第三十七話・「変人ばっかりじゃねぇか!」
今回、一部普段より表現が過激な部分があります。
個人的にはこれくらいならギリギリセーフなのですが、苦手な方はお気を付けください。
やらかしてくれやがった新キャラにはマギアさんがふさわしい天罰を与えると思います。
では本編をどうぞ。
「・・・これからどうなるんだろうなエンデ=ヘルヴは・・・」
「ま、それを何とかするために俺が来たんだけどね。首脳会議で呼ばれてなかったとしても乱入してたよ」
「・・・・・・・・・」
考え込むベーゼ。おそらく植民地にでもされるのかと考えているのだろう。
闘技場のど真ん中で啖呵を切ってから少し経ち、大会議室に移動したマキナとトラム、ベーゼは首脳会議の前に話し合いを始めていた。
あの場にいた者たちのうち、ラングアはショックで動かなくなり、イブキ達4人は外で待ってもらっている。
悪魔の女性・・・さっちゃんと名乗っていた彼女はマキナの考えの下逃がした。
「だと言うならなんで悪魔を逃がしたんだ?自白させた方がおいしいゾ」
「魔王軍のトップ、東雲に伝えてもらうためだよ。エルフの国が自滅しそうだと気が付いたら2通りの動き方が予想できるからな。
一つは即座に殲滅しにくる、もう一つは首脳会議が終わるまで様子を見る。
けど、俺がエルフの国を助けに来ているというのも伝わったはず。なら様子を見るだろうよ。
どっちにしろ人間とつぶれかけたエルフなら直ぐ倒せると踏むだろうし」
「・・・どうしてマキナはそこまで相手のことを知っているんだ?」
不思議そうな、というより訝し気なトラムにマキナは笑う。
「戦術や騙し合いなんてチェスやらのゲームと同じだよ。相手の手を見ればある程度の性格も見えるもんさ」
訳が分からない、といった風に眼を合わせるトラムとベーゼ。
「なら僕からも一ついいか?そのマーメイドとセイレーンを併合した新しい勢力というのは何者だ?」
「黄昏の魔王、だよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありえない」
ぎょっとした表情の二人。
「・・・どういうことだ?」
「黄昏の魔王マギアは、死んだはずだゾ・・・!トオヤと相討った奴が生きているはずがないッ!」
生き返ったか偽物か、どちらかなのかもな。
そう言おうとして。
・・・・・・待て。こいつ今なんて言った?
思考が混乱しているマキナに気が付かず、トラムは相槌を打つ。
「ああ。勇者と共に旅をしていたベーゼが言うのなら間違いないだろう。誰かが名前を騙っているのか・・・?」
「・・・・・・待て。待ってくれ。魔王〝マギア〟?トオヤ?勇者??1から10まで説明してくれ」
切羽詰まったようなマキナに驚きつつベーゼは説明し始めた。
「比較的有名な話だと思うんだが・・・、世界初の勇者たるヒラノトオヤが魔王軍のトップ、黄昏の魔王マギア=シェイドと1対1で戦って両方とも死んだんだよ。
それが決定打になって、第一次エルフ魔王戦争は終結した。で、その数年後また戦争が始まって今に至るんだゾ。
今でも他の勇者と名乗る奴はいるらしいけど、見たことは無いな。というかトオヤがすごすぎた」
「まったくだな・・・。この国にヴァンパイアとマーメイドと人狼引き連れてきたときは度肝を抜かれたぞ。まあそのおかげで奴隷制度を無くすことが出来たのだがな。
他にも各地に逸話があるらしいと聞いたことがあるが・・・ソレイン評議国にはないのか?」
(マジでこいつら何言ってやがるんだ?睡眠不足の幻覚でも見てるのか・・・?)
むしろそう思いたかった。
この世界にきてここまで困惑したのは初めてだろう。
(・・・黄昏の魔王マギアと言ったが、マギアって名前は俺が即興で考えた名前だぞ。依もそんなことを言ってたが、それが本当の名前と合致するなんて奇跡通り越した偶然が起きたってのか?
