第6話 デートして迷宮に行って召喚して
学校辛い……4日遅れました、すいません。
ブックマークしてくれた方、ありがとうございます。これからも頑張ります。
「あー、お腹減った。あのイケメンの所為で朝飯食べそびれたからなー……おっ。ゼキア、あそこの屋台に行こう!」
《エーギルの宿》にて決闘を終えた俺たちは、朝食を取るために歩いていたところ、串焼きの屋台を見つけたのだ。
文字は読めないが数字は日本と同じらしく、130と書いてあった。
「いらっしゃい、可愛い女の子とそのお兄さん!コッコの焼き串、一個130円だよー!」
迎えたのはオレンジの髪を三つ編みにした活発そうな少女だった。俺とゼキア、そんなに年離れてるように見えるのか?
「二個ちょうだい。はい、これ」
そう言ってゼキアはお金を出してくれた。
宿屋の時にしろここにしろ、このままじゃ不味い。今は兄弟と勘違いしてくれて良かったが、いつか年下の女の子に貢がせてるクソ野郎という事になりかねない。
デート終わったら、案内板を見た時教えて貰った冒険者ギルドにも行ってみるか。
────
「イツキ、次はあの店ー!」
「おう、分かった」
朝食の時から暫く経ち、今は日が真上に来そうな時間帯。
服屋やアクセサリーショップに行ったのだが、歩いている時、服は自分で創れると言っていたのだ。そうなのだとしたら、何故そういう所に行きたがるのだろうか? 女心はよく分からない。あ、因みにそこでは何も買わないように説得した。冒険者になって、貰った金でプレゼントしたいからだ。だが、冒険者になるにあたって一つ問題がある。何も言わなくたって分かる人も居るかもしれないが、一応言っておく。
攻撃力0だから、モンスターに攻撃したってあまり意味はない、という事だ。
ステータスを見た時説明したが、攻撃力0というのはかなり大雑把な数値で、一般人を殴ったり、日常生活する分には問題は無いのだ。だがそれは素手での話。
道具による攻撃は通じる。だが、紙耐久でチキンの俺は近接で戦う気は毛頭ない。
だから今考えているのは、支援魔法を掛けつつ敵の妨害も出来る、アーチャーになろうと思う。弓カッコいいし。
え?正宗に戦わせとけばええやんだって?
いや、いくら召喚士だからってそれだけではいけない気がしたからだ。いざという時、自衛出来ないとな。ゼキアが守ってくれる確率の方が圧倒的に高いんだけどね。何度も言うがヒモは嫌なのだ。
「そ、そこの君たち!」
武器屋とかってあるのかな、でも魔法都市だしあるか分からないなぁ。
『魔法都市って言ったって、そこまで魔法に頼りっきりってわけじゃ無いんだよ。実際剣に魔法効果を付与して戦う人間は多いし』
うおっ、びっくりした。心を読むの止めてくれませんかね?
『ふふっ、その時は読心魔法をイツキが防げるようになってからねー』
「おーい、待ってくれー!」
あ、そうですか。てかさっきから後ろの人が騒がしいなあ。
何だろうと思い振り返ると、ダンディな白髪の男性が息を切らしながら走ってきていた。悪い事したなあ。
「すみません、気が付かなくて。どうかしましたか?」
そう聞くとその男の人は、自分をセルジア=バロン=エーギルだと言った。エーギル……あっ。
「もしかして、あのクラリネットとか言う野郎……んんっ、人の父親ですか?」
俺にそう言われ頷くセルジアさんは、とてもあの言いがかりクソ野郎の父親とは思えなかった。
「あの、それで俺たちに何かご用ですか?」
そう聞くとセルジアさんは咳払いを一つして、
「先程はあの馬鹿息子が失礼な事をして済まなかった。あいつは男と居る綺麗な女性を見つけるとすぐああやって言い掛かりを付け、武器の力に物を言わせて女性を奪うのだ。本当に済まなかった。私に出来ることがあれば何でも言ってくれ」
寝取り趣味か。無駄に顔が良いから余計腹立つな。それにしても、何でも言ってくれ、か。丁度良いや、頼んでみよう。
「じゃあ、一つだけ」
「何だろうか?」
「一番良い弓を頼む」
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「いやあ、やっぱり弓はいいねえ」
そう言った俺が左手首に付けているのは、タッチパネルのような物が付いたガントレットだ。なんとこれは弓なのだ。
タッチパネル部分に手を置き、魔力を流し込むとレールになっているガントレット部分が回転し、変形して弓になるのだ。取り外し可能。魔力を矢に変える事のできる装置でもある。かっこいいだろ。因みにこの矢は連射モードと極射モードに切り替える事が出来る。これは実際にダンジョンに行った時に説明する。
これはセルジアさんの傍にいた執事|(全然気が付かなかった)がいつの間にか持っていたケースの中に入っていたものだ。まるで俺がそれを選ぶのを知っていたかの如き速さで持ってきたのだ。
それはさておき。
やって来ました冒険者ギルド。外見は完全に六角柱だな。
あ、ゼキアは俺が強くなる為に見守ってくれるらしい。ありがたい限りだ。それと村正の事だが、意識したらゼキアのように会話する事が出来た。村正もゼキアと同意見だった。期待に応える為にも、さっさと冒険者登録を済ませてしまおう。
「すみません、冒険者登録をしたいんですが」
そう言ってカウンターのお姉さんの前に立つ。するとお姉さんは驚いた様に、
「もしかして、サガミイツキ様でいらっしゃいますか?」
と言った。まわりもにわかに騒がしくなってきた。一体どうしたのだろうか?
