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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
2章・「まさか一度に6種族と戦う羽目になるなんて・・・」-エルフ・マーメイド領域征服戦
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第三十五話・「結局それが答えだろ?」

左から右へと勢いよく振られる棍棒をしゃがんで避け、次いで振り下ろされた攻撃を剣で逸らす。

火花を散らす剣をしり目にマキナはイブキに叫ぶ。


「取り敢えずじゃんじゃん撃ちまくってくれ!もう狙いとか当たるかどうかとか、どうでもいいから!」

「は、はぁ?!あんたに当たったらどうすんのよ?」

「大丈夫だ俺を信じろ!」

「・・・意味不明すぎるわよ!じゃあもう容赦しないからね!」


そう言いながらも得意とする風系統の魔法ではなく、威力の弱い輝系統の魔法で拘束しようとしていた。

当然のようにバーサークとマキナの横を通り過ぎようとしていたが。


(・・・ここだッ!)


そこでイブキは見た。

自らの撃った魔法へ、マキナが飛び込むのを。


「なっ・・・!!」

(・・・っ!!)


悲鳴を上げるイブキと、後ろで息をのむカリン。

しかしマキナは笑いながら、


魔法を剣で殴った。


比喩では無い。

剣の腹で飛来した輝系統の魔法を殴り、そのままバーサークへ打ち込んだのだ。

魔法は剣に当たると同時に輝き始めバーサークの腹に当たった後、光で出来た鎖が縛り上げた。


(やっぱりだ・・・。この世界に魔法は二種類存在する)


属性だなんだという以前に、2つに大きく分けることができるわけだ。

物理的な破壊力を持つ魔法と精神に直接影響を及ぼす魔法である。

物理的な魔法は、それが光そのものであろうが殴ったりつかんだりすることができるらしい。

マギアがドラゴンのブレスや恵の神器の光を握りつぶしたように。


(ってことはもしかしたら生命力とやらで生み出された物質は今この世界にある物とは違う・・・?)


今回の場合だと「魔法生成された光」と「この世界の太陽に似た天体から降り注ぐ光」は違うというわけだ。


(この世界の物理法則は大体が俺の知ってる地球と同じものだ。それとは違うものはほとんど全て魔法がらみ・・・。そうまるで・・・)


まるで太古の地球に魔法のシステムを入れて何千年も経った後のような・・・。

その事を考えればマキナの状況も魔法関係であるはず。


(だとしたら、俺の本当の敵は魔王なんかじゃなく・・・)


考え込んでしまう癖はそう簡単には治らない。

この場においては致命的なのにもかかわらず。


「・・・キナッ!!!前!!」

「・・・っ!?」

「gyaayyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!」


と、咆哮するバーサークの棍棒がマキナへと迫る。

必死に剣でガードしようとするも間に合わない。


(やべえこんなもん食らったら・・・ッ!)


初めて。

生まれて初めてマキナは『死』を覚悟した。


「・・・・・・私の仲間に触るなああああああああああああああああ!!!!!!!」


予想もしない真後ろからの突進を受け、マキナはごろごろと転がり死を与える一撃を避けることができた。

しかしそれでも転がったマキナの真横の地面が棍棒で砕かれる。

一体何が・・・、と見てみるとカタカタ震える女の子がマキナにしがみついていた。


「カリン・・・!?ちょっおい大丈夫か?」

「だ、だいじょばないぃけど、昔みたいに目の前で友達を殺されるのは嫌だよ!わたっ、わたしだってたたかえるもん・・・!」

「カリンは後ろにいて。私が何とかするから!」

「やだよお姉ちゃん!あいつをバーサークを倒すために、助けてくれた義勇団の皆に報いるために、ここで引くわけにはいかないでしょっ?!」


マキナの計画では。

イブキの魔法によりバーサークを怯ませながら、最終的に観覧席をぶち壊し下敷きにして逃げようとしていた。


(・・・けど、どうやらそう簡単にはいかなさそうだな)


命がけでさっき会ったばかりのマキナを助けたカリンの為にも。

なんだかんだと言いながらも妹のために命を懸けるイブキの為にも。


(こいつはここで殺しておかねえとな)


