余談 『ランちゃんは気分屋さんなのですよ?』
マキナの自室。
朝早いその場所には寝ている(ボーっとしている)マキナしかおらず、ルーレも朝食の準備でいない。
そんなときにゆーっくりと扉が開き3つの人影がこそこそと侵入してくる。
「・・・そーっとだよっ、そーっと・・・」
「うぅぅ大丈夫だよねこれ・・・?」
「前みたいに怒られたらどうするのラン・・・」
「ふふんっ、ランちゃんにお任せあれっ!」
ランにユリ、それに巻き込まれたシャルロットである。
「ただの寝起きドッキリなんだから、マキナ様も笑って許してくれるってっ!」
「・・・・・・元王族に寝起きドッキリ仕掛けるメイドとか逆の立場だったら即解雇してるけれどね・・・」
そんなユリの言葉など聞こえていないかのようにスルーし、ランは二人に計画を話し始める。
「まずシャルロット様がマキナ様の隣で寝転がりますっ、そこでランちゃんがが大声で『ま、マキナ様っ!妹様に手を出すなんて何考えてるんですかっ!うぅぅううそんなに女の子と寝たいならランちゃんと寝て!』と叫びますっ!
その修羅場を見てしまったユリが崩れ落ちるんですっ!」
「ほ、ほんとにやるの・・・?」
「えぇーシャルロット様がお兄ちゃんと久々に話したいって言うからランちゃん頑張って考えたのに不満ですかーっ?」
「うぅぅ・・・それを言われるとつらい・・・」
「っていうからラン、それ私いるの?崩れ落ちるだけなんて」
「トーゼンっ!題して、メイドは見た!兄と妹の淫らな朝、ですっ!」
・・・少し前まで純愛小説に嵌っていたランが、ドロドロした三角関係の面白さに目覚め始めているのはここだけの話である。
まあ三角関係を少しはき違えているようではあるが。この寝起きドッキリの内容はどう考えてもただのハーレムだろう。
(っていうかそれ寝起きドッキリっていうか最早詐欺の計画じゃねえか?)
そう思うマキナ。
ボーっとしていただけなので当然のように3人に気が付いていたのだが、ドッキリが失敗した時の何とも言えないあの空気は体験したくない為黙っていた。
(まーでもこれくらいの悪意のない悪戯くらい引っかかといてやるかね・・・。ランもシャルもベットで強制休養を取らされて暇暇騒いでたらしいし)
マキナがエルフの国から帰ってきて少し経つ。
中庭でランたちが倒された、という話を聞いていたのだが。
未明にやられた外傷は無かったものの、何故か倒された全員が生命力不足により気絶させられていたようだ。
本人たちが言うには『黒い波動を受けて突然体の力が抜けてしまった』らしい。
各魔王に対する対策は考えておかねえとな・・・
などとシリアスに考えている間にランたちの覚悟は決まったらしい。
「よぉし・・・!行くよ・・・?!」
のそのそとベッドに乗る気配。
すぐにそれはマキナの下へと到達し、人肌の暖かさを持つものがマキナにすり寄ってくる。
「・・・んっ・・・暖かい・・・、こ、これでいいんだよね?」
そうシャルロットが言ったところでランが突然、
「あ、いや待ってください」
「え?うん?」
シャルロットを制止し、突如ランはユリをベットに突き飛ばしマキナの隣に寝かせた。
「「ちょっ・・・!!??」」
「マーキナ様ー、えへへっ起きてるの気が付いてますよっ!それでも拒否しなかったってことは・・・このまま布団かぶって4人でいいことしますかっ!?」
「ランの計画って何一つ計画性ねえな!」
矛盾しているようでしていないことを言いつつ、二人を引きはがす。
「ご、ご主人様、申し訳ありませんっ!!」
「お、お兄ちゃん起きてたの?!」
悪戯げに笑うランに頭が痛そうに謝るユリ、そして赤くなりながら目線を逸らすシャルロット。
やれやれ・・・と思いながらも日常の幸せをほのかに感じつつ。
「おはよう、3人共」
笑いながら挨拶を交わすのだった。
「・・・んで、なんか用事があったんじゃねえのか?」
着替えを手伝おうとするユリやラン、シャルを追い出し着替えた後。
マキナがユリに問うと、彼女は隣のシャルを見る。
「えっと、シャルロット様がマキナ様と話したいっておっしゃって・・・」
するとシャルもまた隣のランを見た。
「ううん、それはランが『マキナ様の事だからエルフの女の子をものにしてるはずですッ!シャルロット様も今のうちにお話しした方がいいのでは!?』って・・・」
全員がランを見ると彼女は、
「・・・?ナンノコトカナーッ?」
誰もいない方向へくるっと振り返りお茶目で猫のような顔で首を傾げる。
・・・結局いつも通り全部ランの差し金だった。
「・・・ってことがあってさ。それで着替えてたって訳だ」
「あははっ、ランさんらしいですね」
そう笑いながらルーレがトレイから机に3人分の朝食を並べていく。
マキナの隣でノーブルが机を片付けつつ尋ねてきた。
「それにしても・・・いいんですかマキナ殿下。僕まで同じ食卓で朝食をとるなんて」
「嫌だったら別にいいけど?」
「まさか。嫌なわけないですよ、ただ・・・いや何でもないです」
口ごもるノーブルに首を傾げるマキナ。