さらに世界初の勇者の名前がヒラノトオヤ?平幅遠野って同姓同名の俺は変に親近感湧くぜ。1人目がヒラノトオヤ、2人目が甲斐崎ミチ、3人目が一之瀬恵ってところか?これで3人の勇者は分かったはずだが・・・)
分からない。
自分の事が、一番の謎だ。
(・・・考えられる可能性が、多すぎる。
もし仮に、俺とヒラノトオヤが記憶がないだけの同一人物だとしても、何でマキナの体に入っている?王子のマキナは一切関係ないはずだろう?何故魔王マギアは俺と精神を共有して生き返った?偽物だとして何故名前が同じなんだ?
・・・・・・すべて偶然だとでもいうのか?俺がこの世界に来る前にヒラノトオヤという同姓同名の勇者がいて、マギアも似ているだけでたまたま名前がかぶったと?
・・・ありえねえ確率だぞ。宝くじ当てる方がまだあり得る)
ぞわぞわと、背筋が凍る。
( ・ ・ ・ 俺 は 、 何 者 な ん だ ? )
「・・・?どうしたんだそんなに考え込んで?」
ベーゼの言葉で我に返った。
(・・・今は、エルフと首脳会議に集中すべきだ。一度にすべてを解決することなんてできないんだから)
そう言い聞かせ、何とかマキナは話始める。
「・・・いや何でもない。その話が本当ならマギアは偽物かもな。まあどちらにせよ制海権をとられたのには違いないが。
さて、そこで提案だが。
俺たちと同盟を組まないか?」
「・・・同盟?」
予想外そうな声を上げるトラム。
滅びかけているエルフの国と同盟を組むのに違和感を覚えたのだろう。
「ああ。食料に関してソレイン評議国はかなり豊富でね。穀物系統なら有り余ってるレベルなのさ。
それに、偽物かもしれないが、マーメイドとセイレーンを味方につけた魔王はソレイン評議国に住んでいるみたいだし、戦力的にも攻められにくい」
「住んでいる?争うとかは?」
「今のところはない。最終的にそいつらとも協力するつもりだしな」
「さっき俺たちって言ったよね?もしかして他にも?」
「・・・ああ。そいつらとも後で会せるよ」
トラムとベーゼの問いに答え終わり、考え込む二人を待つ。
「・・・うれしい申し出だが・・・自治権は?」
まあそこだろうな。
そう思うマキナ。
併合と同盟では違いが大きすぎる。
「そっちでいいよ。あくまで俺がエルフに求めるのは魔王軍を止めるための協力。それに加えて各種族代表で円卓会議でもしようと思ってる」
「各種族・・・ね。そんな事ができるのか・・・?」
「それいろんな奴から言われるけど、すでにできてるんだから大丈夫だろ」
「分かった」
決心をつけたようにトラムは手を差し出す。
「これから同盟相手としてよろしく頼む。マキナ・ソレイン・アルティベート=リア殿」
「ああ。トラム=セントラルとベーゼ=サレイクゥンだったな?よろしくお願いするよ」
握手を交わし、具体的なところを話し合おう、
としたところで、大会議室の扉が開いた。
「あれぇ、人間さんとエルフさん、お早いですね」
「ははっ、人間だと先に来ないと無礼すぎると言われて殺されてもおかしくないからな」
入って来たのは二人。
一人目は銀髪に赤い眼をした子供だった。
三つ編みで少し長めの髪を垂らす女の子は黒いズボンとコートを羽織っている。
年は14歳ほどだろうか?美しいというより可愛らしい子である。
無邪気な見た目と裏腹に声に籠った力は並みの人間なら震えてしまうほどだったが。
二人目は金色と蒼色に髪を染めているらしい青年だった。マキナと同じくらいの背丈である。
適度に鍛えられた体つきはタンクトップにより強調されていて、皮のジャンパーを手で持っている。
