プロローグ
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
「おはよう!樹君!」
今は、8月8日の夏休み。
せっかくの休みだからと、深夜まで今人気のMMORPG《サモンディザスター》をプレイしてから寝た俺、相模 樹を起こしたのは───
「まだ夜明け前じゃん・・・て、誰?」
ベッドの上で上半身だけを起こした俺の目の前に居たのは、黒いワンピースを着た、俺より年下の美少女だった。いや、美幼女かな?
コミュ障の俺は女と話した事なんて|(母親は除く)殆ど無く、しかも美少女だと言うのだから尚更緊張していた。
そんな俺を見てウンウンと頷いたその子は、腰に左手を当て、右手で目の横にピースを作り、ウィンクしながらこう言った。
「私は邪神美少女☆ゼキアちゃんです!」
うわぁ。可愛いけど痛い。なんなんだこの子は。
「あの・・・ゼキアさんは何しに此処へ?」
名前からして外国人なんだろうけど、やけに流暢だな。もしかして単身赴任の父さんが作ったハーフの子だったりして。いや、父さんは母さん一筋だしそんな事はないか。
「ふっふっふ、それはね───」
うーん、なんだろう。もしかしてゼキアさんは本当に邪神で、俺は目を付けられたとか?ははは、まさかね。こんな一般ピープル誰が好き好んで目を付けるんだか。
俺が首を傾げるとゼキアさんは、手を後ろで組んで頬を赤く染め、クネクネと動かし、やがて決意を固めたように───
「───君が生まれた時から好きでした!私と結婚して下さいっ!」
───爆弾発言をした。
「えっ、あっ、はい」
───は?普通好きでしたの先は付き合って下さいとかじゃないの?なんで色々飛ばしてプロポーズ?てか生まれた時からって何だよ!運命感じちゃったにも程があるだろ!
てか俺!なんで了承しちゃったんだよ馬鹿!
こういうのは、もっとこう、なんか、色々あるでしょ!幾ら美少女でも、あって数分で結婚なんて・・・いや、意外とありだな。
「ほ、本当に!?いやぁ、やっぱり神生ダメ元だね!これで駄目だったら死んでもらってから、転生する前にあのクソビッチより先に君の魂をゲットして私達は婚約、くらいしか思いつかなかったからね!」
何という傍若無人&ヤンデレ。あとクソビッチって誰だ。
「あ、あの、付き合ってから結婚の選択肢は・・・てか、転生?ゼキアさんは本当に邪神なの?」
「うん、本当だよ!その証拠に、ほい!」
ゼキアさんがこっちに向かって指を振ると、俺の服装が黒を基調とし、赤いラインが入っている、魔法使いが着てそうなフード付きローブ、それと魔法陣が描かれた眼帯が右目に、手には水晶が埋め込まれた高級そうな木の杖・・・ってこれ!
