第四十四話・「裏表ある女の子コワイ」
闇の中に飲まれた後、というかおそらくは未明の魔王に転移させられた後。
目を覚ましたそこは見覚えのある馬車の中だった。
他に4人いたはずの車内にはマギアしかいなかったが。
停車しているようだし、目的地に着いたのかもしれない。
(・・・マギアの方に意識が移った?おいおい、マキナに乱暴したんじゃねえだろうな。嫌だぜ、目が覚めたら体がぼろぼろとか)
まるで他人事のように考えていると外から色々な話し声が聞こえてきた。
「ぅんぐー・・・っ!ふう、長い事座ってて疲れちゃった」
「Re:呆気/よく言いますね。ずっと騒いでいてお行儀よく座ってたわけじゃないじゃないですか」
「・・・・・・おしくらまんじゅう、してた気分。余計暑い・・・」
「まったくです。流石は砂漠といったところですね。夜さんも砂の多さに飲まれて無言ですし」
「まぁあ夜にぃなったらっていうかぁあ、日が落ちたらぁああ今度は死ぬほっっど寒くなるけどねぇええ~。
っていうかああああああそぉんなことはどーでもいぃいよどーでもぉぉおお!
まぎあんは?????まぎあんまぎあんまーぎーあーんんん!!!!」
「駄々こねるガキかよ、銀髪・・・」
「寝てるわよ、それはもうスヤスヤとね」
「ふむ・・・まあいつもの事だな」
「いつものことだったのみゅーか?揺すっても微動だにしてなかったみゅーが」
「くーさん、まぎあさんのうえにのっかって、ぴょんぴょんはねてましたよね・・・。いじょうに、ねむりがふかいかた、なんですね」
「『俺はよく知らんが、面倒だから無視しているとかじゃないのか?』」
「なんか一回アルティアナが寝てるマギアを脱がそうとしても反応なかったし、たぶん本気で気づいてないと思うけど」
(あいつ何してくれてんだよッ!?てか止めろよクーも!!)
そう心の中で叫びながらもマギアは安堵していた。
(・・・けどルーレたちもクーたちも仲良さそうに話してるな。マギアの仲間って印象に引きずられて険悪にならずにすんでるみたいだ・・・少なくとも表向きは)
「ふむ・・・でもご主人様、いやマキナ様もそういったところがおありになりますね。少し前本当に死んだようにねむってらっしゃって驚きましたよ」
そんなルーレの言葉を聞いて、この流れはまずいなマギアとマキナの似てるところ挙げてほしくないし、と思い馬車を出る。
すると砂の上に座っていたクーがこちらに顔を向けた。
「あら、おはよう」
「・・・おはようじゃねえよ、人の上でぴょんぴょん跳ねてたってどういうことだ・・・」
「ははっ、聞こえてた?気づかない方が悪いのよ」
まあ一理ある。のかもしれない。
やれやれと苦笑いをしつつ周りを見渡す。
そこは聞いていた通り広大な砂漠だった。
見える限り砂の丘が続いていて木々や土すら見ることが出来ない。
馬車が止まっているその前に唯一、謎の瓦礫が重なったようなレンガの廃墟があるだけである。
大きさもそれほどたいしたことは無い。
とてもではないがその廃墟がヴァンパイアの国だとは思えなかった。
マギアたち以外の人影も見えない。
到着したんじゃなく休憩を取っているだけだろうか、と思い尋ねる。
「・・・?なんだこの廃墟。休憩してただけか?」
「『俺たちもそう思ったがどうやら違うらしいぞ』」
「ふぅん?」
「そうね。マギアも起きたしそろそろ街に入りましょうか」
「その前にマギアにもこれ着けてもらうみゅー」
クーの言葉に反応したミューが手渡してきた物。
それは、
「・・・コンタクト?」
「やっぱりそう思うよね!?どう見てもカラコンでしょ?」
そう、恵の言う通りそれは明らかに赤いカラーコンタクトだった。
「むぅ・・・これミュー独自のもんだと思ってたみゅーのに。じゃあ説明するまでもないかもみゅーが、目に入れてヴァンパイアのふりをしようって訳みゅー」
「なるほどな。それで騙せるもんなのか?」
「見た目だけならばれないと思うわ。眼はほぼ確実に赤だけど髪色はまばらだったりするし。・・・ほら、これ見て」
ニヤリと笑いながらクーが指さすそこには、廃墟の地下へと続く階段があった。
各々で荷物を持ち先導に従い降りていく。
階段を下りつつミチが全員に話しかけた。
「最終確認をしておく。私達はソレイン評議国から来た行商人という体で街に入る。騒ぎを起こすのはダメだ。ルーレさん方もそれでいいか?」
「はい、かまいません。というより私達3人で動くよりも心強いです」
「・・・そろそろよ」
クーの言葉と共に狭いだけのらせん階段だった視界が、開けた。
そこは巨大な水晶で輝く洞窟だった。
平幅遠野としての知識でもここまで大きな洞窟というのは見たことが無い。
天井や壁には水晶が青く輝き、マギアが立つ場所の崖下にはオレンジ色の人工的な明かりと人影が見える。
たった一つの空洞で街一つが形成されているのだから驚きだった。
「・・・今いる場所は入口だからこの水晶窟でも比較的高い場所ね。眼下に見えるとおりこの下にヴァンパイア統領国の南街があるわ」
「・・・・・・」
「どうしたのよマギア?」
「いや、すげえな。随分綺麗な場所で生まれたんだな」
「ははっ、マギア君はホントに綺麗な場所が好きだね。まあ私もちょっと感動したけどさ」
「・・・どうして恵がそんなこと知ってる訳?」
「ち、違うから!違うからクーちゃん睨まないで!?」
途端に機嫌が若干悪くなるクーとなだめる恵。
「違う」って何が違うんだ・・・?と疑問に思いつつ南街へと歩を進める。
すると鎧を着た男性二人が近づいてきた。衛兵だろうか?