首に鎖のネックレスを付けていたりとファッションコーディネートに余念がなかった。
実際かなりイケメンで、ちゃらちゃらした印象すらあった。
「・・・いきなりご挨拶だな。見たところじゃ何の種族か分からねえから自己紹介お願いできる?」
本当は敬語で話そうと思っていたのだが、相手にその気がなさ過ぎてやめた。
・・・首脳会議で敬語使わないとかあと他どこで使えばいいのか分からなかったが。
「僕はヴァンパイアの統領をしてるノリア・ヴラド=ヴァンパイアです」
「俺様はドワーフの皇帝、タ―ヴだ。お前らは?」
「エルフ政樹会長トラム=セントラル。こっちは副長のベーゼ=サレイクゥン」
「それで、俺が人間のマキナ・ソレイン・アルティベート=リアっていう。マキナでいいよ」
軽く自己紹介をし、全員が席に着く。
と、同時にタ―ヴがまた口を開いた。
「おいおい少なくねえか?呼ばれてたのは6人だったよな。あと2人か?」
「残りはフェアリー、ドラゴン、マーメイドですね。エルフと6種族なので。洞穴住まいのモグラさんは計算苦手ですか?」
「・・・ああん?喧嘩なら買うぜ蚊虫。お前らを殺すための武器が腐ってたところだ」
嘲るように笑うノリアとにらみ付けるタ―ヴ。
あからさまに仲が悪い様子の彼らを見て、マキナは小声で隣のベーゼに問う。
「やけに仲が悪いみたいだけどなんかあったのか?」
「・・・?何もないだろうけど仲が悪いのは当たり前だゾ。自分と姿かたちが違う連中と簡単に仲良くできるわけないだろ。マキナがおかしいんだ」
そういうもんか・・・?と首を傾げる。
マキナの感覚だとそれほどの忌避感は無いが、彼らは違うらしい。
「・・・それはベーゼとかトラムとかもそう思うか?」
「僕らはそうでもないさ。ま、勇者と知り合う前は人間なんてどうでもいい動物だと思っていたものだが」
「ふぅん、なのに何の関係もない、のか」
戦争の一つや二つ起こってもおかしくないと思うが。
そんな関係ない話をしている間にもノリアとタ―ヴは喧嘩していた。
そこにマキナは大胆にも割って入る。
「来てねえのはフェアリーとドラゴンとマーメイドで違いないけど来るのは後二種族だと思うぞ」
「・・・はぁ。どういうことですか人間さん」
「マーメイドは来ないからな」
「あん?なんでてめえがそんなこと知ってやがるんだよ」
「なんでも、だ」
あやふやなその言葉に呆れる二人。
横からそれとは悟られないほど自然にベーゼが小声で話しかけてくる。
「おいそれ言っていいのか?」
「いいんだよ。人間は、ってか俺たちは戦力的にかなり厳しい。だからそこをあやふやにする。不自然でも何でも実際に俺の言ったことが当たっていれば、何らかの繋がりを疑うだろう。
別に何の関係も無くてもな」
そうとは知らず、ノリアは、
「・・・やっぱり知能レベルもお猿さんですか。僕にしゃべりかけるのならもっと進化してからにしてください」
「文化進化論を推進してる時点で君らの頭も知れたものだけど・・・まだわからないかな。で、エルフさん。そろそろ予定時刻じゃないか?」
あえてエルフさんと呼んだことの意図を把握し、いつの間にか眼鏡をかけたトラムは形式的に返す。
「ええ。もうすぐ開始します。来ない種族はもう、
そこまで言いかけて。
「待て待て待てい!メインが来とらんじゃろうが、メインがッ!!
天 が 呼 ぶ 地 が 呼 ぶ 竜 が 呼 ぶ ッ ! !
世界最強の純血古龍にしてッ!
覇者たる風格と妖艶な美貌を持ちし、わらわこそッ!
ドラゴンの族長パール・ヘキサティアドラゴであるッ!!
さぁぁぁぁあああ!崇めるがいいッ!!恐れるがいいッ!!
