第5話 疑問の答えはすぐそこに
――――天魔? 何それ?
聞き慣れない言葉に困惑する。
けれど、それがよいものではないというのは、兵士の表情でわかった。
「何だと? どこで発生した?」
彼が低い声で兵士に問う。
振り向いて彼の方を見ると、綺麗な顔が歪み、眉間には深い皺が刻まれていた。
その傍には、呆然とした様子の王様がいる。
「地下倉庫です。確認できる限りでは
30体ほど……現在、我々が抑えていますが、
戦況は劣勢です。」
「地下倉庫か……あそこは魔法の効きが弱い
からな。それにしても、こんな時に来るとは……
よし、俺が行く。お前は王様を安全な場所へ
連れていってくれ。」
「わかりました!」
兵士は、彼に向かって力強く返事をすると、王様の方へと駆け寄っていった。
……ねぇ、何が起こってるの? 誰か私にもわかるように教えてよ。
目の前で繰り広げられる非現実的な会話に頭がついていかない。
疑問をぶつけようにも、誰に何から聞けばよいのかわからくて、
口を開けたまま、その場で固まっていた。
……戦況、って言ってたよね。 た、戦ってる
の? その天魔とかいうのと? しかも魔法? 魔法って言ったよね今! 嘘でしょ、嘘だよね?
でも、もし本当なら、もしかして、もしかして……
今、私がいるのは…………
「なあ、あんた」
「え……あ、は、はい……!」
なんとか自分なりに今の状況を整理しようとしていると、いきなり彼に声をかけられた。
驚いて、うつむき気味だった顔を上げると、目の前にいた彼が一点を指差し、
「そこの壁を見てくれ。なるべく傍によって。」
――――壁? 壁に何かあるの?
彼の言った通りに傍までいくと、壁と同化して
いて、遠くからでは気づけないほど小さい、スイッチのようなものがあった。
「そのスイッチを押せば隠し通路が出てくる。その通路をまっすぐ歩けば、広い部屋の中に出る。
……そこに、俺の代わりにあんたの疑問を
晴らしてくれる奴がいる。」
その言葉にはっとさせられた。
私のこと、気にしてくれてたんだ……
「あ、ありがとうございます!」
私の感謝の言葉に、彼は微笑みで返してくれた。
直後、彼の体はまばゆい光に包まれて、その場から消えた。
…………よし、行くか。
色々と疑問はあるけれど、それもこれも彼の言っていた人に聞けば解決するはずだよね。
とにかく、今は彼を信じよう。
そう決意すると、私は彼の言っていたスイッチを押した。