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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
2章・「まさか一度に6種族と戦う羽目になるなんて・・・」-エルフ・マーメイド領域征服戦
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幕間11・二人の少女、二つの戦い(ダブルス・オン・ザ・ヴァンキッシュ)

ルーレが秒殺で暁の変装を見抜く少し前。

シャルロットはユリやラン、ノーブルたちに訴えかけていた。


「・・・っていう訳でマキナお兄ちゃんへの感情が操作されてるみたいなんだよ!」

「と、言われましても・・・」


ユリは困り顔でランを見る。ランはランで話が難しすぎたのか口を半開きにさせていたが。

突然『あなたが嫌いだと思っているあの人は魔法のせいなんです!』などと言われて信じるのはごく一部である。実感がわかず困るのは必然だった。

ミューたちが折れたのもマキナのことを信じたといよりルーレの言葉を信じることにしただけであり、『疑惑疑心の閉鎖殺戮空間パラデストロイ』の効果から抜け出せているわけではない。


更に言えば。

シャルロットですら、完全には抜け出せてはいないのだから。

彼女自身気が付いていない。

増幅された嫌悪があるからこそ、おせっかいやきの彼女が尚更マキナのことを放っておけないと感じていることを。

そう考えると自力で克服したルーレを暁が警戒するのも当然かもしれなかった。


閑話休題。



ユリとランの思考が停止しかけているらしいと見て取ったノーブルはかわりに話し始める。


「おっしゃりたいことは、一応わかりました。しかしそれを信じられるかというと話は別ですね・・・。それに、シャルロット様のお話が本当であっても魔法にかかる前の自分がマキナさんのことを尊敬していたのかはわかりませんし」

「じゃあどうしてノーブルはマキナお兄ちゃんに仕えてたの!?思い出して!!」


間髪すら入れないシャルロットにたじろぎつつ、ノーブルは何とか思い出そうと試み始める。


「どうして・・・あれは、確か・・・」

「・・・・・・それはランちゃんも気にかかるかなっ。ノーブルさんって元貴族でしょ?あんまり聞いていいかわからなかったんだよねっ」

「・・・・・・聞いたところで気分が悪くなるだけだぞ。でも確かに・・・そう考えると俺は、マキナさん、いやマキナ殿下を尊敬していたのかもしれないな・・・」

「ほらほら、ユリとランもだよ!」

「「・・・・・・・・」」


うーんと考え込む二人。

そんな彼女たちにシャルロットは更に訴えかける。


「少なくとも私の知ってるだけでも、楽しかったことたくさんあったよ!

小さいころ走り回ってツボ割っちゃって、3人で怒られてるところをお兄ちゃんに助けてもらったりとか、迷い猫を4人で必死にかくまったりとか・・・。

最近で言えばルーレと添い寝してたお兄ちゃんに悪ふざけしたりしたじゃん!」


彼女たちがどうしてわざわざ貴族に目をつけられていた昔のマキナに仕えようと思ったのか、それをシャルロットは聞いていないし、彼女たちもそう言った話題は振ってこなかった。

でもそこにはやはり理由があると思うのだ。

昔からなんだかんだとランやユリと遊んでいた親友から見て、無理にメイドをしている風ではなかったからだ。

その点、ルーレは同性ながら何を考えてるか分からなかったためあまり遊んだ記憶はないが。


(でも今日はルーレのホントの気持ちを聞けたような気がするな・・・。また今度お茶会にでも誘ってみようかなぁ)


「・・・確かに、いっぱい遊びましたねっ!そう考えるとマキナ様に仕えていた時間も相当長いですし・・・っ。まだまだ思い出せないけど今日早く目が覚めちゃったのもそのせいなのかなっ?」

「私も、マキナ様が失踪したとき、自殺すら考えるほど取り乱したのは覚えています。というか、本当にマキナ様が亡くなってしまっていたら主犯とともに死んでやるくらいの気持ちでした・・・。もしかして昔、私を助けてくれたのは・・・」