『ルーレさんが二人きりで朝食をとりたい様子だったので』・・・とは言えなかったらしい。
こほん、と咳ばらいをし、マキナの視線を戻したルーレは追及されないように席に着く。
「それでは、いただきます」
ルーレの声にマキナとノーブルの声が続き、ホワイトシチューに手を付ける。
ちなみに『いただきます』というマナーは元々は無かったのだがマキナの様子を見てそれを真似したルーレのおかげで徐々に広まっているらしい。
「にしても・・・ほんとにおいしいなこのシチュー。料理人超えてるんじゃないか?」
「いやぁ、流石にそこまでは。でも褒めていただけてうれしいです!」
「あぁ、ついでに聞きたいんだけど夜とアロマは食事、大丈夫そうか?環境とか水とか変わると体調崩しやすいけど」
にこにことマキナの食事を眺めていたルーレは考え込む。
「そうですね・・・今のところは何もおっしゃられませんね」
「少なくとも城内の人たちの評判とかは大丈夫そうです」
「そりゃよかった。ノーブルとフィリアに頼んでおいて正解だったな。説明とかしてくれたんだろ?」
新しい仲間が、それも狼少女と兎少女が城に住むということでメイドや執事に偏見なく接してくれるように、とかなりの難題を押し付けたのだが上手くやってくれたらしい。
感謝を告げるマキナにジト目でルーレが爆弾を投下した。
「それは良かったですけど、夜さんが随分ご主人様のこと言ってましたけど・・・ランが言ってた『エルフの女の子をものにしてる』というのは・・・?」
「いやそれは関係ないだろ!?うん、無い無い!つーかものにしたっていう言い方が悪いわ」
「そうですか?でも夜さんはご主人様がお姫様扱いしてくれるって聞いたー、って言ってましたが。それだけじゃないです、王子たるもの女の子を侍らせてなんぼ、とか?」
「ちょっ、あいつの耳引っ張ってくるわ」
身に覚えがないのもいいところである。
確かに夜も依もなんか妙な偏見があったがまさかここにきてそれが裏目に出るとは思わなかった。
そんな割とどうでもいい受難に苦しむ彼に、驚きの報告がやってきた。
ばたんとノックもなく戸が開きユリが駆け込んできたのだ。
そのただならぬ様子にマキナは背筋を正す。
「・・・?どうした、何かあったか?」
「そ、それが・・・はぁはぁ、ランがいなくなっちゃったんです!」
「・・・は?悪いルーレ、俺の食事はかたずけておいてくれ」
「はいっ」
「それで?どういうことなんだ?」
「さっきランの部屋に行ったら、この手紙が」
ユリが手渡してくる手紙を急いで読む。
「『フィオへ 王城を出て約束された場所に戻れ。城での活動は最早不要だろう。 花戟義賊団より』
花戟義賊団・・・!イブキとカリンの恩人だとかいう?」
エルフの国で出会った姉妹、イブキとカリン。
彼女たちの村は凶暴なバーサークという怪物に襲われ、殺されそうになったのだが・・・そこで花戟義賊団に助けられた。
花戟義賊団のリーダーは人間でカリンと同じくダガーを用いた戦闘を好むらしい。
そう言っていたのを思い出す。
(だがフィオってなんだ・・・?)
「もしかしたらラン、フィオって人に宛てられた手紙を見つけて、それで花戟義賊団に攫われたんじゃ・・・」
そう心配そうにつぶやくユリ。
少し考え込んだマキナだったが、
「・・・大丈夫。俺がなんとかする」
自身を持って彼はとある少女を尋ねに行動を起こした。
どんな国だろうが、どんな名君がいようが、どんな恐怖の魔王がいようが。
必ずアンダーグラウンド、つまりは法の通じない場所というのは存在する。
例えばここのように。
赤毛のショートツインテールを揺らす幼いと言うべき少女が地下への階段を下りようとして、
ガタイのいい男や女に囲まれた。
「おいおい、嬢ちゃん。ここが何処だか分かってんのかァ?スラム街の、魔王やら王子やらの眼すら届かねぇ地下街の入口だぜ?」
「分かってるよっ。だからそこどいて、ねっ?」
「誰に口きいてやがるのかしら、ガキィ・・・!うちらは花戟義賊団の一員よ?そんなに身売りされたいわけ?」
「姐さん、もうやっちまいましょうぜ」
「てめえはロリコンなだけだろ」
ぎゃははは、と笑う一同。
そんな姿を見て少女は、ランはため息をつく。
「ほんっと堕ちるとこまで堕ちたって感じだねっ」
「・・・んだと!?」
「お前らこそ誰に口きいてるのか分かってるのかなっ?」
今までの笑顔とは違う冷ややかな表情に得体のしれないものを感じつつも、引くことは無い。
というかこんな幼女に引いたら面子がたたない。
のだが。
その名を聞いた瞬間血の気が引いた。
「私はランっ。本名はフィオ・ユリウス・ニャル=ザード、花戟義賊団の元頭領だよっ?」
全員がひれ伏す中、勝手知ったるラン・・・フィオは一際大きな扉を押し開いた。
「久しぶり、スミレっ」
「ええ。久々じゃないフィオ」
煌びやかな物で飾られた室内に堂々と座る女性。
紫の髪を後ろでまとめているスタイルのいい彼女は落ち着いた様子で返事を返した。
それにランが不満げに返す。
「手紙でもそうだったけどランってよんでよっ」
