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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
2章・「まさか一度に6種族と戦う羽目になるなんて・・・」-エルフ・マーメイド領域征服戦
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幕間13・覚醒する闇と不死と(クォルタリス・エンデュミオン)-----無尽(Vampire)VS宵闇(Izanagi)

対峙する二人。先手を取ったのはやはり宵闇の方だった。


(確かに今、俺はこの女に攻撃を当てたはず。だというのにこの余裕と無傷なところから見て、幻影か、武器のようなもので受けきったか・・・?

どちらにせよ力の種類と出力を確かめるまでは、大振りでスキの多い攻撃は控えるべきだな)


力押ししか出来ない、つまりは脳筋であるように見られがちな宵闇だが、それは格下相手の場合の話である。

同格の可能性があるアルティアナをなめるほど宵闇は傲慢ではなかった。

・・・マギアと違って。


警戒の糸を切らさず。

蒼く燃える刀でアルティアナの右手に狙いを定め、斬る。

また無傷だろう、これでどうやって防いでいるのか見極めてやると。

しかし、そんな予想とは裏腹に。

アルティアナの右肘から下が、血を吹きながら、落ちた。


「・・・??」


なんだ?この抵抗感の無さは。

油断した?

いや、あれだけの啖呵を切って油断は考えづらい。

神器を解放した初撃をしのぎ切っているはずなのに・・・

そこまで考えた時。


アルティアナの左手、だった物が、血管の浮き出るような色を纏った鋸と化し。

音速に迫る勢いでたたきつけられようとしていた。

大振りの攻撃をしない選択をしていたことが功を奏し、刀を構えガードする。

火花の散った二つの武器は、互いをはじき合い先ほどまでの立ち位置へと二人を押し戻した。


(・・・危うかったかもしれん。ほんの少し刀で防ぐのが遅れていたらやられていた。だが、やつの右手はもう、)


信じられないものが、宵闇の前で起きていた。

散らばった血と、斬られて落ちた右手が、ひとりでに浮き切断面に張り付いたかと思うとその傷口が消えたのだ。


「再生・・・!?それも胴体を輪切りにされても平気な程の・・・っ!!」


正直に言えば納得のできる結論ではなかった。

神器の力を解放した初撃というのは、あらゆるものを破壊できる力を神より与えられた攻撃手段である。

その初撃の後は、力を纏わせ戦うのがセオリーだ。

今、宵闇が刀に蒼炎を纏わせているように。

だからそれを防いだアルティアナは強敵であると認識したのである。

・・・のだが、あらゆるものを破壊する一撃を食らいながらもケラケラ笑う生物は初めてだった。

ちなみにだが、この事を恵やミチは知らない。勇者でありながらもまだ一人前には成れない理由がそこにある。


そんな事情や驚愕など知ったことではないアルティアナは、綺麗にくっついた右手をぐーぱーしながら意外そうに声をかける。


「このぉ、肉を切らせて骨を切る・・・っていうかぁ骨を切らせて命を絶つ戦法の成功率はけっこお高いんだけどねっぇえ?まぎあんより、はるかに弱いって言っても魔王、こぉれくらいはぁ防げるんだぁぁあ」

「・・・まぎあん?黄昏のことか?」

「そおだよぉ!まぎあんの為ならぁ魔王の一人や二人、相手したげるよ!」


未明といい、このアルティアナといい、本当に黄昏は女運がないな・・・。

そう思いながら、宵闇は確定事項のようにつぶやいた。


「再生に、体を武器に変化させる力か・・・相手にならないな」


宵闇がとった行動は、ごく簡単だった。

ただただ切り刻む。

以上である。


(血が通っていて、手を動かして準備するあの行動。アルティアナ、お前には大きな弱点がある。

・・・痛覚だ。こいつは、普通の生物と同じように痛みを感じている。

確かに切られたり焼かれたり、今までいろいろな目にはあってきているだろうが、死亡する激痛、それを短時間で何十回何百回も与えられたらどうだ?それはまさしく地獄の責め苦にすら匹敵する。

意志を持つ生物が耐えられるものではない。

一見無尽蔵の化け物に見えても、な)



飛び込んでくる彼女の足を斬り、仰向けに倒れたところで蹴り砕く。

アルティアナの背から多種多様な武器が飛び出、その翅が襲い掛かる。

一閃。

当たる攻撃だけを切り刻み、そのまま心臓に刀を突き立てる。

ドスドスッ!

