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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
3章・「前世の悪行で苦しんでるのは俺くらいのもの」-ヴァンパイア統領国内戦
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第四十二話・「ツンデレにも限度ってあるよね」

拘束されていた。


いや、比喩とか冗談とかではない。

体中に顕在する緊縛感は間違いなく細長いものでぐるぐる巻きにされていることを裏付けていた。


(おいおい・・・!無防備に中庭で倒れたまきなも悪いが、まさか誘拐か?警備どうなってんだ・・・)


闇の門で行き来する魔王とかハサミで空間切り裂く継ぎ接ぎ少女とかがいる世界でただの警備がどれほど役に立つのかは分からないが。

おそるおそる目を開ける、と。


体の上に白くて、もふもふした何かが2本倒れていた。

時折、ぴくぴくと動いている。

物凄く見慣れたそれをなぜか動かしにくい手で掴むと。


「ふぁあああういいいいい!!??」

「どういう状況だよアロマ・・・」


耳を掴まれてうつ伏せになっていたアロマが奇声とともに飛び上がった。


「な、あ、あんた起きたのね・・・」

「たった今な。・・・ん?これ・・・」


身体にある緊縛感、それは、ぐるぐる巻きの包帯だった。

・・・ただ大量に包帯を使い巻いただけの適当さではあったが。


「もしかしてアロマが?」

「・・・・・・・・ッ!?は、はぁっ!?意味がわからないわ仲間でもないマキナのために私がそんなことする訳ないじゃんバカじゃないの!

ただ・・・そう、ただ単にヒューリーに頼まれて見ててって言われただけだし?でも起きたならもういいわよね。じゃ」


とんでもない早口でとんでもない機敏な動きでとんでもないことを言いつつ部屋を出ていくアロマ。

な、なんだったんだろう、と呆然としていると入れ替わるように小さい兎の女の子ヒューリーが苦笑いで入ってきた。


「おはようございます王子様」

「あ、ああ。で、これどういう状況なんだ?」

「えーっとですねぇ、アロマさんに

『中庭に通りがかった時、マキナがバタッて棒きれみたいに倒れて、おんぶして部屋まで連れてきて、あらん限りの治癒魔法を使ったんだけど目覚めなくて、取り敢えず包帯巻いてみたんだけど良く分からないからヒューリーもきて!』

って言われて今来たところです。アロマさんは相当慌ててましたけど大丈夫だったみたいですね」


ヒューリーの口真似から、アロマが本当に焦っていたことが伺える。なんか言葉もおかしくなってるし。

やっぱあいつはなんだかんだお人よしだな・・・、そう思いつつ


「心配させたみたいだな・・・。ったく普通に言ってくれりゃいいのに」

「まぁアロマさんは誤解されやすい人ですから・・・」

「お礼くらい言いに行っとくかね。じゃ、ありがとなヒューリー」

「あっ、あの!」

「うん?」

「王子様が望むなら私がアロマさんとの仲を取り持ちますよ!例えばアロマさんの好物は甘栗です!」

「あま、甘栗?人参とかではないんだな・・・。いやそんなことよりどうして突然?てっきりアロマとヒューリーは人類おれたちのことを嫌ってると思ってたんだが」

「ふぇ?そんなことないですよ、特に王子様には私の命を助けていただいたってこともありますし。アロマさんも口ではああ言ってますけどきっと仲間だって認めてくれてますよ!」

「うーん、だといいんだがな」


アロマとの同盟契約は『エルフにアロマの要求を飲ませること。そのためにエルフを傘下とすること。その対価としてアロマは魔王軍を倒す手伝いをする』

アロマが言っていたエルフの国にいるアロマの仲間たちを両親の下へ帰らせてほしいという要求、というかお願いをトラムが聞いたのかどうかは知らないが・・・、


(どちらにしろアロマの目的は達成されてるんだよな・・・。夜みたいに魔王たちに恨みがあるわけでもないアロマが積極的に助けてくれるのかねぇ?)


信じている信じていないという話以前の問題として、モチベーションがない彼女がどこまで協力してくれるかが疑問だった。


(・・・聞くが早いか)