「はい、そうですけど。なんで僕の名前を?」
「領主様に、サガミイツキという方の外見と、その方が来たらギルドカードを渡してくれという命令を頂きまして。どうぞ、これがギルドカードです。魔力を通して頂くと、自分の情報を知る事が出来ます」
セルジアさんまじ有能。
渡されたのは、透明な免許証くらいの、しかしめちゃめちゃ硬いカードだった。薄っすらとこの世界の言葉が浮かび上がっている。言葉も勉強せねば。しかし今は依頼が最優先だ。
「あの、今受けることが出来る依頼って何かありますか?」
「ええと、Fランク依頼ですと…あぁ、ありました。ゴブリンの牙を五つ集めてきて下さい、との事です」
おおー、それっぽい。
「じゃあ、それで。ゴブリンって何処に出るんですか?」
ゴブリンなんて見たことないから、場所は聞いておかないと。
「街はずれの《ルナパーク迷宮》の1階層です。初心者から上級者の方まで、幅広く人気のある事ダンジョンなんですよ。では、行ってらっしゃいませ」
「ありがとうございます。行ってきます」
そう言って俺はギルドを出た。ああ、楽しみだ。
────
「うお、っ、眩しいー……」
冒険者ギルドから歩いて1時間。やっとこさルナパーク迷宮に来る事が出来た。高い天井、無数の分かれ道、ゴツゴツした壁。まさにダンジョンって感じだ。なのだが、やけに明るい。
その原因は《月光石》という、一定の光度下で光る珍しい石の無数の光が天井から降り注いでいるからだ。一際大きい月光石もあってか、まるで本当の星空の下にいる様な気分だ。とても心地が良い。実際は岩盤に突き刺さっている綺麗な石なだけなんだけどね。
だが、ここはダンジョン。うかうかのんびりしてもいられない。そうしている間にも周囲からキーキーと喚く声が聞こえて来る。
声の主は、緑色の肌、オレンジの瞳、伸びた八重歯。正しくゴブリンだ。ざっと見た感じ20匹くらいだろうか。果たして一般人に毛が生えた程度の俺に倒せるのだろうか? 支援魔法は他人にしかかける事が出来ないし、頼れるのはこの魔法弓だけ────うーん、何か名前を付けようか。決闘盤……いかんいかん……そうだ、《マギアボルグ》なんて如何だろうか? かっこいいし、そうしよう。と思っていたら、いきなりゴブリンが飛びかかってきた!
「ッ! マギアボルグッ!」
マギアボルグに手を置き魔力を流すと、すぐさま待機モードから弓へと変形した。それを取り外し、正面のゴブリンへと振るう。振動と共に吹き飛ばされたゴブリンは、すぐに立ち上がっていた。兎も角離れなければろくに戦えやしない。間を縫ってゴブリンのいない方向へ走る。先頭のゴブリンと10メートル位離れた俺は、マギアボルグを連射モードに切り替えこう叫んだ。
「怒り狂うは復讐誓いし雷神! 聖なる光を身に受けて 塵すら残さず消滅せよ! 《シュレイドスパーク》ッ!」
即興で思い付いた詠唱にも関わらず、弓には魔法陣が浮かび上がり、俺がイメージした形で魔法の矢は雷となって、全てのゴブリンを貫いた。そう、なんとこのマギアボルグ、これ自体が魔法を発動する補助装置となっているため、支援魔法しか使えない俺でも魔法の行使が可能になるのだ。しかも、魔力を込めた分だけ威力アップ。
俺は魔法関連極振りだったから、結構な数連射できる自信がある。
そう俺が解説していると、ゴブリンの身体が消え去り、心珠が10個、牙が6個、それと皮が3個落ちているのが分かった。この心珠はDランクの様だ。やっぱりドロップ品はあまり出ないみたいだ。心珠はよく出るみたいだが。
うーん、心珠はいっぱいあるし、召喚してみるか。確かこういう感じで……うし、出来た!
俺はミツキがやった感覚で心珠を浮かし、召喚陣を描く。
「よし、いけそうだ……悠久の銀河彷徨いし汝の魂よ 穢れなきその血潮で 我が大いなる器を満たし 手となり足となり 其の魂よ 我が奴隷となれ……これで────うおっ!」
そう唱えた瞬間、身体から何かが抜けていく虚脱感と共に、辺り一帯を光が包み込んだ。
次は明後日の予定です。