「カリン、イブキ。作戦が決まったよ。まずは・・・」



話を終えたところで、光の鎖が筋力によって砕かれ。


「goooooooooooooaaaaaaaayyyyyyyyyyyyyyyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!」


咆哮するバーサークの隣をカレンが駆け抜ける。

それを目線で追う化け物の足をマキナは全力で斬りつけた。

が、やはり少量の血液が出る程度で致命打にはならない。

それでも痛みはあるらしい。

マキナの方へ向き直った途端棍棒を振り下ろす。

ガッキイイイイイイン!!とまたしても火花を散らしながら剣と棍棒がぶつかり、


「・・・今、よね!」


後ろからイブキの声と共に輝きに満ちた風が刃のごとく飛来する。

3属性魔法『大樹から連なる燦然シェリア

木風輝、3つを複合するこの魔法は一度滞空し、そこから攻撃を飛ばす魔法である。

それにひもの付いたナイフが突き刺さり、そのままバーサークへと直撃した。

その効果は絶大で、剣とは比べ物にならない程の血しぶきが上がる。


(カリンの投擲力であっても風ぐらいなら刺さるみたいでよかった)


つまりバーサークの後ろに陣取ったカリンは、風魔法をひも付きのナイフで突き刺し、そのままひもを引っ張ってバーサークへ当てたのだ。


バーサークのヘイトをマキナがとり続け、後方からイブキが魔法を撃ち、それを反対側にいるカリンが軌道を変える。


(ぶっつけ本番でもなんとかなるもんだぜ)


そう驚き、ついでに喜びつつマキナは気合を入れ直す。




ぶっちゃけその光景に一番驚いていたのは政樹会副長のベーゼだった。


(・・・あの化け物相手に3人で?っていうかあのフードの男は元王子じゃないのか??バーサークJrの一撃を完全ではないとはいえ人間が防げるものなのか?)


まあ困惑度合いで言えばラングアも悪魔の女性も似たようなもんだが。


「ばかな・・・あの化け物相手に怖気づきもせぬじゃと?何者じゃ、あの者らは・・・」

「う~ん?横の女エルフ2人はかなり無理してる感じでかわいいー☆けどフードの男エルフはなんか色々おかしいねぇ。エルフと言えない程の筋力と戦闘に手慣れてると言わんばかりの度胸とか」

「おい大丈夫なのじゃろうな!?ここで容易くバーサークJrが殺されてしまえばまた別のおぜん立てをしなくてはならなくなるぞ」


(なるほどだゾ。今日ここにうちが呼ばれたのもお膳立てを見せつけるため・・・。ここでうちにネタバレをしてしまったのにもかかわらず、作戦に移れないなんてことになれば反撃を食らうのは分かり切ってる。もうこいつらは後には引けないんだ)


諦めかけていた未来への希望、それを心で叫ぶ。


(今回だけは、今回だけはお前を応援してやるゾ、マキナ元王子・・・・ッ!)


少し考え込む悪魔の女性だったが。


どずばあああああああああああああああああああんん!!!!!!!!!!!!


と、言う爆音とともに火系統の3属性魔法がバーサークJrにぶち当たり、倒れ込んだところで。

ニヤリと、嗤った。




5回目。

魔法を誘導し叩き込んだところで、ようやくバーサークが倒れる。


「見かけ通りにタフだな・・・!」

「はぁ・・・はぁ・・・やりました、か?」


息を切らせながらマキナへ問うカリン。

しかしその楽観視をイブキがたしなめる。


「ううん、たぶんまだよ。私の記憶じゃあ、バーサークには超常的な自然回復があった。心臓を直接刺すか脳を壊されない限り死ぬことは無いはず」

「ならどっちにしろあと少しって


そこまで言いかけたところで、マキナは信じられないものを目にした。

『首輪』だ。

いや、普通の首輪なら闘技場では当たり前かもしれない。

しかしマキナはその異質で禍々しい首輪を一度だけ見たことがあった。

正確には、マギアが、だが。


(悪魔の常套手段、復活と強化を施す外法の首輪・・・ッ!少し前まだ王国だったソレイン評議国を襲った黒龍がしてた首輪か!?)