「《サモンディザスター》で俺が使ってるアバターの服装!?」
「大正解!あ、髪の毛は金髪で、クラ○ド?だっけ?の髪型。あと左目は赤色、右目は金色だからね」
そう。これは《サモンディザスター》で俺が使っているキャラ、ミツキの服装だったのである。特にこの見事なF○7のクラ○ドの髪型。汚くない金髪で、ツンツンしてる。一瞬でこんなクオリティの高い服装に変えたとなると、信じざるを得ない。
ああ、分からない人もいるかも知れないから説明しておこう。
今人気のMMORPGはかなり特殊なゲームで、職業が1つしか存在しないのだ。その職業とは、《召喚士》。
モンスターを《召喚》し、使役できる職業。
その《召喚》とは、モンスターがレアドロップするアイテム《心珠》───これにはランクがあって、同じランクで5個集めると召喚可能になるのだ。課金する必要のないガチャと言ったところか。
《心珠》のランクは7段階で、それぞれSSS、SS、S、A、B、C、Dとなっている。
そしてSSS召喚では、このゲーム最強にしてゲームタイトルにもなっているモンスター、《無限の破壊者ディザスター》を入手する事が出来るのだ。但し確率はMMORPGにしてはかなり高めの10%となっている。
その理由は、SSSランクの《心珠》は月に一度のレイドボス戦で上位10名の内、抽選により2名しか入手する事が出来ず、さらにそのレイドボスが強すぎるから、という理由だ。
前にディザスターを引き当てた上位プレイヤーと会話した事があるのだが、やっぱりと言うべきか、その人の課金額はン十万に登っていた。
それはさておき。
「あの、この格好で街中を歩くとなるとめっちゃ恥ずかしいんですけど・・・」
この状態で街中とか歩けって言われたら恥ずかしさで死ぬ自信がある。2年前───まだ厨二病だった頃なら話は別だけど。今はゲーム位でしかそういった行為はしてない。
「えー、私はかっこいいと思うけどなー?ビキニアーマーの人が平気で歩いてる世界だから全然へーき!しかもイツキは顔が良いんだから、大丈夫だよ!」
グイ、と顔を詰め寄らせてはしゃぐゼキアさんは、どうみても邪神などという存在ではなく、見た目相応の可愛い女の子だった。
「ゼキアさんがそう言うなら良いんだけど・・・うわっ!?」
俺がそう言うと同時に、ゼキアさんが俺の胸元に頭を擦り付け、上目遣いで見てきた!
「ねぇ、イツキ。私の事はちゃんと、ゼキア、って呼んでほしいな!あと敬語は無しね!ねぇ・・・お・ね・が・い?」
こんな状況で断れる筈もなく、俺はあえなく了承したのであった。
────
「じゃあ今から異世界・・・ライブラに飛ぼうと思うんだけど、何か質問はある?」
「1つだけ。ゼキア、俺がそのライブラに行く理由は何だ?別に結婚したいんだったら、こっちの世界でも構わないだろ?」
そう。俺には転生する理由が無いのだ。
異世界には行きたいのだが、説明無しにだとちょっと不満が残る。
「まぁまぁ、それは今から説明しようと思ってたんだよ。実はね、イツキ。今から一カ月後、君のクラスメイト達全員は私が住んでるライブラに召喚されるんだ。それは止める事ができない」
急に真面目モードになるゼキア。
「え?なんで知ってんの?」
「邪神だからさ!」
と思ったらまた戻った。
「ああ、うんそう・・・で、その召喚がなんで転生の理由になるんだ?」
「うーんとね、多分さっき私が口走ってたと思うんだけど・・・クソビッチって。あいつが私を殺すために召喚してく送り込んでくるんだよねー・・・大体数十年毎に纏まった数で」
「殺す、ねぇ・・・ま、大体理由は分かったよ。大方そのクソビッチに俺を渡したくなかったんだろ?」
「う、うん。私がイツキの事が魂レベルで好きって事は知らないと思うけど、イツキが取られちゃうって思ったら居ても立っても居られなくてさ・・・」
ああもう、可愛い!
俺はゼキアを抱き寄せ、ギュッと抱きしめた。ゼキアは勿論の事、やった俺も恥ずかしくなった。だって初めてやったんだもん。
「うぅ・・・恥ずかしいよイツキ」
やっぱりこういうとこだけ見ると完全に普通の可愛い女の子だなぁ。
てか、俺もやばい。顔が真っ赤になってると思う。
「お、俺も恥ずかしいんだ。家族に未練とかは無いから、早く転移してくれ。あ、でも俺の友達────雄大ってんだけど、そいつに遺書でも送っといてくれ」
「イツキあったかい……あ、うん、分かった。イツキは私の分身がトラックに引かれて死んだ事にしておいて、その雄大って人間にはその前に電話で言っておくよう作るね。じゃあ・・・えーい!」
8月8日。その日俺は、この世界から姿を消した。
暫くは1日1話投稿です。