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猫と一緒の転生生活  作者: リョウゴ
第三章 最期の旅路
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燃やして燃えて後始末


 結果から言うと、時子が一つ森を燃やした。山火事だ。


 トーコはそのとき全く違うところにいたのに、馬鹿をやった時子に気付くや否や消火活動をし始めたのだ。時子が自在に魔法を使うことに気付いていたトーコは同じ要領で水魔法を使って消火活動したわけである。


 まあ、さすがに時子も慌てて消しにいこうとしたが、まさかのまさか。水魔法が使えなかった。適性が無かったのだろう。


 結果森は半焼し、息が絶え絶えになったトーコを「なんかごめんね」といった風な表情で捕まえる、と言うことになったのだった。


 ──ふざけるなら責任持てよ。


 トーコがそう毒づいたのは言うまでもなく時子にはそうやって言うことが分かっていた。


 ──いやほんとごめん。


 と返すことも。定例のやり取りなのだ、これは。


 長い間彼女ら二人の間にあった流れの様なものである。被憑依体が無茶をして、憑依体がそれを何とかする。それで無駄に怪我することもあれば、何ともなく切り抜けることが出来たりもした。幾度と場数を潜り抜ける毎に処理がうまくなったことは言うまでもないが。


 気付けばトーコは笑っていた。釣られて時子も笑う。


「それで、ぐだぐだ悩んでた事。答えは出たの?」


 時子は切り出した。空気が再び凍り付く可能性もないことはなかったが、それはないなと何となく思ったからだ。


 トーコはピタリと笑うのを止めて


「ま、どうでも良いことだよ。ほら、私が神様だって事、結局誰も信じてなかったし、もはや自称すら出来なくなったところで変わんないじゃんか」


 そう言って破顔一笑した。


 多分自分の中でちゃんと解決したのだろうな───時子はそう確信した。


「んで、じゃああの人のことどう思ってるのよ?? 好きなの? 好きなんでしょ────」


 ならば、うざったいくらいに絡んでやろう。その方がおもしろい。






 二人に知る由もないが、先を行ったはずの三人よりも先に街に着いた。


 まず街に着いたトーコがしたことは──


「宿の確保。一応路銀に余裕はアリアリなんで、そこそこ良いとこでね」


「くぁー、野宿ばっかできつかったご褒美ってこと?」


 伸びをしながら時子が聞く。「当然」トーコは笑いながら答える。


「だいたい辛い、面倒とか嫌なことってあんたご褒美もなくやらないでしょ」


「そうだよ? そう言うことさせる以上なんか後でやってくれるじゃんあんたなら」


 一種の信頼だ。まあそれが過去の経験からくる面倒事への先回りの繰り返しから来ることだと言うことにトーコは呆れから笑う。


「さぁて、探すぞー!」


「あ、こら! 先行くなばかー!!」


 仲睦まじい姉妹の様相で街を歩いていく。ただしトーコは既に気付いていた。


 エーリケがこの街に長く留まっている事に。


 不思議とそのことに対して恐怖もない。エーリケに対して手出ししなければ攻撃してこないだろうと思っているからだろうか。


 それとも時子と一緒だからだろうか。


「どうしたの」


「……ねぇ」「分かった、敵討ちは任せてよ」


「え、ちょっとまだなにも──って私死ぬこと前提!? 酷くない!?」


「どーせ、なんか前一緒にいた人たちを助けようだとか考えてるんでしょ? もしくはあんたを殺そうとした神をはっ倒す気か」


「……どっちも正解」


「あー。助ける過程でぶちのめすのね。オッケ、手伝う」


 時子に迷いはなかった。そのことにトーコは驚き目を丸くする。トーコからすれば自身を追い詰めた神でそれに対してぶちのめすなんて簡単に言うが、かなり危険なことであるのは分かっているはずの行為を、即答であったのだから。


「何驚いてんの。これでも怒ってるっての。わかんない?」


「……まじ?」


「マジで分かってなかったんだ。まあ良いよ。あんたが苛められてたら当然私だって怒るんだって───


───そして後悔させてやる、こいつを苛めて良いのは私だけだっての」


「わあ怖ぁい」


 どこか他人事のようにトーコは言った。その目は時子から逸らされていた。


 怒った時子はマジで無理。経験者は語れるのだ。トーコも本気で怒る時子を見るのは何度目か───時子が本気で怒っていたかどうかは事が終わるまでトーコにも分からなかった。


「……自覚的なだけまだマシかな」


 因みに怒らせた相手は誰も二度と会ってない。そういうことだ。


「取り敢えず、何。どうしたいかを教えてくれない? ついでに出来そうなことを探りながらでも」


「あ、まあ。あんたこっちに来てから出来ることの幅広がったしねぇ。良いよ、あいつの情報知ってる限り教えようじゃんか」


「うし、そうとなったらトーコ──食べ歩こうよ。まともな飯も食ってないからね、宿より重要。重要だよ?」


「あー、獣はもう嫌だね。うん。ちゃんと調理されたご飯。食べたいわー。んでも宿が先、時期的にけっこうやばいからね!」


「あー。人通り多いしそっか。祭りでもやるんだったね」


「絶対それに奴も現れるからさ。やりたいことさっさとね」


 そうやって話ながら街を歩く。幸いなことに宿巡り一件目『ウオノメ』という宿で部屋を取ることに成功し、街へと繰り出した。





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