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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
3章・「前世の悪行で苦しんでるのは俺くらいのもの」-ヴァンパイア統領国内戦
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幕間25・不器用な王子(シュイサイド・レター)

地下道まで逃げ延びたアロマ、ラン、ユリの3人はリスクを覚悟して中年の男について行った・・・はずだったのだが。


「・・・なんで学校?」


そう、連れてこられた先は何故か学校の一室だった。

困惑するユリにランが補足する。



「〝王立クレセント学園〟。創立100年以上の歴史を誇るつい最近までソレイン評議国唯一の学校だった学園だねっ。ユリもランちゃんもここ出身だけど・・・っ?」

「ふぅん?学校ねぇ。話には聞いたことあるけど」


文字から何からほぼすべて独学のアロマからすればどうして必要なのか分からなかったが、不思議と校庭や中庭を歩く学生たちに目を奪われた。

同年代の少年少女たちが切磋琢磨する場所に。

もし自分もこんな生活がおくれていたらと、らしくもない事を考え即座に頭を振り払う。

そんな彼女になど気が付かず、ひょろっとした中年の男が戸を閉め向き合う。


「場所が学校なのは、ここなら竜共に対抗できる戦力がそろっているからだ。魔法で盗み聞きされることもないだろうさ」

「なんでもいいわ。私達をここまで連れてきた意味を教えて。無意味だったら永遠にささくれが気になる体にしてやるからな」


焦りを隠さずそう言うアロマに。

なんだそのずれた脅しは、と困惑しながら男はとある人名を口にした。


「カーバンクル・L・ヴィレッジ」

「・・・?誰よ」

「俺の名前だよ。兎には分からんだろうがね」

「・・・ッ!?ま、マキナ様が追い出した・・・」


カーバンクル・L・ヴィレッジ。

彼は少し前まで貴族だった男。

マキナが革命によって商業組合を奪い取り、無一文で放逐した貴族の一人である。

メイドのフィリアに熱い紅茶を浴びせた張本人といえば分かりやすいだろうか?

ユリのうめき声で、どうやらこの男が元々マキナの敵だったことを予感したアロマは鼻で笑いながら、


「で?どうやら見た感じマキナにしてやられちゃったみたいだけど。そんな奴がどうして?」


歯に衣着せない強者の態度、といえば聞こえはいいが普通に空気の読めない彼女にひやひやしながらユリは見守る。


「・・・俺はマキナを倒すのをあきらめたわけはない。が・・・俺は国を壊すような連中と手を組んでまでこの国を取り返したいわけでもない。そんな事をしても無意味だと知っているからな。だから俺はマギアとかいう魔王にコンタクトを取る気はないし、そしてドラゴン共の誘いにも乗らなかった。聞きたくはないか?ドラゴンがどんな誘いをしてきたのか。今王宮がどうなっているのか」