あの時。

死んだように見えた黒龍は倍以上の力を手にしていた。

なら、今この場でバーサークが2倍もの力を手にしたら?


(ま、ずい・・・!そうなったら攻撃を受け止めることすら適わなくなる、そうなったらもう今までの手段は使えない)


というかなんで悪魔の首輪をこいつがしている?

まさかエルフはもう悪魔の傘下に下っていたのか?


疑問が湧いては、焦りに消えていく。


(落ち着け・・・。ひとまずバーサークは今まだ死んでねえ。発動もしないんだから焦ることは無いんだ。

そうだ、死ににくい特性を利用して半分死んだ状態を維持できないか?闘技場の観客共は騒いでいるがこれは本来手違い。

すぐに増援が来るはず。だったら・・・)


ぞわっ、と全身の毛が逆立った。

心臓の音が大音量で聞こえる。


マキナの物ではない。


赤い見覚えのあるオーラを纏うバーサークの物である。


「なん・・・で・・・!?」




「・・・もうめんどくさいので発動させちゃいました☆」

「なんなんだあれは?!」

「ラングアさんにもベーゼちゃんにも教えてなかったけど、実はあのバーサークJrには強化を施してあるのですよ♪」


マキナは知らない。

首輪の正確な効果は、『生命力の一時的な暴走』。

発動した時点で首輪の付いている生物は自我を失い、代わりに生命力を数倍に引き上げられるのだ。

厳密には復活しているのではない。死体を動かしているのである。


「ふふ、ふぉふぉふぉ!ここにまでビリビリとした闘気が伝わってくるようじゃ!しかしおぬしはこれを止められるのじゃろうな?」

「それについてはご心配なく☆私が手を下すまでもなくあの首輪・・・じゃなかった強化は一定時間で効果が切れますので、勝手に死にます」


何だそれは・・・?

そう歯噛みするベーゼ。

そんな彼女に嗤いかけながら悪魔はささやく。


「ふふっ☆そんな怖い顔しないで下さいよぉ。そもそもこれはただの処刑とやらせ。初めからまともに戦う気なんて、いっっっさいないんですから!」


清々しさすらあるその言葉に、ベーゼはラングアをにらみつける。


「ばばあ。お前はいいのか?こんな奴に国を渡して・・・!」

「ふん。民衆などどうだっていいのじゃ。地位と金さえあればワシは他には何もいらんからのう」


(下種共が・・・ッ!)


しかし彼女には、なにも、出来ない。


(・・・本当に?)


理論的にも政治的にもすべて手を打たれている。動きようがない。


(元王子はいいとしても・・・あとの二人は、うちがけしかけて呼んだ。見殺しにしたら、うちだって同罪だ)


ここで下手に動けばベーゼだけではなく恋人のトラムまで殺される。


(・・・・・・見殺しにして。悪魔を放置して。国を捨てて。そんな女とトラムは一緒にいてくれるのかな)


ベーゼは、恋人を思い浮かべて。


(ごめん、トラム)




「なっなんですか?!赤く、ひかって・・・!」


悲鳴を上げるカリンをイブキが抱きしめに行く。

空間が揺れているかの如き力に、観覧席の客も恐れおののき始めた。


「・・・いま、しか、ない・・・・・・ッ!」


震える姉妹の姿を見て。

マキナは、恐怖をねじ伏せ走り始める。


「・・・え?マキナ!?その赤い光は危険よ!!」

「そんなことは分かってる。でもこいつが本格的に動き始めたら勝機なんてない!ここで全員死ぬッ!」


そう叫びながら、荒々しくうねる赤きオーラへと体をつっ込んだ。


「                 ッ    ?!」


空白。


意識すら、消えかける中で、誰かの悲鳴がが聞こえる。


(もしかしたら、蘇生などをする段階で、傷は治るのかもしれない。だがそれが、急所へ刺さりっぱなしの剣ならどうだ!?)


