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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
3章・「前世の悪行で苦しんでるのは俺くらいのもの」-ヴァンパイア統領国内戦
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幕間29・光と闇を共に好む幽霊(カオスホール・イン・ザ・サクラ)

ほんの少し時はさかのぼる。


ぜえぜえと、息を吐く。

私だけではない。

夜もシレーヌも不死であるアルティアナでさえそうだった。

なのにサクラは悠然と笑う。


「おやぁ??どーかしました?まさかもうギブじゃないわよね」

「それこそまさかだよ」


笑い飛ばしながらも恵は剣を構え直し、ふぅーと大きく息を吐く。

戦いを始めてから既に半時程の時間が経っている。

その間延々と薙刀の攻撃と鎖に気を払いつつ攻撃を加えているのだから消耗するのも当然だ。

加えて恵に関しては宵闇との戦いの傷もある。

ぶっちゃけ刀傷を負いながら1時間も戦闘が出来る時点で超人である。

しかし彼女の勘が、このままではジリ貧だと警鐘を鳴らしていた。

だが無限にも思える相手をどうすれば・・・。

その答えは驚くことに相手から提示された。


「・・・切り札」

「えっ?」

「そこの鳥ちゃんには切り札があるんでしょ?私その会話聞いてたから。なに?どんなの?私に勝つ方法なんて私にも分かんないんだけど」

「いうわけねえだろボケ」


呆れたように毒を吐くシレーヌにちぇっ、と拗ねるサクラ。

そんな会話中にサクラがニヤリと笑った。


「そんな不意打ち効くわけないじゃない」


背後から音もたてず忍び寄っていた夜はそのままサクラへ飛び掛かり、毒の爪で首筋を狙う。

人狼で突然変異している夜の瞬発力は獣をはるかに超えるが、サクラはにやにやしながらその手首を握り。

そのまま気軽な様子で宙に放り投げた。

抵抗も出来ず吹き飛び建物の5階部分に叩きつけられる・・・ように見えたが、どう着地したのか完璧な受け身で衝撃を殺し、夜は垂直な壁に爪を使い張り付く。

それを見て吹き出すサクラ。


「猫なの?狼ってイヌ科でしょ?」

「そぉんなぁあ雑学はぁどうでもいいいいよぉおおぉ???」


サクラから10メートルは離れた位置にいるアルティアナ。

どんな達人であっても一挙手一投足の間合いにもかかわらず、彼女はその場で右足を蹴り上げる。

スカートであることも気にせず絶対領域をちらりと見せながら放たれた蹴りは、なんと 伸 び た 。

血脈を赤く浮き上がらせる神速の槍と化した足は、衝撃波を発しながら迫る。

更には横から暴力的な光が襲い掛かった。

極光を纏う剣を下段に構え、地面を削り取りながら振り上げ恵は叫ぶ。


「開放ッ!!エクス、カリバ―ーッ!」


神速の槍と致死の剣。

それを前にしても肩を竦めるだけのサクラは地面を蹴り、避け


「感性変更コードⅤ【右足の感覚が消失する】」


がくりとサクラの体勢が崩れ。

同時に凶悪な攻撃がサクラを吹き飛ばす。

建物を貫通し向こう側の通りまで風穴があいた。

しゅたっ、と壁に張り付いていた夜が地面に降りてアルティアナに、


「・・・ごめん。わたしのちからが、ないばっかりに」

「いいぃよぉお!っていうかぁああいつも明らかにぃい夜ちゃんの毒受けない様にたちまわってたしぃい」

「ここからが本番だね。シレーヌちゃん、いける?」

「準備は問題ない。効果は保証しねーけどね」


「ガタガタうるさいわねぇ。あはは」


今まで通りに。

サクラがひょこりと起き上がる。


「そろそろ飽きそうよ。反撃していいかしら?」

「そう。なら飽きさせない様にしてあげるね」


つまらなそうに言った言葉だったが恵からの返答を聞いて、まだ何かあるのかと喜んだ瞬間だった。



めきゅり、と摩訶不思議な音を立てながら半透明の身体が平らになった。


「・・・あぁ??」

「そこうどく。じげんがおちる、きぶんはどう?」

「ばかな、いつ・・・?」


夜の攻撃は一度も食らってやっていないはず・・・と、思ったとき、サクラの眼に驚きの光景があった。

アルティアナの右足までもが平らになったのだ。


「お前・・・そのヴァンパイアの足に毒を!?」

「ああはははははっははははっは!!おっどろいたぁああ??」


笑いながら手慣れた様に足を切り落とすアルティアナ。

彼女の右足は、瞬く間に再生する。

だが痛みは尋常なものではないはずだ。

なのに。 


「ナイスな提案だったよぉお、夜ちゃああん!」

「わたしに、もっといいこうげきしゅだんが、あればよかったんだけど・・・ありがとう、あるてぃあなちゃん」

「・・・馬鹿が」


胸や右肩が異様な程薄くなるという異常事態にも。

それでもなお、サクラは笑ったままだった。