「へぇ。それで私達にドラゴンを倒させようって?」

「ああ。ついでにマキナの味方をしている連中が共倒れてくれればなお良い」


ちらりとランとユリに目を向けるヴィレッジ。

そんな彼に先ほどまで学園生に憧れていた少女は獰猛に笑う。


「ははっ、いいわよそれ。そーいう利害がはっきりしてるのは分かりやすい」

「交渉は成立だな。

まず、今回の革命、否『革命返し』の首謀者は・・・」




「もー少しだけ、大人しくしておいて欲しいものですわね」

「・・・無茶を言うなよ、シュー。信じたくなかったのだがな」


兵士たちの壁を境に。

金髪をいじる第二王女シュレフィストと剣を取られた第一王女レンは対峙していた。

数十の兵士との無謀な戦いを始めてしまったレンの方は既にボロボロだったが。

レンの皆伝している剣術はあくまで対モンスター専門。人間相手にはあまりに分が悪い。


「何故だシュー。私を捕らえるまでは分かる。だが何故シャルや母上父上まで・・・!?」

「・・・・・・」


革命首謀者、シュレフィストは何も答えず背を向ける。

そう、彼女は元王族から騎士長エンブレ、獣人ルールといった評議会に出席していた全員を拘束していた。

異母の姉妹ということでレンを恨む気持ちはまだ理解できなくもないが、彼女が妹まで捕らえた理由をレンは全く分からなかった。

兵士に両脇を抱えられ牢へと引きずられながらレンはシュレフィストの背を見つめていた。

だから聞き逃さなかった。


「・・・・・・知らなければよかったんですわ。こんな事」

「シュー・・・っ!」


呼びかけるよりも早く、扉は閉まり。

声は届かない。




ソレイン評議国、地下牢獄。

元王女オーラは人生で初めてつけられた手枷の重さに辟易しながらシャルをなだめていた。


「・・・シューおねえちゃん、なんで・・・」

「大丈夫よシャル。きっと何かの間違いだから」


口ではそう言いながらもオーラは間違いなどとは一切思っていなかった。


(マキナと国王アルティベートの言い争いだけでもあれだけ傷ついたシャルにはあまりに酷な仕打ちよね。この子は私が守らないと・・・)


決意を新たにするオーラの隣ではエルフの副長ベーゼと騎士長エンブレが話し合っていた。

ドワーフの皇帝タ―ヴもいるのだが彼は相変わらず何かのパーツをいじくりまわしている。


「それで、エルフの国とは連絡が付きましたか?」

「うん。なんとかついたゾ」

『・・・少し・・・接ぞ・・、悪いがな』


先ほどまで使用していた魔動音声伝達機は取られてしまったため、ベーゼの魔法とエルフの国の術師数人でなんとか連絡が取れている。

だがやはりと言えばやはり。


『・・・厳しいな。・・すぐに・・・向かわせること・・、できるが、革命を押さえつけることが出来るとは・・・思えない』

「そうでしょうね。流石に距離が・・・」


どこかの兎や狼はたった数時間でその距離を走破していたがあれは別格。高速馬車を使用しても半日ほどはかかる距離である。

ドラゴンとシュレフィストの行動を抑えるにはあまりに時間がかかりすぎる。


「やっぱり脱獄でも試してみるか?そこのドワーフならできそうだゾ」

「・・・・・・ん、何だ?俺様になんつった今?」


いい加減会話に混ざれよお前は、と思われながら事情を聴いたタ―ヴは笑う。


「余裕だな。俺様は石と鉄に愛されたドワーフの皇帝だぜ?手枷なんて、ほらよ」


そう言うと手枷はいともたやすく曲がり、それだけでは終わらず綺麗な猫の彫刻と化した。

この男、牢獄の中においてなおこの余裕である。


「いやお前状況分かってるのか・・・?まあいいゾ。なら出てからどう逃げるかだが。オーラさんは知らないか?」

「いいえ。流石に地下牢に通路なんて・・・」

「それなら脱出口を知っているであるな。それも、シュー姉すら知らないのが」

「ヘル・・・?そうなの?」


元第二王子ヘルザノアが知っていて、王妃だったオーラが知らない通路などあるのだろうか?

不思議そうに尋ねると眼を逸らしながら、


「ええ、まぁ・・・。マキナ兄上には色々頼まれましたから。実は、」

「その必要はねーですわ」


運び込まれたレンと共にやって来たのは。

シュレフィストその人である。


「・・・シュー姉」

「どーせ脱獄の段どりでも立ててるんでしょーけど。私がドラゴンと協力している理由は・・・別に革命なんかじゃねーですの」

「・・・はい?」




「マキナの・・・偽物?」

「簡単に言うとな」


王立クレセント学園、その一室で元貴族ヴィレッジから話を聞いていたアロマは困惑を返す。

当然だ。

革命というか、シュレフィストの目的は。


「今のマキナが悪魔が化けた偽物かもしれないからそれを確かめるって?どういう思考したらそうなんのよ」

「・・・いや、まぁ確かに・・・」

「・・・違う、わね。今のご主人様と昔のご主人様は」


アロマには分からないだろうが。

ランとユリにはかなり信憑性のある話だったらしい。


「そういう反応になるだろうな。王国から評議国に変わった革命をし始めたあたりから明らかに別人のような変わりっぷりだ。妹であるシュレフィストから見ればそれは悪魔に憑かれたようにすら思えたんだろう」

「ふぅん。悪魔には見えなかったけど目的は分かったわ。でもそれと王族を捕らえてることに何の関係が?」

「王族というよりは、マキナに関連する者を捕まえているのだよ。仲間の悪魔がいるかもしれないという被害妄想とまだまともな人間たちを保護するためにな」

「・・・そっちには何の根拠もないの?いよいよ無茶苦茶になって来たわね」

「そうだ。しかもマキナがいない時に決行したのもシュレフィスト自身がマキナに言いくるめられる事を恐れたからだろう。実際今のシュレフィストは本物のマキナが苦しんでいるのかもしれないという妄想だけで暴走しているからな」

