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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
2章・「まさか一度に6種族と戦う羽目になるなんて・・・」-エルフ・マーメイド領域征服戦
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幕間10・紅き闇とメイド少女3(エラー・ミッション)-----VS紅闇(Andras)

(さて、どこから手を付けましょうか・・・)


軽く自分の昼食を作りつつ、ルーレは悩んでいた。


(ご主人様がお帰りになる前になんとか紛れ込んだ魔王を追い出しておきたいところですが)


もし王宮の人間すべてがマキナへの嫌悪感を強くさせられたまま、マキナが帰ってきてしまうと負のスパイラルに嵌る可能性があった。

嫌いな人間の行動というのは、たとえどんな行為だったとしても嫌に感じるものだからだ。

それに何も無くても嫌いであるという思い込みの積み重ねは、本当に取り返しがつかなくなるかもしれない。


(この事に関しては私以外の全員が敵だと考えるべきなんでしょうか?でも一人でやれることなんて限られて・・・)


そう考えながら何気なく一歩後ろに下がったとき、

どん、となにか柔らかいものが背中にぶつかった。


「「ひゅあうう!」」

「ご、ごめんなさ・・・・・・???」

「あ、ルーレ・・・」


柔らかくてルーレとともに甲高い声で驚いたのは、紫のリボンに桜色のツインテールの元第三王女。

要するにシャルロットだった。

使用人しか入らないこの厨房に彼女がいることも勿論不自然だったが。

それ以上に両手で抱えたお菓子の山がとても目についた。


「ど、どうしましたシャルロット様・・・?前あれだけ体重を気にしていらしたのに・・・」


ルーレの言う『あれだけ』とは、最近かなり小食気味になっていることを知っているからだった。

世話役のフィリアがとても困っていたためルーレも気にしていたのだ。

まあフィリアがシャルロットに手を焼いていることは無数にあるのだが。

どうやらシャルロットはマキナにとてもよく似て好奇心がとっっっても旺盛だそうだ。

割と猫レベルで。


そんな話は置いておくとして。


「・・・やけ食い。どうせルーレだっ・・・・・・・・・待って、ルーレってよく考えたらお兄ちゃんのお嫁さん候補だよね?」

「ふぇっ!?いやいやいやいや私なんかじゃご主人様にはつりあいませんよ・・・」


そう言った瞬間、今まで曇っていたシャルロットの眼が輝いた。


「『お兄ちゃんにはつりあわない』?まさか・・・っ!ルーレルーレ!!マキナお兄ちゃんの事、今どう思ってるか教えてくれない!?」

「どどどどどどうしてそんな・・・!!??」


そこでようやくルーレは気が付いた。

自分と同じようにマキナに対する嫌悪感が少ない人物の筆頭であろうシャルロットが、もしかしたら自分と同じ状況に嵌っているのではないかと。


「・・・えっと、その・・・大好きです。もしかしてですけど、シャルロット様もご主人様のこと・・・?」

「う、うん。・・・能天気で不愛想で不器用なお兄ちゃんだけど、ほっとけないよ。でもね、周りの人たちも、フィリアも、シューお姉ちゃんまでお兄ちゃんのこと嫌いって・・・」

「ふふっ、ふふふふふ。こんな、こんなところで打ち明け合うなんて変な感じですね。これだけは魔王に感謝です」

「魔王??」

「はい、よく聞いてくださいシャルロット様。今起きていることですが恐らく・・・」


そうして考えをシャルロットに告げると、あまりの驚きに数秒絶句した後ひそひそ声で話し始める。


「ってことは、私とルーレ以外の11人の中に・・・?」

「おそらくは。心当たりがありませんか?」


するとシャルロットは心から後悔した様子で、


「・・・・・・お兄ちゃんのこと悪く言うシューお姉ちゃんとフィリアに『バカッ!』って叫んで来ちゃったの・・・」

「・・・私も全く責められません。同じように切羽詰まって逃げてきちゃいましたし・・・」


だからフィリアはシャルロットを探すために一人で廊下を歩いていて、そのシャルロットはやけ食いを始めたのか、と納得しつつ、とある可能性に気が付いたルーレは立ち上がる。


