われております」

「......」



こっちの世界と同じだ。狂戦士は神話の中では嫌われ者だった。

けどそれならなんで...



「じゃあなんであんたたちはわざわざそんな紋章をつけてるんだ?」

「この紋章が遺伝したものということもありますがそれ以上にこのあたりのモンスターはとんでもなく強い。紋章なしでは集落の腕利き5人で挑んでも確実に1人は死ぬのです。集落にモンスターが寄らないのはこの紋章の強さのおかげ。これなしでは生活ができませんのですよ」



なるほどそういうことか...。

というか昨日の熊もモンスターだったのかもしれないな。

俺の知ってる熊にあんな凶暴なのはいない。



「わかった問題ない。その紋章付けてくれ」

「...本当にいいのですな?」

「ああ、頼むよ」

「...わかり申した。戻って準備をしてきますぞ」



族長は凶暴になっているソルドを手刀で気絶させ、そのまま担いで集落へ戻っていった。

なんかあいつ散々だな...。


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