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70億の異世界来訪者  作者: Slime
アズマ・ユウタ 1
1/18

1「70億人の異世界来訪」

リトライ。今度こそ面白い話にするため頑張りたいと思います。

「...うん、美味しい。やっぱりお肉は正義だな。久しぶりに木の実以外のものが食えたぞ」



少々お粗末に捌かれたついさっき捕まえた鳥っぽい生き物の丸焼きの味を

カサカサと風に揺れる草木の音が恐怖心を煽る薄暗い森の中でただ一人噛みしめながらポツリと呟く。



そんなこと言ってこの孤独感をごまかそうとしても

かえって虚しいだけなのはわかっている。わかっているけども

しゃべっていないと本当に恐怖に押しつぶされそうになってくるのだ。

まあ焼け石に水程度だけどそれでも...。



ふと気が付けば両目から涙がこぼれ落ち、肉にほんの少し塩っ気が増していた。

あ、意外といけるな。



泣いたっていいよね?いや、いいはずだ。

こんないかにも幽霊とかが出てきそうな森で三日も一人キャンプなんて

小5の俺にはいつメンタルブレイクしてもおかしくない状況だ。



実際昨日ゴブリンみたいな気持ち悪いのが俺に襲いかかってきたしな。

まあ、なんとか逃げ切れたんだけどもさ...。



とにかくここ数日は色々と目を疑いたくなるようなことがたくさん起きたんだ。

むしろ泣く程度で済む自分を褒めておくれ。あぁ、早く人に会いてえな。

というかおうちに帰りたいなあ...。



...取り敢えず一旦落ち着こう俺。

こういう非常時にこそ絶対に平常心を保たなきゃいかんだろうが。



「はあ、何でこんなことになったんだっけ...」



焚き火の前に座り込み、より明るく照らされるボロボロになったランドセル、服、靴。

ちょっとだけ擦り傷の目立つ手と膝を見つめながら三日前のことを思い返すことにした。

 


----------------------------------------------------



まずは自己紹介から入ろうか。俺の名前はあずま裕太ゆうた

兄がオタクでよくアニメ、ゲームのことや、その他雑学などを

たくさん教えてくれるので、知識量だけはちょこっとだけ自信がある。

それ以外はどこにでもいるただの小学5年生だ。




その日もいつもと何一つ変わらない、いい一日になるはずだった。

いつも通り学校で授業を受けて、いつも通り部活を終えて、

いつも通り幼馴染と二人で帰った。ここまではいつも通りの日常。

けれど帰り道の途中に俺のいつも通りはいきなり終わりを告げた。



何の前触れもなく鮮やかな夕焼けが黒く染まり、辺りは一瞬にして暗くなった。

その黒い空からは無数の巨大な『手』が伸びだしてきた。

何言ってるのかわからないと思うけど、俺もその時は理解不能だったからな?

普通空から手が伸びてくるなんて誰も思わないでしょ。



「何だ...アレ?」

「怖いよ、ゆうちゃん!」



禍々しい紫の『手』は瞬く間に周りの人たちを引っ張り上げていく。

何が起こっているんだろうか?



「な、なんだこの『手』は!?

 やめろ...離せ!離してくれー!!」

「うわああああああああああああああああ!!!」

「うえーん!!うえーん!!」

「きゃあああああああああ!!」



建物なんかもお構いなしに壊して人という人を空へさらう。

そしてパニックになった人々の叫び声でそこには地獄絵図が完成していた。



て、考えてる場合か。とにかくあの『手』から逃げなきゃ。



全く状況に追いつけていない能みその代わりに体が動き出す。

惚れてる幼馴染の手を握りながら逃げる恥ずかしさなんてこの非常事態、

全く気にもならなかった。



...しかしどこへ逃げよう。逃げ切れたとしてそこからどうすれば?

そもそもなんでこんなことになったんだよ?



そんな俺の迷いを嗅ぎ付けたのか、1つの『手』が俺たちを目掛け

物凄い速さで飛んでくる。すげえ怖い。



あれは確実に安全とは真逆の何か。

絶対にあれには捕まるなと体が危険信号を上げる。

ペース何て考えずただただ今出せる全力で走って逃げる。



だがしかし、俺らは逃げ切れなかった。

『手』は俺らを掴み、他の人達と同じように空へ引き上げられた。

抵抗は試みたがすごい力で全く歯が立たなかった。



黒の空が近づくとともに意識がどんどん遠ざかっていく。

考えても考えなくてもこの状況はマズイ。



もしかして今日がこの世の終わりなのか?皆今日死ぬのかな...。


しかし生き足りなかった。もう少し生きていたかったな...。


そして俺は意識を失った。これが俺の日本での最後の記憶だ。











ふと目が覚めると俺はただただ真っ暗な部屋に寝転がっていた。

...何だろここ落ち着かないな。



「おーやっと起きたか小僧」



目の前にはさっきの『手』と同じ紫色の人魂が上下にふわふわ浮いていた。

揺れる炎がニヤニヤと俺を馬鹿にしてるかのようだ。



「うわあ!!」



思わず声を上げてしまった。

だっていきなり初対面の人魂が話しかけてきたら誰だってびっくりするだろう。

...するよね?うん、するな。ていうか人魂なんて初めて見たぞ。



「そう驚くなよ」



いや無理だろ。いくら驚いても驚き足りないわ。



「...?...?」

「何が何やらって顔だな、よし説明してやろうお前には...いやお前たちには、

 お前たちが言うところの『異世界』に来てもらう」

「...へ?」



いきなり何言ってんだこいつ。中二病患者ってやつか?