「シャルロット様、もしかしたらフィリアさんは元に戻ってくれるかもしれません」

「ほ、ほんとっ!?」

「はい、私が正気に戻れたのと同じ方法で。ほかの人たちは・・・分からないですけど」

「その方法って?」

「感情は操れても、過去は変えられない。私が日記を読み返して確信を得たように、ご主人様の行いはきっと思い出しにくくなってるだけです。だったら・・・」

「そっか、教えてあげればいいんだね!それなら一人一人根気強くお話ししよ!」

「・・・根気強く、そうですね。フィリアさん以外の人はご主人様への信頼の具体的なことを知りませんが・・・きっと大丈夫ですよね!」

「うん!マキナお兄ちゃんはすごいもん!!」


そんな本人が聞いたら恥ずかしさのあまり卒倒するんではないかというほど甘いことを言いながら、作戦を始めるのだった。



そのすぐ近くで会話を聞いていた暁からすると失笑ものだったが。


(いーろいろ甘いねー。そーんなことで戻るようならーこの魔法は『疑惑疑心の閉鎖殺戮空間パラデストロイ』なんてぶっそーな呼ばれ方してないっていうのー。まー無駄な努力を眺めるのはー好みだけどねー?)




「ヤケド・・・ですか?」

「はい。ヴィレッジっていう貴族に紅茶をかけられて・・・」

「・・・・・・確かに、そうだったかも。あれ?なんでこの事を忘れてたんだろ・・・?」

「よく思い出してください!」


フィリアに訴えかけるルーレ。フィリアの言葉から徐々に角が取れていく。

やはり助けられた記憶自体は残っていると確信したルーレは更に畳みかける。


「そのあと部屋に行って、冷水のシャワーと薬に助けられて・・・しかも仇まで取るって豪語した人のことを!」

「・・・意識が飛んで・・・たしかあの時助けてくれたのは・・・ランさんにマキナ様・・・??」

「はい、その通りです。フィリアさんはそのあとご主人様の言葉によって、シャルロット様の使用人兼世話役になった、そうでしょう?」

「・・・・・・・・そうでした、確かに。あれ?じゃあなんで今まで私マキナ様の事嫌って・・・?」

「・・・そのことは後で説明します。たぶん今はまだ何が何だか分からない混乱状態でしょうから。少したって落ち着いたらまた来てください!」


そう言って椅子にフィリアを座らせたルーレはたたたっと、次の人へと向かう。


「・・・・・・・・・なんか良く分からないけど。マキナ様には借りがあった気がするなぁ・・・。私もちょっと調べてみようかな」



(・・・なにがあったのかは知らないけどー、普通に考えてーそんな簡単にルーレちゃんの言葉を信じるかー・・・????ちょーっと予想外だったけどー、まあこの子だけでしょー)



暁に監視されていることなど気が付く暇もなく、ルーレは先ほど飛び出した会議室、そこに飛び込んだ。


「うおっ!?ルーレ、大丈夫なのか?」

「はい、大丈夫です。すべての真実はもうわかっていますから」

「真実?いやそれどころじゃないのみゅー・・・。労働者たちが・・・」


そう弱った表情でミューはエンブレを見る。


「ああ・・・設計図はあるものの何のために働いているか分からんと意味不明なことを言い出しましてね・・・」


なんのために働いているか分からない・・・?どういうこと・・・。とルーレは少し考え、ふと今朝のことを思い出した。

あの時ランと中庭で会ったが、なぜランは起きていたのだろうか?

彼女の方から『なんでこんなに早いの?』と聞かれたため失念していたが、ルーレと同じくランだって朝早く起きる意味はない。

もしそれが労働者たちにも起こったとしたら。

マキナからの提案に賛同した労働者たちが、「賛同した」という事実だけを忘れているとしたら。


「『学校』、じゃないですか?それ」

「・・・・・・・・・ああ、そう言えばそんな話もあったような」

「ルーレちゃんの提案だったかみゅー?」

「違いますよ。・・・でも、そうですね、ミューさんたちにはフィリアさんみたいに長々とお話ししている暇はないかもしれませんね・・・」


そういうと、ルーレは正真正銘包み隠さず、ここまでの経緯を話した。

愚直にも自分が混乱したところから、シャルロットと話し合ったところまで。



(馬鹿じゃないのかー・・・・・・・?)

そう暁は思う。だって誰が信じるのだそんな話。様子がおかしかった女の子が突如戻ってきて『あなたたちは魔法でおかしくなっているんです!』とそう叫んでいるようなものなのだ。

(狂人扱いが関の山だろー・・・。ツマンネー、もーちょっと楽しめるかと思ったのにー)


その暁の予想通り、ミューは難しい顔をしてルーレに問い直していた。


「つまり・・・私たちの方が魔法でおかしくされていると?」

「はい、仲たがいが目的だと思います」

「・・・そんなはなしであのマキナを信じろって言われても困るみゅーな」

「・・・・・・・・・・・わかりました。


  なら、私が信じるマキナ様を信じてください」


「「「・・・」」」


その。

まさしく一歩も引く気などないルーレの言葉に。


「・・・ははっ!オーケー分かった、ミューはルーレちゃんを信じるみゅーっ!そうと決まればちゃっちゃと魔王見つけて追い出すぞ!」

「おれぁ始めっからルーレの言葉は信じてるってのッ」

「やれやれ、ルーレさんにそこまで言わせるマキナさんがうらやましいですね・・・」


驚いたのは暁である。


(・・・・・・・・・・・いやいやいやいやっ!!おかしいだろッ!!??こいつらの知能は猿以下かっ!?どーしてそんなに人を信じられる?こんな状況下で!!別段ルーレちゃんに命を救われたわけでもねーでしょうに!)


