表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
2章・「まさか一度に6種族と戦う羽目になるなんて・・・」-エルフ・マーメイド領域征服戦
41/88

第二十九話・「ウサ耳と狼耳、どっちがいいかな?」

マキナさんフェイズのあらすじ(関連話22、23、24、26、27)


エルフの呼びかけにより世界初の6種族『首脳会議』が開催されることとなった。

その便りを受け取ったマキナはエルフを攻め落とすため少し早く出発する。

のだが、その道中で兎系女子アロマ・ピラノースに間違いで襲われ色々あった末濁流に流されてしまう。

遭難したアロマとマキナが休む洞窟に、東雲の魔王の眷属を名乗る錐蟻という怪物が現れる。

が、アロマが七属性魔法『天剣』で地形ごと吹き飛ばしてしまった。

その様子を見ていた人狼の巫女、夜という狼のお姉さんはアロマにびびりながらもマキナ達を人狼の村『フェリスタ』へと案内する。

そこで長老から話を聞いていると、夜にも錐蟻にも、そして人身御供の儀式を行う人狼たちにもそれぞれ謎があった。

夜が明日の満月の晩に錐蟻の元に捧げられる前にすべての謎を解き、この『霧闇の森』最奥から脱出しなくては!



・・・はい?なんで唐突に前回のあらすじを書いたかですか?

自分で自分が書いた内容忘れてたからです。テヘペロ☆


では、本編へどうぞ。

人狼の村の長老と話をしたのち、マキナ達は夜の先導の元で彼女の家に泊まることになった。

その家は他と比べると明らかに広く巫女という存在が、ひいては人身御供の儀式自体が重要視されていることを如実に表していた。


(そんな儀式の相手である錐蟻を殺したんだ、人狼たちは内心穏やかじゃねえだろうな。でも錐蟻を倒せるような強さを持っているらしいと考えて、俺とアロマに表立って批判は出来ないって言ったところか)


だとするとやりやすい。向こうから手を出される心配がないなら何とかなるかもしれねえ、と考えながら夜の家へと入る。


「いちおうきれいにはしてるつもりですけど・・・あんまりいろいろみないでくださいね、はずかしいですし」

「はいはい分かったわよ。で、このタンスの中にある派手な

「ちょっ、ちょちょっ!それはちがうんですぅ!」


最早お約束のような速さで家探しを始めるアロマに半泣きにされつつ、夜はリビングにマキナ達を案内し、お茶を入れてくると台所へと行ってしまった。


「・・・で、どうする気なのかしらん」

「ん、何がだよ」

「まさかと思うけど本当にこの村の事情に首突っ込むわけじゃねえわよね」

「・・・仕方がねえだろ、俺たちってかお前が錐蟻を吹き飛ばしたことが原因なんだから」


そう言うとアロマはため息をつく。


「何を後ろめたく思ってるのか知らないけど、未知の場所で未知の化け物とあった場合は先手必勝よ。そもそも話が通じているかどうかもわからないんだしね。それはこの村だって同じ。人身御供だかなんだか知らないけどそういう風習に関わるとほんとろくなことにならないわよ」


自然と共に生きるアロマは、見たこともない生物に先手を譲るというのがどれだけ愚かなことか知っていた。それはそうだろうとマキナも思う、が。


「ああ。正直錐蟻を倒したアロマの行動は間違ってないと思うし、人狼たちの風習に口出すのもおかしいとは思うよ。でも・・・夜のことは助けてあげたいからな」

「・・・煩悩まみれで実に人間らしいことね。じゃあ私一人で帰っていいかしら?」

「・・・仕方ないな。なら契約をしないか?」

「契約?」

「ああ、アロマが欲しいものは大体わか


「おちゃもってきましたよ・・・ってどうしました、まきな?そんなあわてて」

「ああいや何でもないって」


(夜に同情してるなんて本人に聞かせたら気分悪いだろうしな・・・。それに自分のせいだとかいいかねないし、夜が寝た後でアロマと話すか・・・)