「流石マキナ様に目をつけられてた人らしいって感じですけどもっ。でもそれならマキナ様が帰ってきてくれさえすれば解決じゃないですかっ?」


ランの言葉にアロマもユリもうなずく。

危害を加える気がそれほどないのであれば、むしろやるべきなのはマキナを取り返すことだろう。

が、ヴィレッジはため息をつく。


「・・・ここからは予測になるのだがな。よく考えてみろ、そんな個人的なことにドラゴンがわざわざ手伝いに来るか?むしろこうは考えられないか?ドラゴン共がシュレフィストを利用して何かをするために焚き付けたとな。まぁ最も、これも俺の妄想でしかないかもしれない訳だが」

「何かって何よ」

「さぁな。それこそ直接聞くしかない」

「・・・・・・いや、マキナが攫われる前確かにドラゴンのやっていることは分かってるとか言ってた。それがシュレフィストに疑念を抱かせるためってのはありうるわね」

「それに今回ご主人様が評議国から動かず、ルーレに任せたのもまさかそれを読んでって事なんでしょうか?」

「流石にそれはあまりにもマキナ様凄すぎないっ?・・・確かにあの方ならやりそうだけどっ」


ただ単にルーレなら行けるでしょ、みたいな感じで決めただけのことだったのだが。

今まで彼がやってきたことがやったきたことだったようで話が徐々に大きくなっていた。

だが話が分かったところで。


「・・・でもだからってどうやってあのパールとかいうドラゴンに会うの?正面突破はやりたくないわよ」


そう口に出してから気が付いた。

間違いなくマキナに出会いたての頃の彼女なら言わなかったであろう弱気な発言。

それだけでなく。


(どうしたっていうのよ私は・・・。こんなこと言って、彼に構ってほしいって思うとか)


「・・・チッ」

「ふん、そうキレるな。地下牢に続く秘密の通路があるらしい」


自分の言動にイラついたとはつゆ知らないヴィレッジは印の付いた地図を渡す。

それを見て声を上げたのはアロマではなくユリだった。


「地下牢?秘密の通路?私はそんなの知りませんけど・・・」

「ああ。俺も奴から聞く前は知らなかったよ。だがどうやら昔のマキナが城外にこっそり出るために作ったものらしいぞ」

「マキナ様がっ?」

「ああ。おそらくこの事を知っているのはマキナと・・・あいつに救われた子供だけだろうな」

「・・・・・・っ!?」

「救われた、ですか?」


息をのむランと首を傾げるユリ。

対照的な二人を見やり、アロマは疑問を呈する。


「あんたらってマキナのメイドよね?なんで知らないのよ」

「それはマキナ本人が隠していたからだろうな。革命以前のマキナは城から勝手に出て来てはスラム街の子供を保護して回っていたらしい。正直驚いたよ。あのマキナにそんな一面があったなんてな」