その音は、宵闇の背からも聞こえたが。

アルティアナの背から飛び出た武器、ソレの当たらなかった部位がくるりと空中で反転し背中に突き立ったのだ。

しかし、致命傷とは程遠い。

そのひるんだ時間に心臓と足が再生したアルティアナは、両足をバネに変形させ勢いよく地面を蹴り、そのまま宵闇の頭上を越え背後に着地する。

と、同時に血管が浮き出る大剣と蒼く燃える刀が勢いよく衝突した。

今度もまた互いがはじかれ合う・・・そう思いきやアルティアナの大剣ごと彼女の胴体を刀が斬り飛ばした。

民家に叩き込まれたアルティアナを見ながら、宵闇はギブアップを待ち続ける。




アルティアナの被斬撃数、実に632回。そのうち明らかに即死だった回数は302回。

対する宵闇には致命傷は無いものの、細かな傷が無数にできていた。

完全な泥沼である。

両者共に決定打がないのだから当然ではあるが。


徐々に戦場が移動し、街の郊外で戦う宵闇が303回目の死をアルティアナに与えた時。

ようやくそこで宵闇が叫んだ。


「・・・・・・何なのだ、貴様は・・・ッ!!

無駄だともう気が付いているだろう!?何故600回も斬られ、300回も死んで・・・、

何故貴様は ま だ 笑 っ て い る!!??」

「まだ、ってどういうことかなぁぁあ?いつもにこにこ、それはぁぁぁあアルティアナちゃんのぉ十八番みたいなかんじだよおお??」


最早、意味が分からなかった。

実はアルティアナもここまで殺されたのは初めてであり、意地だけで宵闇の前に立っている状態ではあったのだが。

それにしてもである。


「まともではない・・・!!そこまでの死を体験して体感して、なぜ、なぜそこまでして黄昏を庇うッ!?何がそこまで貴様を突き動かすんだ!?

この・・・・・・・化け物がッ!」

「・・・・・・・ははっ」

「・・・?」

「いやぁ、その理解不能なものを見る眼。その眼は良く知ってるからさ」

「何を、言っている?」


構わず、アルティアナは続ける。


「ほーんと、意思を持つ生物って怖いよねー。自分が理解できないものは全部排斥。自分が嫌いなものは全部遠ざける。

まあ、当然かもしれないけど、その両方に生まれた時から当てはまってた私は割を食ったよ。

いやホントに。

どこ行っても、何しても、『消えろ』だの『化け物』だのなんなのって。

独学で勉強した私より語彙力低いんじゃないかって思うくらい、そればっっかり。

それなのに私ったら死ねないでしょ?

人生が詰むってこういうことを言うんだなあってよーく勉強させられた。

だから私を殺してくれる人を探して殺し屋をしてたんだけど、そんな相手、同業者にもいなかった。

そこで・・・マギアに会ったんだよ。

マギアをどうして庇うかって聞いたね。

違うよ?私はそんないい人じゃない。

世界で唯一私を認めてくれた御方を失ったら、また昔みたいな地獄に突き落とされるから、今私は自分の幸福のために戦ってるんだよ。

いくら殺されようが辛かろうが、私のゴミクズみたいな元の人生に比べればどうってことねーのよねぇ・・・ッ!!」


ただの言葉。その重要性というのを宵闇は知らない。

マギアと戦い、風車の石臼に閉じ込められ負けが確定してしまったアルティアナが「お願いだから殺して」と泣き叫んだのに対して。

「別に殺す気はねえよ。殺し屋って職業も仕事の一種なわけだし、俺がとやかく言えたことじゃないからな。けど、お前も大変だな。死ねないなんて、もう呪いの域だろ。どうだ?どうせ永遠の人生の一部、俺にくれないか?まずは今時計塔でゾンビたちが戦ってるはず、それを助けてやってくれ」

風車を簡単に壊し、そう言ったのだ。

ぽかーんと口を開け、呆然とするアルティアナにかけられた人生で初めての期待。

頭を撫でられる感触。

それがマギアからしてみればダメ元の行動だったとしても。

ただそれだけなのに死すら超越する意思を持てるのだから、言葉というのは恐ろしい。


「なーんかあゾンビちゃんの二番煎じみたいで嫌だけどさぁ。

好意ってのは、愛っていうのは、本当にすごいんだよ?