「こんなもんすぐ治るっての。毒は浸食するもんだから面倒だなって思っただけで、100人分くらいの生命力を切り捨てるだけで簡単に・・・」

「そうだな。そうだと思ってたよ」


初めて。

そう、本当に初めて、この世界に来て味わったことのないような嫌な予感がサクラを襲った。

半透明の身体がゾワリと蠢く。

これは長らく忘れていた、恐怖という感情か。


セイレーンの少女の羽根が、目が、金色の光に侵され始めていた。


「・・・あ?」


理解が出来ない。

今から何をするつもりなのか全くわからない。

普通なら未知というのは恐れるべきものだ。

だが彼女は普通ではなかった。

血統から連なる研究者としての好奇心が勝った。


愚かにもそれが明暗を分けることになるとも知らないで。


「「「・・・神妙にしろよ」」」


シレーヌのその声が何重にも響いたように感じたその瞬間。

金色の光が鎖となり、サクラの身体に突き刺さった。

否。


「ま、て・・・!?まさか、貴様・・・ッ!!」


何故か理解できた。


その鎖は。



 サ ク ラ の 魂 に 突 き 刺 さ っ た 。



「「「 十 属 性 魔 法 『 喪 失 』 」」」


その言葉と。


身体の内側の物を総て引きずり出されるかのような不快な感覚と共に。


サクラの意識は消し飛んだ。




シレーヌが金の光を纏ったまでは恵達にも見えていたが、声も金の鎖も魂も見えていない彼女たちからすれば、それは突如二人が倒れたようにしか見えなかった。


「し、シレーヌちゃん!?大丈夫なの?何が・・・!」


駆け寄った恵の後ろで、どじゅぅううううううううううう!!と焼けこげる音が響いたかと思うと、サクラの身体が倒れ伏し。

その総てが灰となった。


「・・・かった・・・?」

「ああ。うまい事・・・、成功した・・・!」


夜の言葉に、しゃがみ込みながら両目から血を流し手で押さえるシレーヌが喜色を隠さず返答し。

ようやく実感を得た。


「・・・あは、やった、やったぁ・・・ッ!」


夜が小さくジャンプして喜び、


「んんん、シレーヌちゃんおてがらぁああ!あとはまぎあんだけだねええ」


アルティアナがマギアの事を想い、


「ふぅううう~、何とか今回もなったね。皆のおかげだよ!」


恵がいつも通りの勝利を飾り、


「・・・けっ、ほぼ私のおかげだろが、ははっ」


毒舌を吐きながらも、まんざらでもなさそうに笑うシレーヌ、


と。



バシュッ、とシレーヌに背後から薙刀を突き刺すサクラ。



「・・・?」


かすむ目でゆっくりとわき腹から飛び出た刃を見て。

スッと、シレーヌの意識は途絶えた。


「・・・いやいや、まさかここまで本気を出させるとは思わなかったわぁ。でももう皆死ぬけどね」


絶望がそこにいた。

震える声で夜が呟く。


「なんで・・・たしかに、はいに・・・」


灰になった場所を見ると。

そこに、灰など無かった。

驚きに言葉も出せない彼女の腕が、突如。

ごきゅりと背後に掴み上げられた。


「ぎぃいぐうううううぅ!!?」

「よそ見はいけないわ」


目の前にいたはずの敵が。

いつの間にか、背後にサクラがいた。


夜の腕を掴み上げたまま、地面へと叩きつけ。

背中を踏みつけながら両手をあらん限り引っ張った。


「あああああああぁっががあああああああああああああああああああ!!!!」


ゴポゴキュッ!!と嫌な音とともに異様な程夜の腕が伸び、おかしな方向へ捻じ曲がる。

激痛に絶叫する夜に、ニヤリと嬉しそうに笑うサクラ。

その横から血脈の浮き出た刃が襲い掛かり。


「八属性魔法『罪ありし者への罰則ソーン』」


ガッ、と刃を受け止めた右手から光で出来た有刺鉄線のような網が放たれ、アルティアナを覆う。

そのままそれは彼女を抱きしめるかのように全身を縛り付け。

棘が、1メートル程まで伸びた。

アルティアナの肌に奥深くまで侵入した無数の荊は、徐々に成長し、肌を肉を抉りながら突き進む。

流石のアルティアナも激痛に歯を食いしばり抜け出そうとするも、それは敵わない。

まるでその姿は、鉄の処女に入れられ悶え苦しむ罪人のように見えた。


その間、たったの2分程度。

拮抗していたと、そう信じていた戦況は。

気まぐれによって脆くも崩れ落ちた。

唯一立つ、しかし立ち尽くす恵にサクラは状況にそぐわないくらい優しい声で語る。


「・・・ねぇ、勇者さん。私に付かない?」

「・・・・・・」

「私と貴女なら、こんな国程度じゃなくて、もっと。そう、世界中を支配できると思うのよ。ねぇ、どうかしら?」


無言の恵に、嗤う。

サクラは人間の壊し方を知っている。

誰よりも。

何故なら・・・・・・自分がやられた事だから。


(光と闇は、織り交ぜてこそ。希望が無ければ真の絶望は訪れない。虚無感。無力感。脱力感。そして絶望感。それこそ人間の本質。さぁ。堕ちなさい、一之瀬恵)