わらわこそこの世界の頂点であるぞ・・・へブシッ!!??」
「うるさいですパール様」
・・・結論から言うと。
金髪をまとめている幼女が扉を蹴り砕き先の口上を叫んだところで、後ろから現れた白銀の髪をたなびかせる女性が持つハリセンでぶん殴られ吹き飛んだ。
最早コントである。
顔を引きつらせつつノリアが問う。
「・・・えっとあなた方がドラゴンさんの?」
「うむ、述べた通りじゃの。わらわが族長のパール、そこにいるのが宰相のプラチナじゃ」
紹介されるとプラチナは軽くお辞儀をし、
「お初にお目にかかります。では時間もギリギリですし始めてもらいましょうか」
「あ、ああ。では議題を準備します」
状況に若干混乱しつつもトラムは立ち上がる。
タ―ヴがボソッと言った「いやお前らが遅れてきたよな?」という言葉にマキナは心の中で同意しつつ好奇心でパールを見つめる。
その視線に気が付いたのか椅子にぽすっと腰かけたパールはにやつきながら、
「ん?なんじゃ人間?わらわに惚れたか?」
「いや、おもしれえなと思ってね」
その返しにパールの後ろに立つプラチナが青筋を立てる。
「・・・貴様。パール様に向かってその言葉遣いとは、死にたいらしいな」
「あーよいよい。で?何が面白いんじゃ?」
「狙ってやったのかな、と」
その言葉に首を傾げながらノリアが口を挟む。
「そりゃそうでしょうね。あんな漫才する必要は分からないですけど」
「狙ってなんかないです。パール様が勝手に・・・はぁ」
ため息をつくプラチナと対照的に、パールは、笑った。
「おぬし・・・なるほど確かに革命ぐらいはしてのけそうじゃのぉ」
「誰も面識のない最強の種族ドラゴン。その族長。その立場を活用するならふざけた調子で入ってくるっていうのは悪くないね。ツッコミ役がいるならなおさらだ。気まぐれに見せかけて裏で何考えてるか分からねえ、そういう奴はあんまり好きじゃないけどな」
「同族嫌悪じゃろ。っていうかおぬしのせいでわらわの評価が変わるではないか。気が付いても口に出すものではないぞ?」
「それはごめんね。でも結局のところ一番の難関はドラゴンだからな」
二人でぎりぎりの会話をしているため誰も口を挟まなかった。
それがひと段落したところを見計らい、トラムは話し始める。
「さて。今回集まってもらったのは他でもない、魔王軍への対策です。恐らくこのまま時が進めば魔王軍は手を変え品を変え攻めてきて、大国のいくつかが滅ぶことでしょう。
実際に彼らの影響なのかはわかりませんが、魔王を名乗る者らの出現や突然昼が夜になったりと、明らかに異常なことが起こっているのは明白です。
場所が遠いから大丈夫という問題ではない。今のうちに叩かなければ、魔王軍は大国を飲み込みさらに大きくなります。
それ故に、協力戦線を組むことを提案します」
戦線ね、とマキナは考える。
同盟は無理だと考えて戦いだけ協力させ、魔王軍を倒した後は即解散、というわけだ。
包囲網とでも言おうか?
トラムの言葉に、ノリアとタ―ヴが返した。
「僕たちは無理ですね」
「俺様の国は関与しねえ。というか出来ねえ」
即否定の声だったが。
「・・・それはなんでなんだ?」
「僕たちヴァンパイアは今それどころじゃないのです。国を治めるので手一杯、ここから戦闘団を遠征とか反発招きかねないことはしたくないんで」
「俺様達ドワーフは戦闘能力にそれほど長けてねえ。主に戦闘をするのは製作したゴーレムだ。それをどうやって前線へ持っていく?一応武器のレンタルくらいならしてやってもいいが、そう安くはねえぞ」
実に非協力的な連中である。
パールの方を見るとこちらを見向きもせずに板チョコらしきものを食べていた。
(こ、こいつら助け合う気微塵もねえな!)
若干引いているのはマキナだけでなくベーゼもだった。
「・・・で?おぬしはどうするのじゃ人間」
「うん、その前にノリアに聞きたいんだけど、何がそんなに忙しいんだ?」
「別に大したことじゃないんですがね。反乱の残党が残ってまして」
(ゾンビに聞いた話じゃ、砂漠の肥大化によって国がやばいみたいな話をしてたはずだが。要するに来たくねえだけみたいだな。下手したら魔王軍の方に付く可能性すらあるぞ)
そう思い、次はタ―ヴに話しかける。
「じゃあタ―ヴ。そのゴーレム、テレポートとかで移動させることは出来ねえのか?」
「「「テレポート?」」」
「え?ああ、いや瞬間移動って言った方がいい?」
突然、タ―ヴとノリアとベーゼから疑問符が飛んできた。
「そういうことじゃないゾ。テレポートなんてそんな魔法レア中のレアだ。使い手なんか見たことないゾ」
「一応知り合いの知り合いなんだが、スゴイんだな」
「その彼女どんな容姿ですか?名前は?」
(その彼女・・・・?女性だとは一言も言ってねえが)
少しノリアの様子が変わった気がした。
隠しきれない必死さ、とでも言おうか。
「・・・水色のくせ毛の少女って聞いてるけど。名前はゾンビだそうだ」
「・・・・・・そう、ですか」
そういったきり黙り込む。
あえてツギハギであることや本名がクーであることなどは伝えなかった、が。
(やっぱ思い当たりがあるみたいだな。敵なのか味方なのか知らないが・・・ゾンビに聞くしかねえか?)
