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猫と一緒の転生生活  作者: リョウゴ
第二章 迷いと恐怖
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予兆無き不運



「ニャーちゃんがそわそわしてたなぁ、さっきの店」


 振り子時計とかあったし、振り子に野生を刺激されたのかなぁ。とレオンは考えていたが、本当の所は違った。


 まあ、何が違うかはレオンには分からないが、違うような気はしていた。


「まあとにかく、帰るか」


 にゃーん、と猫が頭上で鳴いた。


「どうしたの?」


 猫はそれからレオンの頭上から降りると全速力で走り出した。


「えっ、ちょっと!?」


 釣られてレオンは猫を追いかけるように走り出す。


 ───ゴガァァァァッ!!!


「っうぇぁ!?」


 突風が吹き抜ける。煽られるように転がるレオンは転がりながら爆音の元を確認した。


「何あの巨大なゴリラ……っニャーちゃん!?」


 やれやれ、と言った様子でレオンを猫は見て、それから尻尾を用いてレオンについて来るように伝えて走り去ろうとする。


 予兆もなく降ってきた身長が家よりも大きいゴリラのような魔獣は脇の下から一対の巨腕を生やして、二足で歩き始める。


 レオンにしっかりと視線を合わせているのは、この場にいる者には既に分かり切っていた。


「ちょ、ちょっと待ってよ、どっから来──」


 待たない。


 上腕を振り上げた魔獣に、もうこれは駄目な奴だとレオンは慌てて魔獣から背を向けて走り出す。


 振り下ろされた腕が地面へと食い込み、爆音と共に路面を弾き壊す。


「ニャーちゃんの薄情者ぉー!!」


 レオンの視線の先にはしっかりと灰色の猫が映って居るが、止まる様子はない。


 マジか、とレオンはよろけながら必死に猫を追うように逃げる。


 四腕がダンドゴンと四発繰り返しレオンに向けて振り下ろされるが、狙いが甘いのかレオンの逃げ足が早いのか腕自体は掠りもしないがそれでも瓦礫が飛んでくる。


 運がいいのか、それらは当たりもしないで辺りの家々に突き刺さっている。


 四本の腕で順繰りに繰り出した後立ち止まり咆哮をした。


「………っ」


 ビリビリィッと体を揺さぶる大声を感じながらレオンは思考を回す。袋から矢と弓を取り出して反撃するか、逃げだけに徹するか───恐らく反撃は意味がないな、と結論付けて思考を投げ捨てた。


「狩猟ギルドってどこだっけ……」


 逃げる方角をその方向へと修正しようとして見回して、進行方向が別方向である事に気付く。


 猫は街の外縁部を回るような向きに走っていた。追いかけるように走るレオンも同じである。


「ニャーちゃん……っ?」


 猫は時折立ち止まってレオンを確認する。その動きで、レオンには猫には狙いが有るのだと気が付いた。


「囮………か……?」


 正しくその通りだった。


 その事に気が付いてレオンは見回すとやはり、人通りは少ない。家の高さから頭が飛び出すほどの大きさの魔獣が追いかけ続けているのはこのエリアの人口密度の低さが大きな要因となっていた。


 だとしても、囮なら挑発はしないといけないのではないかとレオンは考え直す。


 ただ走るだけで当たっていないならば、袋を探って矢の一本ぐらいなら取り出せるとレオンは思ったのだ。


 矢の能力は把握していないが、気を引き続けられればいいのだ。レオンはそうして緑の矢を取り出した。


 振り返らずに逃げながら矢を弦に掛ける。


 チラリと見れば、腕を四本とも振り上げていた。何度も四発殴っては立ち止まっていた魔獣。


 狙うなら四発目の後だろう。


「………1」


 地を割る拳が振り下ろされる。軽く跳べば、当たることもなく。


「……2」


 風を巻き上げる拳が背中の後ろに風を起こす。すくい上げるような一撃も、身を屈めてしまえば掠りもしない。


「3っ!?」


 左の太股の外側を石が掠っていく。遙か後ろに拳がついて油断していた。


 四発目は左肩のすぐ隣を突き抜けて地面に刺さった。


「──────」


 ここだ。レオンは風に体が押し退けられるのを半ば利用し、体勢を崩しながらも身を反転した。


 ────あ。


『ゴァァァァアアッ!!!』


 五発目は振り返ったレオンの目の前にあった。


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