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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
4章・「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」-悪魔連合国侵略戦
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幕間32・本来は為し得ないはずの団結(インポシッブル・コースアウト)

「おぉおお・・・」

「おおぉおぉおおおおお・・・」

「おおおー」

「・・・まるで上京してきた田舎者だな」


豪華絢爛な装飾、家具や調度品の数々。

寒空が見える大窓にも端々にステンドガラスがはめ込まれており、設計の緻密さがうかがえる。

魔法によって暖められた室内ではコートを着る必要もなく、全員が普段着に戻っていた。

各々座ったり寝転んだりしながら恵たちは王宮の応接室で会議の時間を待っている。

とは言え寝転んでいるなんて大胆な行動を取れるのはシレーヌを置いて他にいなかったが。

その中でも声を上げ続けるレプラにミチは頭を撫でつつツッコむ。

ルーレは見慣れているだろうし、クーは元王族。

シレーヌはそもそも興味が無いだろう。

しかし、恵が普通にしているのが単純に意外だったのかミチは、


「しかし恵君が平然としているのは意外だな。実はいいトコの生まれなのか?」

「いやいや、うちは超庶民だよ。ただ単に何度か王宮に来たことあるだけ」

「そうなのか?いつのまに・・・」

「最近じゃ、ルーレちゃんを送り届けたときかなぁ」

「ですね、それに恵さんは昔王宮で生活してましたし・・・」


ルーレから聞かされた驚きの言葉にシレーヌが嘲るようにして呟く。


「はぁ?恵が?・・・地下牢に捕らえられて生活してたとかいうオチじゃねぇの?」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・え、マジで捕まってたのか?」


冗談で言った言葉に死んだ目で黙りこくる恵。

微妙な空気になった二人に、ガザニアがため息をつきながら説明する。


『まぁ・・・簡単に説明すると恵の力を貴族が利用しようとして、恵はそれに反発して、といった所だ。第一勇者ひらのとおやとマギアの戦いが起こるよりも前の話だよ』

「はぁん、つーことは第一とおやが私たちの住むリザルトゲーテに来て荒らしてったくらいの時期か」

「・・・そのことなんだけど」


今度はシレーヌの呟きにクーと恵が食いついた。


「その第一勇者は一体どんなことをしたの?あとマギアと戦ったのは何時何処で?」

「あ、それは私も気になるんだよなぁ。私、トオヤ君とは戦ったことはあっても話したことないんだよね」


恵は純粋な興味で、クーはマギアにまつわる謎を知るために、それぞれ真剣な表情でシレーヌに尋ねる。

ミチやガザニア、ルーレもそこには興味があるらしく黙っていたが、シレーヌはめんどくさそうに吐き捨てる。


「や、しらねぇけど?私は仲間じゃねえっての。よるみゅーにでも聞いた方がいいだろ。喜んで長々と語ってくれると思うけど?」

「いや、教えて」

「・・・えぇ」


豪華なソファーに寝そべるシレーヌの前にしゃがみ、クーは真剣な表情で迫る。


「勿論その二人にも後で聞くわ。けどシレーヌの目線からの話からしか見えない真実があるかもしれないでしょう?」

「はー分かった分かった、執念深い奴だな。どっから話せばいいんだ?」

「手がかりもないのよ?執念深くもなるでしょ。全部よ全部。シレーヌが第一勇者ひらのとおやと初めて出会った時から」

「ふん、まぁ私も気になるしな。知る限りは話してやるよ。確か・・・私が第一とおや達と初めて会ったのは丁度セイレーンとマーメイドがマジで喧嘩してた時だったな。その時はみゅーもリザルトゲーテにいてよ、」