あまり思い出したくない過去のようだったから聞き出すような真似はしたくないが、最悪そうするしかない。
と、考えるとヴァンパイアはマギア勢力に入れた方がいいか・・・?
具体的な案は一切ないが。
「まあそのテレポートも使い手を呼んでくれるんなら何体か送ってもいいぜ。悪魔なんざに負けるほどやわな造りはしてねえし、ちょうど試運転をしようと思ってたところだ」
「分かった。それとは別の話なんだが、今いいか?」
「あん?別?」
「ああ。作ってもらいたい武器があるんだが」
「・・・人間に俺様達が作る武器を扱えると?舐めてやがるのか・・・?」
憤怒をにじませるタ―ヴに平然としたマキナは、
「いや、むしろ俺が作ってもらいたいのは人間の負の集大成だよ。『銃器』っていうんだが」
「ジュウキ?なんだよそれ」
やはりか。
この世界に拳銃などは無いらしい。
それも当然だろう。個人差があるとはいえ魔法を使えば遠距離戦ができるのだから。
「あらゆる生物が平等かつ均一に強くなれる武器、かな。ただ問題があって、完全な設計図がねえんだ。俺のうろ覚えとタ―ヴの創造力が合わさらないと無理だな」
「・・・・・・」
考え込むタ―ヴにまたしても予想通りだとつぶやく。
(タ―ヴ、こいつは自尊心と作った物に対するプライドは高いようだけど、ほかに関してはあまり興味がねえらしい。あと一押しってところか)
「ちなみにだが俺は魔王軍と戦う気でいる。つまりもしうまく『銃器』が配備出来たら・・・」
「・・・俺様達が作った武器が、魔王を殺す。そう言いたいのか」
「必然的にな」
返事は無かったが、タ―ヴの好戦的な笑顔で肯定であることが分かった。
「それはロマンがあるじゃねえか。足引っ張りやがったら容赦しねえぞマキナ」
「うろ覚えだけど機構は分かってるつもりだから安心しろよ。タ―ヴの力が無くても完成しちまうかもな」
「はっぬかせ!」
「つまらぬなぁ」
マキナとタ―ヴの話を遮るようにパールが言葉を紡ぐ。
「よし!わらわたちも悪魔狩りに参戦しようではないか」
「・・・・・・・なんだと?」
「なんじゃ人間?不服か?」
「いやありがたすぎて逆に怖いくらいだ」
(何故だ?興味のかけらもないような様子だったパールが突然・・・。一体何が琴線に触れた?)
そんなマキナを他所に話がまとまってしまった。
「戦線協力するのはエルフ、ドワーフ、人間、ドラゴン。それでいいですか?」
「僕は異議ありません」
「俺様もねえ。でも約束は守れよマキナ」
「わらわもないぞ。悪魔程度容易く屠ってやろう」
トラムとベーゼがこちらを見ているのに急かされ、
「・・・俺もないよ」
マキナは同意の言葉を出した。
「よかったのですか、パール様。わざわざ我々が戦いにいくなど」
解散をした後。プラチナは不思議そうにパールに尋ねていた。
族長たるパールの決定に不服は出ないが、ただただ不思議だったらしい。
「うむ。ああは言ったが素直に協力などする気は一切ないでなぁ。マキナ、あの男は中々に切れる。ここらで痛い目を見てもらおうではないか」
「・・・なるほど、策略でしたか」
「若い芽を摘むのは少し悪い気もするが、仕方が無かろう?龍の眼に睨まれて生きて帰れる訳がなかろうて」
悪意と好意を半々ににじませたパールは、人化を解き真珠色の尾と翼をしならせ、プラチナと共に帰っていくのだった。
「まぁさか人間の国なんかに逃げてたなんて思いませんでしたよ、クーちゃん」
薄暗い古城の一室。
天蓋付きのベットにネグリジェで寝転がりながらノリア・ヴラド=ヴァンパイアは薄気味悪く笑っていた。
「あれからというもの、ろくでもないことしか起きませんでいたが、ようやく報われそうですね」
ささやいている相手は同じくベットに転がっているヴァンパイアなのだろうか?
