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猫と一緒の転生生活  作者: リョウゴ
最終章 破壊神
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安堵に揺れる



 私は猫である。名前は気の抜けた鳴き声みたいなものが一応。毛並みは白、とまではいかない灰色でこれはこれで気に入っている。飼い主と言うには頼り無い阿呆がよく誉めてくれるからだというのは、余り知られたくないが。


 さて、自己紹介など今はどうでも良いことだ。


 今最も重要なのは。


「演舞完遂───」


 あの阿呆の命だ。


 毒の風の間を抜ける。


 黒の林を跳躍し、昇る。


 空を蹴る。


「───ありがとうございました」


 血だらけ傷だらけの阿呆を咥えて、戦線からの離脱。


 この阿呆は、何でこんな数相手に私を使わずに………っ!!






「で、なぁに、この景色は」


 レシアは目を閉じたまま、辺りに問いかける。


 答えるものなどいない。辺りは軍隊しかいないのだから。


 無心だったレシアは察していても一目も見てはいない。見てしまえば舞を止め、舞を止めてしまえば、悪いことが起きることをすんでのところで猫が知らせたからだ。


 だから決して止めないように目を閉じた。時折怒号が聞こえようが、悲鳴が聞こえようが、その先に滅びがあると知っていれば止められるはずがない。


 それ以上に信じていただけ、と言うのはある。レオンを。


「誰か答えないの? 私は神子、なのよ……」


 急に力が抜けた。その場で足が震えてへたり込む。手がふるえる。意識が朦朧として自分の状態が理解できない。


 儀式の後遺症と言うのは聞いていた。完遂した神子は場合によってはかなり衰弱してしまうことを。そのまま死んでしまう場合もあることも。


 当然元気なままの場合もあったのだ。けれど、レシアは当てはまらなかったと言うことだろう。もしかしたら異様なまでに集中していた事の跳ね返りだろうか。もはやレシア自身大したことを考えられる頭ではなくなっていた。


 (………あぁ。死ぬのかな)


 最後にぼんやりと、そう思った。




「───神名解放」


 くるり、と時子(トーコ)は右手で回しながら呟いた。


「私はあの少しだけの時間、楽しかったんですよ?」


 柔らかい笑みを浮かべた時子(トーコ)は己の力を解放する。


 街中から神気を集めた時の神が一人の時間を巻き戻す───。










▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 ────にゃーぁぁむ


「ん……にゃーちゃん? っだぁっ!?」


 起きあがろうとして激痛に苛まれたレオンは叫びのたうち回る。


 そしてどうやら寝かせられていたらしい、と言うことに気付いた。ベッドから転げ落ちてから。


「起きたか。レオン」


「ボードンさん!? づぅっ……」


「身構えるな、どうもしない」


 飛び起きようとしてまた激痛でのたうち回るレオン。ボードンはそれを見てやれやれと両手を振った。


「まぁずいぶん暴れてくれたせいで、街の中央は崩壊し、毒の刻印で超危険地帯と化した訳だが。それは措いておき、レオンには礼を言わなくてはならないだろう」


 ボードンは深々と頭を下げる。


「ありがとう」


「いや、結局あの後どうなったのか分からないけど……ってことはレシアさんは無事なの?」


「あぁ。この上なくピンピンしている」


「え、あぁそうなの? 話と違わない?」


「それに関しては───」


「──私のお陰って事ですよ」


 トーコが部屋に入ってきた。服の上にピンク色のエプロンを着ていた。


「私は時の神ですから? 時間戻すのも朝飯前なんですよ」


「いや、そんな大掛かりなことはできないとか言って………というか神って言って良いの?」


「この仲で言わないなんて野暮なことは私、しないですよ? あと、神の力の方に関してはあのクソ破壊神からブン取ったので余裕アリアリですし? なんならレオンを前の世界に戻すことさえ余裕ですよ?」


「そんな事出来るの?」


「ええ。しましょうか?」


 大したことではない、と言わんばかりの軽さでトーコは聞いた。内心は『マジで頷いたらどうしよう』と焦っているのだが、表情には出ていない。


 気付かなかったのはレオンだけであるが


「いやいいよ。しなくていい。こっちの方が危ないけど、ね?」


「そうですか? たぶんこの後結構ドタバタで危険な目に遭うと思いますよ?」


「良いの。というかそんなこと言いだしたらトーコだって今すぐ帰っても良いんだよ?」


「……そんな事言っちゃうんですか」


 突如としてトーコは俯いて肩を震わせる。


「だってそっちの方が安全じゃないか」


「レオンとかレシアとか心配なの、分かってよバーカ」


「っ──あっちょっとにゃーちゃん引っかかないで痛い痛い」


 猫がレオンの足を軽く引っ掻く。


「あー、レシア? レオン起きたから一人分追加でよろしくー」


「──軽すぎない? もっと頼む態度って………ほんと? 起きた? レオンが? ほんとに?」


 声が聞こえた。


「マジですよー?」


「うっ─────そぉ!!?」


 ドタバタと足音が聞こえる。レシアがやってきたのだ。薄い青色のエプロンを服の上に着ていた。二人とも料理をしていたのだろう。


「……お疲れさま?」


「何に対して? そもそもレオンくんの方が大変だったのよ!!?」


「そうなの?」


「無茶苦茶な傷と毒……長い間寝ててもう起きないんじゃないかと……」


 レシアは目を潤ませて、消え入るような声で言った。


「………起きたし、良いじゃん」


 レオンはそう呟いた。


 猫にもう一度引っかかれた。

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