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猫と一緒の転生生活  作者: リョウゴ
第三章 最期の旅路
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知られずのうちに



 ───実際簡単なことだ。


 神子の護衛が、神子の影武者出来ないわけがない。変装用の刻印道具くらいは有るべきだ。


 ボードン宛ての手紙を猫がボードンにばれる前に先取りし、レオンがその手紙通りの場所にボードンの変装して向かっただけだ。


「「なに」」


 四色の内黒の矢を剣に装填。弓を持ってくるとバレるが、ボードンの武器は短剣だったはずなので構えてもバレないという点で持ってきていた。


「ばいばい」


 放たれた黒の矢は見る見る内に無数に枝分かれして景色一帯を貫く。ほぼ真横目掛けて急に育つ木が生えたみたいな景色に、撃った本人であるレオンが驚く。


「いや、撃った直後に枝分かれして視界いっぱいに広がるとは思わないでしょ。木か、木なのかこれ」


 枝の何本もが地面に突き刺さっている。刺さらないように撃つには上を狙うべきだが、逆円錐状に広がったのでそんな使い方をすることは無いだろうが。


 そしてその矢と呼ぶべきか迷う矢は、フーリとレーリをしっかりと串刺しにしている。遠くなればなるほどに密度が落ちるため離れれば当たらないがどうやら動揺して逃げるのが遅れたようだ。


 背を向けて串刺しにはなっているものの致命傷を避けていた。


「………」


 レオンは普通の矢を二人の頭めがけて射出。もがく二人が完全に脱力するのを目で確認してから囲む集団を睨み付ける。


「何というか。何でこんなことしてるんだろうなぁ……」


 ────にゃーん


 何の変哲もない矢を左手に何本も持ち、剣に這わせる。


 音もなく集団がバラバラの動きで迫り来る。すごく狙いづらい動きだとレオンは思ったが、そもそも本命はレオンじゃない。


 ──そのことに気付けないまま闇に紛れた集団のおよそ半分が戦闘不能に追い込まれた。猫が背後から縦横無尽に動き回り一人一人倒したのだ。


「獣王無尽って」


 その瞬間レオンは猫と目が合った気がして口を噤む。なに馬鹿なこと言ってるんだと思いもしたが、それなりに余裕があると言うことではある。


 相手はまさか猫に追い込まれるなんて事は想定していなかったのか、猫が暴れ回るのを警戒している隙をレオンが仕留め、レオンが狙われている隙に背後から猫が叩きのめし。



 ────そうしている内にレオン以外に立っている人間は居なくなっていた。


「こうもあっさり行くと、拍子抜けだよね」


 にゃーん。


「さて、戻ろうか。放置で良いかな」


 その言葉に猫は二股の尻尾で×印を作る。そうして一人口に咥えて木に押し付ける。


 なるほど、とレオン。


「纏めて撃ち抜くのか。出来るよ?」


 黒の矢を一本取り出し、笑顔で言う。違う、容赦なさすぎ、と猫は首を横に振った。


「違うの?」


 猫はどうしたものかと鳴く。レオンはその様子にごめんごめんと軽く謝る。


「縛り付けて放置、でしょ? うん、縛る物がないから放置で良いかな」


 猫は一人の装備を漁り、容易には切断できなさそうなワイヤーを引っ張り出す。


「おお、さすがはニャーちゃんだ」


 いいから縛る。猫は尻尾でレオンの脛を軽く叩き、つんとそっぽを向いた。


 痛みでレオンは転げ回った。




 リーダー格っぽい二人は、はじめに頭を撃ち抜いた為に既に絶命している。木に矢で刻印を彫り───発火させて火葬した。


 これでもレオンは少し刻印術に関して勉強した。木に対する刻印位なら多少出来るようにはなっていた。


 他は殆ど命を奪ってはいない。それこそ気紛れではあるが、矢によって与えられた傷の内、致命傷はほとんど存在しておらず猫によって昏倒させられている為に絶命した人は前述の通りであった。


 火事、にはならなかった。


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