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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
3章・「前世の悪行で苦しんでるのは俺くらいのもの」-ヴァンパイア統領国内戦
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幕間23・未知では無い過去の咎2(リバイブ・レプラメモリー)

「ふふ、よく来たね。僕を探すのは大変だったでしょう?」


同時刻。

王城にてクーに転移させられたシレーヌとヴァムピーラは暗い寝室に飛ばされていた。


「クソが、クーの奴何考えてやがる」

「なんなのよ、これ。風景変わったんだけど」


いつも通り毒づくシレーヌと困惑するヴァムピーラ、彼女達にベットから声が飛ぶ。


「クーちゃんの転移能力で飛ばされたんだろう?あはは、僕の娘ながら面白い事をしてくれるねぇ」


のだが。


「はっ、やっぱり剣振るしか能のねえゴリラ系女子は言うことが違うなオイ。風景変わった?転移魔法だ間抜け」

「言わせておけば・・・ッ!あんたは毒舌系ニワトリだけどね!!」

「あ?鶏とセイレーンいっしょくたにしてんじゃねえよ!その感性どっから来た!?」

「似たようなもんでしょうが!あんたなんか朝っぱらからコケコケ言ってるのがお似合いよ!」

「お、おう。悔しいけどちょっとおもしれえじゃねえか。どうしてこうも勇者の仲間ってのは頭おかしいいかね。ヒラノトオヤはまだマシだったぜ」

「え、ああ、そうよ。そうそう。トオヤかっこいいわよね」

「あーうんかっこいいかっこいい」


適当にうなずきながらヴァムピーラの服に自分の羽のゴミをこっそりつけるシレーヌ。

それに気が付いたヴァムピーラがまた怒鳴り始め、シレーヌが火に油を注いでいく。


「・・・お、おい。聞いているのか君ら?」


自分の部屋に転移してきて突然漫才を始められたノリア・ヴラド=ヴァンパイア。

その困惑は言う必要もないだろう。

しかも完全に無視されてるし。

そんな事を思っているノリアに見向きもせず喧嘩する二人。

挙句、剣まで振り回していた。


「おぉおおいいいいい!!いい加減にしろよお前ら!この僕を舐めてかかったこと、後悔させ、


「「さっきからごちゃごちゃうっせえな」」


「えっ」


図ったかのようにぴたりと喧嘩をやめ、射殺すような眼ですたすた歩いてくる二人。


「う、う、うるさいって、ここは僕の城だ・・・ですよ、ね?」

「「・・・・・・」」

「あ、あの、きいてます?待ってください暴力とかほんと良くな、あぎゃああああああ!!!」


問答無用で同時にぶん殴った。


ヴァムピーラは言わずもがなだが突然変異しているシレーヌの腕力も相当強い。

ノリアはベットの後ろの壁を突き破り轟音と共に吹き飛んだ。


「何だよあのボクッ子は。年考えろ」

「え?結構若くなかったかしら?」

「なんかさっきクーは自分の娘です、みたいなこと言ってたろ。つーことは十分ババアだぜありゃ」

「マジかよ年齢詐欺最低ね」


「お前らいきなり来て滅茶苦茶言いやがるな!しかもキッチリ喧嘩しながら聞いてるじゃん!」


崩れた壁の向こう側で起き上がりながら叫ぶノリア。

それを一瞥する彼女たち。

ぶっちゃけこの二人、とっても良く似ている。

喧嘩は同レベルでしか起きないとはよく言ったものである。


「ふん。そもそもお前誰だよ」

「ノリア・ヴラド=ヴァンパイア。この国の統領よ」

「統領だぁ?じゃあクーは・・・」


ようやくまともに話が出来そうになり、意気揚々とたちあがるノリア。


「そう、その通り。クーちゃんはこの国のお姫様なんだよ。人間風に言うと第一王女という奴かな」

「クーってのとシレーヌは知り合い?」

「まぁな。クーの奴何故か育ちがよさそうではあると思ったが、でも腑に落ちねえ。なんでそのお姫様がマギアなんかと一緒にいる?」