ため息をつき、教室の窓から中庭を見る。


「この学校もそうだ。王宮の金をしこたま使って何してるのかと思いきや、この学校に大半を渡していたらしい。その分保護した子を融通してもらい入学させる、と」


ヴィレッジはそれきりしゃべらない。

他3人もだ。

救われた子供の一人であるラン。

長い間マキナに仕えていたのにもかかわらずそんなそぶりを見たこともなかったユリ。

そして自分と違い、仲間だけでなく目につくものを救おうとする彼の事を考えるアロマ。

ふっ、とアロマから自然と笑いがこぼれた。


「じゃあシュレフィストとかいうのは完全に勘違いしてる訳ね。今も昔も、そういうところは何も変わってないじゃない」


崖に落ちるヒューリーを助けた時のように。

捧げられる寸前だった夜を救い出したように。

自信を喪失したアロマを元気づけようとしてくれたように。

何も、変わってなんかいない。

そうだ。

彼の優しさは偽物なんかではない。

アロマにかけてくれた言葉は偽りなんかじゃない。

そう思うと、不思議と。


「なら後はいけすかないドラゴンを叩きつぶして終わり、か」


強大な敵に立ち向かう勇気が湧くのだった。



3人が立ち去った後。

ヴィレッジはこの学園から目を離せずにいた。

そんな彼に近づく、狐耳の少女が一人。


「良かったんですか?初めはあんなにマキナさんの事嫌いだって言ってたのに、手助けするようなこと言って」

「俺は、マキナが嫌いだ。あの品定めするような眼も、あたかも全能だと言わんばかりなしゃべり方も、容易く心を読むその態度も。

だが・・・俺は勘違いをしてたらしい。天狐てんこ、お前を育てたこの学園を作り子供の事を想い、俺がうつつを抜かしている間もマキナは着々とすべきことをしていた。

そこは、称賛されるべきだ。だというのにあいつはそんなことおくびにも出さない。自らの苦労をすべて隠し通し、偉大なことを成し遂げた」

「・・・そうですね。でも、人は変われば変わるものです。私が助けた時は貴方、ほとんど何も話さなかったのに」

「放逐され、行き場もなく。この体一つで全てをこなし始めて。ようやく分かったんだ。俺が今までどれだけ愚かなことをしてきたかがな。

苦労を掛けた者にはもうかける言葉もない。俺が会いに行くだけでも苦痛だという者もいるだろう。だからこの国を陰で支える手助けをするのが、俺なりの贖罪だ」


決意に満ちた言葉に、天狐と呼ばれた狐耳の少女は軽く笑う。

その姿にヴィレッジは不思議そうに。


「俺を追い出さないのか?俺が今したのはドラゴンにたてつく行為。もしあのウサ耳が負ければこの学園もただでは・・・」

「ふふっ、今ヴィレッジさんも言ったじゃないですか」

「何のことだ?」

「マキナさんが生み、生徒達わたしたちが育てたこの学園は決してドラゴン程度に屈したりはしませんっ!

そんな事より、今日からヴィレッジさんには先生として働いてもらうんですから頑張ってくださいね?新しく別の学校が出来たら新入生の取り合いなんですから!」


そう言いながら背を向け狐の尾をゆらゆらさせながら上機嫌で戻る天狐に、危機管理がなっていないなとため息をつきながらヴィレッジは決意を新たについて行くのだった。




地下牢獄ではシュレフィスト本人が同じようなことを話し終えていた。

当然、マキナが悪魔と入れ替わっているかもしれないということだけで、ドラゴンの目論見の方には思考が行っていないようだったが。


(今と昔のマキナが別人・・・いやそりゃそうよね・・・。だって異世界人だもんねトウヤ君)


困ったのはオーラである。

この中で唯一真相を知っている彼女には途轍もなく頭の痛い事態だった。

そこで。

彼女は理解した。

会議の前マキナがオーラの部屋に一人で立ち寄り質問した内容、その意味を。

アロマたちに伝える前に襲撃を受けてしまいこの事を知っているのはオーラだけである。

だけ・・・なのだが・・・。


(・・・あの子、かなりの重荷を押し付けてきたわね・・・。お説教が必要かしら?)


久々に胃が痛くなってきたオーラには気が付かず、シャルがシュレフィストに勢いよく尋ねる。


「そ、それホントなのシューお姉ちゃん!?マキナお兄ちゃんが・・・?」

「・・・分からねーですわ。だからお兄様・・・いえマキナが帰って来たら素性を暴く。その為にパールさんの魔法を使わせてもらうってことですわ」

「確かに、マキナの様子はおかしいとは思う。だが・・・」

「わた、くしだって・・・こんなの嫌ですわよ!でも、でももし本物のお兄様が苦しんでいらしたら?その可能性があるのに放っておけっていうんですの!?」


レンの敵意ある言葉に、シュレフィストは歯ぎしりをしながら叫ぶ。

それは心からの家族愛に満ちていて。

・・・そしてそれを裏切る形に現実がある。


「悪いが少し質問があるんだゾ。言っては悪いが・・・そんなあやふやなことでドラゴンが動いたのか?本当に?」

「ええ。でも当然ではなくて?悪魔が混ざり込んだ会議などじゃ魔王軍に蹂躙される未来しかねーわけですし」

「まぁそれは分かるゾ。だがそれを会議で発言すればいいだけじゃないか?拒否する理由はこちらにはないゾ」


ベーゼの言葉で見事なまでにシュレフィストは納得して黙り込んでしまう。

そう。戦力的に出てきた悪魔を倒せるパールならそうした方が早いのだ。

そして、それをしなかった理由は?