「この3人・・・いや、貴方の仲間だけは助けてあげる。私に・・・傅くのよ」

「・・・・・・」


滑り落ちるように。

恵の膝が落ちる。

ニタリと笑ったサクラに。


極光が襲った。


「・・・へぇ」


剣先により斬れた髪を少し散らせながら、感動でもしたかのようにサクラはつぶやく。

恵は剣を構え直し、サクラの眼を真っ直ぐ見据えた。


「今までの・・・私だったら。

膝を折ってたでしょうね。

仲間が助かるなら、それなら私は贄になるって。

どんな行為を強制されたとしても、大切な人の為に、って。


だけど違うんだって、気づかされたんだ。


皆の中に、私がいて。

私の周りに、皆がいて。

それが、それだけしか幸せの形はないんだって。

仲間の誰かが欠けることも、私が欠けることも、同じようにダメな事なんだって。

そのために・・・お前を倒す。

お前を倒すことだけしか、私達の幸せはないんだよッ!!」


覚悟を決めた者の。

死すら覚悟した者の剣は、重い。

この場に仲間たちがいれば驚きを隠せないだろう程の踏み込みの速度で迫り、恵は全力で剣を振り下ろし。


「無駄だっつの馬鹿」


片手で受け止められ。

剣は砕け散った。

恵の眼の奥。

そこに宿った絶望に、心の底から嗤うサクラはくるりと回転し薙刀の柄で恵の腹を強打する。


風圧により建物が揺れ、恵は衝撃波を発し地面をバウンドしながら100メートル以上吹き飛んだ。


「あー、無駄な時間だったわぁ。逃げようとしてる連中も哀れねぇ。私の結界で出られるはずないのに」


そのまま去ろうとしたサクラだった、のだが。

土煙の奥。

恵を吹き飛ばした方向から。

何かが聞こえたような気がした。


「・・・?あれ、もしかして生きてる?遊んであげましょうか?」


返事はない。

気のせいだったのかと顔を背けると。

ぎらりと。


真っ白な極光があふれ出た。


ただの光ではない。


浸食していく。


建物が。馬車が。レンガの道が。洞窟の壁が。


有り得ないほど白く、輝く。


知識にない現象に驚くサクラの目の前から。


突如、光の塊が突進してきた。


反射的に薙刀を振ったサクラだったがその塊は薙刀を掴み取り。


ぞわっ、と、白く変えた。


「なっ、神器までも・・・!?」


驚くサクラに。


塊の右手が、まさしく光速とすら呼べる速度で。


「・・・えくすかりばあああああああああああああああああああああああああ!!」


爆 発 し た 。


比喩では無い。


光の塊にしか見えないほど髪も肌も服も白く染まり切った恵が叫ぶと、神器を解放した瞬間のような衝撃波がサクラを襲った。


先ほどとは逆にサクラが反対側へ大きく吹き飛ぶ。

恵は眼の焦点の合わないまま、ゾワゾワといつの間にか長くなった白髪を蠢かせゆらゆらと立つ。


「なんだこりゃ」


吹き飛ばされたはずのサクラは、いつの間にか恵の目の前に戻ってきていた。

白く浸食される世界。

その中心に立つ、恵がぐらりと揺れながら顔を向ける。

どうやら敵だと認識でもしたらしい。

面白いな、と嗤いながらサクラは何故か白く染まっていない薙刀を振りかぶり。


そこで。


白い世界に、黒を見た。




「・・・は?」


その人影をサクラは幻覚だと断定した。

幻影を見せることで動揺を誘うという作戦だと。