そんなマキナの考えを読み取ったのかどうなのかはわからないが、アロマはため息をつきつつテーブルにつく。


「いやマキナが『下着とか奪おうZE』とか言い出したから流石にかわいそうでしょって止めてたところなのよ」

「えっ」


・・・本当に、本当にただでは転ばないウサギである。今すぐにでも帰りたいが契約の話が気になって帰れないことへの意趣返しだろう。


「・・・うぅっぅうううううう・・・!」

「違う違う!!!今のはアロマの兎的ジョークだから!ってかさっきタンス覗いてたのはお前だろ!」

「しーらない、じゃ、そゆことで私寝るから」

「えぇ!?」


そう言うと机に突っ伏し寝る体勢をとるアロマ。


「こいつ・・・。えっと、夜?本当に違うからな?」

「ま、まきなのいうことなら、しんじます。・・・・・・・それにおうじさまのまきなからしたら、たいしたものじゃないだろうし・・・」


なにその偏見?!と思ったが、ここで『いや、夜の下着全然ありだよ!!』などと墓穴を掘るような真似はしないマキナは、夜の思い込みを正すことをあきらめた。

それで誰かが不幸になるわけでもないし、と思いながら。


「まあ、アロマも悪乗りは激しいけど悪いやつではないみたいだし、許してやってくれ」

「はい。それはふんいきでわかりますよ・・・ちょっとこわいですけど」


伏せたアロマの方を見ると、長い耳がぴょこんと動いていた。

なんだよ可愛いところもあんじゃんと思いつつ、本題に入る。


「巫女について聞いておきたいんだけど、6年前に夜は巫女に任命されたんだよな?」

「そうです。その3ねんご、きりありさまのところにいったんですけど、そのまえにきをうしなって・・・きがついたらむらにいたんです」

「ふーん・・・。で2回目が明日の夜なんだよな。普通なら錐蟻のところに行くと帰ってこないのになぜか夜だけは帰ってこれた・・・。何の違いがあるのかな?血筋とか?」

「もしちすじだとしても・・・わたしにはりょうしんがいないのでわからないですね」

「・・・そうだったのか」

「わたしはひろわれたんです、このむらに。だからむらのためにいけにえになれるのはうれしかったんですけど・・・」

「拾われた、ねぇ。そうだ、この村の人たちは皆巫女を差し出せば平和に暮らせるって言ってるけど、具体的に何を防いでるんだよ?」

「むかしむかしにおきた『きりありのぼり』っていうげんしょうです・・・。たくさんのばけものにおそわれたこのむらは、かいめつしかけたそうですが、そのときひとりのじょせいがみをささげることでまもったそうなのです。それから3ねんごとにじょせいをささげることで、『きりありのぼり』はおきなくなったのだとか」


(錐蟻登り?まさかとは思うけどこの森が霧闇の森って呼ばれてるのはそのあたりから来てるのか?

人狼たちを壊滅させるほどの何かなら、この森にあまり人が立ち寄りたがらないのもアロマがいたからじゃなくそのせいなのかもな。でもそれは・・・)


「・・・要は錐蟻本人に聞くのが早いな」

「ほ、ほんにん・・・!?というかしんじゃったんじゃ・・・」

「ははっ明日のお楽しみにして寝ようぜ」

「む、むむむ。じゃあおふとんしきますから」


そう言って布団を敷いてくれた。

のはいいのだが、なぜか夜もリビングで寝るらしくすぐ隣に布団を敷き、もぐりこんだかと思うとほんの2,3分ですやすやと寝息を立て始めてしまった。


(いや・・・いくらなんでも無防備過ぎませんかね。ってか待てよ、アロマはどうするんだ?布団残り1つしかないぞ。それに契約の話も途中なのに・・・)


そう思いながらアロマの肩を揺らすもピクリともしない。


「・・・こいつら適応力たかすぎねぇか」


呆れ半分尊敬半分で彼女たちを見ていると、唐突に耳のことが気になり出した。

ウサ耳と狼耳である。

何の気なしにアロマの耳と頭を撫でてみると、さわさわとしてとても触り心地がいい。

人肌の暖かさもあいまって猫でも撫でているような気分だった。兎だけど。

するとウサ耳がぴょこんぴょこんと撫でている手に擦りついてくる。


「うん?起きてるのかアロマ」


そう聞くと、ウサ耳がすっと離れる。


「ははっ完全に起きてるな。よく分からないけど撫でられると気持ちいものなのか?」


そう言いながら撫でても反応しない。いや、ぴくんぴくんとウサ耳が動いているのだが必死に隠そうとしているように見える。

やっぱりなんだかんだ可愛いやつだなあ、とほのぼのしつつ撫で続け、


がさっ、と何かが立ち上がる音が聞こえたかと思うと、

後ろから何かに抱き着かれた。


「まきなー♪なーにしてるのー?」

「うわっ!?夜か・・・?!」

「ううん、違うよ。もう、そこの兎さんばっかり撫でまわすなんてずるいよ、私も私も!」

「いや、え??服も同じだし・・・顔は見えないけど夜・・・じゃないのか?」

「違うよ?夜は寝てるもん。それはそれとしてちょっとお話ししようよ。じゃないと・・・」

「・・・・・・・・っ!?」


体が突然しびれ始める。しかも全身がだ。それどころか足に力が入らない。


「な、なんだよこれ・・・っ!」

「毒だよ」


あっけらかんとそういう何者かに戦慄する、が、立っていることすらできないマキナはその場に崩れ落ちた。


「っ!」

「おおっとお!だーいじょうぶ?ただの麻痺毒だから安心して?一つお願いを聞いてくれたらすぐ解放してあげる」

「お願い・・・?」

「うん。今すぐこの村から出て行って貰えないかなあ?夜を連れてさ。そんでもって夜の面倒を見てくれない?王子様らしいしできるでしょ?」

「どういうことだよ?」

「返事は『はい』か『YES』でお願いできるかな?」

「・・・拒否権なしかよ。でも巫女を失ったらこの村の連中は・・・」

「まあ死ぬかもね。私は大丈夫だけど。でも関係ないでしょ、あんな生贄を出すような冷酷な連中」

「・・・いや、それは分からねえだろ。このまま放置したら新しい巫女が生まれるだけだぞ。そしたらお前だって選ばれるかもしれねえ。それなら錐蟻の謎を解いた方が犠牲無く済む。そうは思わないのか?」

