第二十四話・「洞窟暮らしとかちょっと憧れる」
湿地の中にある町、リザルトゲーテに向かうというので馬車に乗り、マギアは怖かったことをしてみる。
睡眠をして、マキナの体を見ることである。
もし仮にマキナが死んでしまっていた場合どうなるのだろうか?生きていたとしても瀕死であろう。どうにかなるのか?
分からない無いことが多いがゾンビにああも言った手前、覚悟を決めて目をつぶる。
「いっ・・・つ?」
起きた先はたき火が反射する洞窟の中だった。
「助かった・・・?いや助けられたのか?」
「感謝しなさい。まあおかげで事態は超ややこしくなったけどね」
そこいたのは白い髪にウサ耳を付けた少女、アロマだった。
「助けた?アロマが俺を?」
「私だって助ける気なかったわよ。でもヒューリーに言われて・・・、ああ仲間に言われて仕方なくね」
「それだけは幸運だったかな。何がどうなったんだ?」
「あんたがうちの子を助けたりしたせいで尋常じゃなく面倒くさいことになったの。そもそも助けなくても私達なら簡単にあの崖くらい登れるのに」
「もしかして、余計なことした・・・?」
「うん」
要はほっといても助かる子を無理に助けて死にかけたらしい。
アロマの容赦ない肯定に落ち込みつつ、現状を確認する。
「・・・それで、ここはどこなんだ?どこかの洞窟だってことは分かるが」
「霧闇の森の奥深く、としか言えないかな。川に流されたせいでかなり流された。遭難よ遭難」
「え、アロマがこの森の主なんじゃないのかよ?」
自分のテリトリーの中で遭難するとかどこまでドジなんだよ・・・と苦笑いするマキナにイラついたようにアロマは返す。
「私たちが住んでるのは外周部よ。ここは中心近く!意味わかる?!」
「うん。アロマがつかえないってことはぁぁぁっががあああああああああああいったあああああああああああああああ!!!」
ぶん殴られて洞窟の壁にぶつかったマキナに目もくれず、たき火の前に座るアロマ。
「はぁ・・・なにが悲しくてこんな人間と洞窟暮らしなんか。今はまだ豪雨だから出れないけど晴れたら出るわよ」
「りょーかい、そういえばこのたき火ってどうしたんだ?こんな雨の中で・・・」
そう言われるとアロマは指を鳴らす。
すると煌々と燃える火球が浮かんだ。
「ああ、魔法ね。あんまり身近じゃねえからさっと思いつかないわ」
「便利なもんよ、ある程度までは個人差もないしね」
「ふぅん?そうだ、何だったかな『しゃくねつじゃくれん』?だっけ?あれはどれくらいのもんなんだ」
「それ潜熱雀煉のこと言ってる?反2属性魔法だしまあまあ熟練度は上かな。それができるんなら3属性魔法まで到達してそうだし。エルフ共の魔術でも・・・切り札の術式を除けば5属性魔法が限度だからすごいっちゃすごいわ」
ぶっちゃけ何言ってるかさっぱりわからないが、まあ要するに属性の数が増えればすごいのかな?とアバウトにとらえる。
「あと転移魔法とか悪魔取引とかは?」
「・・・・・・・質問多いな。先に私から聞いていい?元王子さんはここまで何しに来たの?」
「『首脳会議』ってのがエルフの首都であってね。6種族合同の会議があるらしいんだ」
「なんで人間なんか呼ばれてんの?」
「・・・それ本人の前で言うかね」
半眼になりつつも、実はマキナもそこは気にかかっていた。
「実際人間は戦力になりづらいだろうし別に5種族でもよかったはず。とりあえず送っただけ?それとも何らかの罠が・・・?」
「知らないわよそんなこと。でも・・・エルフはあんまり信用しない方がいいと思うけど」
エルフを嫌っているのを隠そうともしないアロマ。
エルフは討伐隊を差し向けているほど兎を殺したいらしいし当然と言えば当然だが、後々のことを考えるとアロマたちとエルフには仲良くしていてほしいが・・・。
「・・・・・・課題は多いな」
「ん?まあ勝手にしたらいいけど。で、転移魔法と悪魔取引だっけ。転移魔法を含める属性の無い魔法は珍しいよ。武器やら血統やら色々条件があるし。もはや固有魔法って言ってもいいかも」
「血統ねぇ・・・。アロマはそういうの使えるのか?」
「どこの誰が手の内晒すの?教えるわけないじゃない。それと悪魔取引?なんであんな古の欠陥契約魔法の話が出てくるのか知らないけど1対1で堕天までするのにほぼメリットないわよあれ」
「・・・・・・・・・・・・・・1対1?メリットがない?」
聞いていた話と全く違う。
シレーヌ達は1500以上いるはずではないのか?それともトップであるシレーヌがマギアと契約したことで種族全体と契約したことにしたということなのだろうか?
「そ、悪魔取引は昔あった悪魔とドラゴンの戦争の中で使われた苦肉の一手。捕獲した敵のドラゴンを堕天させるためだけの物なんだから。なのに両者の同意がいるの。頭おかしいでしょ」
「契約した悪魔が強くなるようなことは?」
「あるわけない。それが出来たらドラゴンは今頃絶滅してる」
「・・・ふぅん」
謎多きシレーヌといい、凶暴なマーメイドの侵攻といい、なぜか異様に博識なアロマといい、兎を執拗に狙うエルフといい。
(・・・これは面白くなってきたな)
そう笑って、アロマに変な目で見られながら雨宿りを続ける。
マキナは、そしてアロマも、侮っていた。
この『霧闇の森』に潜むと言われる怪異を。
洞窟の奥から覗き込む、赤き目を。
寝不足極まるそよ風と申します。
寝る時間帯が昼になっていてさすがにまずいですね。
夜勤でもないというのに・・・
それでも日課の小説はせっせと書きますよ!短くね?とか言われたらぐうの音もでませんけど!
ではここまで読んでくださった方に感謝を。明日か明後日に出すという常套句。
シレーヌ、一体何者なんだ・・・?それは作者にも分からない、かもしれない