しかし、その影は硬直した彼女を笑う。


「どうしたんだ?まるで・・・死者でも見るような眼をしやがって」


先ほどまで獣のように暴れまわっていた恵を抱き寄せ、その極光の浸食すらものともしないその男は。

一切の怪我もなくサクラの前に立ちふさがった。


「・・・あり、得ないでしょ。あんた誰よ!!」

「そう喚くなよ」


呆れたようにそう言うその影に、後ろからうめき声と共にボスッと重みがあった。

後ろを見ずともその特徴的な狼耳で誰なのか、そして何がしたいのかまでありありと分かった彼は忠告する。


「攻撃しようとしてるんだろうがびっくりするくらい体に力が入ってない。どっか折れてるんだろ、黙って守られとけよ依」

「・・・る・・・さ、いッ!わたしは、お前に・・・ッ!」


絞り出すような声でも殺意が伝わる恐ろしい覇気だが、どうしたって体が言うことを聞かないらしい。

ずるっとそのまま地面へと倒れ込む。

その様子をチラッと見て、やれやれというふうに肩をすくめると倒れる依の隣に気絶し真っ白になっている恵を横たえた。

恵の耳元で何かを呟いた後、彼は依にも言葉を向ける。


「お前の復讐ならまた今度受けてやる。だから今は、

「・・・違う」


彼の言いかけた言葉に、依は弱々しく否定を返した。


「クーとかの話を聞いてて、夜の考えを見てて、ここからあんたに復讐する気なんて起きない。だから・・・せめてもう楽にさせてよ」

「・・・何?」

「もう、いいのよ。復讐なんて・・・。死にたい、死んで楽にさせてよ!!」


明確な感情の吐露に驚いたのかすこし動きが止まった彼だったが次の瞬間には、はぁ~・・・と大きなため息をついていた。

そしてきっぱりと言う。


「させねぇよ」

「・・・なんでよ・・・。なんでッ!なんであんたはぁッ!!・・・私は助けてトオヤは殺したの?!どうして!!答えろよマギアぁああああああああ!!」


涙でぐちゃぐちゃになりながらも激痛の中で最後の気力を振り絞り叫ぶ依に。

彼は背を向け、答える。


「・・・それが彼の意志だ。それだけ知っておいてやってほしい」

「は・・・??」

「今はただ信じろ。お前の知るトオヤという、真の勇者を」

「どういう、こと・・・?何を知って、るの?!教え・・・て・・・」


そこまで必死に口に出して、必死に手を伸ばそうとするも。

彼女の視界は徐々に暗がりに落ち、がくりと意識を失った。



「・・・なるほどそうか」


依も気を失ったのだろう。

だれも喋る者の居なくなったその場所で、サクラが何かに納得したようにうなずく。


「そうかお前・・・『海淵の具現』か。いやー騙されたわ。久々に本気で驚いた。あの人魚もなかなかいい線ついてくるじゃない」


未だに余裕そうに喋るサクラに、彼は無言で歩を進める。

その姿に、こらえられないといった風にしてサクラは嗤う。


「かわいそうに・・・。好き勝手に生み出されて貴方もいい迷惑よねぇ。だって正真正銘、あのミューって奴は貴方の事捨て駒としか思ってないのよ?」


そんな言葉にすら反応せず、彼は黙々と距離を詰めていく。

その姿に何を思ったのかサクラから笑顔が消えた。


「正気?その歩みを止めないの?つまんな。具現とか言ったところで所詮は意志もない抜け殻か。それに人魚以上の力量の者を生み出すこともできないって聞いてるし、もういいわ。死ね」


