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「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」  作者: Hurricane(そよ風)
1章・「この世の大抵は予想通りいかないものだよな・・・」-人類王国革命戦
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第二十話・「・・・今はただ、前に進むだけだ」---(四日目後半)

「ルーレ、確かルーレは魔法関係の事良く知ってたよな?」

「はい、多少なら、ですが」


【東雲の魔王】なる者が来訪したと聞き、即座に部屋へと向かうマキナ達。

焦りを隠せない中でマキナはルーレに質問していく。


「うん、魔法の種類の話なんだけど、精神に干渉する物ってある?」

「ありますね」


うわぉ、詰んだんじゃね?という絶望感を隠しながらマキナは続ける。


「それって記憶改竄とか、行動言動を操るとかできるの?」

「・・・そう、ですね、それはおそらく無理です。母から聞いたことがありますが、太古の昔、マッドサイエンティストたちが集まり100人分の命を捧げて消せた記憶の時間は1時間前後だったそうです。感情に働きかけるものはあったそうですが」

「なら大丈夫そうだな・・・。少し聞いてください」


いったん立ち止まり、その場にいる国王や王妃、兄弟姉妹たちとルーレたちに話しかける。


「魔王軍が今来た理由として考えられるのは2つです。

1つはエルフが降伏し、ドラゴンとの戦いを始めようとしているため邪魔なソレイン評議国を無血で落とそうとしている場合。

2つ目はエルフはまだ落ちてはいないが、ドラゴンの戦力を図るため、ソレイン評議国とドラゴンの国をぶつけようとしようとしている場合。

しかし、エルフが落ちてドラゴンと戦える戦力がすでにあるなら二正面作戦でもよかったはず。

ということはおそらく相手の狙いは、ソレイン評議国を味方に付くように誘惑し、ドラゴンとぶつけること。

なので今回は、何もしません」

「何もしない、というのは?」

「文字通りですよ、姉上。愚か者のふりをしていた方がいいんです。勘違いして侮るような雑魚なら、なおいいですね。なのでひとまずは何も言わない方向で。これを見抜くほどの頭がないと信じたいですが」


10倍もの戦力差を持つ相手が、愚かな態度をとる人間を侮らず、堅実に向かってくる、なんてことになったら・・・とマキナは寒気がする。

そんなもの勝ちようがない、と。


部屋に入って席に着き、【東雲の魔王】を待っていると、やがて『それ』は現れた。

紫の髪を足元まで伸ばす白と黒に着飾った女性だった。

頭には頭蓋骨のようなものを乗せ、2本の角を持つその悪魔は堂々と歩いてくる。

そこには荘厳とした風格すら垣間見え、これからの緊迫した戦いを予感させるのに十分だった。



「おー、ナイスバディのおねーさんだねー!うちの嫁に来ない?」



あっけらかんとしたマキナの声が響くまでは。

いやお前ええええええええええええええええ!!!??と周りで見ていた全員から思われていたが、【東雲の魔王】とマキナはそんなことを気にも留めなかったようだ。

ふふっ、と笑いながら【東雲の魔王】は話す。


「・・・とても魅力的なお話だけど、残念よ。私には心に決めた人がいるの」

「・・・へぇ。なんだよー妬いちゃうなー。それでおねーさんは名前なんて言うの?あ、俺マキナって言うんだけど」


ちなみにだがこの言い回しはアルティアナのマネをしていたりする。クオリティはかなり低かったが。


「リリス、よ。マキナ君」

「リリスさんかぁ~、それでそれで?今日は何の用事で?」

「・・・・・・・ええ。


       こういう用事よ」


そう言った瞬間の出来事だった。

ドサドサッ、と


マキナ以外の部屋にいた全員が崩れ落ちたのだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

「ああ、流石ねマキナ君。・・・恐怖を克服するほどそんなに私のことが欲しいの?」

「あーうんそうそう、そうだよきっと。で、なにしやがったんだこの鹿野郎」


死んでいるわけではない。おびえたように震えていて立てないようだ。そこでリリスの言った言葉とルーレが言っていた精神干渉の魔法のことがつながった。


「単一感情の増幅。今回の場合は『恐怖』の増幅か?リリスって悪霊は男児の心を惑わすというが、それの応用か何か・・・?いやこれはそれだけじゃねえ、まさか悪魔の母の方か?」