「さあ、そこは僕も知らないさ。でもクーちゃんはこの国の為に身体を捧げたんだ」

「・・・私の知ってる話とちげぇな。奪われた、って聞いたが」


怪訝な表情のシレーヌにあははと笑うノリア。

ヴァムピーラもこの時ばかりは黙って話を聞いていた。


「あの子は相変わらず表現が悪いねぇ。この国を女神から守る、その交換条件としてサクラさんに身体を差し出させたんだよ。

気が付かなかったかい?この国にはいる時、何か魔法結界のようなものがあったことに」

「要するに生贄か?クーの意志も関係なく勝手にてめえが決めたんだろうが。

・・・ま、それで継ぎ接ぎの生物が出来上がるってんだからサクラとかいうのは尋常外だがよ」

「待って、女神から守るって何よ」


考え込むシレーヌに変わりヴァムピーラが問いただすと、ノリアは一瞬きょとんとして、笑いだす。


「はは、はははっ!!そうかそうか、たしか君は勇者の仲間だったか?哀れなものだね、真実を知らないってのはさ。いや一周回って幸福か?」

「・・・どういうこと・・・?」

「まあそれは今重要ではないよ。キミタチはもうすぐ死ぬ。神に匹敵するサクラさんと、サクラさんが造ったレプラによってね」

「造った?」


薄く笑い、ノリアは青くぼんやりと光る透明な小箱を見せる。


「これが妖精の魂だと言ったら、信じる?」

「・・・は?」

「サクラさんは異世界からやって来た人間でね?別世界では人間の魂の研究をしていたそうなんだ。そして今では、こうして身体と魂を分離させるところまで研究が進んでいる。

レプラはその成果さ。元々妖精族の突然変異で、一度見た魔法や力を完璧に把握する能力を持っていた。

が、サクラさんの『改良』によって今では身体に受けた魔法や力をそのまま自分の物として使うという能力に進化した!

素晴らしいとは思わないかい?生物が何億年とかけて行う進化を、我々が行えるなんてね」


気でも違えてんのか?魂取るとか河童かよ。

普段のシレーヌならそんな軽口を言っていただろう。

だが、ノリアが吹き飛ばされた隣の部屋の状態を見て、冗談など言えなくなっていた。


「・・・お前ら、その為にどれだけの犠牲を払った?その赤黒い拷問器具で」


血なまぐさい臭いと何故か手先が冷たくなってくる不気味な冷気。

それらと共に赤黒い部屋が覗いていた。

高さ2メートルほどの女性の鉄の像に雄牛のような模型、釘が打たれた大きい十字架に朱いロープが括りつけられた車輪など様々。

更にはハンマーや先のとがった棒、鋸、鉄板などが無造作に置かれている。

その中にあってもノリアは特に変わらず笑う。


「ああ、これ?魂を引き抜くには極限まで恐怖して心が弱ってるときがいいんだ。ま、僕の趣味も多少なり入ってるけど」

「なるほどね」


ノリアの言葉を聞いてヴァムピーラが大剣を両手で振りかぶる。


「要するにお前とサクラっていうのが敵。それが分かっただけでいいわよ」

「はぁ、どうして素晴らしさが分からないかな。世界中の生物たちが進化できる機会だというのに」

「分かってたまるかそんなもん。つーか、だったらクーはなんでソレイン評議国なんかにいたんだ?魂抜かれたわけでもねえだろ」


シレーヌはノリアに聞いたつもりはなかった。

恐らくはクーが自分から逃げたんだろうと思ったから。

が。

現実は更にその上を行った。


「え?いや、あんな継ぎ接ぎのヴァンパイア、気持ち悪いじゃないか」

「・・・・・・お前何言ってるんだ?」


仮にも自分の娘に。

仮にも国を救ってくれた、いや救わせた少女相手に。


「何って、気味悪いだろあんな死体の身体くっつけた奴とか。首から上は変えてないから顔自体は同じでも動きもきもいし。だからって殺すのは面白くないからダメってサクラさんが言うもんだからソレイン王国、今は評議国だったか?の奴隷として売ったんだよ。クーちゃんは僕に似て顔は良いから酔狂な奴に売れてさ。なんか結婚したらしいんだけど。あっはっは、そのときね、クーちゃんが飼われてるところ見たけどホント傑作で家畜とや