「いや、気持ちだけもらっておくよ。手伝ってもらうんじゃなく自分でやらなきゃならないことだからな」

「分かりました。でもでも応援してますから!」


少し格好をつけてそう言ってみると、ヒューリーも分かってくれたようだった。

そのまま部屋を出ようとするヒューリー。

それに続いてマキナも起き上がろうとする・・・が、


「・・・あ、ヒューリーさん・・・。包帯取るの、手伝ってもらっていいですかね・・・」

「・・・すみません、うちのアロマさんが・・・」


カッコつけておいてこの醜態である。若干気まずい空気になりつつ、アロマを探し始めるのだった。




「ふぅ、こんなところにいたのか」

「・・・何か用でもあるのかしら」


ノーブルやユリに手伝ってもらい結構な時間をかけて探し当てたアロマは、王宮の中でもかなり高い位置にあるバルコニーの手すりに座って外を見ていた。


「介抱してもらった礼を言おうと思ってな。っていうか何してたんだ?」

「・・・別に。お礼を言うためだけにわざわざ探し回ってたわけ?」

「まぁな。どっかの兎さんがすぐ逃げちまうから苦労したよ」

「ふん、ま、手間取らせて悪かったわね」


この辺りでようやく違和感に気が付いた。

普段のアロマがマキナ相手に『手間取らせて悪かった』なんて言うとは全く思えなかった。


「・・・珍しいな、アロマが冗談言わないなんて」

「・・・んじゃ、真面目ついでに一つ聞いていい?」

「どうした?」

「私、ここにいていいの?」


本気で意味が分からなかった。

どちらかと言えば逆にアロマが味方としていてくれるのかこっちが聞きたいくらいなのだが。


「いや・・・むしろどうしてアロマがここにいちゃいけないなんて話になるんだ?なんかあったのか?」

「なんかっていうか・・・ちょっと、自分の未熟を肌で体感しちゃってね。マキナは言った通りエルフを同盟相手に引き込んだけど、私は魔王に負けて逃げちゃったし知識もここにはすごいやつ多いし。

はーぁ、所詮ごく一部の地域しか知らない兎ね。少し外に出たらこのざまよ」

「あぁ、なるほどな、お前からしたらそう思うのか」

「・・・・・・?」

「正直に言って今のところ、アロマも含めた俺たちは魔王軍に勝ち越してると思ってるんだがな」

「え、どこが?ドラゴンが協力的で、なおかつヴァンパイアが参戦してくるとしてもあの魔王どもとその上のやつらしい黄昏とかいうのがいるのよ?」

「そう、逆に言えば、それを何とかすれば終わりなんだよ。暁と宵闇がこの国を襲ったとき、被害は被ったものの俺たちは迎撃に成功してる。

少なくとも絶対に勝てない相手って訳じゃないんだ。それに相手の力もある程度見えたしな。

なぁアロマ。俺とアロマは今や一心同体なんだよ。俺の勝利はアロマの勝利だし、アロマの勝利だって俺の勝利だ。

確かにアロマと依は宵闇の本気を前に一度引いたけど、結果的には宵闇は片腕を失って敗走した。

それは勝利だろ。

それが仲間だよ。仲間の勝利は自分の事みたいに喜んでいいんだ。

まあそれも行き過ぎるとダメだけど、今までほとんどを一人でこなしてたアロマからしたら新鮮な感覚かもな」

「・・・性格も、種族も、見た目も、性別すら違うのに、私とマキナが仲間、ねぇ・・・」

「え、あ、そこからですか?」


どうやら本気で仲間だとは思われてなかったらしい。

少しへこんでいるとアロマは手すりからひょいっと降りてマキナへとスッと顔を近づけ目を合わせる。


「・・・じゃあマキナは本当に私の事大切にしてくれるの?本当に私の事傷つけないの?」

「俺だけじゃない。ここにいるやつらにアロマを傷つけようとする奴なんてそうそういないよ」

「・・・パパもママもそう言ったよ。私達はアロマの味方だからって。友達もそう言ったよ。アロマちゃんとはずっと友達だからって。

でも、ははっ、次の日には皆私を捕まえようとした。殺すために。懸賞金のために。

私の力をあてにしてるんだったらまだ分かるけど、そうでもないのにマキナはなんで私のことを気に掛けるの?」

「なんでって・・・理由なんてないよ。初めて会ったときは敵だったけど、一緒に戦ったりもして信用できる奴だって思ったんだ」

「・・・・・・やっぱり信用できなーい」

「えぇー、例えばさ、食べ物の好き嫌いもそうだろ。甘栗が好きって思ってても、なにが好きなの?って詳しく聞かれたら好きだから好きとしか答えようがない。好き嫌いなんてそんなもんだって」


まあだからこそ勇者勢から忌避されてるマギアの扱いを悩んでいるのだが。

刷り込まれた印象というのはそうそう取り除けるものではない。


「・・・つまりマキナは私のことが好きってこと?」

「う、うん?どうしてそうなった?」

「そういう下心だった訳ね」

「完結させんな!?」

「ふんっ、まぁいいわ。今の事は忘れて」


心なしか柔らかさを増したアロマの笑みに、やれやれとため息をつきつつ。

会議室に向かおうとしたところで。


「マキナ様マキナ様っ!」


バルコニーの下から手すりを掴み軽々と着地したランが呼びかけてくる。


「おまっ、どこから来たんだよ?」

「それよりも大ピンチですっ!大波乱ですっ!背水の陣ですっ!


魔王軍が3万の軍で攻めてきたみたいなんですっ!」


「・・・・・・・・・・・・は?」

テスト間近で勉強せず現実逃避したそよ風と申します。

うん。

やばい。(簡潔)

・・・今から勉強します。

ここまで読んでくださった方に感謝を。



アロマさんは打ちひしがれているけれど実際のところ、彼女はこの世界でも5本の指に入るくらい強い

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