「えっと、失礼しますっ」


応接室の大きな扉が開き、そこからの特徴的な声がシレーヌの声を遮った。

扉の隙間からひょこっと出てきたのは赤毛のショートツインテールとメイド服のロングスカートを揺らす元気な少女。

つまりは、


「ランさん。準備できたんですか?」

「はいっ、お話し中の所ごめんなさいっ」

「いえいいのよ。シレーヌから話聞くのは後でもできるしね」

「ちぇっ、今たまたま話す気分になってたのによ」


タイミングの悪いと言えば悪いランの登場に、頷くクーと不機嫌になるシレーヌ。

対照的な二人に恵は吹き出しつつ、


「じゃあ先に誰と協力するか分かる訳だね」

「・・・ぶっちゃけ私たちしかいない可能性も高いけどな」


そんな事を言い合いつつランとルーレを先頭にしたメイド達に先導されながら会議室へと歩を進める。

そこには・・・。




時は13日程前の会議後にさかのぼる。


「・・・それならば私は国に戻ることを提案しますが」

「・・・・・・」


場所は異なり、王宮外の塔の一室。

人間の女性姿を取っている白銀の髪をたなびかせスーツを着こなす女性と、金髪を乱雑にまとめている包帯まみれの幼女は難しい顔をして唸っていた。

プラチナとパールである。

ボロボロのパールと比べ、石にされたはずのプラチナは無傷だった。

・・・当然戻したのは例の化け物兎である。

無言のままのパールにプラチナは再度言葉を紡ぐ。


「マキナが相手方についた今、正直人類の勝利は厳しい。あれはあれで一種の突然変異でしょう。それか予知能力かなにかの類。手を引くべきかと」

「・・・そうじゃな。あの兎ですら従える男じゃ。というか下手をすれば兎も敵に回りかねない。そうなればまたしても負ける、じゃろうなぁ」


分かっていただけたか、とプラチナはほっと溜息をつく。プライドの高いパールが敵前逃亡などという選択をするとは思えなかったが、それほど強く敗北が刻み込まれたらしい。

・・・それはそれで問題だが。

だが今はこれでいい、とプラチナが荷物をまとめようとしたところで。


「・・・プラチナ」

「はい、ここに」

「わらわはな、プラチナ、お主の事を本当に買っておる。お主の言うことはいつも正しい。いつも我らドラゴンの有益になる事を提案してくれる。本当に助かる」

「・・・パール様?お褒め頂き光栄ですが、どうされたのです?」

「・・・じゃがな。わらわは今までに一度だけ。たった一度だけ、お主の意見を聞いて後悔していることがあるのじゃ」

「・・・・・・」

「アリエル姉のことじゃ。奴に負けたわらわをお主は救い、一族を去った奴を追いかけさせなかった。確かにあの時はそれでいいとすら思った。じゃが、今はそうは思わん。わらわは竜の代表者。このまま敗北の上、引くなど許されん」

「しかし・・・それは敗北を重ねるだけでは・・・」

「そうかもしれん。じゃが既に2回負けたのじゃ、これから先何回敗北しようが同じ事。わらわは必ずあの兎も、マキナも、そして今もどこかにいるはずのアリエル姉をも超える」


そうしてパールはプラチナの眼を見て。

姿勢を正し語る。


「わらわの心は決まった。お主はどうする?この険しく今までと違い泥沼を進むような道程・・・着いて来てくれるか?」


ただの興味だけで出てきた今までとは違う。

世界を知らずに生きてきたドラゴンの考え方を根本から変えるような決断に。

プラチナは、片膝を付き恭しく頭を下げる。

きっとこの方は、我ら一族を良い方向へ変えてくれると信じて。



「帰らないの?」

「・・・なんでそう思うか聞きたいゾ」

「いや、いつもみたいにもう一人の方に相談しなくていいのかなって思っただけだけどさ」


会議室。

倒れたルーレを送り届けた後の話。

そこには最早三人しかいなくなっていた。

エルフの副長ベーゼとアロマ、そしてもう一人だけである。

因縁ある二人だが、それ以上に状況が苛烈だからかぎこちないながらも話すことに成功していた。


「トラムに言ったところで心労を増やすだけだろうからな。それにうちは割と八方ふさがりなんだゾ」

「でしょうねー。ここで降りてもエルフの国が魔王軍に滅ぼされてるのは目に見えてるし。ていうかあんたたち何をそんなにこそこそ相談してたわけ?」

「・・・対等な立場への復帰についてだゾ」

「なにそれ?」

「現状エルフの国はボロボロだ。魔法知識については随一なはずなのに、それを扱える術者がいない。これでは戦って勝ったところで、我々が得られる利益も少なくなってしまうでしょ?だからそれを何とかしようとしてたんだゾ」

「ふーん、ややこしい事考えてたのね」

「でも・・・言われてからでは遅いが、確かに不義理な真似だったかもしれない。自国の利益を考える余り、知識を出し惜しみしていたのも確かだゾ。我々の事に関してはマキナに言われても仕方がない」

