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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
3章・「前世の悪行で苦しんでるのは俺くらいのもの」-ヴァンパイア統領国内戦
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幕間26・月光の下に狂い咲く華(イラティナリー・プラント)


妹の手を取りながら崩れ落ちたシュレフィストが手紙を簡単に信じる事。

これは黒幕たるパールにとって予想の・・・範囲内だった。


(シュレフィストとかいうあの人間。どうやらわらわが話す前からマキナが別人であることを直感していたようじゃった。だとすると時間稼ぎ程度にしか使えんじゃろうなぁ)


所詮は捨て駒。何かと理由をつけてマキナを貶めさせれば自然と武力を持つパールが主導権を握れるだろう。

悪魔だとか他の種族だとか、パールの眼中にはない。

正直マキナが本物かどうかもかなりどうでもいい。

あるのはちょっと賢い今いるマキナをおもちゃにして遊びたいという純粋な欲求。暇つぶし感覚である。

最強の生物に、大義など不要なのだ。

なのだが。


「・・・何じゃこれは?」

「火薬・・・ですかね?劣等種の考える事は理解しがたい・・・」


頬杖をついて火薬を眺めるパールと頭を抱えるプラチナ。

そしてその前には捕縛されたノーブルとフィリアが転がされていた。


「これ、フィリアさんも頼まれてたんですね。こんなバカげた頼み、てっきり僕にだけかと」

「あはは・・・いやーマキナ様の頼みだったので断れなくて・・・」


その二人も空笑いだったが。

それもそうなるだろう。

彼らがやったことはそれくらい状況にそぐわなかったのだから。


「王族も議会連中も捕まり、城内の緊張が張り詰めた状態で・・・花火って。しかも打ち上げるやつを室内で何か所もって!馬鹿ですか?馬鹿なんですか??」

「「・・・・・・」」


プラチナの言葉に返す言葉もない二人。

事実室内でドンパチやったのだから当たり前だが。

しかしパールはフィリアの言葉に疑問を覚えたらしい。


「マキナの頼み?花火をやるのが頼みじゃったのか?何のために・・・?」

「わ、分からないですよ。でも今にも殺されそうな状態になるって分かっててこんなことしないです」

「・・・それにしては貴女、簡単にマキナのせいにするわね」

「え、えっと・・・そう言えと、これまた言われてまして・・・」

「ふむ。意味が分からんが、まぁこれはこれで面白いもんじゃて。いくらマキナといえどこんなしけた火薬でわらわを止められると訳も無し。すこし買いかぶっていたのかもしれんの」

