第6話 新たな出会いと知り得たこと
……あ、あれがあの人の言ってた部屋への入り口かな?
彼の言っていたスイッチを押し、出てきた隠し通路をひたすらまっすぐ進むと、扉のようなものが見えてきた。
すぐさま扉を開け、中に入る。
途端、何かの薬品のにおいが鼻腔をくすぐった。
何? このにおい。どこからしてるの?
においの元を探そうと、辺りをきょろきょろと見回す。
この部屋は、さっきまでいた部屋とはずいぶん違っていた。
部屋の中央には、理科の実験で使うような器具がたくさん置かれた大きな机があり、実験器具を入れる棚と大きな本棚が、その机たちを囲むように部屋の壁際に並べられている。
学校の理科室みたいな部屋だな……王宮内にこんな部屋あるの? ちょっと意外。……ん? なにこれ?
部屋の隅に置かれた大きなものに目を向ける。
それは、骨格の模型だった。
「何これ……何の動物の骨?」
ゆっくりと歩いてその模型に近づく。
傍でじっくり見ると、その動物にも見当がついてきた。
「たぶん、オオカミ……? かな。」
「違うよ」
「!」
突然、後ろから声を掛けられた。
驚いて振り返ると、目の前に女の人が立っている。
うわ、き、綺麗……!
目の前の女の人は、美人だった。
金髪でポニーテールで背が高く、スタイルが物凄くいい。
そのせいか、服装は白の長袖シャツに紺色のジーンズというラフなものにも関わらず、華やかな印象を与えた。
この女性、本当に三次元の人? さっきの人といい、
美形率高すぎじゃない? しかも、出るとこ凄い出てるし……それに比べて私の体は……
「大丈夫? ぼーっとしてるけど」
「ふぇっ! だ、大丈夫です!」
――――うわ、びっくりして変な声でた! 恥ずかし……
彼女の綺麗な顔がぐっと近づいてくる。
ダークブルーの瞳に、私の顔が映った。
でもその目線は、私ではなくて、私の後ろにある骨の模型に向いている。
「この骨の模型は、天魔のもの。……あたし達の生活を脅かす怪物。さっきもここの地下に出たんだ。神出鬼没なんだよね。」
生活を脅かす、怪物……て、ことは天魔っていうのは、RPGに出てくるモンスターと同じようなものなのかな? 突発的に現れるっていうのも似てるし、こういう獣っぽい姿の奴もいるしな……
振り向いて骨の模型に目を向ける。
オオカミに角が生えたようなそれは、骨で、なおかつ模型だというのに、
不気味なオーラを放っていた。
「でも、もうそいつらなんて怖くない。……あんたさえいれば。」
「えっ?」
彼女に両手首をつかまれる。
驚く私をじっと見つめながら、彼女が真剣な表情で言った。
「お願い……天魔を絶滅させて、この世界を救って。あんたにしか、できないの。」
世界を、救う? 私にしかできない? だからそれ、どういうことなの!
と聞く間もなく、続けて彼女は口を開いた。
「そういえば、自己紹介がまだだったね……あたしの名前はマリナ。呼び捨てでいいよ。よろしくね、アオイ。」
彼女は私の両手首から手を放すと、にっこり笑ってそう言った。