「・・・そう。じゃあこれからはもっと協力する訳ね」

「そうだゾ。ただ誰の主導にするかが何より問題だろうがな」

「なら、それ、私も戦力に混ぜなさい」


アロマの言葉にベーゼは一瞬硬直し、聞きなおす。


「・・・何?それは会議の仲間としてということか?」

「それもあるけど、私の魔法行使の力は見たでしょ?私の知らない魔法とかを知れれば私は強くなれるし、あんたたちも私の力から得られるものがあると思うけど」

「そ、それは・・・そうだが。・・・いいのか?」


その言葉足らずな疑問に、「恨みあるはずの我々に協力するのか?」という意図が含まれていることは明白だった。

首を少し傾げながら、アロマは言う。


「・・・まぁ、昔ならこんなことは言わないだろうけど。ていうか今でもなんでこんな事言ってるのか分からないけど。私混乱してるのよ。仲間と完全に認めたわけでもない奴に裏切られても、今まではなんとも思わなかったのに」

「・・・・・・」

「なにかしらね、この気分は。怒りと悲しみが混ざり合ってると言うか、端的に言って最悪な気分。なのに・・・なのにマキナの事嫌いになれないなんて。なんなのこれは・・・」

「それだけアロマにとってマキナは大事だったんだ、そういう証拠だろう」

「大事・・・、あいつが・・・」

「そうだ。アロマはきっと、怯えているだけだゾ」

「・・・何に?」

「裏切られることに、だ。君だって、力はあっても普通の女の子である事には変わりない。幼いころから追われていたというトラウマがあるだけだ。だから絶対に裏切らないであろう仲間を作ろうとする」

「確かに・・・そうかもね」

「だがな、そんなトラウマになるような出来事を止められなかった私が言うのも腹が立つかもしれないが、君を裏切るような真似をした仲間がいるならそれは諭してやらなければ一生そのままだゾ。幼い少女にそれを求めるのは酷だが、今の君にならそれが出来る。その結果どうやってもすれ違ってしまうと分かっても、まずは話さなければ相手を理解しようとしなくては先に進めない。・・・とても勇気のいる行動だがな」

「・・・そうね。そうじゃなきゃ、このままずっと生きていくなんて気持ちが悪いわ。面と向かって話してみたいもの」

「ああ、それがいいゾ。我々も全面的に協力する。これからよろしく、アロマ」

「おっけー、精々頑張ってついてくることね」

「・・・それは俺様もちょっと興味あるんだが」

「「?!」」

「いやなぜ驚く!ずっといたんだが!」


突如として聞こえたタ―ヴの声に、驚くアロマとベーゼ。

いることに本気で気が付いていなかったらしい。

驚いたことを覆い隠すように咳ばらいをし、アロマは冷めた目でタ―ヴを見る。


「ああ、何お前、いたの?」

「随分直球だな化け物兎・・・。俺様そんなに存在感ねーか・・・?」

「無いゾ」

「お前ら鬼だろ」


二人にぼろくそに言われ肩を落とすターヴ。

見た目は金色と蒼色に髪をそめている上にタンクトップから皮ジャンという目立つ為にいるようなファッションなはずなのだが・・・、いかんせん設計図を眺めている時間が長すぎて石像のように動かない為存在感がなくなっているらしい。


「・・・で、製作オタクのタ―ヴが興味示したのはなんだゾ?」

「まぁ否定はしないが・・・魔導兵器を創るカギになるんじゃねえかってな」

「魔導兵器?魔法で動く兵器ってこと?」


アロマの疑問に、タ―ヴは得意げに語る。


「そうだぜ。本来歯車を主体として動く兵器には寿命がある。しかし魔導兵器は動力を魔法で補うため、恒久的に動く兵器が造れる可能性があるんだ。これは永久機関魔導兵器論と呼ばれてて、あと広義では魔法による障壁と監視カメラや自動迎撃トラップを設置することで魔法と機械の融合を果たすという接続的疑似魔導兵器論ってのもあって、

で、なんでお前ら帰ろうとしてんだ!!」

「や・・・話長いし・・・」

「素直か!」


良く分からない長い話など聞く気が無い二人を引き留め、簡潔にタ―ヴは話す。


「まぁ要するに、魔法石に魔法を込められるならそれを譲ってほしいって話だよ。そっから先は俺様達の領分だからな」

「魔法石なんて珍しいものそうそうないはずだゾ・・・?」

「そうなのか?ドワーフの国では腐る程採れるが・・・」


そのすれ違いにアロマは頷く。

エルフの国は森林、ドワーフの国は恐らく山岳なのだろう。

当然地域ごとに特色も変わり、物の価値も変わる筈。

始めから別の種族との貿易とかしていたら儲かりそうなのに、とここまで考えて。

その疑問は大きく、広がる。

そもそも。

何故今まで私を含めた皆が、他の国の事を何も知らないのかと。

まるで。

何かに、無意識下で制限されていたかのように。

(いや・・・流石に考え過ぎかしら?)

