表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Nice Jumping!  作者: 小鳥遊 希
1/1

第1話 親子

※マイルドにしているつもりですが、「捕食」「弱肉強食」といった描写があります。

苦手な方は気を付けて下さい。

 オーストラリアの、ある草原地帯。そこには、たくさんのカンガルーたちが生息している。あるカンガルーが、大柄なメスのカンガルーに向かって声をかけた。

「ジェニファーさん、お宅のお子さん、まだ袋に引きこもりらしいね?」

「ええ、全くうちの子ときたら・・・・・・」

 ジェニファーと呼ばれたそのカンガルーは母親らしく、うかない顔でため息をついた。ジェニファーはお腹の袋をさすると、大きな声で悪態をついた。

「情けないよ‼」

 袋の内側ではジェニファーの息子の、子供のカンガルーが外から聞こえてくる母の怒鳴り声に顔をしかめた。カンガルーを始めとする有袋類の子供は、1歳を過ぎると母親の袋から巣立つ。しかし、この子供はそれを嫌がっていた。その理由は───。




『グワァ!』

 次の瞬間、獰猛な肉食動物がカンガルーらの群れに飛びかかってきた。1匹の、子供のカンガルーが襲われている。

「みんな、逃げろ‼」

「キャー‼」

 ・・・しかし、周りの仲間は薄情で、大人のカンガルーたちも襲われている子供を誰1人として助けようとはせず、逃げ惑った。カンガルーたちが逃げ去った跡地には、肉食獣がはびこっている。そんな周りのざわざわした落ち着きのない様子を、ジェニファーの袋の中から耳にしながら、子供はふさぎこんでいた。

(・・・こんな危険な所、出ていくなんてまっぴらごめんだ)

 ───そう、その理由は恐ろしいからだった。

「エリック」

 母の声がした。先ほどのような、怒った声ではない。

「・・・なに?母さん」

「アタシもいつ、ああなるか分からないんだよ」

 他の仲間と一緒に敵から逃げながら、ジェニファーは言った。

「今のままだと袋の中のアンタも一緒にお陀仏だ」

 母の低い声に、エリックは思わずぞくりと身震いした。

「だから、もしもの時せめてアンタ1人だけでも助かるためにね・・・」

 ジェニファーはゆっくりと大きく息を吸った。




『バッ‼』

 そのまま、お腹の袋からエリックを引っ張り出した!ポイッとまるでゴミを捨てるように、エリックは放り出された。

「な、何するのさ⁉」

「いいかい、エリック」

 状況が飲み込めず、うろたえているエリックをよそにジェニファーは切り出した。

「袋の外の世界に慣れるんだ!アタシらは、しばらく別行動だ‼」

「えぇ⁉」

 彼女の提案は大変に冒険だった。何せ、今まで引きこもりで生活能力は無いに等しい息子を天敵が至る所に潜む外界へ引っ張り出し、段階を踏まずいきなり独り立ちさせようとしたからだ。

「じゃあ、元気でやるんだよ」

 そう言い残し、さっさと母は去ってしまった。

「そ・・・そんな~・・・。母さ~ん・・・」

 残された息子は、なんとも情けない顔に涙を浮かべ弱々しく母の後を追おうとしたが、袋から出たことのない自分の運動能力などあってないようなもので、高速で跳ねて移動していく母はみるみる遠くへ行ってしまった。

ここまで、読んで下さってありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