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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
2章・「まさか一度に6種族と戦う羽目になるなんて・・・」-エルフ・マーメイド領域征服戦
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第三十四話・「今のうちに企んでおけよ?」

「どう・・・なってるんだ・・・!どうしてあのモンスターが?」


VIP専用観客室。

広々として豪華絢爛な家具が揃えられている一室だが、この空間には二人のエルフしかいなかった。見かけ上は。


政樹会副長・ベーゼ=サレイクゥン。

元老院第三席・ラングア=エスケープ。


警護兵を外に置き、悠々と試験を見ようとしていたベーゼは突然出てきたモンスターに驚愕する。

それはそうだろう。

今暴れているバーサークJrは10年以上前エルフの里を荒らしまわったバーサークというモンスターの子に当たる化け物。

この『ヴィレスコロシアム』でも無類の強さで、対戦相手を殺してしまうことが通例化された死神なのだから。


「ふぉふぉふぉ、これは驚きじゃのう」


言葉に反して驚いている様子があまりないラングア。


(・・・?なんだこの落ち着きようは。こんなババアに肝っ玉とかあるようには見えないんだゾ)


心の中で毒づきつつ、扉の外の警護兵へ命令を飛ばす。


「警護兵!今すぐ本隊に連絡してあの化け物を止めるんだ。試験の妨害を、

「まあまあ待ちんさい」


言葉を遮られ。

そこで違和感に気が付いた。


声をかけても反応しない警護兵。

手をかけても開かない扉。

平然と腰かけるラングア。


これらが示す物、それは一つしかない。


「・・・おいどういうことか説明はあるんだろうな」

「口の悪い小娘じゃなぁ、そんな態度が取れるのも今のうちじゃが」

「あのモンスターがお前の差し金らしいのは分かるゾ。でも、この程度で何を勝ち誇ってる?確かにバーサークJrは強いが、軍団にかなうほどではない。事実奴の親は人間が倒し、奴は軍で捕獲されたのだからな」

「こんなものは余興じゃよ。エルフの新たなる繁栄の、な」

「・・・ついに狂ったかババア」

「残念賞~☆狂ってはいないんですねぇ」


甲高い声とともに扉が開き、うつろな目の警護兵と黒い翼を持った露出魔のような恰好の女性が入ってくる。

赤い髪に少し童顔のその女性は、どこからどう見ても・・・


「悪魔ッ・・・!?くそババアがッ、ついに国を売ったのか!!」

「売ったとは人聞きがわるいのぅ、これは同盟じゃよ。戦争で勝ちそうな方につくのは普通のことじゃろう?」


愚かだとは思っていたがここまでだとは思わなかったゾ、とベーゼは歯噛みするが同時に疑問も生じる。


(同盟などと言ったところで、そう簡単に民衆に受け入れられるわけがない。まさかそこまで何も考えてやがらねえのか・・・・?一体どんなメリットに連られやがったこのババア)


「ふふっ☆不思議そうな顔ですねぇ。今からボコボコにされる挑戦者たちを助け更に復興の手助けをする、その者が悪魔だったら・・・同盟の足掛かりになるんじゃないですか?

その昔に異種族にんげんでありながら民衆に受け入れられた『花戟義賊団』のように。この街までやってきてヴィレスコロシアムで多くの奴隷を救ったという勇者のように」


・・・確かにそれで少しは傾くかもしれない。だがその程度で、


そう考えたベーゼだったが、自らの甘さを次の言葉で悔いることになる。


「それだけではないぞ。ワシらの国には海がなく、海産物といった食料は珍しいものじゃ。

しかし今は裏で魔王軍と取引をし、海産物の輸送をおこなってもらっている。これで当面の食料は確保されたと言っていいじゃろう。

そんなものたちにたてつけば・・・どうなるか分からぬほど民もバカではあるまい」

「・・・結局のところアメとムチ。それは魔王軍の傀儡とおなじなんだゾ!?」


海産物を輸送している理由。それをベーゼは理解していた。

この世界で魚などを食べる習慣があるのなんて海のそばの町だけだからだ。

余った食料をやる。そう言っているだけで優しさなど微塵もない。


要するに、見せかけの武力と残飯をやる。だから降伏して言うことを聞け。

そう言うことだ。

それはつまり『エンデ=ヘルヴ』の滅亡。

全エルフが奴隷と化すことと同義である。


「まあまあ安心してくださいな☆ここで抵抗をやめるのであれば貴方と貴方のフィアンセは生かしておいて差し上げますけど、止めないというのなら。

・・・磔にして公開処刑くらいが妥当でしょうか♪全ての罪を擦り付けて、ね」


美しく可愛い笑顔でそういってのけるこの女は、やはり悪魔なのだと痛感させられる。

しかも。


(・・・うちはいつでもこの国のために命を懸けられる。ただ・・・恋人とらむを巻き込むわけには・・・)


出来ようはずもない。愛する人を殺されるかもしれない場所に、ベーゼの発言で追い込むことなど。

分かっている。

見透かしている。

この目の前の悪魔は。


(詰んで、いる。もうこの国は・・・)



「・・・どうしろっていうんだよ、こんなもん!」


棒立ちになり恐怖で動かなくなったファシネイト兄妹をイブキとカリンがいる控室に押し込み、マキナはバーサークとかいうらしい化け物と対峙していた。


(無理無理無理!相手の攻撃は重たすぎて受けきれないし、こっちの攻撃は弱すぎてかすり傷にしかなってねえ。思いつきの優しさで動くもんじゃねえな!)


心の中で叫びながらも諦めることをしないのもマキナではある、のだが正直言ってこの状況は頭が痛かった。

・・・物理的な意味では体も痛かったが。


「マキナ!どいて!!」


後ろからそう声が聞こえ、マキナとバーサークの横を風魔法が通り過ぎ観覧席にぶち当たる。

言うまでもなくイブキだった。


「・・・・・・よ、避けるなんてやるじゃない」

「うわぁポジティブ!」

「ggaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaoioooooooooo!!!!!!!!」


咆哮しながらマキナへ棍棒を振り下ろすバーサークの攻撃を必死に避けつつ叫ぶ。

というかカリンの反応からイブキもトラウマで動けそうにないと思ったのだが・・・。

マキナが心配そうな目でイブキを見ると、


「な、何よ!あ、あいつが仇だか仇の子孫だか知らないけど、襲ってきたからには倒すまでよ!!」

「微妙に震えた声でも空元気を出せるなら上等だな。それに・・・」


外れた風魔法が当たった壁を見ながら。


「・・・勝機も見えたぜ」


最近お絵かきの森を深夜にやっているそよ風と申します。

ね、寝ないといけないのに・・・っ!!

明後日試合なのに練習もせずにゲラゲラ笑ってていいんだろうかまあいいか。(クズ感)

今回短くてすみません、次回こそ首脳会議編かな?

ここまで読んでくださった方に感謝を。



屈服しかけているベーゼに恐怖で動けないカレン。

終わろうとしているエルフの国で悪魔と人間の代理戦争が始まる。

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