そう思ったアロマは、思考をそこでやめて、話に戻る。


「じゃ、魔法石を持って来てくれたら私がお望みの魔法を込めるわ、それでいい?」

「おう、頼む!無駄にはしねえからよ」



伝達魔法を使用し、はるか遠い砂漠にいる人物と話すミューと夜は星空の美しい屋根の上で月見酒としゃれこんでいた。


『そりゃまた・・・クズだなマキナ。でもトオヤと同じ名前か・・・』


ちなみに当然のように通話の相手はヴァムピーラである。

第一勇者ヒラノトオヤと旅をした面々がそろっていた。


「どういうことなんだろう?まきなとはそれなりにはなしたけど、そんなちょうこう、あったかなぁ?」

「それを言うなら私もないみゅー。んー・・・、たまたま名前が同じだった・・・?同じ異世界人で?異世界ではよくあることなのかとミチに聞いてみたがそうそうある事ではないらしいけど」

『うーん、考えてもわからないことは考えても無駄、というのが信条だけど・・・』

「まぁ考えてしまうみゅーよな、この妙な一致は」


うーん、と唸る一同。

夜は遠出でお腹が減っていたのか持ち込んだ団子を口に放り込みながら、そしてミューの方は純水で作られた酒をちびちび飲みながらだったが。

暫くして考えるのに飽きたのか、ヴァムピーラは、


『それはそうと、ミューと夜はその国に残るのか?』

「残るみゅー」

「のこります」

『・・・随分即答だな?』


てっきり迷っていると思っていたヴァムピーラだったが、意外にも二人に迷いはないらしい。


「今離れるには結構未練が残っているみゅーからな。なんならもうここはミューの第二の故郷みゅー」

「わたしは、まきなのこと、きになるから」

『依は?』

「・・・わかんない。さいきんあんまりでてこなくなってるような、きがする」

『ふぅん?まあでもいいことかもしれないわね。依はかなり攻撃的だし』

(それ以前に依はトオヤの死と共に出来た人格だから出てこなくなる分にはいい傾向みゅーな)


恐らくヴァムピーラもおなじことを思っているのだろうと考えながらミューは酒を煽る。

つまみとして持って来た団子は食いつくされてしまったが。

月がきれいに輝く夜空を見上げながら、ミューはぽつりと呟いた。


「はぁ。私はどうしてこうも無力なのかみゅ―ね」

『・・・・・・』

「魔王と戦うことは出来ても、心変わりをする友人を引き留めることすらできない。幻覚とはいえミューは神羅万象を創造出来るのに、死に行こうとする男を見守ることしかできない。今も、昔も」

「いまさらですけど、すこしおもうんです。あのときちからづくでも、とおやをひきとめていたら、よかったと。・・・こんかいは、そんなこうかい、したくない」

『・・・そうね。でも迷いながらでも進むしかない。時代に取り残されれば死あるのみだ』


各々が考え込み、いくらか静かな時間が過ぎて。

ミューはぼんやりと言葉を口に出す。


「・・・マキナもこの月を見てるみゅーのかな?」


実のところ彼は残念ながら見れない場所にいたが。




そして時は戻り現在。


「・・・うそ」

「うん、ルーレがそう言いたくなる気持ちも分かるゾ」


扉を開けたそこには、全ての席が埋まっている円卓があった。

両手を口に当て、立ち尽くすルーレはぽつりとつぶやく。


「どう、して・・・?私達人類に協力してもメリットなんてないはずなのに・・・」

「ふん確かにそうじゃの。ならわらわは帰ろうかのぅ~?」

「じゃあ今直ぐ帰りなさいよ」

「冗談じゃよ。は~、ユーモアがないのう兎は」

「・・・第二ラウンド今から始めるか??」


結局いつも通りの竜と兎。

パールとアロマのにらみ合いに苦笑いしつつ、ミューは言う。


「マキナがどうしようが、やるべきことにかわりは無いみゅー。それにここで引き下がったら何もわからないままだ。あのマキナモドキの異世界人をとっ捕まえて聞きたいことは山ほどあるみゅー」