いや、人間抱き枕とでも言った方がいい。
全裸にされアイマスク口枷手枷足枷に加え、ギチギチに縄で締め上げられた少女は衰弱しきっているのか最早ほとんど動きすらしない。
そんな彼女をギューっと抱きしめながら、返事など期待していないノリアは首筋に噛みつき、血液をなめとっていく。
最後に、ゴキリッという致命的な音と共に抱き枕の少女は、半分に折りたたまれ、かすれた悲鳴と共に絶命した。
唇からあふれる体液を口移しのように飲みつつ、ノリアはベッドの脇に控える首輪の付いた男に命令する。
「ん、ぱぁ・・・。じゃ、早速人間の国に行ってクーを探して来てくださいって伝えてきて?あ、それと次は『あなたの番』だから今日の夜自分で準備しておくように」
タ―ヴに銃器についての簡単な説明をして、打ち合わせをまたすることにしたマキナはトラムとベーゼにソレイン評議国にきてほしいと伝えたいた。
理由は簡単である。
「同盟国の内情と食糧事情、それにほかの同盟者。それらを確認するなら行った方が早いのには違いない。違いないんだが・・・元老院の連中が何をするかがわからないからな・・・」
「結局あのラングアとかいうババアはどうしたんだ?」
「唖然としたまま帰ったゾ。今頃元老院の連中はてんやわんやだろうな・・・にしても本当に助かったよマキナ。正直マキナの助けが無かったらまずかった」
「情けないがその通りだ。ありがとう。そしてこれからもよろしく頼む」
ベーゼとトラムに感謝され、笑うマキナ。
「ああ。本当に頼りにしてるぞ。トラム、ベーゼ」
そのままエルフの高速精霊馬車なる乗り物に乗ってソレイン評議国まで行き、最低限を見て取って返す事となり、部屋を出る。
そこでふと気が付いた。
「マキナさん!」
出待ちのようにそこにいたのは4人のエルフ。
言うまでもなくイブキにカリンとファシネイト兄妹だった。
「カリンか。そういえば入隊はどうなるんだ?あんなイレギュラーで」
「あのバーサークJrと戦ったんだ。衛兵と戦うより格段に難易度は高いゾ。当然許可するに決まっている。むしろ入ってくれ」
そのベーゼの言葉に喜色をにじませつつ、イブキは不安そうに
「それで、マキナはもう帰るの?」
「ああ。流石に長居しすぎたからな。そろそろ国が心配だ」
ルーレがいればそう簡単に崩壊したりはしないだろうし、わざわざアロマや夜を送ったのだから大丈夫だとは思うが。
「・・・あ、あのマキナさん!何かお礼できることは無いですか!?私達迷惑かけてばっかりで何も・・・」
「いや俺もかなり助けられてるんだけどな。特にバーサークと戦ったときとかさ。ま、暇があったらソレイン評議国まで来なよ」
涙もろいらしいイブキとピョンピョンジャンプするカリン、叫ぶファシネイト兄とたしなめる妹。
そんな彼女たちに見送られながら、マキナ達はソレイン評議国へと帰るのだった。
祝!一話で9000字突破!長いし更新遅いしろくなことしないそよ風と申します。
こ、今回はかなり時間がかかりました。細かい要素が決まってなかったとはいえこれはひどい。
もう寝ます。今朝7時ですけど。
ここまで読んでくださった方に感謝を。
「この物語の主人公たる彼」の正体を予想するのも楽しいかもね?




