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第8話 異世界の歴史と変わり始めた運命

 


 「じゃあ、聞いてもいい? ……その『神様』っていうのは、どんな人なの?」


 そう言うと、マリナはふところから小さな紙を取り出し、私の目の前に差し出した。

 その紙には、大きな文字で『國村茂雄』と書かれている。 


 これが神様の名前……私と同じ、日本人なんだ。


 「クニムラシゲオ、さん?」


 「そうそう。この世界の救い主、クニムラ。『神様』って呼んでる人もいるよ。なんたって、この世界に平和を取り戻してくれたからね。」


 ――――すごいな、クニムラさん。異世界の平和を取り戻すなんて。でも、どうやって?


 「クニムラは、今から300年前にこの世界にやってきたの。当時、この世界では大きな戦争が勃発していてね……今はないけれど、このときは攻撃魔法を使った戦い方が主流でね。剣とかで戦うより、ずっと強かったみたいだよ。……でも、魔法の威力が強すぎて、結果的にこの世界が荒廃した原因になっちゃったんだけどね。」


 「えっ? 攻撃魔法、ないの?」


 意外な事実だった。

 転移魔法があるくらいだから、攻撃魔法もあると思ってたのに。


 「そう。ないの。あるのは転移と、防御魔法くらい。」 


 そう言うと、マリナは近くの本棚から本を一冊抜き出し、手に取った。

 汚れて、ところどころ破れかかった、古い本だった。 


 「この歴史書によると、かつてこの世界には攻撃魔法とか、その他の特殊な魔法の数々がまとめられた書物があって、それが原因で戦争が起こった。それを知ったクニムラはもう二度とこの世界で戦争が起きないよう、その書物をどこかに隠したみたいなんだよ。そしてその隠し場所は、隣国に保管されている、クニムラがのこした手帳に書いてあるの。……でも、その書物の隠し場所は誰もわからなかった。どうしてかって、その手帳は、クニムラが元々いた世界の言語で書かれていたから。この世界の人間じゃあ、誰も読めないからね。だから攻撃魔法がないんだ。……皮肉な話だよね。その魔法が使えれば、天魔オグルを絶滅させられるかもしれないなんて。」


 マリナの声のトーンが下がる。

 透明化していて見えないけれど、悲しそうな顔になっているんだろう。


 「それはたぶん……私なら、読めると思う。」


 思わず言ってしまった。

 でも、それは事実だ。だって私は、神様? のクニムラさんと同じ、日本人なんだから。


 「アオイ……」


 マリナが私の名前を呼ぶ。

 

 その時だった。

 マリナが私に抱きついてきたのは。 


 「!」


 マ、マリナ? え、どうしたの?  

 

 いきなりのことに驚いて、その場に固まっていると、聞き覚えのある凛とした声が、後ろから聞こえた。

 

 「おい、マリナ。あまりそいつを困らせるな。」


 振り向くと、私が入ってきたドアの前に人が立っている。 


 そこに立っていたのは、あの彼だった。




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