「貴方、ランの花言葉が合わないでしょ?」
「・・・それは私が淑女じゃないとっ?」
花戟義賊団では普通本名は名乗らない。
花や草木、そういったものからコードネームを自分で決めるのだ。
目の前にいるスミレにも別の本名がある。
「それに・・・今の貴方は到底、花戟義賊団の頭領とは言えないもの」
スミレの変わらない口調の中に怒りが込められているのが分かる。
つまりはこれが呼び出した理由か。
「だからやめるって話、したはずだよねっ?今の花戟義賊団は私が目指してたものとは違いすぎるんだよっ」
「そう簡単に裏稼業から足引けるわけないでしょ。それにそれは言い訳だ。貴方はただ単にあのマキナとかいう王子にほだされただけ」
「・・・・・・そんなことは
「いえ。間違いなく貴方は変わったわ。元々王国の情報を盗り、宝物庫から財宝を奪う目的だったのに」
「スミレの目的はお金が欲しいだけでしょっ。そんなのを手伝うなんてありえないっ!」
「じゃあ勝手にしなさい。でも事情を知る貴方を放っておくことは無いわ。今頃フィオが王子を騙していたことが城に伝わっているでしょう」
「なっ・・・!?」
「それと、そうね。予告しておくわ。フィオの大好きな元王子。彼もまた無事ではいられないかもしれないから」
「・・・ふざけるなよっ!?そんなの私が許すわけっ」
激昂するランにスミレは嘲笑を返す。
「さあ、がんばって。もしかしたら裏切り者の貴方でも止められるかもしれないわよ?マキナに信用されてればの話だけど」
「・・・・・・はぁっ」
地下街から出て道にしゃがみ込む。
思わずため息が出たがそれも仕方がないだろう。
手紙を読むまでは、マキナを起こしに行ったときは普段と変わらない一日だったはずだ。
だというのに太陽が真上に昇るまでの間にランの居場所はなくなってしまった。
だが、感傷に浸っている暇もない。
最悪お金などはどうにかなるが、マキナに何かあれば取り返しがつかない。
どうする?
恐らく穏便に城に入ることはできないだろう。
城壁を乗り越え窓から侵入・・・、それもできなくはない。
出来なくもないが。
(私の言うことなんて、信じるのかなっ?マキナ様は・・・)
ランがマキナを騙し、王家の財を盗もうとしていたというのは事実なのだ。
実行しなかったとはいえ、マキナから見れば同じ悪者ではないか?
その時。
「ああ、やっと見つけた」
ビクッと振り返ると、そこにはノーブルが立っていた。
「・・・・・・っ!?もう、追いかけてきたのっ」
「いや、そりゃ追いかけもするだろう?手紙だけ残してどこかに行くなんて。マキナ様に頼まれて皆で探してたんだよ」
「ふうん、そうなんだっ。ごめんねノーブルさん、でもこんな場所が良く分かったねっ?」
「たまたまだよ、たまたま。本当に運が良かった」
どうやら様子を見る限り私が花戟義賊団の一員だということはばれていないらしい。
だがなにか違和感があるような・・・、そんなことを考えていると彼が不思議そうに話しかけてくる。
「それで?一体何があったんだ?」
「えっと、いろいろあったんだけど要するに、花戟義賊団って組織がマキナ様を狙ってるみたいなのっ!」
「・・・?狙ってる?義賊団なんだから宝を奪って貧しい人に分けるような人達なんじゃないのか?」
「昔は・・・そうだったよっ。今は名前が同じなだけの別の組織みたいっ」
「・・・そうか。でもひとまずマキナ様は安全だから大丈夫さ。それよりそれを知ったランは追われたりしてないのか?」
やけに簡単に安全だと言い張るノーブル。
それだけルーレの事を信用しているんだろう。
実際ランの見立てでも今の花戟義賊団が全員でかかってもルーレにはかなわなさそうだった。
「・・・たぶん安全だよっ。あの人は私の無駄なあがきを見たいんだろうしっ」
スミレは愚かではあるが馬鹿ではない。
私欲に駆られようともその実力と智謀は折り紙付きだ。
今回ランを見逃したのも、城に戻れないようにしてから大切な人へ危害を加えるという予告をすることでランを苦しめるためだろう。
ここでノーブルに出会わなければ本当に窓から侵入していただろうし。
そう考えると本当に運命とすら言えるレベルの強運である。
そんなランの様子に何を感じ取ったのか、ノーブルが手を差し出す。
「取り敢えず、その辺の店で落ち着いて話さないか?・・・城に戻れない事情もあるようだしな。絶対に安全な宿・・・いや店を知ってるんだ」
「えっ?いやでもマキナ様が・・・っ」
「大丈夫だから!」
グッとランの手を取り歩き出すノーブル。
それは。
生真面目なノーブルには似合わないくらいイタズラめいた笑みで。
『泣く気は済んだか?じゃあ、これからの事を話そうぜ』
過去にそう言って彼女の手を引いてくれたとある王子を思い出していた。
まさしく白馬に乗った運命の王子を。
「こんな宿屋が絶対安全なんですかっ?」
「ああ。間違いない」
ノーブルに連れられてきた先。
それは見た感じスラムによくある3階建ての宿だった。
すこし真新しいくらいだろうか?