「パールさん、大体は拘束し終わりましたわ。あとは兎ぐれーでしょ。例の悪魔を暴く魔法、使ってほしーのですが」


あくびをするパール達の下にやってきたのは微妙に目の赤いシュレフィストだった。

彼女の言う兎とはアロマのことだろう。

あいつ一匹逃したところで何が出来るわけでもないの、と計画の終わりを悟ったパールは。

事もなげに言った。


「うむ御苦労、プラチナ。


 全員焼け」


「御意」

「・・・・・・え?」


シュレフィストが言葉を理解する前に、プラチナの細身の体がキラキラと輝き。

巨大な爪が伸び。首が鱗が翼が尾がはえ。

王宮の壁をガリガリと破壊しながらそれは顕現する。

美しかった。

まさしくプラチナのように透き通った光沢を持ち、無数に光を乱反射する鱗とかすかに見える心臓のような赤き光は、究極の美に達していた。

しかし。


「GGGGIIIIIIAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


咆哮の一つで。

現実が降りてくる。

その全長は優に100メートル以上。

冷たく光る赤い眼には人間など映っていない。

鋭い咢も爪も尾も脅威であるはずなのに、身じろぎ一つで王宮を破壊したことに圧倒的な格の差を感じずにはいられなかった。

それは生態系の頂点であるが故の生物的な恐怖。

5000年前から延々と君臨してきた純血の古龍5匹のうちの一匹。

それがプラチナ・アヴェリンである。


「まっ・・・!?待って!約束がちげ―ですわ!!」

「何処がじゃ?炙り出す訳じゃよ文字通りにな。ただの人間なら死にかけるじゃろうが悪魔なら生き残るはずじゃろ?」

「ば、バカを言わねーでくれます・・・!?私達は協力者で・・・!」


血相変えて叫ぶシュレフィストに。

パールは彼女の胸倉を掴み、嗤う。


「あぁ、そーいえばそうじゃった。いままで御苦労さまじゃったの。褒美に今ここで死ぬか家畜として飼われるか選ばせてやろう」


無茶苦茶だった。

魔女裁判すらドン引きの執行命令だったが、なんのためらいもなくドラゴンの姿に戻ったプラチナは城内を闊歩し始める。

その度に響く地響きは道行く物を破壊していく。

人類の叡智を結集させた王宮を。

初めて兄に貰ったガラス細工も、父親に怒られて兄弟皆で集まって対抗するために作った中庭も。

もうどうやったって手に入らない思い出が詰まったすべてだって。

ドラゴンの前では塵芥も同然である。


「・・・・・・」

「あん?何か言ったかの?まー心配することではなかろう。おぬしの家族は痛みも感じず死ぬ。幸せではないか」

「・・・私はこの国の女王として命じますわ。今すぐ止まりやがれこの爬虫類がぁぁぁぁぁッ!!」


その怒声と共に。

どどどどっ!!と天から炎の弾が降り注ぎ、プラチナの背中で爆発する。

2属性魔法『爆発連花』。

シュレフィストが得意とする火魔法の粉塵の中でもパールは幼女の姿で笑顔を崩さない。

それ以上に、プラチナはこちらを一瞥もせず。

長い尾がしなり、シュレフィストを吹き飛ばした。

人生で一番と断言できる重き一撃は、容易く彼女の身体を砕く。

パールは尾を容易くかわしていたのか倒れ伏すシュレフィストに笑いかけた。


「ギッ・・・っ!ガはっごほっ」

「なんじゃ、その花火以下の魔法は。時間稼ぎにも・・・」


そこまで言って。

彼女から笑顔が消えた。


「時間稼ぎ・・・。まさかあの男、この事態を予想して花火なんぞを・・・?」


そうだ。

本来であれば牢獄の連中を殺すのはもっと手早く済むはずだったのだ。

こんなちんけなイタズラが無ければ。


(何じゃこの感覚は。まるで手のひらの上で踊らされているかのような・・・)


『パール様。如何なさいましたか?』

「・・・いや、考えすぎじゃろう。プラチナ、さっさと全員やってしまえ」


クイッとプラチナが頭を下げ、了解の意を伝えた時。

バチバチバチッ!!と上空に巨大な紋章、円形の魔法陣が浮かぶ。

そこから出てくるのは・・・。


『刃先が12に分かれた巨大な剣・・・!まさか七属性魔法の天剣!?』




アロマたちが地下牢に着いた時、そこでは王族たちとベーゼが言い争っていた。


「馬鹿なっ!首都を消し飛ばそうというのか!?」

「流石にそこまでの威力は無いゾ。城下町辺りまでは被害が出るかもしれないが」

「・・・それしか、それしか方法はないっていうの・・・?」


悩み切った様子の彼女たちの横からヒューリーがアロマに手招きする。


「あ、アロマさん!よかった!」

「どういうこと?どういう状況?」

「ドラゴンの一人が地下牢ごと私たちを殺そうとしに来てるらしいんです!で、エルフの国の術者を集めて、すごい魔法を上空から撃ってこの周辺ごとドラゴンを倒そうとしてるらしくて!地下ならなんとか安全みたいです」

「なにそれっ!?人類の国の首都に攻撃しようってことっ?」


ランの叫びに、うんざりした様子でベーゼが目を向ける。


「さっきから言っているが、じゃあどうするんだゾ?このままいてもドラゴンが国を破壊するのは明らか。犠牲を最小限にするのが王たるものの務めだろ。マキナがいてもそういうんじゃないのか?どうなんだ?」