仮に生き返ってももう一度その刺さった剣で死亡する。


その可能性に懸けて。


マキナは剣を倒れたままのバーサークの心臓を刺そうとするが。


(から、だ、が、動かねえ・・・!)


全身に襲う痛みで気が付いていないが、マキナの体は既に限界を迎えていた。


(うそ、だろ・・・、無駄に死ぬわけには・・・!)


その時。


閃光が、奔った。


「・・・6属性魔法『光弓の弦』・・・ッ!誰がッ!悪魔程度に屈するもんかよッ!!」


一際大きな樹の上階から、光り輝く葉が舞い散る。


それは神聖なる力を伝える大樹の葉。


悪しき呪いからすべてを解放する、まさに悪魔殺しともいうべき魔法である。


それは、首輪だって例外ではない。


赤きオーラはその力を弱め、


そこに。


ザンッ!


と、マキナが突き立てた剣がバーサークの心臓に直撃した。


「・・・ふぅ。誰だか分からねえけど助けてくれて助かったぜ・・・」


そう言いながら座り込むマキナ。

それを見て。


「「・・・・・・・・・」」


呆然とするイブキとカリン。

それだけでなく観客席の連中からファシネイト兄妹に至るまで驚きであんぐりと口を開けていた。


(・・・まあ、当たり前か。フード、破れちまったしな)


そう。

要するに。


「ま、マキナさんって・・・人間、だったんですか!?」

「・・・うん、まあね。けどそんなに驚くことか?」

「驚くわよ!!私、人生で人間を見たのなんて2回目よ!?」


(2回目・・・。その一回目は例の義勇団だとして、そんなにエルフの国には異種族がいないのか?マギアの近くだけ見てもソレイン評議国には幾人もいるってのに)


そんな疑問を傷ついた体で地面に横たわりながらぼんやりと考える。

すると、イブキとカリンと、そしてファシネイト兄妹が駆け寄ってくる。


「だ、大丈夫ですか?ひどい怪我・・・治るまで傍にいますから!」

「もう!最後一人で突っ走って!・・・昔、私たちを庇ったパパみたいで本当に、本当に怖かったんだからね!」

「面目次第もない・・・ッ!俺たちを、妹を助けてくれて・・・!!この恩は例えお前が人間であろうと、命に代えてでも返す!約束しよう!」

「・・・今回ばかりは。兄の言う通りです・・・。ありがとうございますマキナさん・・・!」


4人の心配そうな声を聴いて、ようやくマキナは勝利したという実感を得た。

そこに。


「・・・実に素晴らしいのう」

「そうだね。エルフの底力とでも言おうか?」


(こいつらは・・・)


この闘技場に入った時、出会った老婆と女の子。

ラングアとベーゼとか言ったか。


「もしかしてあんたたちが助けてくれたのか?」

「そういうことだよ。それで貴方はどなたなのかな?見たところ人間みたいだけどソレイン王国からはるばる?」

「・・・・・・ああ。なるほどね」


話の流れを完全に無視したその言葉の後に。


「お前、悪魔だろ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


否定すら許さない声音の言葉が続いた。


わーいもう朝だぁーーーー!!と、はしゃぐより先に眠気が襲うそよ風と申します。

もう年なんだね。仕方ないね。

さて、勤労感謝の日また試合に出かけていたそよ風でしたが、今回も死ぬほど寒い(0度以下)ってだけで何も起きませんでした。さりげなく2位だったくらいでしょうか。

うーん、日々平安、そんな毎日ほど幸福でつまらないものは無いんですがねぇ・・・。

それ以外は出かけてるかFPSしてるかPSO2で新独極に挑戦ぐらいしかしていません。

はよこれ更新しろってね。

・・・えーっとですね、実は何かあとがきに書けるネタがあったはずなんですが、忘れました(鳥頭)

思い出したら次回書きます。次回書いて無かったら、そんなもの元から無かったってことにしましょうそうしましょう。

ではここまで読んでくださった方に感謝を。



ひっさびさに苦戦するマキナさん。

次回からいつもの無双状態に戻ります(キリッ)

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