どう見ても安全には見えない、のだが、周りの反応を見る限りなにやらこの宿はかなり恐れられているらしく、酔っ払いに絡まれるようなこともなかった。
にしてもだ。
「・・・スラムの事あんまり知らないと思ってましたっ」
「あ、ああ。そんなことは無いよ」
新築のような軋みと共に扉を開けると、水色の髪の少女が振り返った。
「あら?いらっしゃいませ。二名様かしら」
「ああ」
「んじゃ、シレーヌ。後は教えた通りお願いね」
「チッ、めんどくせぇな・・・」
水色の髪の少女に呼ばれ、鳥の羽根を折りたたんだ女の子がめんどくさそうに近づき、こほんと咳払いをすると。
「いらっしゃいませっ、ご主人様、お嬢様♪今日は来てくれてありがとぉ~!何にするぅ?ご飯?お風呂?それともぉ・・・わ・た・し?」
「オイ、別の店になってんぞ!」
「えぇ~、そんなことないよぉ。シレーヌは~いつだってお兄ちゃんとお姉ちゃんの天使だよっ?」
「キャラ変わってんぞ・・・」
可愛らしく媚びるシレーヌと名乗る少女に思わず突っ込むノーブル。
それに水色の髪の少女も反応した。
「そうよ、シレーヌ。そんなんでお客を引けると思ったら大間違いね」
「あぁん?じゃあ何しろってんだよクー。男なんてサル共には媚びてりゃ大体なんでもしてくれんだろうがよ」
「お前はまずその本音を駄々もれさせる悪癖をなんとかしろよ・・・」
「いや。それはそれでいいんだけど、やるんなら相手が腰砕けにまでやらないとダメでしょ?」
「あー、まあ確かにな。トンカチあるか?」
「ボケにボケかぶせなよ・・・ミチも大変だな。はぁ、ラン、適当に座ろうぜ・・・」
そう言いながら本当に勝手に机に着くノーブル。
隣に座ったランは物珍しそうに笑う。
「なんか個性的な店員さんですねっ」
「個性しかないのが玉に傷だけどね・・・。クー・・・さん。サンドイッチとコーヒー二人分お願いできますか?」
「ん、りょーかい。でも今料理作る奴が買い出しで不在なのよね。だから私がつく
「あ、コーヒー二杯でいいです」
とんでもない勢いで注文を変えたノーブルに不満げになりつつ、クーが厨房へと消える。
「・・・?サンドイッチ食べないんですかっ?」
「いや、あいつの猟奇的な料理は本気で冗談にならない。殺人と同罪だ」
「サンドイッチなんて切って挟むだけじゃぁ・・・っ?」
そんな会話をしつつ、ようやく本題に入った。
「・・・まず、俺の推測を聞いてもらっていいか?」
「はい、どうしたんですっ?」
「ラン、花戟義賊団のリーダーだろ?いや元リーダーか」
「・・・どうして、そう思うんですかっ?」
「花戟義賊団に助けられたっていうイブキとカリンってエルフの話を聞いて、リーダーがダガー使いっていうの聞いてたから。
それと手紙だな、フィオへって書かれた手紙があったけど、ランが別の人からそれを取ったとは思えなかったんだ。
だって朝マキナ様を起こしに来てから大して時間も経ってなかったのにその間に何も言わず去るなんておかしいだろ?
だからランの本名がフィオなんじゃないかと思った。どこか違うかな?」
「うーん、流石ですっ。隠す意味もなかったですねっ」
「それで?もう今のリーダーとは会って来たのか?」
「・・・はいっ。王宮の宝を奪うって予告とマキナ様を傷つけるって話をされました・・・っ」
「そっか」
頷き考え込むノーブル。
その姿に罪悪感を抱いたランは、自分を追い込むと知っていながら、つい話してしまった。
「・・・私の、せいなんです。元々、花戟義賊団は人を助けるために行動してましたっ。
それが例え、周りから非難されるような行動だったとしても・・・それでもよかったんですっ。
私達は自分が考える正義を貫いていたんだからっ!
イブキとカリンっていうと・・・確かバーサークに襲われた子たちですよねっ?
そうやって目につくものを助けていけば、いずれは平和になるってっ。
みんなで笑いながら家々を、遺跡を、国を、世界を巡ってた、そのはずだった・・・っ!
