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猫と一緒の転生生活  作者: リョウゴ
最終章 破壊神
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衝突の二神



 少女が地面から迫り出て来た刀座に刀を置いた。座は刀を置くと、刻印を光らせ、透明な壁をその周りに展開した。


 少女が舞台に上がる。その舞台は土が少し盛られただけの場ではあるものの、その場に施された刻印が、刀座の周りに展開された壁と同じものを舞台の回りに展開。


 少女が地を削るように足を強く動かす。足元の二つ目の刻印が起動する。街中に張り巡らされた刻印が光る。何の効果があるかは誰も知らないが、それが何の意味があるかは街の誰もが知っている。


 祭り───儀式が始まったという事だ。少女は規定の型をなぞるように踊り始める。丁寧に、落ち着いて



 そして眼を閉じた。










「きゃぁぁぁ!!!」


 始まりは誰かの悲鳴だった。神子が舞い踊る途中に、無粋な話である。


 しかし一般人はそんな感想を抱くよりも先に蜘蛛の子を散らすように逃げ始める。当然だ、彼らは舞を見に来たのであって、血飛沫と舞うために来た訳じゃないのだ。


「足を止めよ!! 我等は帝国軍隊!! 動きを止めよ!! 危害を加えに来たわけではない!!」


 人々に動揺が走る。


 帝国がこの儀式を黙認しているが余り快く思ってないことは周知されている。しかし安易に手を出さないことも。


 しかし前提は崩された。軍が出張り、止めるように叫んだのだから。その集団は間違いなく帝国軍である、見れば分かる。


「これよりこの祭りに介入させて貰う」


 防音なのか透明な壁の中で踊るレシアはその行動を続行した。


 それが癪に障ったか、軍隊のリーダーが声を上げる。


「神子を殺せ────!!?」


「させないっての!!」


 全力疾走で駆け込んできたレオンが横合いからリーダーの顔を殴りつけた。


「ははっ、間抜け!!」


 リーダーは音をたてて倒れた。しかしすぐに起きあがる。


 当然だ。レオンの腕力では気絶させるのは難しいから。


「逆賊と見なしても構わぬと言うのなら良いが……少し気分がいい。今なら見逃してやろう」


「殴られて気分が良いだなんてすごく変態なんですね」「違う」「何ならもう何発か手加減して殴りましょうか?」「違うと言っていようが」「で、本当のところはどうなんです?」


「違うと言ってるだろうが!!」


「はいそうですよね───っ!!」


 既に黒の矢が装填されていた剣を振り上げながら矢を放つ。最近接近戦ばっかりやっている気がするが、気にしたらいけない気がする、そんなレオンである。


「なんだこれ─────」


 波のように広がる木の枝が軍隊を飲み込む。たっぷり五本装填していたのだ。


「とくと味わえ、それは痛いぞっと」


 避けきれずに軍隊の前部分を覆い尽くした黒の矢は二十人近くの命を一瞬で奪い去った。


「て言うか、何ぼーっとしてるの逃げなきゃ。殺しちゃうよ?」


「ひっ───いやぁぁ!!!」


 これでよし。ノープランだけど。


 レオンは何も考えずに軍隊を攻撃してしまった。それはまずい、とてもまずい。レシアやボードンとかこの祭りに影響が出かねないと、考えた結果『突然暴れ出した殺人鬼』とかそう言う突発的な何かになればいいじゃないかとレオンは思ったのだ。


