いや私はショタコンじゃないですから
「着いたぁ!!」
「………あー。着いちゃった」
「……」
レオンは街に着いたと喜ぶが。レシアは少し寂しげに、ボードンに関しては黙り込んでいた。
レオンにもそれは分かる。旅の終わり。それがこの街だからだ。旅路が楽しかったからこそ、その終わりは際立ってしまう。街到着が別れだと言うことは当然レオンには理解できていた。
「で、どこに宿取る? 一緒に泊まって良い? 良いよね? 当然良いよね?」
だからと言って、当然別れる時間を遅れさせる程度の足掻きをしないわけがないのだが。
「拒否させてもらう」
言ったのはボードンだ。何ら感情の伺えぬ鉄仮面──もちろん比喩であるが、そうとしか言えないような表情をして言ったのだ。レオンは驚く。急変したボードンに。
「……仕方ないよ。ごめんねレオン、この街にいる分には問題ないし、お金はまだあるよね?」
「……」
あることにはある。というか普通使いきれない、と言うほどに受け取っていた。確認する必要すらないことは問われた側も問う側も両者共に理解していた。それでも聞いたのは、もしかしたらもう少しだけでも話していたかったから……なのかもしれない。
しかしレオンは黙り込んでしまう。金がある、そういった瞬間にこの会話も終わってしまう気がして。
「行きますよ。レシア」
ボードンはそう言った。神子と呼ばないのは、ここが儀式の最終地点の街だから。目立ってしまわないように。今更かもしれないが、この街の規模は今までの街よりも数段大規模であり、今までしなかった警戒もするようにしたのだ。
手を引かれたレシアは俯きつつも頷く。そしてレオンに背を向けて先に行ってしまう。
行ってしまう。
「待っ──」
違う。止める事は今更するべきじゃない。
「…ま…舞! 絶対見に行く!」
レオンはそう叫んだ。ぐるぐると言葉が頭の中を巡り、しかし何とか口から出たのはそんな言葉だった。
──レシアが振り返る。
「楽しみにしてるね」
それだけ。ボードンに手を引かれ歩いていってしまう。立ち尽くすレオン。
───にゃー
猫の鳴き声で我に返る。そうだ、何も今生の別れと言うほどでもない。儀式を見に行くと言ったのだし。
「宿、行くか」
そうしてかなり遅れてレオンは街に入る。
───宿は魚の看板を気に入った猫によって『ウオノメ』という宿に決まった。
「うげ」
「あれ、レオン?」
「え、トーコ!?」
当然。別れがあれば再会もあるのだ。旅とは本来そう言うものだと相場で決まっているのだ。
猫は大きな欠伸をして、まるで詰まらない物を見るかのような目で、しかし興味津々に二人を凝視していた。
「え、と言うかこの大きい方のトーコは」
レオンがそう言うくらいにはよく似ていた。大きい方のトーコ──時子が答える。
「憶えてないんですか、そうですか」
「えと……ごめん?」
「あーいえいえこいつからかってるだけです見た目ほど落ち込んじゃいないですよ、ね!?」
ね!? と言うのは時子に向かっての言葉である。ただ、当然頷くわけもない。
「酷い! 二人そろって私を苛めるんだ」
縮こまって泣き真似をする時子。一応言うが見た目も中身も成人女性である。それが外見年齢半分ほどの子供二人に泣かされたと言う状況。
そこそこ酷い。
「あ、えっ、ちょっとトーコ」
レオンには全く覚えがない。恐らくは事情を知ってるトーコに説明を求めるのは半ば当然の話である。
因みにレオンが、からかわれていることに気付いていないのは外見年齢とのギャップにあったりする。
「酷いっ」
その言葉で一段と慌てるレオンを見て内心でほくそ笑む時子。
「酷いのはあんただ、ばかっ!」
「あ痛っ!?」べしりと頭をひっぱたかれた時子は仰け反る。
「からかうのは良いけどさ……レオンって元の世界のことあんまり覚えてないからさ「あぁ。時子ちゃんか」あんまりそのことを……って思い出したんっ!?」
まるで伝統芸のようにずっこけるトーコに、ちょっと意外そうにする時子。その二人を見ながらレオンは続けた。
「まー、うん。半ば本気で言われてたんなら申し訳ないしさ」
「あ、いや。うん、良いゆ」
時子、噛む。レオンは聞かなかったことにして話を変える。
「さ。部屋別だけどこれからちょっとの間よろしくね──にゃーちゃん、部屋行くよー」
いつの間にか定位置から降りていた猫を呼んでレオンは部屋に行ってしまった。
トーコはため息を吐いた。
「あれがあの男。今レオンって名前ですよ」
「あっ、そ」
興味なさげに呟く時子。
「……ショタコン」
「酷ぉ!? しゃーないじゃん力及ばずってやつですよ!!」
「へぇ。そっかぁ」
「何なのその含み笑いっ!! ムカつく!!」