壁越しに聞こえるルーレの嬉しそうな『はいっ!後はご主人様のご家族と私の同僚さんたちです!』という声を聴きながら、暁は認識を改めつつあった。


(いや、これはおかしい。明らかに。東雲ちゃんの話に出てきたのはマキナって子だけでそいつ以外は警戒しなくていいって話だったけど、こーなってくるとそれすら見越した演技・・・ルーレがマキナを裏で操っていたりするんじゃないか?)


さてはて、『疑惑疑心』を生み始めたのはどちらなのか?マキナがいれば間違いなく煽っていたことだろう。

しかしながらこのルーレの行動がもたらした結果というのは暁6000年の人生の中でも初めて見る光景だったのだから無理はないのかもしれない。

そんなことを考えていたからこそ、気が付かなかった。


「・・・シュレフィスト様?そんなところで何を?」

「・・・!ああ、丁度ルーレを呼びに行こうと思ってたんですわ」


本来なら。

シュレフィストに扮し、内乱を起こし、問題を本物の彼女に押し付け、彼女が死んだところで偽物だったと出てくると言った算段だった。

だが、これはもう・・・


「えっとどんな御用ですか?」

「わたくしもすこし会議の内容が気にかかったんですの」


詰んでいる。

今から行動を起こしたところで遅いし、それに責任を押し付けることが出来なければこの作戦の意味がない。

ひとまず切り抜けて算段を・・・

と言ったところで。


「もしかして自首ですか?魔王さん」

「・・・・・・は?」

「・・・みたいですね。あのことは私とご主人様、それにレン様しか知らないですから分からなかったんでしょう?」

「・・・・・・・・・何の話?」

「もし仮にシュレフィスト様がヴィレッジを動かしたならどんな理由があるのか、考えてみたんです。

王女である彼女はお金なんて山ほどありますからお金じゃないでしょう。

だとすると他、地位を盤石なものにしたかったんじゃないか、と。

それも、レン様とマキナ様の地位を。母親のいない兄姉を助けたいと。

ご主人様はどうも悪意のある方向に考えていましたけど私にはそうは思えなかったので。

で、だとするともう彼女が動くことはないと思ったんです。

身分制を無くしたということは逆に言えばもう守る必要もなく、家族水入らずで過ごせるんですから。

・・・なのに。今のあなたはご主人様が危惧した敵対行動でもなく私が考えた反応なしでもない」


「・・・・・・・・・・・・・・・・なんなんだ、君は?」


味方のいない、自分すら味方でない状況下をただの言葉だけで切り抜け、ちょっとした行動から一瞬ともいえる速さで首謀者を暴き出す。

こんなことができる人物など暁には一人しか思い浮かばなかった。



「私は・・・そうですね。ただのメイドですよ。必死にご主人様の背中を追いかけるメイドです」



「・・・ははっははははっははははっはははは!!!!面白いっ!おもしろいよールーレちゃん!じゃあこの暁の魔王ダウンが最後のクイズを出してあげるね!今は使われていない王座の間に、全員集めておいでっ!!正解したら・・・このシュレフィストちゃんと君たちの心を返してあげようー!でも失敗したら・・・ふふふふあははははっははははっはははははは!!!!!!!」


ドレスを翻した偽シュレフィスト、暁の魔王は消え失せ、残ったのは虚空に響く不気味な声だけだった。


「ルーレちゃん、今のがそうみゅーか?」

「みたいですね・・・。王座の間に集まりましょう。・・・クイズ、ですか。何のことかわかりませんが、ご主人様の居場所を奪おうとしたことは、絶対に許しません」


深夜投稿の猛者と名高いわけでもないそよ風と申します。

ね、ねむい。。。

ゆえにこのあとがきも早々にねます、ごめんなさいね

ここまで読んでくださった方に感謝を。



取り敢えず人を信じられるのがルーレ。

取り敢えず人を疑うのがマキナさん。

この違いが後々問題を生む・・・かどうかは作者にもわからない。

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