あんまり舐めてると痛い目見るからね」


そんなアルティアナの言葉を聞いて。


「だから何だ?」


そう、宵闇は切り捨てた。


「貴様の事情など知ったことではない。現実に、貴様は、俺に負ける。その事実が、未来に残るだけだ」


またも泥沼の戦いが始まる。そう二人ともが覚悟を決めた時だった。


「・・・どっちが敵か分からなかったから出るに出られなかったけど、赤髪の方が敵ってことでいいみたいね。走ってきた甲斐があったってもんよ」

「うん。わたしもそうおもうよ。それにやっぱりあのおとこのひと、みたことある。まおうのざんとう、まちがいないよ」


そう、話しながら出てくるのは。

ウサギ耳の少女と狼の耳としっぽのお姉さん。


「・・・・・・だめ、って、言ってるのに・・・!」


その後ろには必死に引き留めようとするサーシャの姿もあったが。

姿を隠す気すらないその堂々とした様子に宵闇はいぶかしげに尋ねる。


「・・・今度はいったい誰だ?」

「アロマ・ピラノース。そう言っても分からないなら知らないまま死ね」

「よる、っていいます。いえ。違うな今からは依だからそう呼んでくれる?」


口の悪い兎に、様子が急変した狼。

また変な連中が、そう思った瞬間。

周囲の草木が、石化した。


「・・・な、に!?」

「5属性魔法『刻一刻と奏楽そら刻む舞台重奏アンサンブル』ッ!」


アロマが叫ぶと、

バキバキッ!と地面がうごめきだした。

出現するのは10メートルはあろうかという土塊の腕。

それが28本。


ばたばたばたばた!

生まれたてのようにのたうち回るその腕に、驚きながらも宵闇は一閃を叩き込


めなかった。

いつの間にか背後に回っていた依に腕を掴まれていたために。

その爪が腕に突き刺さり致死性の毒物、こことは違う世界で分子式C12H14Cl2N2、パラコートと呼ばれる毒を注入されたために。


「がっ!!??ごほっごほっ!!なん、だこれは!?」

「・・・ふぅん、宵闇の魔王様にも毒って効くんだね。どうやら過去の私はおおきなミスをしでかしたみたいだわ」


しかし、その状態であっても宵闇は近くにいた依に刀を振る。

空間すら切るような本気の一撃はしかし。


「とぉつぜん出てきて出番かっさらうのはどーかと思うなぁアルティアナちゃんは!!」


アルティアナによって防がれる。

そして。


「8属性魔法『過去たる業の無邪気イノセントギルティ』!」


黒い魔法陣から無数に飛ぶ斬撃を、避けられず。


宵闇の左腕がはじけ飛んだ。


倒れ伏す宵闇を見てサーシャは嘆息を漏らす。


「・・・・・・すごい。本当に何者・・・?」

「マキナ王子っての、この国のトップでしょ?そこからの助っ人よ。で、依は気が済んだ?勇者様を殺した魔王連中は殺すって息巻いてたけど」

「・・・分かってて聞いてるのかしらそれ?だとしたら性格悪いわ・・・こんなのいい気分になれるわけないじゃない」


倒れる宵闇の姿に街の協力者が少しずつ集まってくる。

計画が成功したわけではないが勝ったようだ、と。

ミチは少し不服そうにやってきていたが。


「助っ人には感謝するが、こちらの計画も考えてほしいものだな。ゾンビもたぶん怒ってるだろうよ」

「Re:感謝/結果オーライというやつです。ゾンビさんやミチさんが出てくるほどではなかったとそういうことでしょう」

「助けてやったってのにこの扱いなの?マキナに告げ口しとく・・・・・・・・・なんだ?」


気が付いたのはアロマが最初だった。


「アロマ、といったな兎君。何か忘れものか?」

「いや・・・なにかしらこれ・・・なんか変じゃない?」

「んああー?何のはなししてるのお??」

「・・・影」


呆然と地面を見ながらつぶやく依の言葉に全員が、自らの影を見ると。

伸びていく。

何故か。影がどんどんと大きくなっているのだ。

時間は現在昼。光源がない場所で均一に全員の影が伸びる。

その理由。


「た、太陽が・・・目に見えて、沈んでいく・・・!!??なんだこれはっ!!」


そう。理由は簡単。



時間が進み、太陽の位置が急速に変わっている。



光があふれる昼間から。


魑魅魍魎が跋扈する闇を抱える、夜へ。


それは、宵の時間。


真なる〝宵闇〟の時間へと。


背後から。


蒼と黒の入り混じる焔が踊る。


それはまさしく可視化された死の具現。


右手に刀を持ち、左腕を蒼黒そうこくの焔で形作るその人影は。



 「 さ て 。

   で は 、 始 め よ う か 」

   


時すら操るその魔王の名こそ。



 「 我 が 名 は 【 宵 闇 ノ 魔 王 】 ダ ス ク 

      深 更 と 日 支 の 狭 間 に 堕 ち る が い い 」


深夜にお腹が減る、そよ風と申します。

これでも明日早めに起きないといけないというから驚きですね。

・・・はい微妙にやばいです。

まあ、何とかなるよね!(ポジティブ)

では今回は早めにこの辺りで。

ここまで読んでくださった方に感謝を。



宵闇さん覚醒ッ!火力インフレとか言っちゃいけないよ(戒め)

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