スッと薙刀の柄を握り直して、彼の頭を叩き割ろうと白銀の刃を振り下ろして。



「な


右手でパシッと、あまりにも容易く白刃取りをされて。


驚きの言葉を、発する前に。


突 如 体 が 浮 い た 。


そうとしか表現できない・・・、


サクラがその思いを抱いた時、もうすでに。


彼女は。


1000メートルはあるはずの天井に激突する。


だけでは、済まず。


ヴァンパイアの歴史上、加工どころか砕けなかった蒼く輝くウスバカゲロウの水晶にめり込み。


遅れた様に大気が焼け。


水晶と岩壁を 溶 か し な が ら 。


紅の炎と蒼の溶岩に飲まれた。




所変わって砂漠の地表。

脱出を目指す住民たちを外へと押しやりながら、クーは恵達4人を抱えなんとか外へと脱出を果たしていた。

彼女たちを砂場に放り投げ、生命力の切れかかったクーも倒れるように寝転がる。

そこにミューが顔を覗かせた。


「よかった・・・大丈夫みゅーか?サクラは?」

「さぁ・・・姿は見えなかったけど、倒れてるとこも見てないわ」

「そうみゅーか・・・。住民の避難もそろそろ終わりそうみゅー。怪我人をまとめて医者に診てもらってる場所があるからそこに・・・、ッ!?」


その瞬間。

洞窟の天井の一部がいきなり爆発した。

そうとしか言えないことが起きたのだ。

崩壊していく天井から、城の天守と同じくらいの大きさの岩がばらばらと落ちてくる。

更にはその付近の砂漠の砂が流れ込んできていた。

もう止まらない。

そのことを悟った瞬間、クーの脳裏にかすかに見えた黒い人影がよぎった。


「・・・確かに、見たのよ・・・!あれはマギアだった!助けに行かないと!」

「待つみゅーっ!!もう洞窟は崩壊を始めてる!転移する生命力もないクーをいかせるわけにいかない」

「そんなの気合で何とかするわよ!!」


ミューの静止も聞かず飛び出そうとするクーに、覚悟を決めたようにして彼女は言う。


「・・・それは多分ミューが造った幻影みゅー」

「な、んですって?」

「悪気はなかったみゅー・・・。サクラを止めるにはあいつが警戒する物を出現させないと時間を稼げない。だから・・・」

「・・・・・・・・・」


どさりと膝をおり座り込んだクーの腕を離し、ミューは朝日が差し始めた砂漠を遺跡の方へと歩いて行く。

ルーレとすれ違う瞬間、彼女へ小声で質問をかけた。


「・・・あの今のお話って、

「ほんとだって言ってるでしょ」

「そうですか・・・」


食い気味で言うミューにうなずくルーレ。

ルーレの知る限り。

ミューは避難誘導のための兵士を作るために『海淵の具現』を使っていたはずだ。

いくら彼女でも、目視すらできない、それもサクラのいる場所へピンポイントに幻影を造ることなんて不可能だろう。

それはすなわち生きているか分からないマギアより、今生きているクーの安全を身を挺して守ったということ。

この嘘を永遠につき続ける覚悟を決めたということだ。

ならルーレが出来ることはもうないのだろう。

そう思い深くは追及しなかった。

いや、というか出来なかった。


突如として強大な揺れと共に洞窟から見て丁度真上あたりの砂漠の砂が遥か朝日の輝く空へめくり上がり。


美しい硝子細工へと姿を変えたのだから。


何とか今日中に完成しました、そよ風と申します。

すみません。

うん、ほんとすみません。

今回で終わらなかったや☆

・・・あるぇ・・・?なんでこんなに長く・・・??

自分でもびっくりするくらい戦闘シーンに筆が乗りました。

今回は見せ場が多かったからでしょうか?書いてて超楽しかった。

普段からこうしろってのな。(自戒)

恵が化け物すぎだけどねぇ。ちょくちょくあとがきでも書いてるけど、マジ主人公。

しかしながらまだ戦いは終わらない。次回対サクラ戦ついに決着か!?

では今回はこの辺りで。

ここまで読んでくださった方に感謝を。



遂に次回。あのお方が、波乱を巻き起こす。

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