「し、しかし・・・」


ユリの歯切れが悪くなるのも当然である。

その選択1つで。この国の未来が大きく変わるのだから。

何が最善かなんてわからない中で。アロマだけはためらいなく戦場と化した王宮へと歩き始める。

そして。


「・・・時間切れ、だゾ」


そのベーゼの言葉と共に、地下牢の割れ目から見える上空に魔法陣が浮かぶ。

重力に従い落ちてくるのは朱き12に分かれた巨大な剣。

その名は、


「七属性魔法『天と星辰の所以なす形骸剣ラーゼン・シャリア』。人間が目にすることすらない領域の魔法だゾ」

『我々は今、裏切者と成ったのだ・・・。だがこれでいい。同盟国を攻撃するような真似をしてでも、ドラゴンの脅威だけは排除しなければ』


目をつぶるベーゼと、確たる意志を決めたらしきトラム。

そんな思惑など知りもしないかのようにプラチナの声が響いた。


『・・・笑止ッ!何時の時代もエルフというのは愚かだな。このような出来損ないの7属性魔法など、我が咆哮の前では塵芥だと教えてやろうッ!!』


空間が、軋んだ。


そう錯覚するほどのエネルギーがプラチナの咢に収束する。

天剣と咆哮、両者共に地形を変えてしまう一撃である。


そんな桁外れの場所に。


「まって!シューおねえちゃんは!?お姉ちゃんがまだ外にいるよね!?」


叫ぶシャルロットがそのまま外へと飛び出そうとし、それをアロマがひっつかみオーラを方へ投げ飛ばした。

あまり面識のないシャルロットは背を向けるアロマに叫ぶ。


「ふぎゅうっ!?な、なんで?兎さんには関係ないでしょ・・・!」

「そこにいなさい。あいつの、マキナが守りたいものにはあんただって入ってるんでしょ。『仲間』が大事にしているのなら、私にとっても大切なのよ」

「行くんですねっ。ランちゃんも一緒に・・・」

「悪いけど足手まといよ。エルフの所の魔法もね」

「正気か?何を考えているんだゾ・・・?無駄死にはよせ!」


「いーから私に任せなさい。それにマキナも何かを切り捨てるような選択はしない。いつだって鮮烈に、諦め悪く、飾るのよ」


禍々しい天剣が魔法陣の虹色を照らす空より落下し。

プラチナが咢より白銀の光線を吐き出し。

爆音が大気を揺らす。

圧倒的な力と力のぶつかり合いを誰もが予測したとき。



その総てが突如、灰色に染まりきった。



「完全勝利をね」



仄かに白き光を纏うアロマの足元には、ばきばきと荒れ狂ったように成長する無数の蔓。

その緑の道は真っ直ぐアロマを誘導するかのようにパールの方へとつながった。


「・・・ば、バカな・・・。なんだこれは・・・」


世界最強の生物は。

5000年間敗北どころか、恐怖すらしなかったパール・ヘキサティアドラゴは。

本能により人生で初めて死の予感を感じ取る。

しかしそれはパールだけに限ったことではなかった。

地下牢で見ていた面々、そして遠隔で様子を見ていたエルフの国の術者たち。

その総てが等しく、たった一人の少女に恐怖したのだ。


「10属性魔法『絶華』・・・とでも名付けようかしら」


石と化していた。

7属性魔法だけでなない。

白銀の光線も、そして巨大なドラゴンであるプラチナ自体も。

それらだけが時を止められてしまったかのように。

そして。

石像には無数の植物が生えていた。

灰色と緑の二色の中に一人泰然と立つ少女は。

白く長い髪とウサギの耳を持ち合わせる彼女は、まるで哀れな虫を見るような様子で続けた。


「ふん。案外簡単ね、10属性魔法なんて」

「・・・イキモノを、植物に変えた・・・?こんなことがあるはずが無いゾ・・・」

「元々、私は煉魔の徴収っていう木が石化するほどに生命力を奪い取り、それを魔法発動の糧とすることで自身の生命力を使わずに魔法を発動する特殊な能力を使って魔法を撃ってた。でもこの10属性魔法はその逆、イノチを植物に変える魔法よ」