「【もういいから黙れ外道が】」


がぎん、とノリアの顎が閉じる。

驚愕するノリアをヴァムピーラは剣の腹で殴り、床にたたきつける。


「クソが。ここまで胸糞悪い奴初めてあったぞ」

「同意するわ。正直ぶっ殺してやりたいもの」


吐き捨てる二人に反論はない。

ノリアは気絶してしまったらしい。


「アルティアナがヴァンパイアの突然変異者だしノリアまで突然変異している事は無かったらしいな。なら先決はサクラと、そこのレプラの魂とかか?」

「でもさ、この箱どうしたら良い訳?魂とか言われても・・・取説ないの取説」


しきりに取説取説と喚くアホの子を放置し、シレーヌは透明な箱の中身を覗く。

ぼんやりと揺らめく青い塊。

こんなものを魂だと言われて信じられる者がどれだけいるのだろう。

だがその話を信じて非人道過ぎる行為をノリア達は繰り返したのだ。

だったら。


「・・・私もその話を信じて土俵に上がるしかねぇか」

「ん?どうしたのよシレーヌ」

「実はよ、私、最近一つ考えてることがあってね・・・。もし失敗したら骨は拾えよ」

「ちょっ待って、何する気・・・・・・っ!?」


ふわりと、輝く羽毛が浮いた。

シレーヌの羽根がゆっくりと大きく広がり、徐々に金色の光を纏い始め。

魂の箱を見つめる彼女の眼が、じりじりと金色の光に侵されていく。

そして・・・。




ぐちゃりと。

レプラの手刀がミチのわき腹に刺さる。

遠くから聞こえるミューの叫び。

腹に熱い感触が滾り、赤いしぶきと共に手が引き抜かれる。

それに対してミチがとった行動は、単純だった。


優しく抱きしめた。


腕の中で暴れるレプラにゆっくりと話しかける。


「・・・済まなかった」

「・あっぁうううああぁ・・・」

「どうしてレプラ君がここにいるのかは分からない。でも、あの時私が魔王に勝っていれば、こんなことにはなっていなかったはずだ。君がここまで傷つくことは無かったはずだ・・・」


甲斐崎ミチがこの世界に召喚された場所。

妖精清帝湖ようせいしんていこ

その国はフェアリーが住まう湖の上にある魔法都市だった。

国力も妖精たちのここの強さ的な意味でも上位に位置し、そもそも食べ物を必要としない妖精たちの生活にも支障なかった。

そこでミチが初めてで出会ったのがレプラである。

召喚士見習いのレプラに召喚獣と間違われたりもしつつ、ミチとレプラは互いに信頼を深めていた。

・・・だが、ミチは助けられなかった。

未明の魔王マッドアリスの襲撃から、国を守ることが出来なかった。

その際、死んでしまったと思っていたレプラが何故かこんなところで苦しんでいる。

ミチはそれを見過ごせなかったのだ。


例えわき腹に穴が開き、口から血があふれ、昔の笑顔など今のレプラには一切なくとも。


「私は・・・私は結局乗り越えられなかったらしい。

君の喪失を。

少しでも贖罪がしたくて、元々人嫌いの教授だった私が学校の先生をしたり、抜けてる勇者を拾ったり、不思議な魔王を住まわせたりしていたが・・・。

レプラ君の事を片時も忘れたことは無い。

また会えてよかった。君がここにいることを知れてよかった。

絶対に助けて見せるから。今度こそ、私の命に代えても」


どれだけ言ったところで、レプラの抵抗は弱まらない。

意識も記憶もないのだ。当然である。

当然のはずだった。

レプラの光の無い蒼い目から、ぼろぼろと涙が落ちていること以外は。


きらりと、ミチの神器が輝いた。


城の方からふらふらと心もとなくさまよう青い光を、導くかのように。


暴れるレプラを必死に抱き留め、か弱そうな青い光が彼女へと吸い込まれ。


がくっと、全身の力が抜けた。

わき腹を気にもせず、レプラを支えながら座り込む。


「あ、れ?せんせー・・・?」


聞き覚えのある声。

見覚えのある素直な眼。

感じた覚えのあるレプラの軽い体重。

全てが、幸せだったあの時の事が、よみがえってきて。


「おかえり、レプラ君・・・」


それだけ言って、ミチの意識は闇に落ちた。

はい間に合った!そよ風と申します。

あの、正直に言っていいですか?

ぶっちゃけレプラが助かるの予定になかったんですけど。

レプラとミチが心中しようとして、最後の最後意識の戻ったレプラがミチをまた救う、みたいな感じになると思ってたんですけど!

紛れもなくシレーヌさんのせいですねぇ。

私が勘定に入れていなかったのはシレーヌのアレの適応性とミチのエンハンスタクトでしたね。

魂に訴えかけるセイレーンの歌声はピンポイント過ぎた。それとシレーヌの怒りゲージがたまってたせいで自分を顧みずらくなってたのも痛かった。

それに加えて神器の設定を考えると誘導くらいしても全くおかしくない。

まーたマギアの周囲に女の子が増えるのか(ちょっとうれしい)

神器の話はサクラが、シレーヌのアレは本人から説明することになるはずですのでまだおいておくとしましょう。

こうして書いている本人も予想できないことが起きたりすることを楽しめるのは筆者の特権とでも言いましょうか?皆さんも暇な時間とかあったらssでも書いてみませんか!?

と、いう謎の勧誘で締めつつ今回はこの辺りで。

ここまで読んでくださった方に感謝を。



・・・あれ?レプラさん最強クラスの能力な気がするけど大丈夫?

だいじょばないです。(迫真)

つか割り込んだ戦闘が暁とミューの幻覚勝負だったせいであんまり使えてないし!!

初期構想の攻撃すると強くなるレプラから逃げ回りつつ戦う、ってのは何処へ消えたの・・・

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