「正解よ。随分博学ね。思わず騙されるところだったわマキナ君」

「・・・・・・チッ、腐っても魔王かよ。それで?降伏しろって?」

「ええ、そう。私一人でこんな国程度滅ぼせるけどね」


マキナは考える。この回答次第では国が滅びるかもしれないのだから。


「・・・それ、本気で言ってる?」

「ええ。当然でしょう?降伏すれば命だけは、

「うちの国に簡単に勝てるとか、本気で言ってんのかって聞いてるんだよ」

「・・・・・・、確かに貴方は恐怖に打ち勝つ何かを持っているわ。でも、それだけ。何の自信があって


「黄昏の魔王がこの国にいると知ってもか?」


切り札を、切った。ルーレにはあまり聞いてほしくなかったし、なにより【東雲の魔王】リリスと【黄昏の魔王】マギアがいったいどんな関係なのかもわからない。しかし賭け出るしかないと踏んだのだ。


「・・・・・・・・・・・・・なんですって?」


勝ったッ!!!と心の中で叫びながら落ち着いて言葉を紡ぐ。


「ああいや、なんでもないさ。それで、この国をいつでも滅ぼせるっていうのはなんだったのかな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


本当なのか嘘なのか・・・、リリスの頭ではどちらなのかと考えているのだろう。

しかしマキナには最終的にどちらの答えに行き着くか予想がついていた。


「・・・・・・何でもないわ、マキナ君。ただ隣国としてあいさつに来ただけよ」

「そうか、リリス。じゃあ帰る際はお気を付けて」

「ええ。有難う。これからもよろしくね」

「うん、宜しくリリスさん」




「でもどうしてリリスさんが引くって分かったんですか?」


自室に戻った後、ルーレに尋ねられマキナは答える。


「圧倒的戦力でありながら敵は1つ1つ潰す行動といい、わざわざ恐怖でしばろうとしたことといい、リリスは相当慎重なやつだからだよ。そんな奴が魔王がいるって知ってなお強行する訳がない。だからリリスが【黄昏の魔王】を警戒した時点で勝ってたのさ。

いやー、スラム街に演説しに行ったときたまたま聞いた話が役に立つとはね」


・・・と、そういうことになっている。

マギアの復活は恵たちによってそれなりに広まっているだろうという判断だった。

というか最悪今から広めよう、とか悪いことを考えていたが。


(・・・・・・・・・待てよ?なんでリリスは、『流石』なんて言ったんだ?普通なら自分の能力が効かない人間なんてそれこそ恐怖の対象だろう。なんであんなに平然と・・・)


そこで気づいた。なぜならマキナがいた元の世界にも、似たようなことができる機械があったために。


(盗聴器に監視カメラ、それに匹敵する何らかの魔法か・・・っ!?

まさか異世界から俺が来た事を知ってやがったのかっ!?

あぶねえっ、もしマキナとマギアが同一人物だってばれてたら本気で殺されるところだったじゃねえか!)


そのありうるといえば有り得る仮説に、今更ながら恐怖を覚える。

ということはもしかして異世界人には精神的魔法は効かない、とかあるのかも・・・。

などと考えたあたりで


(あー、もういいや。もう疲れた、とりあえず寝る・・・ことは出来ないからぼーっとしよう。ようやく一段落したんだからそれぐらい許されるだろ・・・)


そう思い・・・・・・




気が付くとマキナは自室にいた。

それも元の世界の自室にだ。


「・・・え?もしかして今までのは全部、夢か何かだった・・・・・・?」

「違いますよ、ご主人様」


横を見るとルーレが歩いてくるのが見える。


「ルーレ?・・・いやごめん何があったか説明してくれない?状況がさっぱり

「もう、ボーっとしちゃって・・・。それよりももう夜ですよ?今晩も一緒に寝ましょ?」

「いや・・・は?今まで一緒にねたこととかねえだろ。ってかクーじゃあるまいし、ルーレまでそういう冗談言うのか?流行ってるの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クーって誰ですか?」


ルーレの様子が明確に変わる。今までの微笑みを消し、問い詰めてくるのだ。


「ん、クーはマギアと結婚することになった、」


そこでようやく気が付く。


(あれ、俺は何言ってんだ?マキナとマギアの関係もクーのことも監視魔法がある可能性があるんだから、ルーレには内緒にしないといけないのに)