イノチって言っても、要するに生命力をだけど。

そう補足するアロマ。

説明したところで起こる事象は変わらないが。

余裕そうな彼女にその場のほとんど全員が恐怖と畏怖に押しつぶされる。

だが、口で言うほどには容易くなかったらしい。

ガクッと膝からアロマが崩れた。


「アロマさん・・・!?」

「・・・大丈夫よ。この辺り植物が少ないもんだから、久々に自前の生命力を使って足にちょっときただけ」

「戦いは決したわ。直ぐに休める場所を・・・」

「いや」


オーラの言葉を遮り、ゆっくりと立ち上がる。


「まだアイツがヤル気みたい」


「・・・貴様・・・ッ!許さん、許されんぞぉおおおおお!!!』


史上最強の種族の長たる故か、彼女は怒りの方が上回ったらしい。

たった一回の魔法で物言わぬ彫刻になってしまうという根源的な恐怖に打ち勝つとは、やはり名ばかりではないのだろう。

叫ぶパールが虹色に光り輝きプラチナ同様に翼や尾を形作っていく。

いや、それだけではない。

プラチナよりも二回りは大きく更に決定的に違う点があった。

怒りに満ちた眼と咢、その頭の上に輝く虹色の輪っか。

そして・・・煌めく白き第三の翼。

まるでそれは。


「・・・て、天使・・・っ?あは、はっ、流石のランちゃんもこれは見たことないですよ・・・っ」


神の使い『天使』。

この世界においても天使は伝説上の生物とされている。

その者は光の衣を纏い地を照らし、白銀の6枚ある天翼で空を統べ、頭の上に回る天輪で世の全てを鑑みるという。

同じく女神から派遣される勇者と違い、天使は残忍で凶悪、冷血な別種の生命体だとされていた。

しかしその姿を見たものなどいない。

はずだった。


『ははっ、ははははっははははははは!わらわこそ天に最もふさわしき生物!天使に成る資格を持った者ッ!パール・ヘキサティアドラゴであるッ!!

   

     頭が高いぞ、下等生物がぁぁぁっぁぁ!!』


叫びとも咆哮ともとれる絶叫に、ありとあらゆる生物の戦意を根底からへし折られた。

・・・彼女以外は。


「はっ。見掛け倒しもいいところね、この天使崩れが」

『兎風情が。大人しく地を這っていれば無残に殺されずに済んだものを』

「アロマさんっ!そんな立ってもいられないような状態で連戦なんて無謀が過ぎます!」


ヒューリーの必死な叫びに、アロマは薄く笑う。


「大丈夫よ・・・」

「・・・もういいんだゾ。君はもう命をはらなくていいんだ」


声をかけたのはベーゼだった。


「・・・・・・」

「今まで・・・今まで話すこともできなかった。避けられていたのは分かっているつもりだゾ。我々との因縁を考えれば当然だけれどね。

本当にごめんなさい。我々の関知していなかった事とはいえ、ただの一市民だった君の居場所を奪い、親を奪い、親友も教育も奪い取ったのは事実。

そして君を追いやったことも事実だから。許されるなんて思っていないが君だってエルフを守ることなんてしたくないだろ?ここは我々に任せて逃げて欲しい」

「・・・・・・知ってるか知らないかなんて関係ある?私や私の仲間の人生を無茶苦茶にしといて、挙句許されると思ってない?私を逃がせば多少は粛罪になるとでも?