・・・でも違いました、なんでもできるって思ってた私たちは世界を知らなさ過ぎたんですねっ。
ある冒険で無茶をして、ほぼ全員が命を落としてから、そう思うようになりました・・・。
正義だとか、冒険好きだとか、なんだかんだ言いながらお宝を盗んで分け与えていてもっ。
結局私は、皆とずっと一緒にいたかっただけなんだって・・・っ。
そう気が付いてっ。
気が付いた時にはもう遅くて・・・。
私は・・・逃げたんです。頭領として、ただ一人残ったスミレへの責任を果しもせずに。
どうすれば・・・どうすればいいのかわかりません。
マキナ様への忠義もそれから逃げるための口実でしかない、そんな私に、居場所なんて・・・っ!」
いつの間にか居た茶髪で妙な白黒の服を着る少女がちらちらとこちらを見ていたが、それらを気にも留めずにノーブルは言い切った。
「あるさ」
「でも私は・・・っ」
「自分が昔間違えてしまった事があるんだろ?スミレって人と和解したいんだろ?
だったら自分で動かないとダメだぜ。
逃げてるだけじゃ何も解決しない、それはランが一番分かってるんじゃないかな?
今のランはなんか、そうだな、なんて言うか諦めようとしている感じがするよ。
なんだかんだ理由をつけて、居場所を無くしても仕方がないって、そう自分に無理やり納得させている。そんな感じがする。
でもさ、諦めるって一言で言ってもそう簡単なことじゃねえんだ。
ほんの少しの可能性に縋るのは人間の性なんだから。
最後の瞬間まで諦めちゃだめだよ。苦しくても、醜く足掻いてやればいい。
それが自分に必要だと、そう少しでも思っているのなら。
そして、それは俺もそうだ。
花戟義賊団の人達とまではいかないかもしれないが、仲間としてランの事は本当に大切に思ってるし、ランもそうだって信じたい。
だから全力で足掻くよ。
そのスミレって人とランが和解して、本当にランが戻ってきてくれる瞬間までな。
だからいつも通り周りを巻き込んで動けばいいんだ。
俺たちは仲間なんだから」
「・・・・・・えへへっ。やっぱり白馬の王子様ですねっ。
私が困ってるときに、絵本みたいに理由もなく颯爽と現れて、救ってくれる。
ほんと・・・このままじゃ、私、ダメな子になっちゃいそうですよっ」
「たまに甘やかすのはいいんだよ、たぶん。と、言うわけだ。勇者サマなら助けてくれるよな?」
突然話を振られた件の勇者サマ、一之瀬恵は面喰らいつつも会話に入る。
ノーブルの予想していなかった方向から。
「久しぶり、だね。ランちゃん」
「・・・?恵さんですかっ!?どうしてこんなところにっ」
こんなところ呼ばわりされた宿の店員、クーがため息をつく。
「なによ、恵の友達?メイドのあの子と言い、どうしてあんたの周りには問題ばっか起こるわけ?」
「さ、さぁ・・・。あはは・・・」
眼を逸らしながらさりげなく自分の運命を恨む恵は、わりとすぐに気を取り直し本題へと戻る。
「えっと、何から始めたらいいかな?まずはスミレって子の計画を止める?」
「それ逆効果じゃないかしら?」
「ああ、逆切れされても困る。スミレがどうして昔と違って金を集めてるのかが謎だ。きっとそのあたりに本当の目的が隠れてる」
「単純に考えるんなら仇討ちじゃねぇの?どこでどうやられたのかはこいつに聞くしかねぇけどさ」
一之瀬恵だけではない。
店員のはずのクーとシレーヌという少女たちまでもが会話に入り意見し合っていた。
その様子に困惑したランは尋ねる。
「えーっと、どうして私の為にそんな・・・っ?」
「「・・・・・・さあ?」」
全員分かっていなかった。
あれ?マジでなんでだ・・・?と悩む彼女たち。
人助け大好きな一之瀬恵が食いついてくるのは分かるが、クーやシレーヌが乗ってくるのは彼にとっても予想外だったが。
「・・・まぁいいだろ。依頼料は払うしな。その花戟義賊団がやられた場所、そこの調査を頼むよ。危険みたいだから気を抜くなよ」
「うん、私の仲間と・・・クーちゃん達も来る?」
「まぁ乗り合わせた船よね。行くわ。店番はアルティアナとミチに任せればいいでしょう」
「おいこら、私も行くの前提かよ。・・・つーか話題にも上がらないマギアって・・・」
「あいつがこんな朝早くに起きるわけない。証明完了」
そんな話の中でランは決意した。
「ノーブルさ、いや『マキナ様』っ。スミレと話をつけるのは私に任せてもらえませんかっ!?」
「・・・うん。クーたちの報告を待ってから行くといいよ。宝物庫の方はうちの最高戦力全員に警戒するように話してあるから多分大丈夫」
じゃあ俺はいったん城に戻るから、とそう言って宿を出るノーブルの幻影を纏うマキナ。
恐らく、ミューさんあたりの魔法だろうと見当をつけていると、クーの呟く声が聞こえてきた。
「なるほど。あれがマキナ・・・。メイドの少女一人に国を動かすか。馬鹿ね」
「はっ、だから言ったろうが。男なんてそんなもんだっての。基本的に愚かなんだよあいつら」
「だからこそ、だよ。ひとりひとりに付き添って助けてくれる。そりゃ人気も出るよ。マギアみたい」
シレーヌの罵倒に恵が尊敬するかのように語る。
そんな恵の言葉に気になっていたことをランは尋ねた。
「マギアって・・・、もしかして魔王のっ?」
「何?知らずにつれてこられたわけ?・・・いや待てよ。なんでマキナはわざわざうちに来たんだ?」
「私達に依頼するためじゃないの?」
「だから、なんでそれを一国の主が知ってるのかしら?私の知る限り彼がここに来たことは無いわ。
ルーレから多少なり話は聞いてたとしても・・・仮にも魔王の住処にのこのこ来るなんて、流石に危機感どうなってんの?」
クーの言葉にランも心の中で賛同する。
考えてみればやけにクーやシレーヌの扱いに慣れているかのような言動だった。
だからてっきり会ったことがあるものとばかり思っていたのだが、そうでもないらしい。
先ほどの言葉。
『だからいつも通り周りを巻き込んで動けばいいんだ。
俺たちは仲間なんだから』
そう言っていたが、考えてみればマキナこそ一体どれくらいの隠し事があるのか。
どのような理由があれ、隠すことというのはしんどいものなのに。
周りを巻き込み、国を変え、世界を変えようとせんとする彼。
よく考えてみれば。
それ、本当に彼の意志か?
