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猫と一緒の転生生活  作者: リョウゴ
第三章 最期の旅路
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やめろといったら全力でやる厄介な女



 きっと本筋であるレオン達の旅路は───そう語ることは多くない。何故なら街を移動する行為は徒歩でなくとも良いのだ。というか寧ろ例年通りなら馬車なり何なりと乗り物を使えば良かったのだ。


 儀式にとっても、本来移動は蛇足と呼ぶに等しい。ボードンが神子の今後を考えて儀式の前にしか出来ない思い出を作ろうとした事で移動が徒歩になった訳である。言うなれば思いで作り。


 様々に楽しいこと、辛いこと、面倒なこと、それらを経験し、いつか良い思い出と語れればいいだろうと気を回した結果だ。


 例年と違うと言うことはスケジュールが違うと言うこと。それは予測が付けづらく、襲撃なんてものがほとんど無かったのもそれが原因の一端であることは否定できない。


 まあ何ぞとぐだぐだ語ったところで結論を言うと、特筆するべき事態に陥らなかったという事である。


 途中立ち寄った村で、レシアはレオンに稽古を付けた。レオンはまた一段矢の腕を上げた。ボードンは相変わらず右腕を隠しつつもひたすら雑事をこなした。


 一度だけの野宿でレシアとレオンは夜通し話し合ったり。その翌日寝不足でふらふらしたり。


 珍しい野菜がある、と持ってきた野菜を食べようとしたレシアを慌ててボードンが毒があるとか言って止めたり。


 そんな旅路の裏で二人の少女が再び物語に交わろうとしていたことなど露ほどにも知らず。


 そう、つまり、視点を切り替えて堕ちた時の神とその元憑依体のところに移るわけである。







「───ぐだぐだと泣き言ばっか。昔から変わんないね、あんたは」


「うっさい……これでも少しは」


「あーそうね、立ち直ったんかもしれない。でもね、うざい」


「んなばっさり……」


「んで。あんたこれからどうするの。せっかく元の世界のしがらみ全部投げ捨ててここまで来たんに。楽しいこと無いん?」


「娯楽だったら向こうの方が沢山でしょ……」


「そりゃ、そーだ。ゲームもテレビもスマホも無いような世界に大した娯楽があるとも思えないし」


 そう言って、冷たい目をした女が掌から焔を出す。


「全く不思議で仕方ないけどね、こんなのとか」


「………ねえ時子どうやったのそれ」


「は、何となくだけど。異世界ってなら出来て当然かもとか考えて……あれ、私がおかしいのかこれ」


「ええ……魔法の類はこの世界封印を解かれ……」


 そう言いながら頭上を見て、泣き虫な女が絶句した。


 柱が、半壊していた。彼女の知らないうちに、以前よりも半分程度には少なくとも小さくなっている。


「あの(やろう)……マジですかよ」


「おうおうどうした、あんたが負けた神様がどうかしたの」


「うっさい………上に柱あるじゃん?」


「へぇ、何あれ。手短に頼む」


「あれ壊れると本来の世界になるん」


「どゆこと」


「どっかの誰かが怒り任せにこの世界の『神秘』をまるっと封殺したの。その象徴があの柱」


「ほへー」


「ま、壊されてるって事はその神秘が戻って来ちゃってる訳だけど、今のところダメなことは無いだろうし」


「何にせよ、気にしなくて良いよねそんなんは」


「………そーだね」


 女二人……トーコと時子が並んで歩く。その様は姉妹のようだが、身長が大きいのは時子で、外見にそぐわないトーコの精神自体は時子の何倍もの時を生きている訳だが──当然姉に見えるのは時子である。


「んで、あの馬鹿先輩はどこに? まさか別れて行動なんて馬鹿……いや、そうね、そういや」


 時子は合流したときのトーコの様子を思い出す。


 ───目が死んでいたな。と


 当然今は軽口が言える程度に復活してはいるが。


「でもさ、分かるんじゃないの? 待ち合わせ場所みたいなの、無いの?」


「無いこと、ないけど……」


「けど、何よ?」


「いや……………………………もう神と関わりたくないな、って」


 長い沈黙が、躊躇いとしてそこにあった。トーコにしても言いたくない台詞だったんじゃないだろうか。


「………臆病だね、馬鹿じゃないの」


「なにが…」


「あんた腐っても自称神じゃん。腐ってたけど」


「く、腐っ、え、えぇ!?」


「うるさい隠れBLオタ、もしくはショタコン」


「どっちも違いますぅ!! それはそっちの趣味じゃないですか!!」


「後者はともかく、前者は否定できないだろうけどさ。まあそれはそれとして」


「じゃあ何で言ったし!?」


「新しいキャラ付けできるかなぁと」


「意味不明だよ!?」


「自称神の方が意味不明な上に痛々しいよ」


「………っ」


 神。そう言ったものであるという確信が今のトーコにはなかった。故に口ごもる。咄嗟にも出てきたりはしなかった。


「おー、こりゃあ重傷」


「……えーそーですよー。軽くないです私は全く」


「さいで。昔からめんどくさいなぁ、ったく」


 笑いながら時子は呟く。昔から変わってないことに安堵した。神だろうが何だろうが、どうせそう簡単に心根が変わる事なんて無いのだ。増してや人よりも圧倒的に長く生きた精神など。


「どうでも良いけど目的地無いんならそこ行くよ──あんた引き摺ってね」


「えぇ……酷い」


「酷いも何も。面白そうだし、昔からそうでしょ?」


「……昔とは違う」


「なに? 正真正銘の神様にでもなったんなら確かに私に引きずられて駆け回るなんて事無いだろうけどね。少なくとも今のあんたなら抵抗する気無いだろうし? 出来ないだろうし?」


「……私はもう」「うるさいな、今も昔もあんたは私だよ、いなくて寂しかったの。久し振りに会った。だから連れ回す。異論は認めん!! よろしいか!」


「嫌だよ、ほんとに!!」


 全速力で逃げに入るトーコ。抵抗されていた。


「ほぉ、鬼ごっこか!! いいよ遊ぼっか!!」


 それを年甲斐もなく無邪気に追いかけ始めた時子。


 本気で嫌がった相手を笑顔で追いかけ回す構図はそこそこヤバいと思ったが、時子が止める事はなかった。



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