 動き出してから、混乱した頭で考え出したにしては良い案だと自画自賛していたがそれはどの道この国には居られなくなる行動であったことには変わりない。


 帝国軍に喧嘩を売ったのだから。


「だぁもうやるしかないね!!」


 また一人でレオンは軍隊を相手に戦闘を開始する。


 眼を閉じたまま壁の中でレシアは踊り続けている。それが終わったらどうなるのか、レオンは知らない。恐らくは終わるまで耐えれば大丈夫なのではないか、そう考えた。


 ただし、その想定は一瞬のうちに無意味と化す。


「あら、(あたし)の為にありがとう。愚民共」


 その声とともに白い光が弾けて─────


「行くよっ!!!!」


「あいよ分かった!!」


 刹那全ての物の運動が停止する。


────否。時が止まったのだ。


「エーリケェェェ!!!」


「あらいつぞやのクロクスじゃないの。頑張るじゃないの、こんな大技」


 屋根の上に腰掛けていたエーリケ目掛けて針を投擲する。


 エーリケは飛び降りる──そしてその背後に派手に爆発を感じて、ニヤリと笑う。


「そんな無駄遣いして大丈夫なの? ふふふ」


「時子ッ!!」


「言うなバレるでしょうが!!」


 言いながらトーコの目の前に出る。丁度エーリケの間に入る形で飛び出した時子は炎を両手に出して投げつける。炎は飛ぶ途中に広がる。


「避けるの面倒ね。破壊しますか」


 そう言うや否や炎は火の粉を散らして大部分が中央から食い破られるように消滅した。


「何じゃそれ……」


「あの女何でも壊せる破壊神なのよ」


「そゆことよ。まあ、流石に他のカミサマの能力をちからづくで破壊なんてのはちょっとね」


 トーコが時を止めた理由はエーリケの破壊に対して間に合わなかったからだった。刀を奪おうとしているのは分かっていたが、姿を現すまでどこにいるかも分からないのだ。停止させればそれこそ無駄撃ち。


 止めても大丈夫なタイミングが、そのタイミングまで現れなかったのだ。


「壊さなくてもこんな大がかりなのはそのうち燃料切れで終わっちゃうでしょ?」


「それはどうですかねぇ?」


 トーコが針を投げる。そのことごとくにエーリケが破壊をするが。


「カミサマの能力には通用しないってさっき自分で言わなかったっけ?」


「くっ、そう言うことを!!」


 簡単に言うと針だけは時間が動いている。停止している側からうごいている側に攻撃するとどうしても差が生じる───動いている側は何秒も後に存在しているのだから。


 時間の矛盾はそれを司る神だけは何とも出来る。破壊の神が咄嗟の反応で破壊など出来はしない。


「青い炎よっと」


 時子の頭上に超高温の炎。手を翳す。


「──動き出して──とんでけ」


「壊れ……ない!?」


 壊せなかった。時子もまた同じ方法で破壊を凌いだのだ。


 エーリケは直進してくる炎の弾道から避けるように横へと飛び出す。


「本音を言うと無様に転げ回って欲しいですけどね」


「がっ、ぐぅっ!?」


 およそ八本の針がエーリケを狙う。刺さったのは三本──左脇腹、左肘、腰。


 爆ぜる────エーリケの左半身が吹き飛び、同時に神々しさを感じる煙のような物が漏れ出ていく。


「これ、こいつ苛めてくれた仕返しな」


「ぐ───ぁ─────ゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 蒼炎が倒れたエーリケを包む。超高熱の炎が右半身のみの体を墨に変えんと猛威を振るう。


 トーコは時子の手を握る。


「仕留めるんでしょ?」


 その言葉にこくりとトーコは頷いた。次の瞬間、トーコの体が力が抜けたかのように膝から崩れ落ちた。


「おいそっちかよ」


『どの道どっちかが消えるならあの身体よ。あれは仮の肉体だし』


「強さだけならそっちの方じゃ」


『それだと本当にあんたが消えるじゃないの───とにかくやるわよ』


「『〈時を司りし万象の支配者は告げる

 我は創造神すらも超越した荒神よ

 夜は万物に平等に

 しかして私にはあたらず

 刹那を無限へ

 無限を刹那へと繋ぐ僕に

 時は我等なり我々は時なり

 時は満ちた〉』」


 ────神威解放


「『いくわよ』座に返す───〈神威〉ッッッ!!!!」


 蒼炎を通して神気がエーリケに流れ込む。そして光があふれてエーリケを天に送還せんとする。


「ぁぁ────っ!!! 待って、待って助け────っ」


「助けるもんですかっての」


 神威のせいで、神気の大部分を消失した。それによって停止状態が維持できずに時が動き出す。


 エーリケはうめき声を上げながらズルズルと刀に向かって動いていたが暫くして、微動だにしなくなった。


「……よし、仕事完遂。そうだろトーコ」


『そうね。うん。終わったわ本当にありが────』



「───刀取っあがぁぁぉおぁぃおえああぁぁぉぉぉぉお!!!!」


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