そしてベーゼの隣に座るトラムが静かに話しかける。


「それに、むしろ今までがおかしかったのだ。マキナの立てる作戦は毎回ほぼ完璧で、我々はそれを聞くだけだった。正直マキナに任せておけばいいだろうという甘えもあった。だから各個人でマキナとのつながりはあれど、横で繋がることは無かった。だが、今からは本当の団結が求められる。我々全員の知恵と力を振り絞り、戦う時が来たということだ。もう我々も出し惜しみは一切しないことを誓おう。ここに集まった首脳に、改めて言いたい。これから仲間としてよろしく頼む」


トラムの演説に全員が(何人か天邪鬼はいるが)頷く。

それを見てルーレの後ろでクーはふふっと笑いながら言った。


「いいわね。これでこそ私達も協力しがいがあるってものよ。じゃ、こっちも出し惜しみなく魔王マギア自慢の仲間を紹介させてもらうわよ。でもまとめる役は誰がする訳?」

「・・・そこですよね」


クーの発した当然と言えば当然の質問にルーレはうーんと唸る。

そう、次はそこが問題なのだ。

船頭多くして船山に上るとも言う。

少なくとも誰か一人をマキナのように議長として選ばなければいけない訳で、当然自ずとその種族の決定力は高まる筈。誰を選んだところで必ず不満が出る選択だ。

最悪の場合多数決か・・・?とそこまで考え込んで。

ようやくルーレは気が付いた。

無言で自分を見る視線の多さに。


「え?えっと・・・?」

「いやあんたしかいないでしょ」

「はぁ!?」


まだそれ悩んでたの?みたいな呆れた声音でアロマから言われたルーレは素っ頓狂な声を上げる。

自分が?

悪魔以外の全種族揃った世界会議のまとめ役?

一年前、貴族がどうこう言ってた時期からは想像もできない次元である。


「な、なんでわたしなんかを?」

「ぜんいんから、しんらいされているから、じゃないでしょうか?ひいきとかも、きっとしないと。まとめやくとしても、まきなをずっとみていたるーれさんをやくぶそくといえるひとはいないです」

「それにだゾ、相手にはマキナがいる。あれを超えるにはそれ相応のトップが必要だ。それはルーレを他においていないと思うゾ」


夜とベーゼの言った通りの事を本当に全員が思っているらしく、異議は驚くほど無かった。

そんな中ミューは優し気に、


「まぁ嫌なら辞退してもいいと思うみゅー。実際とんでもない責任も生まれるしな。だが一応ミュー達も全力でサポートはする。だから、どうみゅーか?」

「・・・・・ご主人様、いや。マキナを、超えるですか」


そこで、ようやくルーレは気が付いた。

今までは、マキナに追いつきたいとしか考えていなかったことに。

マキナを超えようなんてこれっぽちも思っていなくって、自分で自分の可能性をいつのまにか捨てていたことに。


「分かりました。その役目、私がやらせて頂きます!」


その力強い言葉と覇気に全員が頷く。

ルーレの後ろで様子をうかがっていた恵達も顔を見合わせて笑う。

マキナによって生まれ、マキナによって壊された結束は、今また奇跡的に一つとなった。

確かに敵は強大かもしれない。

確かにまだ互いを信頼するには時間もかかるかもしれない。

それでもこれまでの歴史からではありえないことが起きていた。

後は今から魔王軍に備えるだけ。


だが。

そ ん な 時 間 な ど 、 与 え る 彼 で は な い 。


ぐらりと。

明らかに地面が揺れた。

床か?

建物か?

それともまさか地面自体が?

彼女たちの頭をそんな考えがよぎる。


否だ。


大気全体が揺れていた。

精巧な窓ガラスがビリビリと揺れ、不快な音を出す。

慌ててテラスの窓を押し開け、飛び出たルーレの眼には。


天から降りかかる無数の隕石が堕ちて来ていた。

いやどの辺がすぐ投稿だって?前回のあとがきを後悔しているそよ風と申します。

全然すぐできなかったよ・・・。

なにしてたかって?

りゅうおうのおしごと!面白いなって全巻買って読んだりしてました、何しとんねん。

次回こそ、次回こそ早めに!

と言いつつSAOの3期始まっちゃったりしててまぁ間違いなく遅いでしょう。

もう気長に待ってくださいすみません・・・。

では今回はこの辺りで。

ここまで読んでくださった方に感謝を。



ようやく戦争が始まる・・・。

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