「むっ・・・?そこの一団、止まれ。一体何者だ?」
「俺たちはソレイン評議国まで行商に行ってたもんだ。売るもん売って帰って来たんだよ」
「・・・ふむ。見覚えがないが・・・では通行手形を貰おうか」
・・・・・・・・・・・・通行手形?
ちらっとクーを見ると、
「・・・・・・・・・・・ナニソレ?」
困惑気味にボソッとつぶやいていた。
「少し前から国を出るときには手形を受け取り、入る時には手形を渡すことが決まっただろう?ほら、早くしてくれ。俺たちも早く昼飯にしたいんだ」
「・・・シレーヌ」
「・・・チッ。分かった分かった」
舌打ちしつつめんどくさそうに手ぶらで衛兵2人に近づく。
「・・・?手形は?」
「もう渡しただろウスノロ」
「は?」
「判断変更コードⅡ【お前達はもう私から手形を受け取った】」
「・・・・・・・・・あ、ぁあ」
「意思決定コードⅥ【受け取った手形は手形保管箱に直した】」
「・・・・・・・・・ぅ・・・ぐぁあ・・・」
「性情変質コードⅠ【お前たちは可愛らしいシレーヌという少女に一目惚れする】」
「「・・・かはッ・・・」」
フンっ、と鼻で笑うシレーヌ。
少しすると衛兵2人が目をぱちくりさせ。
「あ、すいません、受け取ってましたね。それと・・・その・・・お昼ご飯奢りましょうか、シレーヌさん?」
「えへへっ、ありがとーお兄ちゃん!でもごめんねっ、私ぃ用事があるのー。でも欲しい本があるんだよねー・・・」
「じゃ、じゃあ自分が出しますよ!!」
「ぇえーっ、ほんとー!?ありがとぉ~」
言い寄る衛兵2人に、先ほどまでの生意気な少女からころっと態度を激変させ甘えた声を出しおねだりをするシレーヌ。
・・・ぶっちゃけ彼女の後ろでは全員がドン引きしていたが。
「お前・・・えげつないことするな。ってか誰が惚れさせろなんて言ったよ」
「あぁん?どこの誰がやっちゃいけないなんて言ったよ。で?これで私のやること終わり?めんどくせーから宿で寝てるわ」
そういいながら勝手に街へと入っていく彼女。
何処へ行こうと揺るがないシレーヌに半ば尊敬すら覚えつつ門を越え南街へと入る。
「さて。各自どうするか決めようか」
「あ、はいはい!私ちょっと行きたいところが!」
マギアの言葉にすぐさま恵が反応した。
が、なんか面白そうなのでスルーした。
「タルト。用事か?」
「Re:肯定/はい。申し訳ないですが、恵とサーシャと私とガザニアだけで行きたい・・・いや、行かなくてはならないところがあるのです」
「ちょっ、なんで私じゃなくてタルトちゃんに聞くの?そんなに信用無い感じ!?」
「分かった。その間俺はこの国を見て回ることにするわ」
「無視っ!?」
いじられる恵に笑いつつマギアは街へ出ようとする。
「んじゃ、ルーレ、行こうか」
「・・・・・・ふぇっ?私ですか?」
動揺を隠しきれていないルーレと疑問符を浮かべるクー。
しかしこの場で最も焦ったのはマギア本人だった。
(まっ・・・・・・!?間違えた・・・ッ!つい視界にいたルーレにマキナの時と同じ感覚で・・・!!やべえっ)
凡ミスであったとはいえ、言ってしまったことは最早取り消せない。
後悔先に立たずとはよく言ったものである。
当然ながらここで慌てたりやらかしたような様子を見せるわけにもいかず全力で言い訳を考える。
「ああ・・・騒ぎを起こすなと言ってたし監視でもするんじゃないかと思ってね」
「・・・・・・・・・」
マギアのことをじーっと無言で見つめてくるルーレ。
流石に苦しい言い訳だったか・・・?と焦るも、それを押し殺す。
体感的に長いその無言の時間のあと、ふふっとルーレは笑いながら、