ランは知らないが彼が動き始めた理由は『ルーレを助けるため』である。
その時から今日まで、実はマキナは私利私欲ではほぼ動いていない。
全部が全部、誰かの為なのだ。
忙しすぎるというのもあるだろう。
魔王軍を退けるのが難題すぎて余裕がないというのもまた、あるだろう。
だがそこまで自分を殺せる人間がいるだろうか?
少なくともランは見たことが無い。
「・・・もっと頑張ってマキナ様から相談してもらえるようになれるのが、目標になりそうかなっ」
その頃。
「す、すごいわ・・・!これだけの金品をため込んでたなんて、評議国も捨てたもんじゃないわね!」
「ははは、これで俺たちも大金持ちだッ!何に使ってやろうか・・・」
王宮の宝物庫内。
そこに容易く侵入した、いや侵入してしまった花戟義賊団のメンバーたちは目もくらむような金品に驚嘆していた。
一生遊んで暮らせる、そう言うと安っぽくなるかもしれないが、山のように積まれた金貨が無くなる様を想像できない程だった。
しかし。
それは人を狂わせる麻薬でもある。
「・・・姐さん。もういいんじゃないですかい?あんな古臭い花戟義賊団なんざにいなくても。この金貨持って逃げれば全部俺たちのもんですぜ」
「そうだそうだ、俺たちが盗ったんだから俺たちのもんだ。4割を上納なんざやってられっかっての!」
そうね。そろそろ花戟義賊団の名前も必要ないし、切り時かしらね。
そう言おうとする前に。
「あーあ。お約束の仲間割れが始まったぞ」
「まー、こそ泥にはよくあるやつみゅーなー。ここで裏切るような連中なんて、後々自分を裏切る可能性がはるか高いってどーして分かんないみゅーかねえ?」
「にしても、このくにのほうもつこ、ひどかった。がらがらでさいていげんしかなかったし」
「使い込んだとかではないんですよ?ただ少し前国民の皆さんにばらまきまして・・・」
なんだこの声は?女盗賊としてそれなりに名を知られる彼女ですら居場所が特定できない。
きょろきょろとする盗賊たちを見て、思い出したかのように。
「ああ、そういえばまだ幻覚かけたままだったみゅーな」
ふっと。
景色が変わり、そこは。
「ろ、牢屋・・・!?」
「面白かったわよ、自分たちからはしゃぎながら牢屋に入っていく姿」
「アロマさん、あんまり煽ったら評判に関わりますよ」
笑う兎耳の少女。
それをメイド服の女の子がたしなめる。
どうでもよさげにしていたが。
狼の耳としっぽを付けた女性は呆れたように、
「つーかよ、これ私達いる?ミューだけで十分だったじゃない。折角私まで待機してたのに拍子抜けったらないわー」
「えっと、今は依みゅーよな?」
「・・・っ、あ、あいまもどりました」
「おちょくられてるように感じるのは気のせいみゅーか・・・?」
そうして日は傾き。
地下街で待つスミレは焦っていた。
(くっ、王宮に潜入した連中からの返事がない。まさか捕まえられて?それにしてはあまりにも静かすぎる。賊にはいられて告知すらしないなんてこと今まで無かった)
もしくは。
戦利品だけを持って逃げたのか。
ありえない話ではない。
そう理解した瞬間、これまでに経験したことが無いほどの怒りが体を駆け巡った。
「・・・どうして・・・ッ!どいつもこいつも私を裏切るの!?わたしは、私はただ・・・・・・!」
「『人の態度は鏡と同じ』。そう言ってたのはスミレだったよねっ。覚えてないかな?」
袋を持ったランがいたましそうにこちらを見ていた。
「うるさい。うるさいうるさい!そんな目で私を見るなぁあああッ!」
花戟義賊団のメンバーがいたはずの地下街をどうやって無音で来たのかとか、その袋はなんだとか、そんなちゃっちな疑問なんて頭から飛んだ。
だって私が正しいはずなんだから。
私を花戟義賊団を裏切ったこの女が、どうして正しい事をしている私を憐れんでいやがる。
「スミレも、私と同じだよ」
「違う!」
「ううん、逃げてる方向が違うだけ。聞いたんだよ、私達の仲間と分かれたあの遺跡の前に作ったお墓、そこにいつもいつも金貨を置いていく人がいるって。それ、スミレでしょ?
