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第1話 ヒモになりたくないから召喚する

ゼキアちゃん空気回です。

「──ツーキ!────て!」


何か聞こえる。可愛い女の子の声だ。俺にもやっと起こしに来てくれる幼馴染みが・・・気のせいか。もう一眠り・・・


「うぅん、あと五分・・・」


「おーきろー!」


「グエッ!?」


寝惚けていた俺を起こしたのは、腹に掛かったとんでもない衝撃だった。おえっ、吐きそう。


「うえっぷ・・・え、あ、そっか・・・俺、異世界に来たんだ」


俺が体を上半身だけ起こすと、そこにはゼキアが馬乗りに。おうふ。


「ふふん、全くイツキは寝坊助だね!では改めて・・・ライブラへようこそ、イツキ!」


自分の事を魂レベルで好きだと言ってくれた少女の笑みに、自然と顔が綻ぶ。


「・・・ああ」


それを悟られない様ぶっきらぼうに返しながら、今いる場所が、草原なのだと理解した。



────



とりあえず日も昇ってきた事だし、気になってた事でも聞いてみるか。


「ゼキア。ここに来たのは良いけど、何か目標みたいなのはあるのか?」


「うーんとね、強いて言うなら・・・やっぱりイツキに強くなってもらう事かな?」


「俺に?どうして?」


「イツキ、というか男の子は女の子に守られるのが嫌いでしょ?驕り高ぶるつもりは無いけれど、仮にも私は邪神。今のイツキとの実力は月とスッポンだけれど、それでもやっぱり悔しいよね?」


そういう事か。守られてばっかは嫌だしな。ヒモにはなりたくない。


「そりゃ強くなりたいけど・・・《サモンディザスター》ではプレイヤーの能力値は一番高くても中盤に出てくるモンスターと同程度。だから自分のモンスターに頼るしかないんだけど、ライブラで召喚は出来るのか?いや、それ以前に俺が《召喚》を使えるかがわからないんだが・・・使えるよな?」


「イツキ自身の能力値に関しては全然こっちの世界で通用するし、ちゃんと召喚も出来るよ。ほら、これが《心珠》でしょ?さっき向こうにいた集団を殺ったら丁度五つ出てきたんだよ。全部Aランクだと思うよ」


ゼキアがポケットを探ると、ビー玉より少し大きい綺麗な玉が出てきた。俺はそれを見て、ゼキアのサラサラな黒髪を撫でる。


俺のステータスか。《サモンディザスター》自体ステ振りは出来るんだけど、プレイヤーは攻撃出来ないからSTR(攻撃力)が無いんだよな。俺はINT(魔法技術)多め、DEX(器用さ)に残りだ。高速補助魔法でモンスターの火力上げて殴る。テンプレの一つだ。


それはさておき。


「おぉ、本物の《心珠》だ。もしかして、今から召喚出来たりする?」


召喚は拠点でしか出来ないのだが・・・これは現実。もしかしたらその場でも出来るかも知れない。


「うん、出来るよ。召喚陣さえ出しちゃえば、いつでも何処でも」


よし!厨二病を引退したと言っても、ゲームでは未だ続いている厨二行為。『漆黒纏いし時の支配者』と呼ばれたのは伊達ではない。


「あー、でも召喚陣の書き方がわからないな。どうしよう─────────今回は我が特別にレクチャーしてやる。感謝しておけ主よ」


そう俺が言うと俺の手が勝手に動き、フードを取り払った!

口と手が勝手に・・・ってこれ!


「イ、イツキ?どうしちゃったの?」


そら驚くわ。俺も驚いてるからな。


これは《ミツキ》だ。

言動が完全に《サモンディザスター》の時の俺だからな。訳わからん。

そう思っていると、またミツキが喋りだした。


「我は主では無くミツキだ。覚えておけ、主の嫁よ。主とは感覚を共有している。主、これが召喚陣だ」


やだ奥さん嫁ですって。


「え、あ、うん」


あら、どもってる。


そう思った瞬間、ゼキアから渡された5つの《心珠》が宙に浮き、心珠が点となって間に線が引かれて、五芒星の形になった。

うん、かっこいい。ありがとうございます。

そう思うと、ミツキの顔が少し綻んだ。感覚を共有しているので分かったのだ。

ミツキは無表情に戻り、杖を持っている右手に左手を添えて詠唱を始めた。

すると杖の先端に埋め込まれている水晶が淡く虹色に光りだした。生で見る虹水晶かっこいいっす。

《サモンディザスター》には武器が杖しかないが(物理攻撃出来ないから他のが有っても意味ないしな。アクセサリーにはあるけど)、その杖はオーダーメイドが可能なのだ。

俺が使ってるのは《虹水晶の魔杖》と言う。

杖にも7段階のランクがあり、これはSSランク相当の武器だ。素材を全部レアドロップの、しかも解禁されたばっかのステージに出てくるモンスターから取ったからな。


「さて、では召喚と行こうか────悠久の銀河彷徨いし汝の魂よ 穢れなきその血潮で 我が大いなる器を満たし 手となり足となり 其の魂よ 我が奴隷となれ」


解説しているとミツキが詠唱し始めた。

くっ、自分で思いついて何だけどやっぱり痛い。自前の台詞でもいけるのか。というか、ゼキアはまだ状況を理解してないみたいだ。旦那が痛い格好で痛い台詞吐いてるんだもんな。逆の立場だったらそうなる自身がある。


あ、召喚陣が光り出した。

そう呑気に考えていると、やがて五芒星の中心から徐々に光が溢れていき、草原の一部を閃光が呑み込んだ。


────


やがて光が収まっていき、その時身体の主導権が戻った。その時、「主が語りかければ必ず目覚め力になろう」と言っていた。ありがとう、ミツキ。

目がチカチカしながらも辺りを確認すると、召喚陣の所に人影が見えた。

最初はゼキアかと思ったが、違う。俺よりも体格が大きい。

光が完全に収まったそこに居たのは、刀を腰に携え袴を纏い、しかし何処と無く重苦しい雰囲気を纏い立っている武士だった。


俺はコイツを知っている。

ゲームを始めてから中盤までパーティーに入れていた、物理攻撃に関してはトップクラスなのだが、それだけに特化しているためあまり使われないモンスター。


《呪われし剣を持つ亡霊 ムラマサ》だ。



明日も1話投稿します。

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