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猫と一緒の転生生活  作者: リョウゴ
最終章 破壊神
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笑い合い、進む



 ───視覚強化。絶対命中の矢。そして自分は空にいる。


「──────」


 連射だった。段々と上向きだった射角を下へと修正することでほぼ同時に全弾が突き刺さるようにした。


 遠くに無理矢理飛んでいったのは狙撃のため。高く飛ぶつもりでぶっ飛んだ。


 ボードンに見事全部命中。


「────」


 死んでないよな、レオンは呟いた。それよりも自分が地面に殺される。そう考えて剣を持ち赤の矢をそこそこ地面から離れた所で撃ち込む。


 一発。二発。三発で完全に止まった。無茶な軌道で飛び上がった為に全身が痛い。打撲切り傷その他諸々によって。


「げほっ……ボードン、生きてるか」


「死んで………たまるか」


「そうか、そりゃ良かった」


「殺す気で撃っておいてよく言う」


 包帯が緩く、倒れ込んだボードンを包んでいた。血の流出が酷いが、どうやら死ぬほどではないようだ。


「射線上に障害物が無い状態で、油断するのが悪いよ。僕はそんなの見て撃たないほど甘くはないつもりだよ」


「───っぐ……。甘く、ない、か。はは、そうだ、な」


「何笑ってるの」


「いや、なに。おかしくてな」


 ボードンは血を吐きながら笑った。どうしてか、レオンには分からなかったけれど。


「それより。儀式を妨害なんてふざけたことを(そそのか)したのは誰さ? 今まで見てきてボードンはそう言うこと考え付いても確実じゃないなら手を出さなかったと思うけど」


「……あぁ。それはそうか。お前はそう思うのか」


「ん? ちがった?」


「間違っていない……あぁ。まあ半分以上自分の意志でやっていたつもりなのだがな」


「で。誰なのさ」


「エーリケという、女だ」


「外見は?」


「短めの銀の髪の女だ。身長はレシアと同じくらいで……そうだ、耳の形が少し変だった」


「というと?」


「長かった」


「……そ。分かった」


 実際の所、外見を隠しているかもしれないから参考にはならないのかもしれない。


「まぁ、そのエーリケとかいう女が儀式の妨害を目論んでいたって事はその女にとって得なのだろうけど、ボードン、心当たりある?」


「無い」


「即答、そっか」


「面識のない女の目論見などそう分かるものか、それこそ」


「レシアさんでもない限りは、だよね」


 レオンはレシアの事を思い出す。自分以外が神子になると未来はなくて、自分がなったとしても確実性は無い───どういうことだろうか、レオンには未だに分からないが。


 滅びの原因はもしかすると、そのエーリケなのではないか。レオンはそう考えを纏めた。


「ボードン、そこで放置しててもいい?」


「……俺に時間を使いすぎだ。行け」


「はいはい」


 レオンは倒れ伏すボードンに背を向けて歩き出す。


 最後の最後でボードンは、結局猫の姿を見ていないな、と思いながらついに意識を閉ざした。






「んまぁ!!? 何これ!! 前と大違いじゃんおっさん!!」


「うるせぇ!! 屋台の前でそんな唾諸々飛ばすんじゃねぇきたねぇだろ!!」


「確かに美味しいけど、そんな叫ぶほど?」


「前なんてゴムでしたよゴム。あんなモン喰えるかってんですよ」


「うるせぇ、(モノ)が悪かったんだよ。まぁ多少以前よりぁ旨くなったとは思うがなー!!」


 そう叫び合うのは屋台の店主。前の街で屋台を出していて、レオンとトーコを一日だけ雇ったあの男である。


 祭りに合わせて移動していたのだろう。よく見つけたなぁ、とトーコは少し巡り合わせに感謝していた。


 そうだ、とトーコは懐を漁る。


「すいません間違って持ち帰ってました」


「ん? あー! おめぇ!!? マジかっ」


「トーコそれ何?」


「前パクった串」


「やっぱ盗んでんじゃねぇか!!!!」


 見直したのにな、と屋台主が呟いた。トーコとしてはパクりっぱなしにするつもりなんて毛頭無かったのだが、実際盗む形になってしまったことは後悔していた。


 ただこうして返せたのだから良いじゃないかと、トーコは考えていた。


「まあとにかくこれでチャラって事で良いですか?」


 ひょいと肉の串を掴み取り、パクりとかぶりつく。


「やっぱ旨熱いですねぇ、これ」


 そう言いながら少し多めに出した代金を屋台へと放り投げ、時子に手招きして立ち去ろうとしていた。


 が、一度トーコは屋台主に向き直る。


「んだよ。盗んだことに関しちゃ、一応返ってきたし許してやるが」


「今の内にどっか別の町に移動することをお勧めしますよ?」


「は? おまえ、それどういうつもりだよ?」


「さぁ?」


 そう言って今度こそトーコはその場を立ち去った。



「んで、もう良い? 遊びに付き合うのは」


「もうちょっと、良い?」


「残念。時間がないわ」


「それは残念ね」


 二人は並んで歩いていく。


 行き先は神子が儀式の舞を披露する広場だ。

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