それとも頭逝っちゃってるテロリストとかか?



「だーかーら!この世界にいる人間全員こっちの世界に送るって言ってんだよ!」

「え?...なんで?」



もうどうしていいかわからないので、とりあえずコイツの話を聞くことにしよう。

運がよければワンチャン解放してくれるかもしれない。



「俺の退屈しのぎのためにだな」



それにしても本当に何なんだコイツ。頭おかしいだろ。

ちょっとTVのドッキリの可能性も考えたが、周りの民家壊してるあたりそれはないな。



多分あの『手』もコイツの仕業だろうし、

ただのドッキリで周りの家壊すわけないしな。



...もう常識に当てはめて考えるのはやめよう。

なんか疲れてくる。冷静に柔軟に対応していこう。



「...でも地球には70億人ぐらいの人間がいるんですよ?」

「ん?まあそれぐらいは知ってるぞ?」

「そんだけの人数異世界に送れるんですか?」

「まあワシなら出来るぞ」


「...人間がいなくなった地球はどうなるんですか?」

「心配すんな。ワシがうまいことやって元の時間に戻してやるさ」

「ということは何かをすれば俺達を帰してくれるんですね?」

「おう、そうなるな」



もうコイツには何言っても異世界転移をやめないだろう。

ならさっさと条件クリアして帰る方が早い気がしてきた。



「その条件って何ですか?」

「ワシを戦って満足させろ。殺しも可とする。

 ワシが死んだとしても自動的に送り返されるようにしておいたからな!」



さよなら日本。俺はもう一生母国の土を踏めそうにないです。

この人類全員異世界転移できる化け物をどうやって満足させろって言うんだよ!?

どうやって殺せというんだよ!?



「いやいや絶対に無理です」

「ガハハ、無理じゃないだろ!だって70億だぞ?

 あっちの世界の総人口は10億ちょいぐらいだ。数の暴力で何とかなるだろう!」

「...仮に何とかなるとしたらあなた多分死にますよ?」

「もう長いこと退屈だったから、死ぬならそれはそれでいいかなって」

「軽いな。ていうか暇つぶしに俺たちを使わないでください」

「まあまあ、そう言うな。よくある異世界ものみたいにチート能力をやるから」



そうだチートだよ!これでコイツを倒そう!そうすりゃすぐ帰れる!



コイツがくれる能力がコイツを超越するもののはずがないのだが

何故か俺は少しワクワクしていた。



え?子どもっぽいって?

子どもなんだからこれぐらいは...ね?



「そ、その能力って?」

「やっぱ気になるよな!多言語翻訳バイリンガルという能力だ!」



これは詰んだな。なんだよ多言語翻訳バイリンガルて!

通訳さんでもやれってか!なあ、おい!



多言語翻訳バイリンガルはどんな言語でも

 聞けたり話したり、ひいては書けたり読めたりできるのだぞ!」



いや確かにチート級の能力かもしれないけどね!

普通こういう時に欲しい能力ってそういうのじゃないじゃん!

通訳チートじゃなくて戦闘チートを求めてんのよ、ねえ!



「...ていうかこれ70億人全員に覚えさせるんですか?」

「うむ」

「そこまでやったら流石にあなたの力が空になるのでは?」

「心配するな!休めば戻る!」



いや断じて心配はしてない。

コイツがどれだけの力を持っているか知りたかっただけだ。

結果コイツは充分なチートさんでした。はい、残念。



「ならもっと戦闘向きの能力を下さいよ」

「それは駄目だ」

「なんでですか?」

「ワシはチート無双が見たいわけではない。力なき者の試行錯誤が見たいのだ」


なんて身勝手な...。

その辺のわがままな子どもよりよっぽどたちが悪いじゃないか。

こいつの両親はどういう教育してんだ?いやそもそも両親っているのか?

いやそこは問題じゃないな。...さっきから訳が分からな過ぎて思考が纏まらない。



やっぱり冷静に対処なんて簡単に出来るわけなかった。



「なあもういいだろ?そろそろ送るぞ」

「...はい」



もうこうなったら仕方がない。いや仕方なくはないんだが打つ手がない。

この際異世界通訳無双でもするか?ははは、傑作だな。



「あ、ちなみ異世界のどこに転送されるかはワシも知らんから!」



やけになった俺の耳に今物凄く不穏な言葉が聞こえたような気がした。

これは聞き違いだ、気のせいだと信じたかったのが。



「ふざけんなクソ人魂ァァァアアア!!!!!」


それでもついに俺は冷静さを失った。感情に身を任せ全力で叫んだ。

流石にここまで身勝手だとさすがにキレたくもなる。

いやマジでアイツふざけんなよ。そもそもがふざけんなよってレベルじゃないがな。



だが俺の必死の叫びもおそらくアイツには届かなかっただろう。

あ、そういえばあいつ名前聞くの忘れたな。

くそ、何でそんな事にすら気が回らなかったんだ。パニくり過ぎたな。


ああああああああもう!!!!!



「決めた。...お前絶対ぶっ殺してやるからな!!」


やり場のない悔しさとイライラとまばゆい光に包まれ、また俺は意識を失う。

そして俺は...いや俺たち人類は異世界へと転送された。



週一ペースになりそうです。

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