ならないわよ。なるわけないでしょうが。

本当に私達が絶望しかない人生を送ってたのなら、何処のトップだかも分からないあんた一人の命程度で釣り合う訳ないでしょ。馬鹿なの?」

「あ、アロマさん・・・」


ヒューリーが止めに入ったのにもかかわらず、アロマは一切歩みを止めずにベーゼの胸倉を掴み上げた。


「何が気に食わないって、私の意見も聞かずに不幸なやつ呼ばわりされてることよ。見くびらないでもらえる?私達は逆境の中でも十分幸せだった。

見当違いもいいところだわ。私にはあんたの命を張った行為なんて邪魔でしかないわよ。この際だから先に言っとくわ。

あんた達。私があの天使崩れをブッ倒したらヒューリーとかの仲間の要望全部聞きなさい。良いわね?」

「・・・・・・うん。了解したゾ。大樹に誓おう」

「あぁそれとね」


気に病んでいたことの一つが思いもよらない終わり方をして一息ついたベーゼにアロマは話しかける。

勘違いを、正すために。


「あんた、私を追い出したみたいなこと言ってたけど。

私が本気で抵抗していたら森しかない国の一つや二つ、容易く潰せるのよ」


ぱきぱきっ、と地面に這う蔦が石と化し。

顕現するは・・・朱き12に分かれた巨大な剣。


「『・・・は?』」


パールとベーゼの声がかぶった。

だってその魔法は。


「七属性魔法、天剣。この程度なら片手でも撃てるってのよ」

『はは・・・、無駄よのぉ』


アロマの右手と共に射出された天剣に臆することもなく爪を地面に叩きつけ、剣をかみ砕いた。

比喩では無い。

その勢いやそのままに3つの翼をはためかせ爆発的な暴風と共にちっぽけなアロマを踏みつぶした。


『むむ~?見えなかったの、あまりに小さい生物でつい踏みつぶしてしもうたか。ははは!!』


桁が違う。余りにも。

身じろぎをするだけでもその突風だけで動けなくなるような生き物相手にどう戦えと言うのだ。

無謀だった。

失敗した。

やはり戦うべきなどではなかったのだ。

その時。


『・・・・・・む?』


ガリガリと金属がこすれるような音が響いた。


「・・・八属性魔法『煌き残す魔兵ヨトゥンヘイム・オブザーバー


約30メートルにも迫ろうかという黄金の巨兵はパールの右足を押し戻し、持ち上げていた。


『8属性・・・?!ばかな、どこからこんな魔法を生む生命力が・・・っ』


その場から動きもせず巨兵に守られているアロマから距離を取り、上空へと飛翔する。


『・・・ふん。化け物であることは間違いないらしいの。だがやはり地を這うしかできん劣等種とは勝負になら・・・』


パールは見た。


・・・天を駆ける兎の姿を。


「七属性魔法『迂遠と克炎のアバランティア』」


突如、火の粉が舞う風が巻き起こる。

スカートをひらひらとはためかせながら、空中で回転し湧きあがった突風に身をゆだねることで飛翔したアロマは躊躇なく虹色に輝く天輪を地面に蹴り飛ばした。

だけに飽き足らず。


「八属性魔法『超越点の回帰グラビティ・ホール』」


ゾンッ、と地面が闇へと染まる。

あらゆるものを食らい尽くすそれは、パールも例外なく引き付け真空波を幾重もまき散らしながら大地へと叩きつけた。

しかしドラゴンの外殻には凶悪な毒が宿っている。

アロマの右足に紫色のシミがゾワゾワと広がり、


「五属性魔法『異状態遡行クリアリング・バック』」


いともたやすく消えた。


『ガッ・・・?!ああぁあ??なん、なんだ貴様は・・・!?あ、ありえん。こんなことは・・・あってはならないのだぁぁぁっぁあああああああああああああああああ!!!』


徐々に夜の帳が降りてきた街に、虹色の閃光が輝いた。

言うまでも無くそれはパールの咢に収束する。


「・・・まずいゾ・・・!!アロマはまだ空中、流石の彼女も直撃を食らうのはまずい!」

「そもそももうパールも周りが見えてないっ。こんなところで閃光を打たれたら街が・・・っ!」


最早。

小さな生き物たちが干渉できるレベルを越えてしまった。

彼ら彼女らは、祈ることしかできない。

奇跡を。


『消え去れぇええええええええええええええええええ!!!』


そして放たれた虹色の閃光は。


(・・・・・・は?)


攻撃した本人、パールの目の前で大爆発を起こした。

まるで見えない壁にでも当たったかのように。


「絶葬刻印、墜天創世・・・。3つある9属性魔法の中の一つで、史上最硬の硬さを持つ魔法。



  輝土木風暗空時炎水、9属性混合魔法『久遠守護』」



立方体の眼に見えない結界の内部で自らの閃光を直撃させられたパールは鱗が剥がれ落ち、至るところから煙を出しながら動かなかった。

シュタッ、と地面に降り立ったアロマは勝負は終わりとばかりに背を向け、


『・・・ま・・・・・・て・・・たたかえ・・・』

「・・・まだやる気あるの?凄いわね」

『わらわは、奴以外に負けるわけには・・・いかぬ、のだ・・・いつか、必ず、・・・』

「ふぅん。あんたにもあんたで、戦う理由があるわけね。分かったわ。切り札を使って完膚なきまでに分からせてあげる」

『望む、ところじゃ・・・!!必ず・・・・・・』

「・・・10属性魔ほ・・・って」


その瞬間、パールの身体が崩れ落ちた。

地響きを立てながら完全に倒れたドラゴンを一瞥し。


「・・・ま、後で話ぐらいは聞いてあげようかしら」


輝く満月を背にしながら仲間の下に向かうのだった。


ペース配分という言葉など知らないそよ風と申します。

すっごーい!ちょーきぶんやー!(乗り遅れ)

前々回のあとがきに書いたとおりの事柄が起きましたね。

実はパールって古龍ではあるけど突然変異ではないんだ・・・。

全部で十三いる突然変異の中でもアロマさんはトップクラスなので、ぶっちゃけパールに勝算とか始める前からなかったり。

突然変異はそれぞれ皆先鋭的なんで実際戦ったらどうなるのかはやってみないと分からないですけど、上の二人は別格なので三番目くらいかな・・・

ちなみに一番弱いのはタ―ヴです、創作系統だから仕方ないね

未登場があと二人いるのは内緒。ドラゴンともう一つ。あの子の種族です。

では今回はこの辺りで。

ここまで読んでくださった方に感謝を。



そろそろヴァンパイア統領国内戦編完結ッ!?

そして3章は衝撃のラストを迎える・・・はず(気弱)

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