「分からねーですけど・・・。それでも私はもう引けないのも事実ですわ」

「・・・ここから脱獄したところで、ドラゴン共に見つかる未来しかなさそうだしな」


シュレフィストの苦悩した姿を見て、オーラは現実を突きつける覚悟を決めた。

何よりも娘と、失踪した前王妃アノールト・ムーンの息子マキナの為に。


「・・・残念だわ」

「残念?申し訳ねーですが国の為にお母様にはしばらく牢で、

「違うわよ。


こんな形でマキナの遺書を渡してしまうことになるのが残念って言っているの」


「・・・・・・・・・なにを・・・言ってるんですの?」

「昔のマキナと今のマキナが違う?当たり前よ。今のマキナは、中身が違うのだから」


困惑しきり、言葉を発せないシュレフィストと兄弟姉妹。

オーラに尋ねたのはベーゼだった。


「中身が・・・違う?分かりやすく説明してくれ」

「いえそのままの意味よ。別人の魂が宿っているとでも言いましょうか?彼は自分の事をマキナではなく異世界人の平幅遠野と名乗っていたわ」

「・・・・・・・・・・・・・・・!!??とっトオヤ!?えっ???」

『おい、ちょっ・・・!・・・・・・


思いっきり聞き慣れた勇者の名前に驚愕し、思わず伝達魔法を切ってしまうベーゼ。

どうやら先ほどまでの質問はエルフの国にいるトラムのものを代弁していただけだったらしい。

彼女よりも先にシャルが恐る恐るオーラを見る。


「どういうことお母さん・・・。遺書って・・・」

「そのままの意味よ。マキナが一週間ぐらいいなくなったことがあったのを覚えている?その前に直接手渡されたの」


今まで片時も手放したことのないその手紙。

6枚の手紙の内1つを硬直したシュレフィストにそっと手渡す。


「・・・貴女の分よ、シュー。本当は『僕の事を皆が忘れ始めた頃にこそっと渡してください』って頼まれていたのだけどね」


信じられない、とばかりに震える手で手紙を開くと。

それは3枚にも及ぶ長い長いシュレフィストへの・・・別れの言葉だった。

『次期王になるだろうヘルザノアを支えてやってくれ』

『姉妹の真ん中として、レンとシャルロットを繋いで欲しい』

『夜更かしし過ぎんなよ』

『今まで迷惑かけてすまなかった』

エトセトラ、エトセトラ。

重要なことからしょうもないことまで、眼が滲んで読み切れない量だった。


「現実と信じるのは難しいかもしれないけど・・・」

「・・・嘘だ。嘘ですわ!私を騙すためにここまで準備するのか悪魔がッ!」


牢獄の牢を素手で殴り、血の滲んだ手で手紙を破こうとするシュレフィスト。

のだが。

破れない。

必死に力を込めて。

ぼろぼろ落ちる雫を拭いながら、震える手を無理やりに動かす。

でも。


「シューお姉ちゃん・・・。まずは涙、拭こ?」

「なみだ・・・?違いますわ、私は、こんなのしんじてない!!」


強がりなんかではない。手を組んだ・・・と信じているパールから忠告を受けていたのだ。

可能性として悪魔が何匹紛れ込んでいるのかわからない以上、周囲の言うことは信じない方が良いと。

・・・よく考えてみればそれはパールだって同じはずで何故シュレフィストに目を付けたのか謎が残るところだが。

しかし。

理屈ではない。

シュレフィストはようやく理解したのだ。否、ようやく認めた。

マキナの死を。

はじめまして。はつとーこーのそよ風ともうします。



・・・とか冗談かませないぐらいの時間が流れましたが皆さん元気だったでしょうか?

私は元気じゃないです。引くほど忙しいです。

な、なぜだ。どうしてこうなったうごごごg

とまぁ、ここまですべて言い訳です。ぶっちゃけゲームは欠かさずしてtゲフンゲフン

本当にお待ちしていただいてた方々には申し訳ないです。

しかしこの作品、そして私、絶対に失踪はしないんで!絶対!!

地震が起きようが戦争始まろうが極め付けに世界が滅ぼうがッ!

必ず完結させます!

・・・読む人がいなくなりそう

さて、では今回はここまで。

ここまで読んでくださった方に感謝を。



ヴィレッジがマキナを助けるっていうのは初期から決まってて採用された数少ない設定

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