『赤ん坊たちのかざぐるま』
ケタケタ ケタケタ 笑っているよ
ケタケタ ケタケタ 笑っていたよ
うまれてひとつきたたないが
こいつは立派な女の子
あたしにとっちゃあ 飯のたね
大事な 大事な 飯のたね
あぁ ありがたや ありがたや
いなかの畑の真ん中の
あぜ道歩くよ どこまでも
林を抜けて 川へきた
ここへは 何度 きただろう
あたしゃ 何人 殺めたろう
ポッケの中にゃ 銭がある
あたしゃ 世間の嫌われもん
それでもあたしが 居なければ
成り立ちゃしないよ この商売
しばらくそいつを抱いていた
孫ほど離れたあかんぼが
小さなおててでつかんだよ
あたしの汚れた指先を
ちからいっぱいにぎってた
ゆうがた 近くなった頃
あたしゃ 洗濯はじめたよ
みなもに 顔を沈めてね
ぐったり するまでつけるのさ
涙なんて 出やしない
あたしの 涙はかれている
残っちゃないのさ 哀しみも
川には水子が やってくる
仲間が増えたと やってくる
おまえも はやく逝くんだよ
つぎに生まれて くる時は
ちっとは 長生きできるやろ
遠くに見える お山はね
イタコが集まる 恐山
あたしも行くさ かざぐるま
カラカラ カラカラ まわっているよ
カラカラ カラカラ きこえているよ
ひとつ 小石を のせては祈り
もひとつ 重ねて ふたたび祈る
けれども 途中で やってくる
小石くずしが やってくる
ここのつ 積めれば むくわれる
けれども やっつで 壊される
あたしゃ いつまで 生きられる
死んでも 地獄が 待ってるさ
それでもあたしが居なければ
成り立ちゃしないよ この商売
成り立ちゃしないさ この商売
あたしゃ ほんとは 泣きたいよ
あたしゃ ほんとは 泣きたいさ
ケラケラ ケラケラ 笑っていたよ
カラカラ カラカラ まわっていたよ
地蔵は何を見てるだろう
水子は何を見てるだろう
グルグルまわる かざぐるま
あかんぼたちの かざぐるま
(了)




