第7話 認めざるをえない現実
「よ、よろしくお願いしますマリナさん!」
「あはは、そんな固くならないでいいよ。あと、さっきも言ったけどマリナでいいからね! さん付けって照れ臭いし、慣れてないんだ。」
私のドギマギとした挨拶を見て、マリナさん、いやマリナは楽しそうに笑っている。
笑った顔もいいな……おまけに優しいし、私のことも知っててくれたし…………ってあれ? 私、マリナと初対面のはずじゃなかったっけ? なんで私の名前知ってるんだ?
その疑問を口にする。
返ってきた答えは、あまりにも衝撃的なものだった。
「ああ、あたし、あの花畑にいたんだよね。アオイが自分の名前言ってるとこ見てたから。気付いてなくても仕方ないって。あたし、あの時透明状態だったし。」
――――と、透明状態っ? いやいやいや、何なのそれ! SF? 嘘でしょ、まさか、そんな……
よっぽど顔に出ていたのか、マリナが「嘘じゃないよ。」と付け加えて言う。
「これだよ、これこれ。この魔法薬を使ってたんだ。」
と言って、マリナがジーンズのポケットから取り出したのは、薄紫色の粉の入った小さな瓶だった。
マリナはその蓋を開けると、中の粉を自分の体全体に一気に振り掛けた。
すると。
「!」
一瞬、マリナの体全体が強く光ったかと思うと、その次の瞬間、もうマリナの姿は見えなくなっていた。
さっきまでマリナが持っていた瓶が宙に浮いている。
その瓶に入っていたあの薬がマリナを透明状態にした、というのは明らかだった。
本当に、本当にこんな薬が存在してるなんて……てか、なんとなく気付いてはいたけど、やっぱりここって……
頭の中に前からずっとあった考えが、いよいよ現実味を帯びてくる。
その考え自体、あまりにも非現実的だっていうのに。
「で? あたしに聞きたいこと、まだまだあるでしょ? 異世界から来てるんだから、わからないことだらけなんだろうし。」
えっ? い、異世界? なんでそれがわかるの?
驚きを隠せないでいる私を見て、マリナは首を傾げながら口を開いた。
「だってアオイ、あんた神様のいた世界から来てるんでしょ? 姓と名前の順番逆だし。」
ここまでで、わかったことが2つある。
1つは、ここが異世界だという、私の考えは大当たりだったということ。
もう1つは、さっきから何度か耳にしていた『神様』というのが、私と同じ世界の住人だということだ。