やっぱり、とシャルロットは思う。

マキナお兄ちゃんは私の知らないところでも優しい人だったんだと。


「ねえ。この事件が解決して、お兄ちゃんが帰って来たら・・・ルーレも呼んで昔話しない?」

「はいっ!そういえば話したことなかったですもんね・・・っ!」

「うーん・・・ちょっと恥ずかしいですけど・・・」

「ははっ、いいじゃないか。行ってくるといい」

「え?ノーブルもだよ?」

「えっ」


そんな会話をしていると、丁度良くミューたちを連れたルーレと遭遇した。


「シャルロット様、ご家族にはお話ししましたか?」

「ううん、まだだよ。今から探す気だけど・・・何かあったの?」

「はい色々と・・・。とりあえず王座の間に暁の魔王と名乗る者に呼び出されまして」

「魔王・・・!!主犯かな?」

「おそらくは」


そう話しながら王座の間の大扉前までやって来た8人は顔を見合わせ一気に開けた。


「・・・?どうした皆揃って?」

「あらシャル。お母さん探したのよ、もう・・・」

「まーまーシャルにも遅めの反抗期が来たってことでお祝いですわ!」

「シュー姉・・・。兄上が行方不明な時に・・・」

「ふん、俺と同じくマキナが死ぬビジョンが見えないんだろう。俺の息子の一人がそう簡単にあきらめるとは思えんからな」

「トーゼンですわね。お兄様が兎程度にやられるわけないですもの」


ぺらぺらと話すオーラにアルティベート、レン、シュレフィスト、ヘルの姿があった。

いや重要なのはそこではない。


この五人しかいなかった。


「・・・?どういうことかなルーレ?まだ来てないとか・・・」

「・・・・・・まさか。また姿を変えて5人の中の誰かに化けた・・・っ!!?」



その頃。

王宮の外でも魔王との戦闘準備を整える者たちの姿があった。


「さて。これで大体のやるべきことは終わったかしら?」


ゾンビはミチ、アルティアナ、アスタルト、サーシャに話しかける。

机の上に置かれた何枚もの計画書を見ながら。


「Re:肯定/はい。考えうるだけの対策と、考えうるだけの計算は終えましたね」

「ふぁあああああああつーかれたぁ!なーんだかんだ言って大変だったねぇ」


床に転がりながら足だけをばたつかせるアルティアナにミチはあきれたように、


「おい、本番は明日だぞ?君が一番負担の大きい役回りなのだから疲れない程度にしておけとあれ程・・・」

「わーかってるってぇ!だぁいじょうぶだよぉ、っていうかむしろぉ・・・」


スッと起き上がり真面目な表情を見せる。


「・・・私とゾンビちゃんに主役譲ってくれてアリガト。この借りは返すよ」

「・・・ふん、作戦通り生きて勝つことだ。それで貸し借り無しと行こう」



「・・・・・・にしても、よくこんなに集まったものだね」


サーシャはそういいながら、周りを見渡す。

普段なら閑散としているスラム街は、


たくさんのかがり火と戦闘準備をした者たちがたくさん並んでいた。


「始めはマキナ反対派に声をかけただけだったんだけどね。思いのほか利害が一致して何よりってところかしら」


マキナに反対する者はマギアと親しくなっていたため(これを機に恩を売ろうとしたため)、宵闇との戦いのサポートをしてくれることとなり。

逆にマキナ賛同派の方も王都を破壊されてはたまらないと協力してくれることになったのだ。

ドラゴンの一件で、ゾンビたちの顔は知られており、驚くほど有利に交渉は進んだ。

報酬も地主や商人で出し合うことになり、街の戦力がかなり集合していると言える。

だが・・・


「ま、数がいるからって勝てる相手じゃないことだけは確かだけどね」

「・・・・・・やっぱりそう、だよね」


宵闇の魔王と戦ったゾンビと、黄昏の魔王と戦ったサーシャ。

この二人は嫌というほど魔王の強大さを知っていた。


「集まったはいいけど勝手に魔王に戦い挑むようなことはよしてって言ってあるわよね?無駄死にするわよ」

「ああ。その点に関してはしっかり言ってあるし、これからのちょっとした決起集会でも言うつもりだ。逸る者がいないとは言い切れんがな」


ミチの嫌な予報に顔をしかめる。

だがまあ彼らも傭兵。仕事はやり遂げるだろうと、いい方に考えることにした。



そして、決起集会兼、大食事会が始まった。

バイキング形式らしく、たくさんの料理が屋台に並んでいる。

これも報酬の中に入っているらしい。


「今更だけど決起集会で何するのかしら?」

「んー?士気を挙げるぅー!とかじゃないのぉ?」


ふうん、と思いながら壇上に立つミチを見る。


「・・・以上で、事務的な内容は終わりだ。そろそろ諸君らも退屈してきた所だろう。我々の組織のリーダーであるマギアはいないため、副リーダーのゾンビから一言だけもらって後は各自で食事を取って食べてくれ」


・・・あいつ今何て言った?


「おぉ~、ゾンビちゃん副リーダーだったんだぁ?」

「初耳よ。一言も、組織組みも」


ドジ目でミチを見るが、


「いいから適当に一言いえ。我々に勝利を、とかでいいからな」

「・・・はぁ、仕方ないわね」


ゆっくりと壇上へ向かう最中で何を言うか考え始める。

ゾンビは人生の中で1人の時間の方がはるかに長い。

当然こんな大規模な作戦の喝などしたこともないし、考えたこともなかった。

そう考えてみると・・・


(あの時、マギアと会ってから私の人生もころっと変わったもんね)


そんなマギアならこの程度の喝など容易くして見せるだろう。

自信過剰で妄言にしか聞こえないことを、現実に変えて見せるだろう。

そう、例えば・・・


「・・・。明日の作戦、私が必ず勝たせてやる。だから私についてきなさい」

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」


暗み始めた空を仰ぎながら。

決戦に備える。



二人の少女の、魔王との戦いはついに佳境を迎えつつあった。


最近リンゴジャムがおいしく感じてたまらないそよ風と申します。

久々に食べてみるものですね。子供の時とはやはり好みが変わってくるようです。

今は嫌いですが、いつかわさびもおいしく感じるのだろうか・・・?

そんなどうでもいいことを考えながら今日も私は15円のうどんをすするのでした。

いや、おいしいけどね。

さてここまで読んでくださった方に感謝を。



遂に決着・・・!

と見せかけて次回は、マキナさん回。じらしぷれいってやつです。



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