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・けっこん?ご主人様が?私以外の、女の子と?」

「いやあれは・・・おい待てよ。なんでお前マキナとマギアが同一人物だって知ってるんだ?」


「・・・今はそんなことどうでもいいですよね。ご主人様は、ごしゅじんさまは私だけを見ていればいいんですわたしだけを愛せばいいんですわたしだけかんじればいいんですわたしだけをたよればいいんですわたしだけをでもどうしてもくーとかいうおんなのこがわすれられないならわたしがころしてきますそうすればごしゅじんさまもめをさましてくれますもんねとうぜんですよねでもでもしりたいですわたしのなにがいやだったんでしょうかわたしはいのちをじんせいをかけてごしゅじんさまにおつかえしていたつもりでしたがなにかきにいらないところがあったんでしょうかだったらいますぐにかいぜんいたしますそれがわたしのことでもわたしいがいのかんきょうのことであってもかならずわたしがなんとかしてみせます」


「・・・・・・・・・・・・るー、れ?」

「はいなんでしょうか?」


にっこりとわらうルーレのことをここまで恐ろしいと思ったのは初めてだった。


「じゃあとりあえずくーという子を殺してきますので少々お待ちくださいな。帰ったらまた一緒にねましょうね」

「いや落ち着けって!どうしたんだよルーレらしくねえぞ、やっぱりなにかおかしいだろ!」

「・・・・・・・・・・・・ごしゅじんさま?あの、なんで・・・・く、び、」


は?今度はいったいなんだ?首?と、ルーレの首のほうを見ると、


自分の体から伸びる2本の手が、ルーレの首を、絞めていた。


「え、いやまてよおかしいって俺はちからもなんもいれてねえぞ!!!」

「ご、しゅじん、さまぁ・・・・・・・・・?わ、たし、なに、か」

「ちげえよ!!!ちがうんだって!!!手が離れねえっ!?どうなってんだよこれ・・・っ!!」

「・・・・・・・・・ぁ、が・・・・ごめ、、、、ん、なさ・・・・・・」

「ありえねえありえねえだろこんなの!!理論的に考えてこんなこと起こるはずがねえまてよまってくれ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・あ。え?ちが・・・嘘だよなルーレ、なあ、おい!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちがうちがうこんなのありえないおかしいんだおれがやったんじゃないいやだいやだいやだ、


ぽん、と肩を叩かれる。


振り向くのが恐ろしかった。


とんとん、と今度は2回。


「・・・・・・ちがう。おれは・・・・っ!!!!!!!!」




「ご主人様!」

「・・・・・・・・・・・・・・?」


そこはいつも通りのマキナの自室。窓からは太陽の光が入ってきており、それを遮るように心配している様子のルーレが手を差し伸べていた。


「あの、本当に大丈夫でしたか・・・?とても切羽詰まったように何かつぶやいてましたけど、私でよければ相談に乗りますよ?」

「・・・・・・・・・るーれ、だよな?」

「え?はい、ルーレですよ?・・・って、ひゃぁっ!」


生きていることを確認するためだったのかそれとも恐ろしさのためだったのか、自分でもわからないままマキナはルーレに抱き着いた。


「あ、あ、あ、あ、あの、ごしゅじんさま・・・?」

「・・・よかった」


ルーレから伝わる心拍と髪をなでる肌触りにあたたかな体温を持つ体。間違いなく生きているルーレだと判断し、息をついた。

そしてマキナはそのまま考える。さっきのは何だったのかと。普通に考えれば夢、そういうことだろう。しかしマキナは一つだけ思い当たる点があった。


(今日で、この世界にきて、5日。それはつまり俺の精神はもう5日も睡眠をとっていないということ。それの弊害なのか・・・?)


人間が長い間睡眠をとらなかった場合一番にやられるのは、体ではなく精神だという。しかしマキナの場合体は十分に休めているはずだ。それなのに弊害が出るものなのだろうか?というか、だ。もし睡眠不足による幻覚だった場合、


(どんな手を打てばいいっていうんだ・・・っ?!そもそも俺がなんで、どうやって異世界に来たのかも定かじゃねえってのに!)