「分かりました。そうします。監視とか、そういうのではないですが。ミューさんと夜さんもそれでいいですか?」
「・・・分かったみゅー。考えようによっては妥当かもしれないみゅーなー」
「クーとアルティアナも来るよな?」
「当然」
「まぎあんから離れることとかぁああるわけないっ」
「ミチさんは私と来てほしいな」
恵からの誘いにミチも同意する。
「それじゃ、今夜宿集合ってことで」
「・・・・・マギア。騒ぎは、めっ、だからね?」
「分かってるってサーシャ」
「『どう頑張っても安心は出来んな・・・』」
そんなお言葉を頂戴しつつ、マギアとクーとアルティアナ、そしてルーレは街の中心へと向かう。
「・・・・・・だって。なんだかすごいことになってきてるみたいね?サクラ心配になっちゃうわ」
「その割には随分余裕そうじゃないですか。っていうかそんなに心配するまででもないでしょう。クーちゃんのことは僕が一番知ってますから」
薄暗い古城の一室。
ベットに座るノリア・ヴラド=ヴァンパイアはいつものように天蓋付きのベットにネグリジェで寝転がりながら言葉を紡いでいた。
そしてその前には包帯でぐるぐる巻きにされた人間が地面に座っている。
肌は一切見えていないが勘のいいものなら微妙な体の凹凸でそれが少女だと分かるだろう。
それだけではない。
その横に、半透明の女性が立っていた。
荘厳なローブを纏う彼女が手をかざすと黒髪の男と青髪の女の様子が空中に映し出される。
「マギアっていうらしいわね。かわいい♪次代依代決定カナ?」
可愛らしく笑いながら包帯をまかれた少女の頭らしき部分を撫でる。
すると、
「あ~・・・ぅうあああいいああ・・・」
言葉にならない言語で呻く。
「なんかレプラちゃんもご機嫌そうですねぇ」
「相手もバリエーションが多いからじゃないかしら。楽しい殺戮が出来そうだし」
「ばりえーしょん?」
「んっ、ああ。異世界の言語で種類って意味。要するに殺し合いの種類が増えて楽しみにしてるんじゃないかってこと」
「なるほど・・・戦闘しかもう思考に残ってないレプラちゃんらしいですね」
ヴァンパイアの統領にして人間の体液を好むノリア・ヴラド=ヴァンパイア。
戦闘本能しか残っていないと揶揄される呻く包帯少女レプラ。
落ち着いた様子でもそのサイコな性格を隠しきれていない半透明の女性サクラ。
薄暗さに紛れて嗤う狂気の彼女たちは行動を開始する。
焼き肉より刺身の方を全力で推すそよ風と申します。
新年会で2時間食べ放題の飲食店に行ったのですが初めの一時間はオーダーできず冷凍枝豆とか冷凍ナゲットとかを10分ごとに出され、ようやくオーダーできるようになったと思ったらラストオーダーが終了の30分前までで実質オーダー時間30分、そんな店にはもう二度と行きたくないです。
そよ風はあまり、というかほとんどそういった飲み会などには行ったことは無いのですがそういう物なのでしょうか?
うーん、なにか腑に落ちないですね・・・。
そんな愚痴は置いておいて、新年会は楽しかったです。
やっぱりはしゃぐのはいいですね。
私、はしゃぎすぎると脳を介さずに叫んだりするのでテンション押さえないといけないんですが。
完全にやばい人かな?
しかも私、物語のお話を考えるとき音楽聞きながら散歩しないと思いつかないので深夜徘徊したりしてます。
完全にやばい人です。(確信)
そう自分で分かっていながら今日もフラフラお話を考えてました。
さて、ここまで読んでくださった方に感謝を。
半透明の女性と吸血大好きな僕っ子と包帯少女ってキャラ濃すぎぃ!