私も毎年行ってるけど、それは気が付かなかったなっ」
「・・・・・・」
「餞のつもり、なんだろうけど、それはスミレが罪悪感から逃げてるだけでしょ?」
「・・・・・・貴方に何が分かるのよ!花戟義賊団を捨てたあなたに!」
「分かるよっ!だから言ってるんだっ!人を苦しめて、ただ奪い取っただけのお金で何が変わる?私達には、花戟義賊団には、そんな安っぽい金貨程度で喜ぶような奴はいないッ!!
そんなお金をもらって、死んでいった仲間が喜ぶわけがないっ!分かってるんでしょ!?
逃げないで、スミレ。私ももう逃げないで向き合うって決めたからッ!」
「・・・・・・・・・いま、さら・・・ッ!今更何なのよ!」
「そうだね、今更かもしれない。でも私は頭領として、ここで花戟義賊団に幕を下ろすっ!」
「ふざけるなよ、裏切り者がぁあぁぁあああああ!!」
その瞬間、激昂するスミレから虚空すら突き抜ける勢いで槍が飛び出す。
頭領たるランと6人いた幹部は全員が全員違う得物を使うという、とても珍しい組織だった。
今でも鮮明に思い出せる。
弓術の「アンズ」ことアンセリカ。
剣術の「ナツメ」ことジグ。
拳術の「チドリ」ことターラント。
斧術の「アカネ」ことメルティア。
魔術の「カンナ」ことメーテ。
槍術の「スミレ」ことクレン。
全員の事を、はっきりと。
だが、それも今日で終わりだろう。
花戟義賊団が華のように夢見ていた未來は、とっくに死んでいたんだ。
5人が命を落とした、あの時に。
想いを馳せるランに、容赦などなく穂先は迫り。
シュカンッ、と槍がばらばらに分裂した。
「な、あっ!?」
驚きに染まるスミレの表情。
だが、ランには分かっていた。
この勝負を分けたのが、技術ではないことに。
「・・・びっくりするくらい覇気がない突きだったね。私の思った通りだったよ。スミレも、分かってくれたんでしょ?」
「・・・・・・・・・ち、違う・・・、力が、入らないのよ・・・っ!どうして、何でこんなに震えてるのよ私は!」
立ち尽くすスミレをランはそっと抱きしめた。
ポロポロとランの肩に涙が落ちる。
「活動は違えど、今まで花戟義賊団の名を守ってくれて本当にありがとう。それとごめんね、スミレ。逃げてなお『ラン』って名前を捨てられなかった私はほんっとに頭領失格だね・・・」
「・・・そ・・・・・・い・・・!グスっ」
「・・・え?」
聞き間違いだと思った。
だが、彼女は続ける。
堰を切ったかのように。
「ばかばかばか!!ランのバカぁ!私も、死んじゃった仲間だって貴方のせいだなんて思ってないわよ!
それをなんか勝手に自分のせいにして、勝手に委縮して勝手にどっか行っちゃって!
ふざけないでよ、私たちは貴方の人柄に惹かれて義賊団やってたのよ!?貴方以外に頭領なんて考えられるわけないでしょうが!」
「・・・っ、そ、それと、ね。報告することがあるの」
「・・・?」
「これだよっ」
そう言って袋の中身を見せる。
それは、黒っぽい角のようなものだった。
切り取られた跡があるように見える。
「なによ、これ・・・?」
「私達の仲間を殺した魔獣の角だよっ。ちょっと残念なことに一緒に来てくれた人たちが強すぎて私がとどめを刺すことは出来なかったけどね・・・」
「仇、取ってくれたんだ・・・。良かった、ランが無事で。それでまたランまで帰らなかったら私本格的におかしくなってたかも・・・」
「・・・それだけじゃ、ないんだっ。ホントにあの人達は度肝を抜いてくれるよ」
取り出したそれは、古ぼけた5枚の紙だった。
それをランは地面に広げる。
その瞬間にスミレの眼が大きく見開かれた。
「ま、さか、遺書?」
そう。それは巣穴に落ちた5人分の想いが綴られた紙だった。
「うんっ、どうやらそうみたい。ほ、ほんとにさ・・・馬鹿だよねっ、ぐすっ、逃げ場ないって、もうすぐ死ぬって分かってるのに、こんなおちゃらけた事書いてたりさ・・・っ」
「メーテは、天然だから・・・。うん、ほらね、ジグさんは堅苦しい感じよ・・・?」
共に泣き笑いながら彼らの事を想い返す二人の少女。
彼女たちは夜が更けるのも構わず、失った日々を取り返すかのように話続けた・・・。
その日からというもの、様々な伝説を世界中で残した花戟義賊団は、ぱったりと姿を消したという。
クレン、と名乗る少女がスラム街で悪徳商人を暴くようになったのは、また別の、お話。
「すみません、こんな辺境までっ」
「いや、俺が来たいって言ったんだからな?」
少数の護衛だけを連れ、ランとマキナはとある遺跡の前へと来ていた。
当然ながらあの悲劇が起きた遺跡である。