「まあ・・・そうかもね。でもそれってまきなが錐蟻を何とかできる前提だよね?できるの?」

「愚問過ぎるな。俺は後々この世界を統べる人間だぞ。この程度解決できなくてなんなんだ?」


会話が止まる。

何言ってんだこいつは、と思われているのか。

だとしてもやらないよりやる方を選ぶのが余裕ある人間の心理である。

人狼かもしれないが。

彼女には、マキナがどちらを選ぼうが損など無いはずだからだ。


ひやっとした手がマキナの両目を覆い、


「じゃ、信じてあげる。頑張ってね、未来の旦那様♪」

「・・・??おまえ本当に誰・・・っ・・・」


マキナの意識が遠くなり、いつものようにマギアの方へと意識が落ちてい・・・こうとした瞬間。


「・・・きろ。起きろこのダメ王子様っ!」


ごすっ!!!!とマキナのおなかに棒で突かれたような衝撃が走り飛び起きると、


「よぉぉぉやく起きやがったわね。襲撃受けてる最中にそこまで寝られるとかもう才能なんじゃないかしら?」


毒舌なアロマが寝転がっているマキナを足で踏んでいた。

その横ではあわあわと夜が怯えていて、

その視線の先には、4人の人狼の姿があった。男4人いるのだが、妙なスパークで身動きを封じられている。


「ど、どういうことだよ?」

「だから襲撃者だって言ってるでしょ」

「いやいや女もいただろ?」

「・・・?いや見てないけど」


(まさか・・・また幻覚か・・・っ!!?ややこしいことだなクソッ)


ここ最近休めていないため仕方ないと言えば仕方ないのだが本当に面倒な体質だとうんざりしつつ、襲撃者の話を聞くことにする。


「さて、俺たちを殺しに来たのかな?」

「ち、ちがう!」

「ほう?じゃあ何をしに来たんだよ」

「夜を、捧げるために来ただけだ。お前たちのせいで錐蟻様は怒ってらっしゃるに違いない!今すぐに夜には行って貰うべきだろう!!」

「・・・はぁ。なるほどな」


呆れてため息をつくマキナにアロマは話しかける。


「だから言ったでしょ?風習に首突っ込むとろくなことないって」

「まあな・・・。この束縛はお前が?」

「ええ」

「なんだかんだ助けてくれるんだな、帰るとか言った割には。ありがとう」

「悪いけど違うわよ。こいつらの言い分が気に食わなかっただけ」

「言い分?」

「なんだかんだ言って要するに自分たちの保身のためにこの子、夜に死んでもらいたいだけでしょ。

しかも私たちが錐蟻を倒したって聞いて怖気づいて私たちには手を出さないとか・・・。

仲間を平気で差し出せるその腐った根性があるなら錐蟻と戦って見せなさいよ。

同じ小規模な村に属する私だけど、仲間を売ることだけは絶対にしないわ。

・・・ほんっと気に障るわねこいつら。

マキナの契約の話が飲めないような内容だったら錐蟻より先に私があんたらを消してやるから覚悟して待ってなさいよ」


その本気で不機嫌そうなアロマに、

だからなのか、とマキナは思い出す。


(俺を助けたのも、仲間に言われたからって言ってたな。仲間想いなやつ、ってことだけは確かみたいだ)


そうおもながら、マキナは夜に話しかける。


「なあ夜。この辺りで見つからなさそうで寝られる場所ないか?ここにいるとまた来るかもしれないからな」

「・・・!わかりました、こっちです」


夜の先導に従い、マキナとアロマは暗い森を走るのだった。


相変わらずおなかが減ったそよ風と申します。

今回からマキナさん回ですね。

時系列的には、今回→マーメイド・セイレーン撃滅回→ルーレ、ゾンビさん回となってます。

次回はマーメイド・セイレーン撃滅回のあと、マキナさんが何してたかですね。

ふうややこしいややこしい。

それとこれ関係ないんですが、明日可愛い幽霊を探しに心霊スポットに友達と行くので次回話がいつまでも投稿されなかったら呪い殺されたと考えてください。

ホントに関係ないな・・・。

次回そのお話でもあとがきに書こうかなーなんて思ってます。

それではここまで読んでくださった方に感謝を。



王子というものに割とどうでもいい偏見をしてる夜。

そのどうでもいい偏見のせいで、割とどうでもいい受難が襲い掛かってくることをまだマキナさんは知らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