「・・・・・・あの、ご主人様。抱きしめてくださるのはいいんです、私でよければいくらでも。でも、そんなに苦しんでるご主人様は見たくありません。何か、力になれないでしょうか?」


迷う。ここでマギアのことを話せばルーレは、俺と一緒に悩んで精一杯助けようとしてくれるだろう。

だがそれはつまり、監視魔法がある限り魔王軍への降伏宣言と同義にすらなりうる。

ルーレ、クー、そして俺を信じてくれている幾人かを思い浮かべ。最良と考える手を打つ。


「ルーレ、聞いてくれ・・・」

「はい・・・っ!」

「俺は、ルーレを絶対に殺さない。絶対に傷つけないし、絶対に見放したりもしない。これはこれだけは変わることはない」

「・・・・・・っ!」

「だから、もし俺が、今後ルーレを傷つけるようなことし始めて、言葉すら通じないと判断したときは。

俺を殺せ。その時は絶対に躊躇するな。ルーレを殺そうとした時点で俺は俺じゃなくなってるんだから」


びっくりしたように眼を見開くルーレだったが、すぐに微笑を浮かべる。


「ごめんなさい。それはできません」

「え?」


マキナの知る限りルーレがここまできっぱりと人の言葉を拒否するのは初めてだった。


「私は、ご主人様のことを信じていますから。私が死ぬ最後の瞬間までずっと。ご主人様が私を殺すとしても、私がご主人様を殺すなんてそれこそ絶対にありません。でも欲を言うなら・・・、もし私を殺さないといけなくなったしても、私の事、ずっと、覚えていてほしいです」

「・・・・・・・・・・・・はぁ。ルーレはすごいな・・・。俺には到底まねできねえよ・・・」

「どれだけ身近な人でもすべてをマネする、っていうのは難しいものです」


いや、知識も精神もおもいっきり負けてる気がするけどな、と思いつつ。


(なにか・・・。気休めでもいい、なにか対策を考えねぇと・・・・・・!)




それから少し経ち、ノーブルやユリ、ランに来てもらい内政の結果を毎晩報告してほしいと伝え、一息ついた後。


「でも・・・本当に大丈夫なんですか?もしかしてこれからのことでお悩みに?」


本当に心配そうにルーレが尋ねてきた。

マキナの様子は傍から見れば、それほどまでに『ヤバ』かったんだろうなぁ・・・と思いつつ、元気そうに振舞う。


「ああいや、ちょっと気が抜けただけだから大丈夫だって」

「マキナ様ーっ!疲れてたら休まないとなんだよっ?だよっ!?」

「マキナ陛下、いつでも僕をというより僕たちを頼ってください」

「そうですね、最近のご主人様は根を詰めすぎていましたから。少しは休んでください、その分私共にも働かせてもらいたいですね。今のままではやることが少なくてなりませんから」


ランやノーブル、ユリが励ましにむしろやる気が出たマキナは、考えていた次の目標について語り始める。


「まったく、本人が大丈夫だって言ってるんだから大丈夫だっての!

それに、もうこれからのことは決まってるからな」

「決まって・・・らっしゃるんですか?!」

「ああ。ヒントを出そうか?

そこは大規模な森林地帯で、魔王軍とすでに接敵している。

更にその種族は魔法が得意で、常に魔法結界を張っているのだとか。

もうわかるだろ?」


夜のバルコニーにでて、マキナはニヤリと笑いながら言う。


「次なる目標は、エルフの国『エンデ・ヘルヴ』!


さあ、どんな儚い抵抗を見せてくれるのかな?」

意地でも予約掲載をなぜか使わない残念な子、そよ風と申します。

ここから先の物語のことなのですが、


なんっにも考えてません!


あ、もう一度言っておきます。


なんっにも考えてませんッ!!


やべえやべえよ!こればっかりは素晴らしくやばいよ!?

しかし日刊をやめるなど意地でもしないっ!

そよ風とかいうのの底力(笑)をみせてやりますよええ!

と、言いつつですね、23日から30日までわたくし1週間ほど家を空けます。

それすなわち更新できないということですね~、クソがッ!

いや、違いますよ?この機会に丁度いいから2章の内容考えれるわ~なんて考えてませんよ?

合宿なのでね?当然練習しますよ?

えーっと、練習の合間は・・・はい、2章以降のこと大まかに纏めます。

楽しみにしていてくださいな!(自らハードルを上げていくスタイル)

さてここまで読んでくださった方に感謝を。次回は幕間となります。



ヤンデレルーレも悪くないなぁ。


更には満を持して対マキナさん最強の敵、『睡眠不足』が登場!

・・・これぐらいしか敵のいないマキナさんって一体・・・?

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