恵が聖剣でぶっ壊したからなのか何なのか、今では魔獣もいないらしい。
そこには小さくも、5つの墓が確かにあった。
「見つかった遺骨とか愛用してた武器とかも埋めたんだったよな」
「はいっ。皆、自分の技術を磨くことに余念がなかったですからっ」
技術ねぇ・・・。と、マキナはルーレの言葉を思い出す。
「・・・『赤熱のフィオ』?」
「はい。ランさんの二つ名です。貴族が恐れるほどの人たちはほとんどいませんが、彼女たちに関してはそれほどの実績があるんですよ。
殺し屋の『白銀のアルティアナ』、密偵の『純金』、そして義賊の『赤熱のフィオ』。
彼ら彼女らは調べれば調べるほどとんでもないことをし尽くしてます。まさかランさんがその一人だったとは」
「そういやルーレとランってどこで会ったんだ?メイドになってからか?」
「いえ、国内唯一のメイドを育成する学校で出会いました。ランさんの短剣捌きは別格でしたので真似とかもさせてもらってます」
その話を信じるなら花戟義賊団の中でもやはりランは驚異の強さだったのだろう。
盗みの技術しかり、戦闘技術しかり。
自分の技術を磨くことを好む者たちが集まるわけである。
だがやはりそれだけでもなかった訳だ。
「・・・ランの人柄は人を惹きつけるからな」
「ふぇっ?どうしました、いきなりっ!?」
赤くなるランを笑うマキナ。
目を細め不満げに眺めていた彼女だったが、スッとマキナにくっ付いた。
「お、おい?」
「報告しておいた方がいいですからっ!今も私は幸せに楽しくやってますってっ」
「まあ・・・ランが楽しいなら別にいいけどな」
「ふぅん、じゃあ私の事、幸せにしてくれますかっ?」
「ああ。当たり前だろ。なんか言い方があれだが」
「えへへー、シャルロット様に自慢しちゃおーっとっ!」
「ちょっ、待てオイ!話こじれるのが目に見えるぞ!?」
悪戯気に笑いながらランは馬車に走る。
苦笑いしながら追いかけ、そしてふと後ろを振り返った。
・・・当然そこには物言わぬ墓しかない。
奇跡というのは起こさなければいけない物なのだ。
「・・・ふん、大丈夫だ。心配すんなよ。あんたたちの分まで、俺がランを支えるから」
そうして今を生きる者たちは去っていく。
いなくなってしまった人よりも、また一段と強くなって。
いや、長すぎるだろぉおおおおおお!!??
登場キャラも本編より多いんじゃないかって思うくらいのオールスターだし!
まさかの1万5千字、読ませる気がねえとしか思えないこの所業。
まあ自分で今回の話はちょっと気に入ってて、一気に読んでほしいからなんですが・・・
いややっぱりこれはひどいわ。
ちなみにエイプリルフールに出そうとして無理でした。
13時間遅かった・・・って惜しくもなんともないけどさ。
では今回はここまで。
後はランの紹介です。
*キャラクター紹介*
「フィオ・ユリウス・ニャル=ザード」(通称ラン)
年齢 19歳
身長 149cm(自称155cm)
体重 40kg
種族 人類
特記 なし
戦闘 Aランク(SからDまでの5段階評価)
義賊『赤熱のフィオ』の二つ名を持つ貴族が恐れた人間その1。
世界中を旅した花戟義賊団の頭領であり、その強さは抜きんでている。
彼女は未明の魔王マッドアリスのせいで覚えていないが、黄昏の眷属アスモデウスと戦ったときに使った魔法は遺跡を巡って手にしたもの。
今では忘れられたような古代魔法と短剣を用いた戦闘を得意とする。
実は本人にも効果が分からない古代魔法があるのは秘密。
彼女の出自はなんとソレイン王国の貴族、ユリウス家。
そこで貴族たちの諍いを見て義賊となる事を決意し、当時ユリウス家でメイドをしていた「アンズ」ことアンセリカと共に才能を開花させていく。
遺跡の魔獣により5人もの仲間を失った彼女はその後、スミレに非難されることを恐れ、スラム街へ逃げ込む。
そこで王子のマキナと出会い、助けられる形でメイド育成学校への入学を果たす。
ちなみになんでマキナがそこにいたかは、また別のお話で語られることだろう。たぶん。語られなかったらごめん。
学園で様々な経験をし、ルーレや恵と出会い、知らなかった世界を広げていったランは、希望だった恩人マキナの専属メイドになることが出来たのだった。
性格は奔放で悪戯っ子。更には本や噂に流されやすいので割と手に負えない。
しかし戦闘になるとかなり冷静になるといった二面性も持つ。
若くして組織のリーダーとなり、天性のもので特に苦も無くリーダーシップを発揮していた彼女だったが、今回の件でなんとか仲間の死を乗り越えることが出来たようだった。




