第3話 俺TUEEEEかと思ったら俺(のモンスター)TUEEEEだった
遅くなりました。
主人公のチート発揮回です。
「ぜー・・・ぜー・・・」
「イツキ、大丈夫?」
目覚めた場所から歩き始めて体感で30分。
只今くっそ長い坂を歩いております。心の中だけ元気百倍。
ゼキアには手をヒラヒラさせて大丈夫と言う意思表示をしといた。あー、足痛い。運動せずにネトゲばっかやってるからこうなるんだ。後悔はしてないけど。
ゼキアは全然平気みたいで、スキップしながら鼻歌を歌ってる。曲がりなりにも邪神だからな。
転移魔法とかも余裕で使えるんだろうけど、折角なら歩いていきたいという俺の意を汲んでくれたみたいだ。今の気持ちとしてはすぐにでも転移してもらいたいのだが。
あ、村正は霊体化して周囲を警戒してくれている。【英霊Level1】には霊体化出来る能力もあるそうだ。便利。
他にも色々考えて気を紛らせていたら、やっと坂を登りきることが出来た。おぉ、薄っすらと塔みたいなのが見える。あそこが《魔法都市エーギル》なのか?
「イツキ、ちょっと休憩しようか?」
「はぁ・・・はぁ・・・頼む」
それを聞いて俺はどさりと地面に倒れこむ。
「疲れたぁ・・・あぁ、そうだ。さっき言ってた《エラトス大草原》と《魔法都市エーギル》は分かるんだが、《パウルニクス大陸》って何だ?」
エラトス大草原はここだし、魔法都市エーギルってのは遠目に見えるあの塔の所だろう。
「《パウルニクス大陸》って言うのは、《ライブラ五大大陸》の内の一つだよ。
一つ目は人間が住んでるここ、《パウルニクス大陸》。他の大陸から移住してきた亜人も住んでて、五大大陸で一番大きいんだ。
二つ目は亜人が沢山居る《アナムティア大陸》。そっちの世界でメジャーなのは大体ここに住んでる。
三つ目は獣人やらが主に居る《クラリッサ大陸》。基本群れないからアナムティアには行かない。
四つ目はエルフが住んでる《ディアガノン大陸》。他の種族に排他的だけれど、たまーにそのイメージを払拭しようとパウルニクスやアナムティアに行くのも居る。
で、最後。魔族────まぁ、私や魔王の小娘を信仰してる奴らが住んでる《リノニスタ大陸》。私は行きたくない。絡まれるの嫌だし。
あとおまけ。《シャングリラ大陸》って言うんだけど、何処にあるか分からないって言われてる、神々の隠れ家だね。クソビッチもそこに住んでる。前に遊びに行ったら、本気出して迎え撃って来ちゃってさー。焦る顔が面白かったなー。さらに言うとクソビッチが一ヶ月後、“私”のイツキを呼び出す所だったんだ。クソビッチは私を倒したら何でもしてあげるって言って召喚された奴を誑かすんだ。危ない所だったね!イツキのクラスメイトはどうでもいいけど」
相変わらず愛の重いゼキアさん可愛い。ちょっとからかってやろっと。
「因みにもし俺がそのクソビッチに召喚されたら─────ヒィ!?」
冗談半分で聞いたら、ゼキアが何処かに向かって、平和な国に住んでた俺でも分かるほどの物凄い圧力を飛ばした。や、ヤバい。殺されないって分かっててもヤバい。助けてミツキー!
『主、すまないな。痴話喧嘩に巻き込まれる気は毛頭無いのだ』
そ、そんなああああああヒィ!!?
────
「ゼキア、俺のステータスって見れるのか?」
あの後どうにかゼキアを宥めすかし、何でも言う事聞く権利その2を使ってしまった。
それはエーギルについてから考えるとして、俺は気になった事を聞いてみた。
「えへへ・・・あ、うん。私じゃなくても、イツキみたくあっちから来た人間なら全員確認出来るよ。と言っても、此処は召喚によってでしか外部から人間が来る事は無いけどね。イツキは別だけど。村正にやった様に、自分の頭に手を置いて“ステータス”ってやればね」
恍惚とした表情のゼキアは、吃りながらも答えてくれた。貞操の危機、再び。
というか、優遇されてるんだ、地球人。
試しに手を置いたんだが、偶然にも手がルル○シュみたいな感じになってしまった。眼帯の方だから余計恥ずかしい。コスプレじゃなくてどの装備品もちゃんと効果あるからいいんだけどさ。あ、ステータス出てきた。
【サガミ イツキ】【召喚士】【Level:1】【装備品:虹水晶の魔杖】
【基礎能力値】
【生命力:27/27】【魔力:353/253(+150(+200)】
【攻撃力:0】【魔法技能:382(+150(+200)】
【持久力:21】【敏捷性:31】
【器用度:289(+200)】【幸運:30】
【特殊能力】
【召喚Level10】【支援魔法Level10】
【叡智Level10】【匠の技Level10】
【多重人格Level1】
あー、うん。何というか、人の事言えないほど尖ってるなぁ。というか尖りすぎだろ。
薄々感じてたけどさあ!攻撃力0はないわ。
多分だけど魔力、魔法技能、器用度以外全く伸びないと思うんだ。しかも攻撃魔法は無し。多重人格は多分ミツキがいるからだろう。
ハハッ、俺TUEEEEへの道が完全に・・・いや。
項垂れててもしょうがないな。幸い村正に支援魔法かけまくって殴る、っていう戦法は取れるみたいだし。ゼキアに守られるばかりじゃなくて、守るに値する奴にならなきゃな。
そうと決まれば話は早い。道中もモンスターは出てくるだろうし、魔法の練習台に─────
「主、10町(約1キロ)先に魔物の群れが」
「ワヒャぁっ!!!!?」
突然村正が出てくるもんだから、びっくりして奇声を上げて尻餅をついてしまった。
村正は首を傾げてるし、ゼキアは頰を赤らめて肩を上下させている。目福だが恥ずかしいのでやめてほしい。
「な、何でもない。それってあの砂埃巻き上げながらこっちに来る犬の集団の事か。ゼキア、何のモンスターかわかるか?」
「ハァハァ、イツキ可愛い・・・ん?あれはバインドドッグって言ってね、口から粘着性のある唾液を出して集団で襲い掛かる嫌らしいモンスターだよ・・・ハァハァ」
ヒィ、怖い。な、なんにせよあの犬がけしからんモンスターって事はわかった。
「村正、やれるか?」
「承知。死力を尽くします」
「そう固くなるなよ。ほれ、支援だ───我が与えしは・・・えー・・・邪悪なる神による加護 魂の昇華により 人智を越えし者になれ『神の天恵』!」
そう言うと村正の身体が、空に出現した魔方陣から光に包まれる。良し、ゼキアに殺されるから詠唱を少し変えたがいけたようだ。ゼキアも頷いている。ホッ。
「これは・・・なんと神々しい力。感謝致します、主!」
そう叫んだ村正の姿は一瞬にして搔き消え、バインドドッグが走っていた所から爆音が鳴り響いた。目にも止まらない剣による絶技により、たちまちバインドドッグの骸による山が築かれて行く。
え、えぇぇぇぇぇぇ・・・
どうやら俺は、この世界でも完全に後方支援型の様だった。
明日も1話更新します。